【第69回青少年読書感想文全国コンクール課題図書選定】ノルウェーの女性昆虫学者が誘う、奇妙で美しく風変わりな虫たちの世界『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』好評発売中!
辰巳出版の翻訳書レーベル&booksより好評発売中のネイチャー・ノンフィクション『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』(アンヌ・スヴェルトルップ=ティーゲソン 著、小林玲子 訳、丸山宗利 監修)が第69回 青少年読書感想文全国コンクール 高等学校の部 課題図書に選定された。
ノルウェーで活躍する女性昆虫学者が、昆虫の体の仕組みや多様性、厳しい生存競争そして私たちヒトとの深い関係を綴ったネイチャー・ノンフィクション。
9つの章から成る本書は、前半では昆虫そのものの話が綴られている。
第1章では昆虫の体の仕組みや種としての多様性、第2章ではいささか変わった繁殖について、第3章では昆虫同士やほかの生き物との食物連鎖、第4章では植物との共生について。
昆虫をはじめとした生き物たちが、自分の遺伝子を残すためにいかに熾烈な競争を繰り広げているか、またいかような手段でたがいに共存しているかを述べる。
そして後半では、私たちヒトと昆虫の関わりをとりあげる。
第5章ではヒトの食糧生産に昆虫はどう貢献しているか、第6章では都市をふくむ地球上の環境を昆虫はどう清潔に保っているか、第7章では蜂蜜から抗生物質まで、ヒトの暮らしに必要なものを昆虫はどうもたらしているか、第8章では昆虫がカギを握る最新の研究を、そして最後の第9章では、昆虫が直面している危機をとりあげながら、その暮らしを守るためにヒトに何ができるのかを考える。
〈本文より一部紹介〉
どこかで見た顔
長いこと、仲間の顔が認識できるのは哺乳類と鳥類だけだとされていた。個体間の関係を築く能力は、その二種類にしかないというわけだ。ところがある実験によってその幻想は打ちくだかれる。探求心旺盛な研究者たちが、アメリカに生息するアシナガバチの一種に、模型飛行機用の塗料でフェイスペイントをほどこすという実験をしたのだ。
アシナガバチの社会は厳格な階級制で、上下関係をきちんと理解しなければ生きていけない。顔を見分けるのに長けているのも、そのせいだろう。元来の模様を消すようにフェイスペイントをほどこされて容貌が変わってしまった個体は、巣に戻ると仲間たちから手荒に扱われた。仲間たちはペイントされた個体のことを、じつはよく知る相手だと認識できず、そのせいで混乱したようだ。研究者たちは、比較対照として別のアシナガバチの顔にもペイントし、その時は顔の模様を変えないように注意した。すると、巣に戻ったときに仲間たちに混乱は見られなかった。
さらに興味深いことに、数時間が過ぎると、仲間たちはフェイスペイントされた個体の新しい顔を受けいれた。時間が経つと緊張はやわらぎ、すべて元通りになった。仲間たちはペイントされた個体のことを、“お化粧”が新しいだけでよく知っている相手だと認識したのだ。こうして、アシナガバチは容貌をもとにコミュニティ内の個体を認識する能力をもっていることがわかった。
この種の創意工夫あふれる研究に触れると、「顔の認識は結局どのようにおこなわれているのか」という基本的な疑問に立ちかえらざるを得ない。ごく小さな脳しかもたない生きものが、カリフラワー並みのサイズの脳をもつヒトと同じ認知作業に成功しているのだ。昆虫の顔認識プロセスを深く追求したら、相貌失認(顔が識別できない脳障害)の人を救うこともできるかもしれない。
〈第1章 小さな体は高性能〉
自然界のデリバリーサービス
金曜の夕方、一週間の疲れを引きずりながら買いものに行って週末用の食材を買いそろえるのは、わたしにとって苦行だ。そんなとき心から昆虫になりたいと思う。オーストラリアに生息する大きくつやつやした緑色のキリギリスなら、歌をうたうだけで餌が自分のところまで飛んできてくれるのに。
キリギリスの歌は、ロミオがバルコニー下からジュリエットに歌うセレナーデに似ている。この種のキリギリスは、交尾を求める雌のセミが出す音を真似ることで雄のセミをおびき寄せるのだ。雌の歌だと思ってやってきた雄は、目当ての雌の代わりに、空腹の大きな敵と対面する羽目になる。わが身を餌としてデリバリーしてしまった、と気づいてももう遅い。
このように捕食者や寄生虫が、別の生きもののシグナルを真似て相手をだまし討ちにすることを「攻撃的擬態」という。
〈第3章 食べて、食べられて〉
ハエもやけ酒を飲む
腐敗したものやアルコールをふくむものにたかるというハエの最も不快な習性についても、有効活用の道はある。「ショウジョウバエのアルコール依存症」はまじめな研究の一分野だ。たとえば酔った雄のハエは、雌にまとわりついてしきりと交尾を迫るが、うまくいく確率は低い。求愛にしくじった雄は、首尾よくやってのけた仲間を横目にアルコールを摂取して傷心をまぎらわすともいわれている。どこかヒトに似ていて興味深い。
ショウジョウバエは、がんやパーキンソン病、不眠や時差ぼけなどの研究にも貢献している。こんどキッチンでハエを見つけたら、悪態をつく代わりに、生理学や医学の研究への多大な貢献に礼を言ってもいいのではないだろうか?
〈第8章 昆虫が与えてくれるもの〉
CONTENTS
はじめに
序章 地球は昆虫の星である
第 1 章 小さな体は高性能 ―― 体の仕組みと機能
第 2 章 昆虫たちの“婚活"事情 ―― 生殖と繁殖
第 3 章 食べて、食べられて ―― 昆虫と食物連鎖
第 4 章 昆虫 VS 植物 ―― 植物との共進化
第 5 章 ヒトの食卓と昆虫 ―― 蜂蜜から昆虫食まで
第 6 章 自然界の“掃除人" ―― 死骸と糞の分解
第 7 章 産業を支える昆虫たち ―― ヒトによる昆虫利用
第 8 章 昆虫が与えてくれるもの ―― バイオミミクリー、医学、セラピー
第 9 章 昆虫とヒトの未来 ―― 環境と多様性を守るために
おわりに
謝辞
監修者あとがき
好評の声続々!
出版社が掲載する発売前やイチオシの作品をデジタル版で読めるサービスNetGallyでも、本書への感想が多数届いている。
「昆虫は見るのも触るのも苦手。でも面白そう、知りたい、と思いこちらの作品を読ませていただいた。結果、とても面白くて驚いた。知らないことを知ることはこんなにも楽しいのかと改めて感じさせてくれた一冊」(レビュアー)
「昆虫について考えるきっかけになります」(教育関係者)
「昆虫の体の仕組みから地球への貢献、珍しい昆虫に関するトリビアなど昆虫好きな人にとっては貴重な本である。一方私のような昆虫苦手の人にとっても、環境を守るという意味で昆虫世界が与える大きな価値の再発見があった」(レビュアー)
「昆虫の凄さ、おもしろさが理路整然と、滔々と語られる。しかし、とんでもなく真面目な顔で発せられるユーモアが散りばめられた止むことのない昆虫愛にわたしは魅了された」(レビュアー)
「昆虫、身近でも嫌悪感が半端なく。でも本書を読んで地球にとってどれほど昆虫が大切なのかを知ることができました」(レビュアー)
「虫は超苦手でしたが、うちの子どもが虫が大好きで、昆虫図鑑を一緒に読んだり、虫捕りに行っている間に、少しずつ慣れてきました。
自然が循環するためには、昆虫の働きが欠かせない。ハチミツも昆虫のおかげ作られる。魚も昆虫を食べているから存在できている。昆虫は死骸や排泄物を有機的に分解してくれる。時間をかけて根気よく。そのおかげで、栄養分を含んだ土ができ、またそこで植物が育つ。地球が守られているのは、虫様のおかげです」(レビュアー)
「「この世界には、ヒト一人につき二億匹以上の昆虫がいるともいわれる」想像もつかない数の昆虫が、この世界にはいるのだ。
それを分かりやすく、そして色んな視点から書かれていて、とても面白かった。見た目などで昆虫が苦手な人でも、楽しく読めると思います」(レビュアー)
「人間が絶滅しても世界はたぶん何も変わらないだろうが、昆虫が絶滅したら人間は生きていけないということを実感した」(レビュアー)
※『昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す』は、第69回青少年読書感想文全国コンクール課題図書選定を記念して期間限定で再公開中
第69回 青少年読書感想文全国コンクール課題図書
本書を含めた課題図書、また応募要項については下記の公式ホームページより案内中。
各書店でも特設スペースにて展開している。
読書感想文全国コンクール公式サイト
【書籍概要】
書名:昆虫の惑星 虫たちは今日も地球を回す
著者:アンヌ・ヴェルトルップ=ティーゲソン
刊行:2022 年 3 月 30 日
判型・ページ数:四六版/248 頁
定価:1,980 円(1,800円+税10%)
ISBN:978‐4‐7778‐2892₋0
Amazon:
http://www.amazon.co.jp/dp/4777828921
楽天ブックス:
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