「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」 箱根、ポーラ美術館にて2024年6月8日(土)~12月1日(日)開催
Philippe Parreno: Places and Spaces
現代のフランス美術を代表するフィリップ・パレーノは、今日最も注目されるアーティストの一人です。映像、音、彫刻、オブジェ、テキストやドローイングなど作品は多岐にわたりますが、その意識は常に、現実/フィクション/仮想の境界、あるいは実物と人工物との間に生じる乖離、その奇妙なずれへと向けられています。また、芸術や「作者性」の概念にも疑問を投げかけ、数多くのアーティスト、建築家、音楽家と共同で作品を生みだしてきました。
パレーノはAI をはじめとする先進的な科学技術を作品に採り入れながらも、ピアノやランプ、ブラインドやバルーンといった見慣れたオブジェを操り、ダイナミズムと沈黙、ユーモアと批評性が交錯する詩的な状況を生みだします。展覧会そのものをメディアとして捉えるパレーノが構築する空間は、まるでシンボルの迷宮のようです。何者かの気配、声、光、暗闇、隠されたメッセージ――慎重に演出された、ドラマティックな構成に導かれ、大規模な舞台装置のような会場に足を踏み入れる私たちは、まるで演者のように、新鮮な驚きとともに混乱をともなう体験の中へと身を投じることになるでしょう。それは一時の夢、旅、あるいは作家が言う映画のようなものかもしれません。パレーノの展示は、芸術はどのように体験されるべきか、そして体験されうるかという問いを私たちに投げかけています。
国内最大規模の個展となるポーラ美術館での展覧会では、作家の代表作である映像作品《マリリン》(2012年)※をはじめ、初期作品から初公開のインスタレーションまで、作家の幅広い実践を多面的にご紹介いたします。
※新収蔵作品
《私の部屋は金魚鉢》2018年 展示風景:グロピウス・バウ、ベルリン、2018年
My Room Is Another Fish Bowl,2018 Exhibition view: Gropius Bau, Berlin, 2018
Courtesy of the artist; Pilar Corrias, London; Gladstone Gallery, New York and Brussels; Esther Schipper, Berlin/Paris/Seoul
Photo © Andrea Rossetti
みどころ
① 現代のフランスを代表するアーティスト、国内最大規模の大型個展
パレーノは、ニューヨーク近代美術館やポンピドゥー・センター(パリ)、テート・モダン(ロンドン)など欧米
の主要美術館で数多くの個展を開催しています。日本でも2025年の岡山芸術交流のアーティスティック・ディレクターに選任されるなど、今日もっとも注目される作家のひとりです。ポーラ美術館では、ドローイングから立体、映像、大規模なインスタレーションまで、パレーノのユニークな作品の数々を国内最大規模で紹介します。
② 空飛ぶ魚の群れや巨大なスクリーン。照明と音に彩られた、壮大な「映画」の中に迷い込む。
空間を自由に漂うバルーンの魚たち。誰もいないのに音を奏でるピアノ。打ち明け話をするように明滅するランプ。宙に浮いた吹き出し。夏の雪……。ノスタルジックで不思議な光景の連続は、驚きとともに強い引力で私たちを惹きつけます。パレーノは自身の展覧会を、「カメラのない映画」と形容しています。舞台セットのような空間に迷い込むと、超大型のスクリーンに投影された神秘的な映像が、私たちをも飲み込んでしまいそうです。壮大な「映画」の中を行き来しながら、アートを自由に体験してみましょう。
③ いくつもの場所と空間をめぐる旅へ。あなたの世界はどこ?
お気に入りの音楽や本、映画の世界に没頭するとき、私たちはどこにいるのでしょうか?部屋の中や公園のベンチに座りながら、街中を歩きながら、電車に揺られながら、私たちは無意識に、とても簡単に、別の空間を旅しています。そのとき私たちは、どのくらいこの世界と結びついているのでしょうか?
マリリン・モンローが住んでいたホテルのスイートルームから、森を眺める水槽の中へ。輝く雲が浮かぶ部屋から、海の底へ、漆黒の庭へ、そして宇宙へ。この展覧会は、いくつもの場所と空間をめぐる精神と感覚の旅です。
④ 箱根の森の中へ。唯一無二のプレゼンテーション
パレーノは世界各地で、その場所の特性や建築を活かした展示を構成してきました。本展では、太陽を追跡する大型のミラー作品などを、箱根の豊かな自然を背景に展開します。
また、色とりどりの魚たちが漂う展示室の大窓は、仙石原の深い森に臨みます。優雅にたゆたう魚たちとともに、会期を通して新緑から紅葉、冬景色へと木々の姿が移り変わり、季節や時間によって異なる光景が出現します。
展示風景:パーク・アヴェニュー・アーモリー、ニューヨーク、2015年
Exhibition view: Park Avenue Armory, New York, 2015
Courtesy of the artist and Esther Schipper, Berlin/Paris/Seoul
Photo © Andrea Rossetti
プロフィール
フィリップ・パレーノ/ Philippe Parreno
1964年、オラン(アルジェリア)生まれ。パリ在住。1980年代末以降、映像、音、彫刻、オブジェ、テキストやドローイングなど多岐にわたる作品を制作。先進的なテクノロジーを積極的に採り入れながら、さまざまなアーティスト、建築家、音楽家との協働を行っている。映画『ジダン 神が愛した男』(ダグラス・ゴードンとの共同監督、2006年)や、日本のアニメ・キャラクター「アン・リー」の作品などでも知られる。
近年の主な個展に、「VOICES」リウム美術館(ソウル、2024年)、「Echo2: a Carte Blanche to Philippe Parreno」ブルス・ドゥ・コメルス(パリ、2022年)、「Echo」ニューヨーク近代美術館(2019年)、「Anywhen」テート・モダン(ロンドン、2016年)、「Anywhere, Anywhere Out of the World」パレ・ド・トーキョー(パリ、2013年)、「8 juin 1968 ‒ 7 septembre 2009」ポンピドゥー・センター(パリ、2009年)など。
開催概要
フィリップ・パレーノ:この場所、あの空
Philippe Parreno: Places and Spaces
会期:2024年6月8日(土)~12月1日(日) 会期中無休
会場:ポーラ美術館 展示室1、2、5、屋外
主催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
協力:株式会社イースタンサウンドファクトリー、ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン、エスター・シッパー
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
企画:鈴木幸太(ポーラ美術館主任学芸員)
近藤萌絵(ポーラ美術館学芸員)
《エコー2》2022年 展示風景:ブルス・ドゥ・コメルス-ピノー・コレクション、パリ、2022年
Echo2, 2022 Exhibition view: Bourse de Commerce – Pinault Collection, Paris, 2022
© Tadao Ando Architect & Associates, Niney et Marca Architectes, agence Pierre-Antoine Gatier
Courtesy of the artist and Bourse de Commerce – Pinault Collection
Photo © Andrea Rossetti
追記:2024/4/24
ポーラ美術館では「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」開幕日の6月8日より、入館料金を改定いたします。
現行料金は5月19日(「モダン・タイムス・イン・パリ 1925-機械時代のアートとデザイン」会期中)までとなります。
<新料金>
大人:2,200円(シニア含む)/高校生・大学生:1,700円/中学生以下:無料
*障害者手帳をお持ちの方 大人・高校生・大学生および介助者1名まで:1,100円
詳細はWebサイトにてご確認下さい。
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