優良工場表彰制度「第13回 2025 GOOD FACTORY賞」決定について ~中国・ベトナム・日本の3か国より5工場/事業所を表彰~
一般社団法人日本能率協会(JMA、会長:中村正己)は、日本およびアジア地域に進出している製造業の生産性や品質の向上、改善活動に成果をあげた工場を表彰する「GOOD FACTORY賞」を2011年に創設し、優秀事例を紹介する活動を行っています。
このたび第13回の受賞企業として、花王、東芝産業機器アジア社、BASFジャパン、パナソニックホールディングス、フジテックの5工場/事業所を決定いたしました。
「GOOD FACTORY賞」は、地域・従業員との強い結びつきや工場全体の総合的な改善・強化を達成し、他社の範となるグローバルな視点での優秀なモデルを対象としています。特に、生産性向上や品質向上に向けたプロセス、成功要因、現場の知恵、従業員の意識改革、さらには社会的貢献に焦点を当て、日本製造業の模範として顕彰するものです。
GOOD FACTORY賞審査委員会(委員長:日本大学 理工学部 シニアリサーチフェロー 柿崎 隆夫氏)の書類審査・現地審査を経て、以下の企業に決定いたしました。
GOOD FACTORY賞は、各工場にて行われている改革活動とその成果を、「しくみ」「運営」「効果性」「マネジメントの基盤」の4つの視点から審査し、各部門で表彰いたします。
なお次回は、2025年1月より第14回の応募を開始し、2026年3月に受賞講演会を予定しています。
以上
「GOOD FACTORY賞」とは
1.賞の目的
日本能率協会は1942年の設立以来、日本のものづくり力を強化すべく、企業研修や資格試験、シンポジウムなどさまざまな取り組みを実施してまいりました。2011年に、グローバルなものづくりを支援する公益目的事業として優良工場表彰制度「GOOD FACTORY賞」を創設しました。
本賞は、日本および中国・アジア地域で、工場の生産性向上、品質向上をはじめさまざまな体質革新活動へ取り組まれている事例に着目し、そのプロセスや成功要因、現場の知恵、働く方々の意識改革、社会的貢献などの内容を幅広く取り上げ、その成果を日本製造業の範として顕彰するものです。
2.応募対象
中国・アジア地域に進出している日系現地企業・工場ならびに日本国内工場(日系現地企業の場合、日本企業の出資比率は概ね40%以上を想定)を応募対象とします。
3.受賞要件および受賞基準
応募されたテーマの活動およびその成果によって、工場・事業所が総合的に改善・強化されたり、地域・従業員との強い結びつきができるなどして、中国・アジア地域ならびに日本のものづくりの優秀なモデルとして他社の範となる工場・事業所を以下の4部門で表彰します。
■ものづくりプロセス革新賞:
IE(Industrial Engineering)改善、ITの適用、品質保証、工程改善、SCM(Supply Chain Management)改善、JIT(Just In Time)、調達革新、物流革新、自動化など、工場・事業所の“ものづくりプロセス”が、総合的に改善・強化されている事例
■ものづくり人材育成貢献賞:
全員参加の改善活動、技能伝承、能力開発への取り組み、従業員育成など、質の高いものづくりを実現するための“人材育成”に組織的に取り組まれている事例
■ものづくりCSR貢献賞:
環境対応、省エネ、福利厚生、地域社会との結びつきなど、ものづくりを側面から支える“CSR”(Corporate Social Responsibility)に積極的に取り組まれている事例
■ファクトリーマネジメント賞:
上記3賞が表彰する個別内容ではなく、総合的に“工場運営”のレベルが高く、全体にバランスのとれた“工場運営”の良さ、といった事例
4.審査
審査委員会は、東京工業大学 名誉教授 伊藤 謙治 氏を委員長に、学識経験者、経営コンサルタントによって構成されます。受賞企業は書類審査・現地審査を通して決定し、応募企業には、審査所見を
フィードバックします。
一次審査(書類審査): 応募企業(事業所)から提出された受審資料に基づく審査
二次審査(現地審査): 応募企業(事業所)の幹部・関係者との面接および事実確認
最終審査 : 二次審査の結果を踏まえて、審査委員会で最終判定
5.審査の視点
審査は改善・改革活動の「しくみ」「運営」「効果性」「マネジメントの基盤」の4つの視点から行われます。対象となる活動がこの4つの視点全てを満たしているか、または特定の項目に優れているかを審査いたします。
一般社団法人日本能率協会「第13回 2025 GOOD FACTORY賞」
審査委員会
(敬称略)
委員長 日本大学 理工学部シニアリサーチフェロー
柿崎 隆夫 など
一般社団法人日本能率協会「2025年(第13回)GOOD FACTORY賞」
受賞企業(1)
企業名:花王株式会社
川崎工場
受賞部門: ものづくりプロセス革新賞
テーマ: 市場の変化に追随した『高品質・高効率・低環境負荷』工場の実現
◆評価ポイント
◆受賞理由
花王・川崎工場は 1962 年に設立された花王の中で 4番目に操業年数が長い工場であり、東日本や首都圏の市場に 家庭用品を生産・供給する基幹工場として、花王グループ内で重要な役割を担っている。粉未タイプの洗剤から液体タイプの洗剤への移行、 1回替えから大容量複数回替えパウチへの移行 、SKU 数の増加、消費者ニーズの多様化などの市場環境の変化により、それに追従すべく高品質、高効率、低環境負荷の生産工程を構築したことは賞賛に値する。
特に、さまざまな部署が協力しあい省人化・省力化を実現した生産プロセス・イノベーション、ESG視点を取り入れ た「よきモノづくり」は同工場の特徴と思われ、 ESG あるいは CSR のレベルはかなり高いと評価できる。
実際に工場の生産性・省人化・エネルギー使用量・CO2 削減量などにおいて大きな効果を上げていること、特に人生産性では花王の中でもナンバー 1であり、川崎で立ち上げた技術や商品が世界の工場で展開される存在となっている。
特に以下の取り組みや活動がポイントであり、同社の工場マネジメントの重要な点として評価に値するものである。
1.顧客ニーズ対応と低コスト化
・既存設備を活用し敷地拡張をせず、低コストで設備開発を実現。
2.配合プロセスの革新
・生産時間短縮や洗浄廃液削減により、生産能力を向上(1.7倍)。
3.充填・包装ラインの革新
・パウチ包装材の自動化を実現し、省人化と効率化を達成。
4.マネジメント体系と部門間連携
・OKRによる目標管理や品質保証活動を活用し、再発防止と全体最適化を推進。
5.人材育成の充実
・習熟度管理や計画的教育訓練を実施し、プロセス改善スキルを向上。
6.ESG視点での活動
・エネルギー削減や地域連携を通じた環境貢献を推進。
これらの活動は、花王グループ内でトップの生産性を達成し、技術や商品が他工場にも展開される点で模範的です。他社にも参考価値があり、GOOD FACTORY賞に相応しいと評価された。
《 事業所概要 (敬称略 ) 》
・主要事業: 主に洗濯用洗剤・住居用洗剤・全身洗浄・シャンプー・リンスなどの家庭用品の製造
・設立年月日: 1962 年 10 月
・従業員数: 272 名( 2023 年 12 月 31 日 現在)
・所在地: 〒210 -0862 神奈川県川崎市川崎区浮島町 1-2
・代表者: 花王株式会社 川崎工場 工場長古河崎耕志
受賞企業(2)
企業名:東芝産業機器アジア社 Toshiba Industrial Products Asia Co., Ltd.
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テーマ:「常に改善&常に前進(Luôn cải tiến & hướng về phía trước)」
失敗と反省から学びを得て、チーム一丸となって技能・知識に磨きをかける
◆受賞理由
東芝産業機器アジア社は、2008年の設立以来、ローカル社員の主体性を重視したマネジメント改革を通じて、ベトナムにおける産業用高効率モータ製造の中心的存在となっている。
特に、2015年以降のクレーム増加やコロナ禍といった困難を契機に、ローカルメンバーに権限移譲を進めた「ローカルファースト」マネジメントの導入が奏功し、品質向上、生産リードタイム短縮、経常利益の増加、労働災害削減など顕著な成果を挙げた。この結果、同社のマネジメント手法は日本の本社からも注目を集め、評価された。
特に評価できる点として以下をあげる。
ローカル社員の自律化と主体的な工場運営
・約1,000名の従業員に対し、日本人スタッフ7名での支援体制を整備。ベトナム人副社長が実務リーダーシップを発揮し、自律型マネジメントを推進。
・2030ビジョンや中期計画の策定をローカルマネジャーが主導し、事業継続への主体性を強化。
プロセス改善とDXの活用
・自社開発の基幹業務システムなど独自のDX基盤を構築し、財務、品質、物流、人事などの全プロセスを網羅。
・改善活動を推進する仕組みを整え、ローカルメンバーの主体的な取り組みを支援。
品質向上への挑戦
・「日本品質の10倍」を目標に掲げ、オンラインチェックシステムや塗装ロボット導入を通じて品質改善を実現。
・計画的な教育の実施や、現場での実践により、品質意識と実務スキルの向上を推進。
人材育成とモチベーション向上策
・多能工認定制度や奨励金、技能競技会を通じた技能向上。
・技能訓練道場の設置や受賞者をインストラクターに起用する仕組みで、継続的な教育とモチベーションの向上を実現。
「両利き経営」の実現
・産業用高効率モータに加え、車載用発電機の生産体制を構築し、新規事業分野の成長を推進。
これらの成果は、他社の模範となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に相応しいものと高く評価された
《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 主に産業用高効率モータの開発/設計/製造/販売、車載用発電機モータの製造/販売、産業用インバータの販売
・設立年月日: 2008年12月22日
・従業員数: 1,017名(2024年3月末)
・所在地: ベトナム社会主義共和国ドンナイ省ビエンホア市 アマタ工業団地
・代表者: 東芝産業機器アジア社(Toshiba Industrial Products Asia Co., Ltd.)
取締役社長(General Director) 山中 元氏
受賞企業(3)
企業名:BASFジャパン株式会社 六呂見事業所
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テーマ:
六呂見事業所製造実力向上に向けた‘改善プロジェクト’の遂行と人材育成への取り組み
◆受賞理由
BASFジャパン六呂見事業所は、BASFディスパージョン&レジン事業部のアジア地域で、60年という最も長い歴史を持つディスパージョン製造拠点である。同事業所は絶えず高い安全・環境・品質基準を満たすために尽力し、ISO 9001、14001の認証や、バイオマスバランス・アプローチに基づく低炭素型アクリル系ディスパージョンの製造工場としてREDCert2の認証を受けている。
一方で、近年、顧客要望に応えるための生産性向上の課題、温室効果ガス削減などの環境目標の達成、ベテランと中堅・若手社員間の世代交代加速化などの複合的な課題に直面している。これに対し、「全員参加型改善文化の定着」を目標に掲げ、体系的な改善マネジメントを導入。
コミュニケーション改善を基盤に、部門間や日勤スタッフと交替班間のギャップ解消を図り、モチベーション向上施策を実施することで、組織全体で課題解決に取り組む体制を築きあげた。
特に評価できる点として、
ミニマムな仕組みと改善推進
・「生産効率の改善」「CSR」「人材育成」を段階的な目標とし、無理なく継続可能な
改善活動を計画的に推進。
・改善体制構築から意識変革までの段階的ステップを明確化。
コミュニケーションギャップの解消
・部門間や日勤スタッフと交替班間の垣根を取り払い、問題提起と対応の連携を強化。
改善文化の浸透
・わかりやすい行動指針(例:「楽しくやっているか」)を掲げ、全員参加型改善活動推進。
・上司が部下の提案を丁寧に取り扱う姿勢が、信頼とモチベーション向上に寄与。
モチベーション向上策
・発言→対応→称賛のサイクルを確立し、安心して意見を共有できる環境を構築。
・業務効率化やエネルギー削減による成果を共有し、全体の士気を高める。
持続可能な改善活動
・後継者育成を重視し、改善のノウハウを次世代に継承。
・無理のない範囲で事業所主導の教育プログラムを実施。
以上の活動により、BASFジャパン六呂見事業所はコミュニケーションを基盤とした全員参加型改善文化を成功させ、組織全体の競争力向上に貢献している。
これらの成果は、他社の模範となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に相応しいものと高く評価された。
《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 建築用塗料や粘接着剤向けのアクリル系ディスパージョンAcronal®(アクロナール)と、印刷インキや包装材などの機能性コーティング剤に使用される水系アクリル系ポリマーJoncryl®(ジョンクリル)の製造・販売
・設立年: 1962年
・従業員数: 非公開
・所在地: 〒510-0881 三重県四日市市六呂見653-2
・代表者: BASFジャパン株式会社 ディスパージョン&レジン事業部
六呂見事業所・事業所長 澤田 宏一郎
受賞企業(4)
企業名:パナソニックホールディングス株式会社 杭州松下家用電気有限公司
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テーマ:お客様視点のOPEX活動で安定した増収増益体質を構築
◆受賞理由
杭州松下家用電気有限公司は、競争力低下に直面しつつも、現地化と徹底的なベンチマーキングに基づく構造改革を推進することで、収益改善、固定費削減、従業員満足度向上などの成果を達成した。
同社は、トップの現地人起用をはじめ、ECM改革、省人化・自動化、生産性向上、SCM改革、人材育成といった多岐にわたる取り組みを一体的に進め、その結果、国内販売額と利益が過去最高を記録し、主力製品である洗濯機のシェアでは外資系メーカーで首位を獲得した。
これらの活動は、優れたファクトリーマネジメントの好例であり、GOOD FACTORY賞にふさわしい取り組みと評価されます。
特に評価できる点として、
現地化の推進
・会社のトップ(総経理)、各部門責任者に現地人材を起用し、現地経営の効率化とモチベーション向上を実現。
ベンチマーキングに基づく構造改革
・組織改革で部門や課を削減し、固定費削減と意思決定の迅速化を実現。
・チャイナコスト活動を通じ、競合製品の徹底分析に基づいたコスト最適化を推進。
ECM改革と技術革新
・モジュール設計の推進を図り、モジュール組み合わせにより製品展開のスピードアップを実現
・CAE解析を導入する事により試作・設計検証時間を減らし、設計効率とリードタイムを改善。
SCM改革
・生販サイクルの短縮と同時に生産を確定させる事により、変化に追従出来る業務プロセスへ変革
・調達面においてもJIT納入比率を引き上げ、在庫コストを削減。
工場合理化(省人化・自動化の推進、継続した現場改善の仕組み)
・自動化設備を現調化することで投資効果を高め、人生産性を向上。増産も視野に入れ積極的投資を実施。
・通常生産における問題・課題解決の為、大部屋活動で見える化を行い、全体効率を高める。
人材育成と成果主義の導入
・成果主義を導入し、チームのモチベーションを高める仕組みを構築。定期的な従業員満足度調査(EOS)で、職場改善とエンゲージメント向上を図る。
以上の取り組みから現地市場での競争優位性を確立し、効率性と収益性の両面で成果を上げている。
同社の成功事例は、他社にも応用可能な先進的なマネジメントモデルを提供する。
これらの成果は、他社の模範となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に相応しいものと高く評価された。
《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 中国国内向け衣類洗濯機、乾燥機
・設立年: 1962年
・従業員数: 1,719人(2024年3月末)
・所在地: 杭州市経済技術開発区松乔街6号
・代表者: パナソニックホールディングス株式会社 杭州松下家用電気有限公司
副総経理 国正 芳治
受賞企業(5)
企業名:フジテック株式会社 生産本部 ビッグステップ製作所
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テーマ:「変えてはならないもの」を大切にしつつ、自発的に「変えること」に挑戦する製作所改革
◆受賞理由
フジテック株式会社ビッグステップ製作所は、国内外の競争が激しいエスカレータ事業において、国内トップクラスのシェアを達成するなど、優れた成果を上げている。
同事業所は「不易流行」の理念のもと、顧客要望を徹底的に満たすものづくり改革と、従業員の自発性を育む風土づくりを推進。
また、徹底した安全と品質管理の推進をはじめ、地域の採用難を克服する独自の取り組みや、環境負荷低減を目指す活動進めています。その結果、労働災害ゼロ、離職者ゼロを達成し、従業員満足度や商品品質の向上を実現した。これらの包括的な活動は他社の模範となり、GOOD FACTORY賞にふさわしいものと評価した。
特に評価できる点として、
事業戦略と地域特性を活かした改革
・顧客要望に応じた特殊仕様商品の内製化を推進し、シェア拡大を実現。
・採用難に対応するため、事業所PRや従業員の働きがい向上策を導入。
変革への挑戦
・年2サイクルのものづくり強化活動を通じ、効率化、安全性、品質向上の目標を各職場で共有し、達成感を醸成。
・特許取得の仕組み化や自動化推進で技術力を向上させ、商品競争力を強化。
・社内外の視野を広げるため、外部事例の学習や従業員満足度向上のための仕掛け。
(例:グッジョブメッセージ)を導入。
安全と品質の徹底
・安全意識向上の見える化や訓練、調達部品の品質管理を強化。
・これらにより製品クレームを4年間で1/10に削減。
サステナビリティと地域連携
・バイオディーゼル燃料導入や電力監視システムの内製化など環境負荷低減活動を実施。
・中学生の就業体験や学習ノートの配布、高専などへの出張講義など、地域連携活動で採用基盤を強化。
以上の取り組みは、従業員、顧客、地域を含む幅広いステークホルダーにメリットを提供する、持続可能な優れたファクトリーマネジメントを実現されており、これらの成果は、他社の模範となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に相応しいものと高く評価された
《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: エスカレータ、動く歩道の研究開発・製造
・設立年月日: 1989年3月2日
・従業員数: 177名(2024年5月1日)
・所在地: 兵庫県豊岡市日高町宵田180番地
・代表者: フジテック株式会社 生産本部 ビッグステップ製作所 製作所長 中嶋 康弘
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