従来の宇宙線の生成モデルが覆るか!?幽霊粒子ニュートリノの観測から新たな発見~最高エネルギー宇宙線の源とは何か 解明へ一歩前進~
千葉大学ハドロン宇宙国際研究センターのIceCube実験国際共同研究グループ(石原安野准教授、吉田滋教授ら)は、宇宙からくる超高エネルギーニュートリノの数がこれまでの予想より少ないことを発見しました。この発見は、宇宙の高エネルギー物質の放射(UHECR:注1)やその発生源となる天体(UHECR起源天体)の正体について、従来の定説を覆すものになります。
- 背景 ~最高エネルギー宇宙線の謎にニュートリノ実験から迫る~
今回対象とした宇宙線(粒子)の中で最も高いエネルギーを持つUHECRも、光をつかった望遠鏡による直接観測が非常に難しく、どこから来ているのか、何からできているのか等もわかっていません。これらの謎の解明の切り札とされているのが「超高エネルギーニュートリノ(注2)」です。ニュートリノは遠方宇宙(注3)から直接地球にも届きます。地球上で観測できる「超高エネルギーニュートリノ」の流量から、遠方宇宙のUHECR起源天体の分布を読み取り、ここから天体種類の同定を試みています。
- 本研究の成果
その結果から、世界で初めてUHECRやUHECR起源天体の正体について、従来考えられてきた定説を見直す必要があることが示されました。
【従来の定説】
・UHECR起源天体は遠方宇宙に多く存在している。
・UHECRを構成するおもな物質は「陽子」である。
【今回の解析結果】
・UHECRが「陽子」だとすると、UHECR起源天体は我々の近傍宇宙にあるはずである。
・UHECRが「重い原子核」であるとすれば、本解析結果との矛盾がない。
- 今後の展望
本研究結果は「Physical Review Letters (PRL)」(アメリカ物理学会出版)2016年12月9日版に掲載されます。また、本論文はPhysical Review Letters誌が選ぶ特に重要な論文として”PRL Editors' Suggestion”に選出されPRLのホームページで特集されます。
本リリースに関しての詳しい情報は、こちらよりご覧いただけます。(千葉大学HP内)
http://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/press/files/20161209press.pdf
- 注釈解説
注2)超高エネルギーニュートリノ:UHECRが宇宙に広がる背景放射光や天体内外の光やガスと相互作用を起こして生み出すもの。親UHECRの平均5%のエネルギー(つまり5x10^16eV-5x10^18eV、または50PeV-5EeV)を持ち、宇宙から真っすぐに伝搬してくる。宇宙背景輻射に遮られることなく直接届くため、望遠鏡で見えない遠い宇宙の様相を知るための手がかりとなっている。
注3)遠方宇宙:光の速さは有限であるため、我々が宇宙を観察するとき、対象が遠方にあるほど現在より遡った時間の(=現在と比べて若い頃の)状態を見ていることになる。また、宇宙にある様々な天体は、宇宙の初めから現在まで同じように存在しているわけではなく、例えば原始銀河のような、宇宙が若い時期に多く生成され、宇宙が年を取るにつれ少なくなっていくとされている天体がある。これらのことより、遠方宇宙での天体の分布が読み取れれば、それらがどの時代に活動的な天体なのかがわかる。
注4)IceCube実験:約5千個の光検出器モジュールと南極氷河からなる世界最大のニュートリノ検出器実験。日本の神岡鉱山にあるスーパーカミオカンデなどと似た手法でニュートリノを検出する。ただし、容量はスーパーカミオカンデの15000倍に達し、この大きさを武器とした超高エネルギーニュートリノの検出における高い感度が特徴。2004年に建設開始、2011年に検出器が完成。約300名からなる国際共同実験。
http://icecube.wisc.edu/
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