既存マンションにおける修繕積立金の増額に係る合意形成プロセスの実態及び段階増額積立方式を採用した長期修繕計画上の資金計画の設定状況に関する分析

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:池田 雅一、以下MURC)は、大和ライフネクスト株式会社(東京都港区、代表取締役社長:齋藤 栄司、以下 大和ライフネクスト)との共同により、国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業(課題の解決に向けた事例の収集・分析等を行う事業)」を通じて、大和ライフネクストの管理物件データを用いて、修繕積立金の増額状況や、段階増額積立方式を採用している長期修繕計画を分析しました。このほど、調査結果についてお知らせいたします。

1.趣旨・背景

全国のマンションストックにおいて「2つの老い」が進行するとともに、直近では建設コスト等の高騰から、将来必要となる修繕費用が上振れし、区分所有者にとっての経済的負担が従来以上に大きくなる可能性が出てきています。一方で、近年分譲されるマンションの多くが、管理開始当初から一定の期間ごとに修繕積立金の徴収額を引き上げる「段階増額積立方式」を採用しています。段階増額積立式を採用した資金計画では、将来にわたって計画通りに徴収額が引き上げられることが前提となっています。しかし、修繕積立金の改定には総会決議が必要であり、修繕積立金を大幅に引き上げようとすると、総会では決議が得られず、計画通りに引き上げができないおそれもあります。

こうした状況を受けて、国土交通省ではマンション管理計画認定制度の見直しに向けた検討を行い、2024年6月には「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループとりまとめ」が公表されました。その中で、現行の管理計画認定基準へ「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」を盛り込む方向が示されています。

このように、管理計画認定制度のあり方の見直しが進む状況を踏まえ、当社と大和ライフネクストは、国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業(課題の解決に向けた事例の収集・分析等を行う事業)」を通じて、段階増額積立方式における修繕積立金の引き上げの実態や、管理組合における合意形成の状況を把握するための調査・分析を実施し、その結果を本レポートとしてとりまとめました。

2.調査結果の概要

(1) 既存マンションにおける修繕積立金の増額に係る合意形成プロセスの実態分析

  • 2018~2023年の5年間で、大和ライフネクストの管理受託物件(分析対象:3,629管理組合)の約6割で修繕積立金の徴収額が増額となった。

  • 従前の修繕積立金の設定水準が低い管理組合では、5年間における増額の変動幅が大きい傾向がみられ、管理組合として増額を許容できる状況であったことが推察される。

  • また、経年化に従い、修繕積立金の設定水準が高くなる一方で、増額の変動幅が小さくなる傾向がみられ、増額が困難となりやすい状況がうかがえる。

  • 積立金の増額に対する総会決議が可決された事例では、可決以前の修繕積立金の設定水準が低く、必要な修繕費用の確保ができていなかった等の状況から、増額が許容されやすい状況であったと推察される。

  • 積立金の増額に対する総会決議が否決された事例全体でみると、総会での否決を経て実現した増額幅は、提案時に比べて1割程縮小している。

(2) 段階増額積立方式を採用した長期修繕計画上の資金計画の設定状況に関する分析

  • 大和ライフネクストが管理を受託する既存マンションで作成されている長期修繕計画上の資金計画において 、最終年度の収支が黒字となっている事例は2割程度で、このうち段階増額積立方式を採用している割合は4割程度となっている。

  • 計画期間の最終年度の収支が黒字となっていない事例が一定程度存在するが、計画期間中に必要な修繕費用を精緻に予測することは困難である。実務上、資金計画の検討や管理組合への説明においては、最終年度の収支よりも、計画期間前半の設定が重視される傾向にある。また、定期的に計画見直しを継続することで、計画の精度を担保している。

  • 修繕積立金の増額幅のみで修繕積立金の充足状況を判断することは困難であり、一般会計・収益事業会計からの繰り入れ状況も考慮する必要があると考えられる。

  • 長期修繕計画・資金計画の概念が登場したのは1980年代前半であり、当時は長期修繕計画の内容は、具体的な工事費用が提示されず、修繕実施時期の見込みのみが示されていた。また、段階増額積立方式という概念もその後に民間事業者の取り組みから生まれてきたものである。

  • 管理計画認定基準において段階増額積立方式に基づく資金計画を確認する際には、資金計画を作成しないことが一般的であった当時から存在する高経年マンションへの配慮が必要と考えられる。

調査結果の詳細は調査結果全文をご覧ください。

3.各組織の概要

■ 大和ライフネクスト株式会社

大和ライフネクストは、分譲マンション・賃貸マンション・ビル・物流施設・商業施設・ホテルなどの建物管理サービス、法人向け賃貸マンション・シェアハウス・カンファレンスホテル・リノベーションホテルの運営、オフィス移転サポートといった法人向けサービスなど、広くお客さまの住生活・不動産に関わる領域でサービスを提供しています。

マンションみらい価値研究所は、マンション管理会社では初となる総合研究所として2019年に設立。日本の「社会インフラ」となったマンションに存在するさまざまな問題を分析し、新たなマンションの価値創造に貢献するための調査報告を発信しています。

(Webサイト) https://www.daiwalifenext.co.jp/

■ 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(MURC)

MURCは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。東京・名古屋・大阪を拠点に、国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、民間企業向け各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援、マクロ経済に関する調査研究・提言など、幅広い事業を展開しています。

(Webサイト) https://www.murc.jp/

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会社概要

URL
http://www.murc.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区虎ノ門5-11-2 オランダヒルズ森タワー
電話番号
-
代表者名
池田 雅一
上場
未上場
資本金
20億6000万円
設立
2006年01月