アジア太平洋地域の物流・産業用不動産市場、転換期を迎える
―日本市場は供給超過の一方でテナントの立地選好に変化も―
大手総合不動産コンサルティングサービス会社であるコリアーズ・インターナショナル・ジャパン株式会社(代表:小笠原 行洋、本社:東京都千代田区、NASDAQおよびTSX:CIGI、以下コリアーズ・ジャパン)は、アジア太平洋地域における物流・産業用不動産市場の動向をまとめた最新レポート、「アジア太平洋地域インダストリアル&ロジスティクス・インサイト 2025年9月」を9月30日に発表しました。
本リリースでは、そのレポートの要約として、アジア太平洋地域の概況と、日本市場の現状と見通しをお伝えいたします。
【レポート要約】
■アジア太平洋地域の市場概況
アジア太平洋地域の物流・産業用不動産市場は転換期を迎えている。2025年上半期の新規供給量は前期比6%減の770万㎡超となり、デベロッパーは新規開発に対してリスク回避的な姿勢を強めている。一方、テナント需要は3PL、Eコマース、ハイスペックな倉庫への「質への逃避」によって牽引され、市場の二極化が進展している。
底堅い経済成長、金利低下、消費者心理の改善を背景に、業務効率化、自動化、戦略的立地を重視するテナント需要が伸びており、投資家は物流・産業セクターへの投資を積極化している。ただし、インド、オーストラリア、シンガポールで賃料上昇が進む一方、中国本土では供給超過により賃料が下落するなど、市場ごとの状況は大きく異なる。
■日本市場の現状
地域最大の供給と供給超過傾向が続く需給
東京圏では2025年上半期に合計130万㎡超の新規供給物件が竣工し、域内全体の約17%を占める地域最大の新規供給市場となった。2023年の大量供給の影響が続き、需給バランスは依然供給超過の状況にある。中国本土では供給の抑制が進んでいるが、日本でも今後の新規供給は減少すると予想されるものの、需給バランスの正常化にはまだ時間を要する見通しである。
鍵となる労働力の確保
日本市場の特徴は、労働力の採用・維持がテナント企業の最重要課題となっている点である。この重要課題は2つの変化をもたらしている:
・立地選好の変化: 人口の集積する東京都心寄りの郊外エリアへ需要がシフト。労働力アクセスがコストを上回る優先事項となり、圏央道沿いなど外縁部の中小規模物件のリーシングは長期化傾向。
・要求スペックの高度化: 労働環境改善のため空調を完備した施設や、倉庫の自動化対応のため単一フロア構成で広い床面積を確保できる施設への選好が顕著に。これは広い意味で地域全体の「質への逃避」トレンドの文脈と合致しており、オーストラリア、シンガポール、インドでも同様の動きがみられる。
アジア太平洋地域のトレンドにおける日本市場
アジア太平洋地域では、オフィス市場で見られた「質への逃避」が物流・産業用不動産にも波及し、サステナビリティ、業務効率、労働環境改善を実現する高品質物件への需要が拡大している。日本市場では、大企業を中心に倉庫の自動化が急速に進展しており、これはシンガポール、オーストラリア、韓国など他国と共通する動きである。また、3PL事業者が主要な需要牽引要因となっている点も、アジア各国と一致している。
一方、賃料の動向には日本に特徴的な傾向がみられる。インドのアーメダバード(+17.6%)、プネ(+11.1%)、ブリスベン(+7.3%)で賃料が大幅に上昇する一方、日本は建設コスト上昇に伴う上昇圧力と、高止まりする空室率による下方圧力が拮抗し、賃料の動きは小幅にとどまっている。供給超過で賃料が下落する中国本土・香港とも異なる「膠着状態」がみられる。また、市場調整のタイミングも異なる。オーストラリア、シンガポールは今後12ヶ月で供給の減少と空室率の適正化が見込まれるが、日本は2023年依頼の大量供給の影響が継続している。ただし、依然として供給超過の需給バランスの下で、徐々にではあるがテナントが一定の賃料上昇を受容する傾向もみられ、労働力確保と施設スペックの重要性が賃料コストの圧縮に優先する課題となっていることが示唆される。
Eコマース市場の成長余地
日本のEコマース市場規模は2023年に24.8兆円(前年比+22.3%)に達し、モバイルコマースがオンライン消費支出の58.7%を占める。しかし、小売売上全体に占めるEC化率は9.4%にとどまり、韓国(同27.7%)、台湾(同30%)と比較すると普及率は低く、先進主要国としてはオーストラリア(同12.7%)と同様に、まだ成長余地があるといえる。この成長余地は、人口集積エリア近郊の配送効率の高い立地への需要の拡大を示唆している。
日本の物流・産業用不動産市場の見通し
2023年以来の供給超過の解消という課題はあるものの、底堅い経済成長、Eコマース市場のさらなる拡大、3PL関連事業の成長により、中長期的な潜在的需要基盤は底堅い。地域全体の「質への逃避」「自動化」「効率化」トレンドのなかで、日本市場は、活発化するクロスボーダー投資や、海外の物流関連企業の日本進出、あるいは日本企業の海外市場への進出など、グローバル市場における相互作用を通じて、より洗練された市場へと進化していくことが期待される。
「アジア太平洋地域インダストリアル&ロジスティクス・インサイト 2025年9月」の全文(英語のみ)は下記よりご覧いただけます。
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