WHO「世界結核報告書2013」の発表を受けて
世界保健機関(WHO)は10月23日、世界の結核の現状を取り上げた「世界結核報告書2013」を発表した。この報告書は、結核の診断を受けた人の率や的確な診断技術の普及状況 、治療成功例と未達状況、新規感染者と死者に関する統計、財源と研究開発面における需要と供給の差、そして高まん延国とこの疾患への対応などが記されている。これを受け、国境なき医師団(MSF)は、以下のとおり見解を発表、各国政府、資金拠出者、WHOに対し、財源を確保して結核対策に取り組むよう求めている。
「薬剤耐性結核(DR-TB)の診断・治療の向上および拡大が世界規模でうまくいっていないことの代償として、多くの命が失われています。悪化を続けるDR-TBの危機によって、防げたはずの苦しみと死が恐るべき規模で起きている中、各国政府、資金拠出者、WHOには、政治的な力を動かして約15億ドルとされる財源を確保し、この致命的な病気に正面から取り組むことが求められています。
MSFは結核治療を行っている多くの国で、驚くべき数のDR-TB症例を目にしています。診断技術の進歩によって検査結果が出るまでの所要時間が2ヵ月から2時間になったことが大きいのです。よりよい診断機器のおかげで2012年に世界でDR-TBと診断された症例が2011年の倍近くになったことは大きな一歩ですが、DR-TB感染者4人のうち3人がまだ正確な診断を受けられず、診断された人のうち1万7000人が治療を始めていないことから、この病気に対して本当の意味で前進したとするには程遠いと言えます。
ここで必要なのは2本立てのアプローチです。1つ目は、苦痛に満ち、毒性が強く、治療をためらうほど高額な2年に及ぶDR-TB治療の試練を、短期間で、苦痛の少ない、より安価な方法に変えるような治療法の刷新です。そして2つ目は、世界最大の結核対策資金拠出者である『世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)』に必要額を全額拠出すること、DR-TB診断と治療の充実・拡大を行う国々を早急に支援することです。そうすれば、今日にも多くの命が助かり、この病気の拡大に歯止めをかけることができるのです」。
グラニア・ブリグデン
国境なき医師団 必須医薬品キャンペーンにおける結核アドバイザー、医師
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MSFは25年にわたって結核治療に従事してきた。多剤耐性結核(MDR-TB)の治療開始は1999年で、以後、MSFはNGOとして世界最大のMDR-TB治療の担い手の1つとなっている。2012年は2万9000人の患者がMSFのもとで第一選択薬による結核治療を30ヵ国で受け、1780人の患者が18ヵ国で薬剤耐性結核の治療を受けた。
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