グリーンイノベーション基金事業で新たに二つのテーマを採択しました
カーボンリサイクルの適用範囲を拡大し、社会課題の解決に貢献します
NEDOは、「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」(以下、本事業)の「【研究開発項目2】廃プラ・廃ゴムからの化学品製造技術の開発」において、新たに研究テーマ2件を採択しました。
今回採択した2テーマでは、混合プラスチックから直接基礎化学品を製造する技術開発と廃タイヤなどからのカーボンブラック再生技術開発を行います。両テーマは従来の本事業では対応していなかった分野の技術開発を行い、炭素資源循環、二酸化炭素(CO2)の排出量削減を加速させ、日本が抱える社会課題の解決に貢献します。
1.グリーンイノベーション事業について
「グリーンイノベーション基金事業※1」では「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に向け、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して、長期にわたり、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援を行っています。「グリーンイノベーション基金事業」の一環として、NEDOは本事業を実施しています。
本事業の化学分野では、カーボンニュートラル社会の実現のために、カーボンリサイクルなどの化石資源に頼らないプラスチック原料製造技術を確立し、それを社会実装することでCO2排出量の大幅な削減が期待されます。
本事業では、2021年度の公募※2で採択した事業に加え、化学製造業におけるカーボンニュートラルをさらに加速し、より幅広いリサイクル事業を実施するため、新たに2テーマを追加して取り組みます。
2.新規採択テーマの背景
従来は主に分離済み、もしくは単一組成の廃プラスチックのリサイクルが行われてきました。しかしこれらの廃プラスチックの排出量は177万トンで総廃プラスチック排出量の21%であり、残りの混合プラスチックは主にサーマルリサイクルが行われてきました※3。廃プラスチックの分離には多くのコストがかかり、分離困難なプラスチックも多くあるため、温室効果ガス(GHG)削減のためには混合プラスチックを分離せずにリサイクルを行う技術の確立が求められています。
使用済みタイヤのリサイクルにおいてタイヤ全体の2割から3割の重量をカーボンブラックが占めています。従来のリサイクル方法では、回収したカーボンブラックの変質が起こり、新たなタイヤの材料として、再生カーボンブラックを使用する際、カーボンブラック全体の2割以上使用すると出来たタイヤの物性が低下する問題があります。そのため炭素資源の循環のためには、石化由来の新品(カーボンブラック)並みの性能をもつ再生カーボンブラックを製造する技術が求められています。またタイヤゴムは製品、部位ごとに求められる物性が異なりそれに合わせて特性も変わるため、再生カーボンブラックを特性ごとに分離する技術も求められています。
3.採択テーマ
上記の課題に対してNEDOは本事業で「混合プラスチックから基礎化学品を製造するリサイクル技術の開発」と「使用済みタイヤを含む高分子製品からのカーボン再利用技術の開発」の2テーマを新たに採択しました。
「混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発」では、廃プラスチックの大部分を占める混合プラスチックを低級オレフィンやベンゼンなど、有用な基礎化学品に直接変換・再生する技術の開発を行います。本テーマでは、マイクロ波加熱などを活用した熱分解を数千トン/年の実証スケールで行い、多様な廃プラスチックに対応できる技術の確立を目指します。まずラボ、ベンチスケールで分解プロセスや反応器形式の選定を行い、パイロットスケール、実証スケールとスケールアップを行いながら条件の最適化を進めます。また商業化した際に生じうる課題の抽出、対策も並行して行います。
「使用済みタイヤを含む高分子製品からのカーボン再利用技術の開発」では、使用済みタイヤから石化由来の新品(カーボンブラック)並みのカーボンブラックを生成し、再度タイヤへと活用する技術の開発を行います。まず使用済みタイヤなどのゴムを含む高分子製品から取り出された再生カーボンブラックの性状を改質し、従来の再生カーボンブラックよりも高い比率でタイヤへ活用できる技術を5,000トン/年スケールで確認し、技術の確立を行います。また再生カーボンブラックの補強性をさらに高めてタイヤトレッド部にも使用可能な高補強リサイクルカーボンブラックを確保する技術の開発を行います。さらにカーボンブラックの変質の原因となる熱分解をせずにタイヤからカーボンブラックを回収し、石化由来の新品(カーボンブラック)並みの再生カーボンブラックを回収する技術の開発も行います。これらの開発した再生カーボンブラックを使用してタイヤゴムを作成し、その性能、適用領域、実用性の評価を行います。
また両テーマとも製造時のCO2排出量を現行プロセスの半分以下とすることを目指し、技術・プロセスの開発を行います。
【1】事業名
グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発
【2】予算
テーマ①80億円(2032年度)
テーマ②93億円(2032年度)
【3】期間
2024年度から2032年度(予定)
今回採択したテーマは以下の2テーマです。
【研究開発項目2】廃プラ・廃ゴムからの化学品製造技術の開発
採択テーマ名実施予定先
混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発 株式会社レゾナック
使用済みタイヤを含む高分子製品からのカーボン再利用技術の開発 東海カーボン株式会社
採択テーマの詳細は、以下の事業概要資料をご覧ください。
(別紙)事業概要資料
※上記「別紙」については、以下のURLよりご確認ください。
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101804.html
【注釈】
※1 グリーンイノベーション基金事業
[グリーンイノベーション基金事業 特設サイト] https://green-innovation.nedo.go.jp/
※2 2021年度の公募
[グリーンイノベーション基金事業で、CO2からプラスチック原料を製造する技術開発に着手] https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101517.html
※3 残りの混合プラスチックは主にサーマルリサイクルが行われてきました
一般社団法人プラスチック循環利用協会 マテリアルフロー図 https://www.pwmi.or.jp/business/material-flow/
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