「CAEソリューションプラットフォーム」のサービス開始について

~省エネルギー化・資源の有効利用によって環境負荷低減に貢献~

旭化成株式会社

旭化成エンジニアリング株式会社(本社:東京都港区、社長:岡田 一郎、以下「当社」)は、このたび、クラウドを通じたアプリケーション提供プラットフォーム「CAEソリューションプラットフォーム」のサービス(以下、「本サービス」)を開始しましたことを、お知らせします。
CAEとは、構造物の変形や流体の流れなどの物理現象について、コンピュータ上で技術計算やシミュレーション、解析を行うことを指し、当社では製品設計や各種トラブル原因究明などの場面で活用しています。

■本サービスについて

  1. 独自開発のアプリケーション群をクラウドHPC(High Performance Computing)上で販売することで、全世界のお客さまに対し手軽に高価値なソリューションを提供します。

  2. 通常煩雑な契約手続き等を要したビジネスフローが大幅に簡略化され、画面上に表示された利用規約への同意クリックのみでご利用開始できます。

「CAEソリューションプラットフォーム」の概念図


1.背景
近年、高速インターネット網の普及に伴い、コンピュータネットワークを経由してコンピュータ資源をサービスの形で提供する利用形態であるクラウドHPCが年々広がりを見せています。また、それに伴い、クラウドHPCに搭載されたCAEソフトウェアをSaaS(Software as a service)の形でオンデマンドに利用する形態も普及してきています。


2.本サービスの概要
パブリッククラウド環境に構築された仮想サーバ上に、当社開発の各種アプリを搭載します。全世界のお客さまから本サービスにログインいただき、各種アプリをダウンロードまたはサーバ上でご利用いただくことが可能となりました※1。これにより、通常煩雑な契約手続き等を要したビジネスフローが大幅に簡略化され、お客さまはお問合せ開始からお支払いまでの工数を大幅に削減でき、お手軽にCAEソリューションを数日単位からお試しいただけます。

3.本サービスに搭載するアプリケーション

①「i-LUPE」

当社のEICソリューション事業部CAE応用技術部では、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術による高分子材料の破断予測モデル※2「i-LUPE」を開発し、2014年より上市・販売しています。今回、新たに開始する本サービスにも「i-LUPE」を搭載し、販売開始いたします。

概要

・高分子特有の微視的損傷形態(下記の模式図参照)であるクレーズが考慮された数式がモデル化されており、高分子が破壊する様子を正確に予測できます。
・個別契約にてお客さまが指定したFEMプログラム※3に組み込むユーザーサブルーチン※4として提供します。
形式
・ダウンロード形式
ライセンス方式
・期間固定


■微視的損傷の模式図

高分子の微視的損傷形態(クレーズ)

非晶性の高分子材料は非常に小さなスケールでは、分子鎖が複雑に絡み合った構造をしています。これに衝撃などが加わり大きく変形すると、分子鎖が引き延ばされ、空隙である「ボイド」と分子鎖の束である「フィブリル」とが混在した様相を呈し、これを「クレーズ」と呼びます(模式図)。クレーズが成長すると高分子材料は破壊に至ります。


■高速打抜き試験における破断予測
 以下の画像は、樹脂板に対し金属ストライカーを衝突させた際の試験後の試験片および、現象を模擬したシミュレーション結果を表しています。従来の材料モデルに比べ、「i-LUPE」を用いることで破壊形態を精度よく再現できていることがわかります。

実際の試験片
従来の材料モデル
「i-LUPE」


■脚部インパクター※5の衝突試験
 以下の画像は、樹脂製の自動車バンパーに歩行者を模擬した物体を衝突させた際の実験画像とシミュレーション結果を表しています。実験とシミュレーションでは、減速度時刻歴においてよく一致していることがわかります。

実験
シュミレーション
インパクターの減速度時刻歴

②「Mapping tool for i-LUPE」

今回、新たに、繊維強化樹脂等の異方性材料※6に特化して「i-LUPE」を使用する際に補助するアプリである「Mapping tool for i-LUPE」をリリースいたします。

概要
・樹脂流動解析などから得られる繊維配向※7データを「i-LUPE」に入力する材料パラメータ※8に変換し、出力するアプリ
形式
・オンデマンド形式
ライセンス方式
・オンデマンド


■Mapping tool for i-LUPEの概念図


 これらの予測技術を活用することで、高分子製品の極限性能を予測し、軽量化設計が可能となります。自動車などの製品への高分子素材の採用が進む中、破断予測の精度が向上し、さらなる軽量な設計を実現します。これにより、省エネルギー化ならびに資源の有効利用による環境負荷低減へ貢献します。

4.今後の展開
当社は上記2つのアプリケーションに加え、今後もお客さまの製品設計に有用となるさまざまなソリューションについてクラウドHPCを通じて提供していくことを計画しており、2030年近傍にプラットフォーム全体として2.5億円規模の売上を目指します。

旭化成エンジニアリング CAE関連ホームページ:

https://www.asahi-kasei.co.jp/aec/business/sim/product/caeplatform.html


※1 利用登録ならびにアプリ利用開始には、当社所定の審査手続きが必要であり、ご利用いただけない  場合がございます。
※2 2016年度日本機械学会 学会賞 受賞
※3 FEM(Finite Element Method)プログラム:有限要素法プログラム。解析的に解くことが難しい微分方程式の近似解を数値的に解くことができる手法。身近な例として、自動車や各種製品の衝突シミュレーションや、構造物が重さや振動によって破損しないかの検証などにも使われています。
※4 ユーザーサブルーチン:FEMプログラムに用意されているカスタマイズ機能で、ユーザーに組み込みが許容された関数プログラムのこと。
※5 脚部インパクター:人体脚部を模擬したダミーで、自動車が歩行者と衝突した際の脚部への衝撃を測定する装置。
※6 異方性材料:物理的な性質(強度、弾性率、熱伝導率など)が方向によって異なる材料。
※7 繊維配向:繊維材料が特定の方向に並んでいる状態。これにより、材料の強度、剛性、弾性などの特性が影響を受ける。
※8 材料パラメータ:材料の重要な特性を表す数値。設計やシミュレーションを行う際に、材料特性を表現するために必要となる。

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会社概要

旭化成株式会社

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URL
https://www.asahi-kasei.com
業種
製造業
本社所在地
東京都千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井タワー
電話番号
03-6699-3000
代表者名
工藤 幸四郎
上場
東証1部
資本金
1033億8900万円
設立
1922年05月