大学生と小中学生が作った防災カルタ、ルワンダ2地域で実践――千葉商科大学発「地域と世界を往復する学び」
Kibagabagaの学校とMiyoveの地域住民が参加。市川・松戸で生まれた教材を世界で検証し、成果を地域へ還元する大学連携型CoRe Loop
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(所在地:千葉県松戸市、代表:中村雄一)は、千葉商科大学の学生と松戸市内の小中学生が共同制作した「PEACE 防災カルタ」を、2026年8月、ルワンダ共和国のKibagabaga Primary SchoolとMiyove地区で活用しました。

この防災カルタは、2026年7月22日に千葉商科大学で開催した「PEACE 防災カルタ2026 in 千葉商科大学」において制作されたものです。
大学生、小中学生、大学教員、NPO関係者が同じテーブルを囲み、「災害時に、子どもや日本語を母語としない人にも伝わる言葉とは何か」「一枚の絵で、命を守る行動をどう表現するか」を考え、読み札と絵札を形にしました。
完成から約2週間後、カルタはルワンダへ渡り、学校教育の場であるKibagabagaと、子どもから大人までが集まるMiyoveという性格の異なる二つの現場で活用されました。
市川・松戸で生まれた教材を海外で実際に使い、伝わり方や参加者の反応を記録し、再び大学と地域へ持ち帰る――。今回の活動は、地域での教材制作を世界の教育現場につなげる「大学連携型の社会実装」となりました。
本事業は、千葉商科大学「地域志向活動助成金制度」の助成を受けて実施する「市川・松戸 スモールケース実装:防災×多文化共生の“やさしい日本語”教材共創プロジェクト(CoRe Loop)」の一環です。

大学で作った教材を、世界の現場で確かめる
大学や地域で教材を作っても、作り手には内容が分かりやすく見える一方で、実際に初めて手に取る人に同じ意味が伝わるとは限りません。
特に災害時には、長い文章を落ち着いて読むことが難しくなります。子ども、日本語を母語としない住民、文字情報を読むことが難しい人など、受け手の年齢や言語、生活背景によって必要な情報の伝わり方も変わります。
そこで本事業では、千葉商科大学で制作した防災カルタを完成品として扱うのではなく、実際の学校や地域で使いながら改善していく「成長する教材」と位置づけています。
今回のルワンダ実践では、次の点を重視しました。
・短い言葉とイラストから、取るべき行動を想像できるか
・日本とは異なる言語・文化の中でも、絵札が対話のきっかけになるか
・子どもだけでなく、大人も参加できる教材になっているか
・学校と地域では、同じ教材の使われ方にどのような違いが生まれるか
・日本で考えた防災行動が、ルワンダの生活環境にも合っているか
大学での学びを机上の検討で終わらせず、異なる社会環境の中で使い、記録し、改善するところまで進めることが、今回の海外実装の大きな目的です。

8月6日・Kibagabaga――子どもたちが絵札を手がかりに防災を学ぶ
最初の実践は、2026年8月6日、ルワンダのKibagabaga Primary Schoolで行いました。
同校は、なかよし学園が約10年にわたり教育支援を継続してきた学校です。なかよし学園では、外部から教材を届けるだけではなく、現地の子どもたちが実際に使い、教員がその授業方法を学び、訪問後も繰り返し活用できる教育支援を重視しています。
防災カルタの授業では、子どもたちが机に並べられた絵札を見比べながら、読み札に合う一枚を探しました。日本側の子どもメンバーも授業に参加し、ルワンダの子どもたちと同じ目線でカードを渡し、遊び方を伝えました。
言葉が完全に同じでなくても、描かれた人の表情、危険を示す記号、水、食料、避難、助け合いなどのイラストが、意味を考える手がかりになります。
日本の大学生と小中学生が「誰にでも伝わるように」と考えて描いた一枚が、ルワンダの子どもたちの手に渡り、笑顔や会話、身体を使った反応を生み出しました。
これは、教材が単に海外へ「届いた」というだけではありません。市川・松戸の子どもたちや学生が考えた情報表現が、異なる教育環境で実際に使われた最初の検証です。

学校での実践から見えた「教える人を増やす」可能性
Kibagabagaでは、児童への授業に加えて、現地教員との教育ディスカッションや模範授業も行っています。
なかよし学園が帰国した後も、現地教員が防災カルタを使い、次の子どもたちへ授業を行うことができれば、一度の訪問から継続的な防災教育を生み出すことができます。
防災教材の価値は、持参した団体だけが使えることではありません。初めて教材を見る教員でも、目的と進め方を理解し、地域の実情に合わせて内容を変えながら再現できることが重要です。
千葉商科大学で制作したカルタを「教員が繰り返し使える教材」へ発展させることは、今後の重要な検証課題となります。

8月11日・Miyove――子どもの教材から、住民が地域を考える教材へ
二つ目の実践は、2026年8月11日、Miyove地区で行いました。
Kibagabagaが学校を中心とした教育実践であったのに対し、Miyoveでは子ども、保護者、地域住民、現地協力者など、年齢や立場の異なる人々が参加しました。
机に並べられた防災カルタを囲み、参加者は絵札を取りながら、災害が発生したときに必要となる行動や、平時から準備できることを確認しました。
子ども向けに作られた分かりやすい絵と短い言葉は、大人が地域の防災を話し合う際にも活用できました。カルタを取るという共通の行動があることで、年齢や立場の違いを越えて同じテーブルに参加しやすくなります。
Miyoveでの実践によって、防災カルタは「子どもが知識を学ぶ教材」だけでなく、「地域住民が一緒に命を守る方法を考える対話の道具」になり得ることが確認されました。

防災を一つの「SYSTEM」として考える
Miyoveでは、防災カルタとあわせて、社会を支える「SYSTEM(仕組み)」について考える授業を実施しました。
黒板には、次の考え方を示しました。

good system → good life
bad system → bad life
災害そのものを完全に止めることはできません。しかし、事前に危険を知ること、避難場所を決めること、情報を伝えること、子どもや高齢者を支えること、安全な水や食料を備えることなど、複数の行動が正しくつながれば、被害を減らすことができます。
道路、学校、病院、水道、通信、地域住民の助け合いも、それぞれが独立しているわけではありません。一つの機能が止まると、ほかの生活基盤にも影響が広がります。
防災は、行政や専門家だけが担うものではなく、地域に暮らす一人ひとりが関わる社会の仕組みです。
防災カルタを使って具体的な行動を学んだ後、その行動同士を「SYSTEM」として捉えることで、個人の備えから地域全体の防災へと学びを広げました。
なぜ、KibagabagaとMiyoveの二つで実施したのか
同じ教材であっても、使う場所や参加者が変われば、役割も変わります。
Kibagabaga Primary School
・主な参加者は子どもと教員
・絵札を通して防災行動に関心を持つ
・遊びながら知識を得る
・教員による授業再現を目指す
・学校教育に組み込める教材として検証する
Miyove地区
・子ども、保護者、地域住民が参加
・世代を越えて同じ教材を囲む
・地域の災害や生活環境について話し合う
・防災を地域社会の仕組みとして考える
・住民参加型の防災教育として検証する
学校と地域という異なる二つの環境で使うことで、防災カルタが「授業教材」と「地域対話の教材」の両方として機能する可能性が見えてきました。
この比較ができることも、海外へ教材を届けるだけではなく、教育効果と活用方法を検証する大学連携事業ならではの成果です。

「やさしい日本語」から、言語を越える情報デザインへ
千葉商科大学での制作時には、災害情報から誰も取り残さないため、「やさしい日本語」とイラストを重視しました。
「子どもにも伝わるか」
「日本語を母語としない人にも理解できるか」
「見た人が、具体的な行動を想像できるか」
大学生と小中学生は、こうした問いをもとに言葉を短くし、イラストの表現を工夫しました。
ルワンダでは、言語環境が日本とはさらに大きく異なります。そこで、短い言葉だけでなく、イラスト、記号、実演、表情、身体の動きなどを組み合わせながら内容を伝えました。
今回の実践は、「やさしい日本語」の教材づくりを、さらに「言語や識字力だけに依存しない情報デザイン」へ発展させる機会となりました。
この視点は、外国籍住民、子ども、高齢者、障がいのある人など、多様な人々が暮らす市川・松戸地域の防災にも還元することができます。

ルワンダでの実践が、市川・松戸の地域防災を強くする
本事業は、日本の防災知識を海外へ伝えるだけの国際協力ではありません。
ルワンダでは、洪水や土砂災害によって住宅、農地、道路、橋、水道、学校などが同時に被害を受けることがあります。地域によっては、安全な水の確保や学校教育の継続にも長期的な影響が及びます。
こうした現実から日本側が学ぶことで、災害を「避難訓練の時間だけの問題」ではなく、生活、教育、福祉、医療、交通、情報を含む地域全体の課題として捉え直すことができます。
ルワンダの参加者がどの絵札に注目したのか、どの表現が伝わりやすかったのか、どの行動が現地の生活に合わなかったのかを市川・松戸へ持ち帰ることで、地域で使う防災教材もより分かりやすく、実践的なものへ改善できます。
世界での実践が、日本の地域防災を育てる。この双方向性が、本事業の重要な特徴です。

千葉商科大学の助成が実現した「実践・記録・還元」
千葉商科大学の「地域志向活動助成金制度」は、地域を志向した教育研究と社会貢献に資する活動を支援し、大学教員・学生と地域の活動主体が連携することを重視しています。
今回のプロジェクトでは、千葉商科大学が、大学生、小中学生、教員、NPOをつなぐ地域連携の拠点となりました。
大学生は地域課題について調べ、小中学生の意見を聞きながら教材を制作する。NPOは国内外の実践経験を提供し、完成した教材を海外へ運び、異なる社会環境で活用する。海外で得た記録を大学と地域へ戻し、次の教材改善へつなげる。
この一連の流れによって、助成事業は一日のイベントや一度の教材制作にとどまらず、「地域課題を学ぶ」「教材をつくる」「社会で使う」「成果を検証する」「地域へ還元する」という継続的な学びへ発展しました。
千葉商科大学の助成によって形成された連携基盤が、市川・松戸からルワンダへ広がり、再び地域へ戻る社会実装の循環を可能にしています。
千葉商科大学「地域志向活動助成金制度」
https://www.cuc.ac.jp/news/2025/katsudo2026.html

「地域でつくり、世界で試し、地域へ戻す」CoRe Loop
本事業では、次の循環を実践しています。
1.地域で課題を知る
大学生、小中学生、教員、NPOが、市川・松戸地域の防災と多文化共生について学ぶ。
2.地域で教材をつくる
やさしい言葉とイラストを用いて、世代を越えて防災カルタを共同制作する。
3.世界で使う
Kibagabagaの学校とMiyoveの地域で、実際に教材を活用する。
4.異なる現場を比較する
子ども中心の学校教育と、多世代が参加する地域教育における使われ方の違いを確認する。
5.反応を地域へ戻す
写真、映像、実施記録、現地で見えた課題を、千葉商科大学と市川・松戸の参加者へ届ける。
6.教材を改善する
言葉、イラスト、授業方法を見直し、多文化・多世代に対応できる地域防災教材へ発展させる。
この循環によって、地域活動は世界とつながり、世界で得た知見が地域の新たな価値になります。

千葉商科大学での約束が、ルワンダで実現
7月22日に千葉商科大学で防災カルタを制作した参加者からは、「今回の防災カルタを、もっとたくさんの人に広めたい」「世界に向けてアクションを起こすことを体験できた」「もっと世界のことが知りたくなった」という声が寄せられていました。
それから約2週間後、参加者が描いたカードは、実際にルワンダの子どもや地域住民の手に渡りました。
「地域から世界へ届ける」と掲げた計画が、具体的な行動として実現したことになります。
次は、ルワンダで生まれた反応を制作者へ戻す段階です。自分が描いた一枚が、世界のどこで、誰に、どのように使われたのかを知ることは、大学生や小中学生にとって、学びが社会とつながったことを実感する機会になります。

なかよし学園プロジェクト代表・中村雄一 コメント
大学で作った教材を、大学の中だけで完成させないことに、今回のプロジェクトの大きな意味があります。
千葉商科大学では、大学生と小中学生が対等な立場で話し合い、誰かの命を守るための言葉と絵を考えました。そのカルタをルワンダへ持っていくと、Kibagabagaでは子どもたちが夢中になって札を探し、Miyoveでは大人たちも一緒にカードを囲みました。
学校では授業教材となり、地域では対話の教材になる。同じ一枚でも、場所と参加者によって新しい役割が生まれます。これは、実際に世界で使わなければ分からなかった成果です。
大学には、知識を教えるだけでなく、世代や地域、専門分野を越えて人をつなぎ、社会課題をともに考える拠点としての力があります。千葉商科大学の地域志向活動助成金によって、市川・松戸の大学生、子どもたち、教員、NPOがつながり、その学びをルワンダまで届けることができました。
今度は、ルワンダで得た反応を大学と地域へ持ち帰ります。地域でつくり、世界で試し、地域へ戻して改善する。この循環を重ねながら、誰も防災情報から取り残されない教材へ育てていきたいと思います。

今後の展開――海外実践を大学と地域の次の学びへ
今後、なかよし学園はKibagabagaとMiyoveでの実践記録を整理し、千葉商科大学と市川・松戸地域へ還元します。
主に次の観点から成果を検証します。
・子どもが絵札から内容を想像できたか
・言語が異なる参加者に伝わりやすい表現は何か
・学校と地域で教材の使われ方にどのような違いがあったか
・大人と子どもが一緒に参加できる教材となっていたか
・現地の災害事情に応じて追加すべき内容は何か
・日本の地域防災へ還元できる視点は何か
これらの記録を、千葉商科大学の地域連携に関するフォーラム、セミナー、報告書などを通じて共有し、大学生や地域の子どもたちによる振り返りと教材の再設計へつなげます。また、今後予定している活動国での実践を通じて「世界」で活用されるモデルを構築します。
さらに、市川・松戸地域の学校、多文化交流、防災訓練、地域イベントなどでも活用できる教材として整備し、地域防災の実践へ還元する予定です。
実施概要
助成事業名
市川・松戸 スモールケース実装:防災×多文化共生の“やさしい日本語”教材共創プロジェクト(CoRe Loop)
助成
千葉商科大学「地域志向活動助成金制度」
地域活動アドバイザー
千葉商科大学 総合政策学部 准教授 戸川和成氏
国内での教材制作
実施日:2026年7月22日
会場:千葉商科大学 1号館1102教室
参加者:千葉商科大学の学生、松戸市内の小中学生、大学教員、なかよし学園関係者ほか
ルワンダでの実践①
実施日:2026年8月6日
実施場所:Kibagabaga Primary School
主な対象:児童、教員
内容:防災カルタを使った児童向け授業、言葉とイラストによる防災行動学習、授業再現に向けた実践
ルワンダでの実践②
実施日:2026年8月11日
実施場所:Miyove地区
主な対象:子ども、保護者、地域住民、現地協力者
内容:多世代型防災カルタ、防災を地域の「SYSTEM」として考える授業、住民参加型の防災対話
主催・海外実践団体
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
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団体概要
団体名
特定非営利活動法人 なかよし学園プロジェクト
所在地
千葉県松戸市小金原4-14-14
代表者
中村雄一
事業内容
「世界とつながる学び(CoRe Loop)」を軸とした探究教育、平和教育、多文化共生教育、防災教育及び国内外での教育支援活動
公式サイト
https://nakayoshigakuen.org
CoRe Loop「世界とつながる学び」
https://nakayoshigakuen.org/coreloop
本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人 なかよし学園プロジェクト 事務局
TEL:047-704-9844
E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org
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