川内原発の再稼働は凍結すべきとするパブリックコメントを提出しました
原子力規制委員会は、原子力発電所の新規制にもとづく審査としては初めて、九州電力から提出された川内原子力発電所1・2号炉について審査書案を7月8日にとりまとめ、規制基準に適合しているとしました。
これに対し、生活クラブ連合会は8月8日、川内原発の再稼働は凍結すべきとするパブリックコメントを提出しました。全文は以下の通りです。
意見
はじめに
生活クラブ連合会は、32の会員生協からなる生活協同組合の事業連合です。34万人の組合員に対して安全な食べものを提供することを最大の使命とし、海や空に放射性廃棄物を放出する原子力発電所は受け入れられないという立場で活動しています。とりわけ東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験を踏まえるならば、原発ゼロ社会の実現へ向けて進むこと以外に、私たちの進むべき道はないと考えます。
このたび原子力規制委員会は、川内原子力発電所1・2号炉について審査書案をまとめ、「科学的・技術的意見」を募集しています。新規制基準に基づく初めての審査書案であるため、多くの国民が注視してきました。それにもかかわらず、「科学的・技術的意見」と限定して意見が募集されていることに対し、多くの国民の意見が排除されるのではないかと強く懸念します。提出される意見について、「科学的・技術的」という枠にとらわれずに幅広く検討してください。
審査書案は、川内原子力発電所1・2号炉が新規制基準に「適合しているものと認められる」と結論づけていますが、生活クラブ連合会は、主に以下の理由から、川内原発の再稼働は凍結すべきと考えます。
巨大火山噴火のリスク
川内原発周辺には巨大なカルデラ火山が林立し、巨大噴火により火砕流が原発を飲み込むおそれがあります。九州電力の申請書では、加久藤・小林、姶良、阿多の3つのカルデラについて、「火砕流が敷地に到達した可能性は否定できない」としています。
多くの火山学者が噴火予知の困難さを語っており、新規制基準にもとづく具体的審査において、火山噴火にともなう火砕流が原発敷地に進入するリスクを、十分慎重に評価しているとは言えません。もし大規模火砕流が川内原発に到達すれば、原発過酷事故を防止するあらゆる防災活動は不可能となり、2基の原子炉において同時並行的に過酷事故が発生・拡大する恐れがあります。
防災計画の不在
川内原発の30キロ圏人口は約23万人です。鹿児島県は民間調査機関に委託して、原発30キロ圏からの避難に要する時間の推計結果を発表しましたが、地域防災計画を効果的にするために不可欠の手続きを踏んでいません。特に重大な欠陥は、要援護者(高齢者、入院患者、介護施設入所者等)の受入先と、避難の具体的手順が決まっていないことです。福島原発事故で最も厳しい境遇に置かれたのが要援護者です。
また過酷事故が起きれば避難区域が30キロ圏をこえて大きく拡がる可能性があることは、福島原発事故で経験した通りであり、九州全域の避難計画を構築する必要があります。そして数万人以上の長期避難が必要な場合には、避難先は九州のみに限らず全国に確保しなければなりません。
これらの点を含めた防災計画がありません。
新規制基準で地下水の汚染が規制対象となっていない
川内原発の敷地には豊富な地下水が流れています。川内原発での地下水流入量は300立方メートル/日で、福島第一原発と同レベルです。過酷事故によって、福島第一原発と同じような汚染水流出が止まらないという事態が起こりえます。新規制基準では地下水の汚染は規制対象となっていないため、対策が示されていません。
福井地裁の大飯原発運転差し止め判決を踏まえていない
福井地裁は5月21日、関西電力に対し大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡しました。福島のような深刻な原発事故が再び起これば、周辺住民の人格権(個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益)が極めて広く侵害されるので、その具体的危険性が万が一にも存在する場合、原発の運転を差し止めるべきだというのが判決の論理構造です。その上で3・4号機に係る安全技術及び設備が地震等に対して「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとで初めて成り立ちうる脆弱なものであると認めざるを得ない」という判断を下しました。裁判官が、原告・被告の主張に対し、互いに対等のものとして耳を傾け、どちらが説得力をもつかを真摯に検討した結果、原告側に軍配を上げた結果であり、適切な手法であると考えます。
福島原発事故によって、原発過酷事故の具体的危険性を否定することはもはや不可能となった現在においても、原子力規制委員会による審査結果は、「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとで初めて成り立ちうる脆弱なものであると認めざるを得ない」ものであり、福島のような深刻な原発事故が起これば、周辺住民の人格権(個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益)が極めて広く侵害されると考えます。
以上
これに対し、生活クラブ連合会は8月8日、川内原発の再稼働は凍結すべきとするパブリックコメントを提出しました。全文は以下の通りです。
意見
はじめに
生活クラブ連合会は、32の会員生協からなる生活協同組合の事業連合です。34万人の組合員に対して安全な食べものを提供することを最大の使命とし、海や空に放射性廃棄物を放出する原子力発電所は受け入れられないという立場で活動しています。とりわけ東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験を踏まえるならば、原発ゼロ社会の実現へ向けて進むこと以外に、私たちの進むべき道はないと考えます。
このたび原子力規制委員会は、川内原子力発電所1・2号炉について審査書案をまとめ、「科学的・技術的意見」を募集しています。新規制基準に基づく初めての審査書案であるため、多くの国民が注視してきました。それにもかかわらず、「科学的・技術的意見」と限定して意見が募集されていることに対し、多くの国民の意見が排除されるのではないかと強く懸念します。提出される意見について、「科学的・技術的」という枠にとらわれずに幅広く検討してください。
審査書案は、川内原子力発電所1・2号炉が新規制基準に「適合しているものと認められる」と結論づけていますが、生活クラブ連合会は、主に以下の理由から、川内原発の再稼働は凍結すべきと考えます。
巨大火山噴火のリスク
川内原発周辺には巨大なカルデラ火山が林立し、巨大噴火により火砕流が原発を飲み込むおそれがあります。九州電力の申請書では、加久藤・小林、姶良、阿多の3つのカルデラについて、「火砕流が敷地に到達した可能性は否定できない」としています。
多くの火山学者が噴火予知の困難さを語っており、新規制基準にもとづく具体的審査において、火山噴火にともなう火砕流が原発敷地に進入するリスクを、十分慎重に評価しているとは言えません。もし大規模火砕流が川内原発に到達すれば、原発過酷事故を防止するあらゆる防災活動は不可能となり、2基の原子炉において同時並行的に過酷事故が発生・拡大する恐れがあります。
防災計画の不在
川内原発の30キロ圏人口は約23万人です。鹿児島県は民間調査機関に委託して、原発30キロ圏からの避難に要する時間の推計結果を発表しましたが、地域防災計画を効果的にするために不可欠の手続きを踏んでいません。特に重大な欠陥は、要援護者(高齢者、入院患者、介護施設入所者等)の受入先と、避難の具体的手順が決まっていないことです。福島原発事故で最も厳しい境遇に置かれたのが要援護者です。
また過酷事故が起きれば避難区域が30キロ圏をこえて大きく拡がる可能性があることは、福島原発事故で経験した通りであり、九州全域の避難計画を構築する必要があります。そして数万人以上の長期避難が必要な場合には、避難先は九州のみに限らず全国に確保しなければなりません。
これらの点を含めた防災計画がありません。
新規制基準で地下水の汚染が規制対象となっていない
川内原発の敷地には豊富な地下水が流れています。川内原発での地下水流入量は300立方メートル/日で、福島第一原発と同レベルです。過酷事故によって、福島第一原発と同じような汚染水流出が止まらないという事態が起こりえます。新規制基準では地下水の汚染は規制対象となっていないため、対策が示されていません。
福井地裁の大飯原発運転差し止め判決を踏まえていない
福井地裁は5月21日、関西電力に対し大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡しました。福島のような深刻な原発事故が再び起これば、周辺住民の人格権(個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益)が極めて広く侵害されるので、その具体的危険性が万が一にも存在する場合、原発の運転を差し止めるべきだというのが判決の論理構造です。その上で3・4号機に係る安全技術及び設備が地震等に対して「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとで初めて成り立ちうる脆弱なものであると認めざるを得ない」という判断を下しました。裁判官が、原告・被告の主張に対し、互いに対等のものとして耳を傾け、どちらが説得力をもつかを真摯に検討した結果、原告側に軍配を上げた結果であり、適切な手法であると考えます。
福島原発事故によって、原発過酷事故の具体的危険性を否定することはもはや不可能となった現在においても、原子力規制委員会による審査結果は、「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとで初めて成り立ちうる脆弱なものであると認めざるを得ない」ものであり、福島のような深刻な原発事故が起これば、周辺住民の人格権(個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益)が極めて広く侵害されると考えます。
以上