博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ、2025年度人工知能学会全国大会(第39回)に協賛し、研究成果を発表
~人工知能領域の研究コミュニティを支援~
株式会社博報堂DYホールディングス(東京都港区、代表取締役社長:水島正幸、以下 博報堂DYホールディングス)と株式会社博報堂テクノロジーズ(東京都港区、代表取締役社長:米谷 修)は、2025年5月27日(火)~30日(金)に大阪で開催される2025年度人工知能学会全国大会(第39回)にそれぞれプラチナスポンサーとして協賛し、現地でのスポンサーブースを設置いたします。また、研究成果についてオーガナイズドセッション2件、口頭発表7件を実施いたします。
人工知能学会全国大会は、人工知能学会の年次大会であり、AIや人工知能、機械学習に関する大学・企業研究者が集まる国内最大の学会イベントです。過去三回の (オンライン・オフライン合わせた) 参加者数はそれぞれ3,033名、3,567名、3,803名であり、2024年度は946件の発表が行われるなど、日本でも有数の人工知能に関する学術的なイベントです。
博報堂DYホールディングスは、AI領域における先端研究と技術開発を推進するために、Human-Centered AI Institute(代表:森正弥 以下、HCAI)を設立し、生活者発想に基づいた「人間中心のAI活用」と「人間の創造性の進化・拡張」を実現するための研究開発に取り組んでいます。あわせて、マーケティング・テクノロジー・センター(以下、MTC)では社会の急速な変化と技術革新に対応するため、生活者理解と市場理解を深めることを第一とするさまざまな研究開発に取り組んでいます。
博報堂テクノロジーズは、フルファネルマーケティング、生活者インターフェース市場、メディア・クリエイティブ領域における各種テクノロジー戦略の立案・開発を行うテクノロジー戦略会社として、2022年4月に設立されました。同社では、DX案件の提案活動支援とAI・IoT関連技術を活用したシステム開発を行う部門、また広告領域においてAIエンジンから生成AI活用のRAG、AIエージェントなどの各種アプリケーションまでをフルスクラッチで開発する部門を設け、AIを活用したユニークなプロダクト・技術を打ち出しています。
この度の協賛は、国内の人工知能領域の研究コミュニティへの支援を目的とするものです。
今後も、博報堂DYホールディングスのHCAI、MTC、および博報堂テクノロジーズの活動を中心に、博報堂DYグループのけん引役として、幅広い研究開発活動を通して革新的なAIソリューションの開発を目指します。
■ オーガナイズドセッション
OS-33 : AIを活用したマーケティング実践
オーガナイザ : 川上 孝介(博報堂テクノロジーズ)、西村 直樹氏、池田 春之介氏(リクルート)、関根 翔氏、大橋 耕也氏(メルカリ)、佐々木 直氏(講談社)、松本 健氏(JINS)、磯 智大氏(ラクスル)、小林 健氏(東京科学大学)
概要 : 人工知能(AI)技術の急速な発展により、マーケティング分野においても革新的な分析手法や戦略が生まれています。消費者行動分析においては大規模データの高度な分析が可能となり、機械学習を用いた高精度な需要予測、個別化された商品推薦やインセンティブ設計、さらにはコンテンツ生成に至るまで、その応用範囲は拡大しています。
本オーガナイズドセッションでは、実務家がAIを活用したマーケティングの実践事例や課題を共有し、研究者がマーケティング課題に対する先端の研究を普及させるための交流と議論の場を提供することを目指します。消費者行動分析、需要予測、価格決定、推薦システム、インセンティブ設計、コンテンツ生成などマーケティングに関する幅広いテーマに関する実務家、研究者からの発表を募集します。
OS-47 : AIと人のインタラクションによる価値創造とエンパワーメント
オーガナイザ : 熊谷 雄介、森 正弥(博報堂DYホールディングス)、平手 勇宇氏(楽天技術研究所東京)、益子 宗氏(芝浦工大)、川原 圭博氏 (東京大学)
概要 : 本セッションでは、AIと人間のインタラクションによる価値創造とエンパワーメントに焦点を当て、人間中心のアプローチに基づいた研究や実践を探求します。AIとのインタラクションが生み出す人間能力の拡張や意思決定の支援など、新たな価値をAIと共創する可能性を追求するとともに、生活者の視点に立った技術研究とその社会への活用を目指します。本セッションを通じて、AIと人間の協調による新たな価値創造の可能性を探り、人間中心の視点からAI技術の発展と社会実装を議論する場を提供し、AIがより豊かで持続可能な社会の実現に貢献することを目的とします。
■ 口頭発表
タイトル : 購買間隔を考慮したバスケット予測モデル: 探索とリピート購買の推薦
著者 : 牛尾 貴志、加藤 博司、藤原 晴雄(株式会社博報堂DYホールディングス)、町田 尚基、吉野 文貴(株式会社アイズファクトリー)
概要 : 本研究では、ユーザの購買履歴をもとに将来の買い物かご(バスケット)を予測するタスクに取り組みました。従来手法では、バスケット間の時間間隔や探索的購買とリピート購買の行動特性の違いが十分に考慮されていませんでした。そこで本研究では、変分オートエンコーダによるバスケット表現とトランスフォーマーを統合した新たなモデルを提案しました。提案手法では、(1) 各バスケットの購買間隔を自己注意機構に組み込むことで時間的な依存関係をモデル化し、(2) バスケット内の商品を「探索」と「リピート」に分けて表現することで、より良い推薦を行います。 実データを用いた実験の結果、特に探索商品を明示的に分けて扱ったモデルでは、探索的な新商品推薦の精度が顕著に改善しました。
タイトル : インフルエンサーがエコーチェンバーに及ぼす影響分析
著者 : 堀川 祐生、鳥海 不二夫(東京大学)、加藤 博司、猪谷 誠一、岩井 千妃呂(株式会社博報堂DYホールディングス)
概要 : ソーシャルメディア上での情報流通や意見形成において、インフルエンサーは多くのユーザに影響を及ぼします。しかしインフルエンサーから発信される情報はソーシャルメディアのアルゴリズムによりユーザの興味関心をベースにフィルタリングされて配信されることで、外部の意見の受容が制限されるエコーチェンバー現象を起こす可能性もあります。本研究は、インフルエンサーの影響力に着目して、インフルエンサーとエコーチェンバー現象の関係を明らかにすることを目的とします。その結果、インフルエンサーの情報発信の内容類似度が高いほど、エコーチェンバー性の高いコミュニティが形成される傾向、エコーチェンバー性の高いコミュニティに所属するユーザは他のユーザよりも類似した情報発信をする傾向を発見しました。
タイトル : Vision-Language Model における性別に対する嗜好の偏り
著者 : 熊谷 雄介 (株式会社博報堂DYホールディングス)、馬場 雪乃(東京大学)
概要 : Vision-Language Model (VLM) は大規模な画像・言語コーパスから学習された視覚と言語を同時に扱う基盤モデルです。本研究では属性付き顔画像の一対比較実験を通じて VLM における嗜好の偏りの解明に取り組みました。結果、VLM は 男性と女性など複数の属性ペアにて有意に一方を好むことが分かりました。さらなる検証の結果、VLM が画像を認識する時点ではバイアスを持たない可能性があることや、VLM の言語処理部に男性より女性を美しいと判定する強いバイアスを持つことを明らかにしました。
タイトル : Large Language Models における意図的な性能制限
著者 : 岩井 皓暉、熊谷 雄介 (株式会社博報堂DYホールディングス)、馬場 雪乃(東京大学)
概要 : 大規模言語モデル(LLM)は指示文に応じて未知のタスクに高い精度を発揮したり、その振る舞いを柔軟に変えたりするという性質を持ちます。この性質を利用し、LLM に仮想的な人物や性格を付与して振る舞わせる取り組みがあります。その際、LLM の性能を意図的に制限できる(例えば、幼稚園児が積分の計算ができないようにするなど)ならば、構築した仮想的な人物がより確からしくなるだろうと考え、LLM の意図的な性能低下に取り組みました。日本語ベンチマークを用いた複数タスクによる実験の結果、指示文のみでは LLM の下流タスクにおける性能の低下は困難であることを明らかにしました。また、性能低下の計測に必要なベンチマークについても検討しました。
タイトル: LLMマルチエージェントシステムにおけるエージェント評価手法に関する研究
著者 : 田中 孝明 (株式会社博報堂テクノロジーズ)
共著者:畠山 卓也、吉田 隆史、石川 信行 (株式会社博報堂テクノロジーズ)、大坪 舜氏、林 祐輝氏、伊藤 孝太郎氏(株式会社NTTデータ数理システム)
概要 : 大規模言語モデル(LLM)マルチエージェントシステムは、 複数のAIエージェントが協力や競争を通じて複雑なタスクを達成するシステムです。これらのシステムは、質疑応答の正答率向上、現実世界の相互作用のシミュレーション、ソフトウェア開発の効率化など、多岐にわたる応用が研究されています。しかし、マルチエージェントシステムにおける各エージェントの有効性を評価するための手法については、十分に研究が進んでいません。本研究では我々が開発したNomatica(ノーマティカ)※というLLMマルチエージェントシステムを用いて、フリーディスカッションやアイディエーション、レビューセッションなどのタスク実行時に各エージェントの有効性を評価する手法を検討し、評価を行いました。評価においては、特にRAG(Retrieval Augmented Generation)技術を利用したRAGエージェントの有用性に着目しました。評価の結果RAGエージェント及び特定用途のエージェントの活用がシステム全体の性能向上に寄与することが示され、エージェント評価手法の開発における示唆を得ました。
※ Nomatica(ノーマティカ):https://www.nomatica.hakuhodo-technologies.co.jp/
タイトル : 広告代理店視点に基づくスポンサードサーチ広告最適化へのMPPIアプローチ
著者 : 川上 孝介(株式会社博報堂テクノロジーズ)
概要 : 本研究では、広告代理店の視点から、スポンサードサーチ広告における入札額最適化を動的に実現するため、モデル予測制御手法の一つであるMPPI(Model Predictive Path Integral)ベースのアルゴリズムを提案します。広告代理店では、日々のインプレッション数、クリック数、コンバージョン数、費用といった限られた情報を基に意思決定を行う必要がある一方、従来手法(例:PID制御)は単純で実装が容易であるものの、動的環境やノイズへの対応に課題があります。本研究では、広告ごとの成果予測結果を基に最適入札戦略を導出し、その戦略の未知のパラメータに対してMPPIを適用しました。MPPIの実行には、意思決定に対する複数のシナリオ評価が必要となりますが、過去の実績データから構築した予測モデルを用いることでこのプロセスを実現しました。MPPIを適用することで、確率的サンプリングによる未来シナリオ評価を行い、将来動的な変化に対しても柔軟に対応可能な入札額戦略を実現できました。また、シミュレーションを通じて、提案手法が目標KPIの達成と費用対効果の最適化を、限られた情報下でも柔軟かつ効果的に実現可能であることを確認しました。
タイトル : 広告デザイン改善のための代替案生成手法
著者 : 徳弘 直生(東京科学大学)、石塚 湖太、奥田 悠太(株式会社博報堂テクノロジーズ)、市瀬 龍太郎(東京科学大学)
概要 : 広告代理店におけるデザイナーは、広告デザインを作成した際に、改善の方向性を見出すことが難しく、広告を効率的に作成しづらいという課題があります。ここで、作成したデザインに対して複数の代替案を提示することができれば、デザイナーはそれらと自身のデザインを比較検討することで、効果的なデザイン要素や配色を把握しやすくなり、より高品質な広告を作成できるようになります。本研究では、過去の広告データを学習したモデルを用いて、新たに作成された広告に対し具体的な改善の示唆を与える手法を提案します。まず、広告画像から一番目立つビジュアルや広告文などの各要素の色や配置を特徴量として抽出し、決定木モデルを学習します。その後、新しい広告に対しては、予測に対する各特徴量の重要度を計算できるTree SHAPを適用し、改善が必要な特徴量を同定します。ここで同定した箇所に対してヒューリスティックな変換を行うことによって、代替案となる広告デザインを複数生成します。本手法により生成された広告デザインは、デザイナーが改善の指針を得ることができる代替案として機能することがわかりました。
<2025年度人工知能学会(第39回)概要>
日時:2025年5月27日(火)~30日(金)
主催:一般社団法人 人工知能学会
会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
参加には、参加登録用ウェブサイトからの登録が必要です(有料)
JSAI2025公式サイト:https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2025/
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