リアルテックグローバル2号ファンド、次世代の配線自動化技術を開発する英Q5D社に出資
電動化・CASE時代に対応した新たな製造ラインの構築を目指す

UntroD Capital Asia Pte. Ltd.(アントロッド、所在地:シンガポール、Managing Director:丸幸弘、以下「当社」)が運営するリアルテックグローバル2号ファンド(以下「G2号ファンド」)は、ワイヤーハーネスの製造工程を自動化するQ5D Technologies Ltd.(本社:イギリス・ブリストル、以下「Q5D社」)のシリーズAラウンドにおいて新規出資を実施したことをお知らせ致します。
本ラウンドはLockheed Martin Ventures(米国)※1がリード投資家を務め、当社と共にChrysalix Venture Capital(カナダ)、Maven SWIF(英国)が出資しています。さらに、イギリス政府系のInnovate UKより約260万ドル(200万ポンド)の助成金が交付されており、今回の資金調達総額は1,350万ドルに達しました。Q5D社は本調達を通じて、次世代配線自動化技術の量産展開とグローバル市場への拡大を目指します。(参考:米大手メディア AXIOSによるニュース記事)
製造業のボトルネック:ワイヤーハーネス工程が抱える課題
自動車産業におけるCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)の進展に伴い、ワイヤーハーネスの配線量と機能は年々増加しており、現在では1台あたりの配線長が4km以上、重量も30〜60kgに達するとされています。一方で、多くの配線工程はいまだ熟練作業員による手作業に依存しており、組立ミスや断線といった品質トラブルや納期遅延の要因となっています。自動化に向けた各社の取り組みは進んでいるものの、現在の自動化率は全体の約15%にとどまっており、特にアームロボットを活用した工程では、柔軟な素材の把持や複雑形状への対応、精密な制御といった技術的課題に加え、多額の初期投資や専門人材の確保といった実装面のハードルも高く、導入が進んでいません。さらに、ワイヤーハーネスの製造は多くの場合、低コスト地域におけるオフショア生産に依存しており、その結果として長距離輸送に伴う物流コストや供給断絶リスク、温室効果ガスの排出といった課題が顕在化しています。これらの問題は自動車産業に限らず、航空機や電子機器などの分野にも共通しており、ワイヤーハーネスに関わる設計・製造・物流全体において、抜本的な構造改革が求められています。

Q5D社が開発する次世代配線自動化技術:製品構造への直接配線
Q5D社は、ロボットアーム、制御ソフトウェア、導電性材料を統合した「ロボティックセル」により、複雑な三次元形状の部品表面に配線を直接形成する革新的な製造技術を開発しました。これにより、従来のハーネス組立工程を置き換え、ヘッドライナーやドアパネルといった最終部品にワイヤリングを直接生成することが可能となり、誤配線の削減や品質の安定化を実現します。生産のオンデマンド化とローカル化により、スクラップや余剰在庫を削減し、製造現場のスペース効率や生産柔軟性も大きく向上します。特に自動車業界では、1台あたり200ドル規模の配線コスト削減が見込まれており、部品原価のみならず物流、設計、品質管理にまで波及するインパクトが期待されています。


東南アジア・日本展開への期待
現在、Q5D社はブリストル本社にある技術評価センターにて、複数のグローバルOEMおよびTier1サプライヤーと共同プロジェクトを推進しており、2026年の製造ラインへの本格導入を前提としたパイロットフェーズが加速しています。また、東南アジアおよび日本の自動車・部品メーカーからも高い関心が寄せられており、当社との連携についても以前から協議が進んでいます。
東南アジアのワイヤーハーネス市場は2023年時点で約60億ドルと推定され、EV化の進展を背景に年率4〜5%の成長が見込まれています。日本市場も2030年に向けて約47.0億ドルまで拡大すると予測されており、ワイヤーハーネス自動化へのニーズが一層高まっています。当社は、これら地域における実証・導入支援を通じて、Q5D社のアジア展開を強力にサポートしてまいります。
※1 Lockheed Martin Venturesについて
Lockheed Martin Venturesは、米国ロッキード・マーティン社のコーポレートベンチャーキャピタル部門で、2007年の設立以来、AI・ロボティクス・先端製造技術などに戦略的に投資しています。同社は現在、エバーグリーン型のベンチャーファンドを400百万ドル規模で運用し、世界中で90社以上に出資しています。
UntroD(アントロッド)について
地球や人類の課題解決に資する研究開発型の革新的テクノロジーを有するディープテックスタートアップの社会実装を目的とした「リアルテックファンド」を2015年に設立し、シード・アーリーステージのスタートアップへのリード投資およびハンズオン支援を行ってきました。
現在までに、リアルテックファンド1号~4号(日本ファンド)、リアルテックグローバルファンド1号・2号(グローバルファンド)、リアルテックグロースファンド1号(日本ファンド)を運用し、運用総額は400億円以上に達しています。社会に必要とされながら資本が流れにくい未踏領域に誰よりも最初に踏み出し、その経済性を証明することで資本や人材が供給され続ける持続的な仕組み創りを目指す、その意志をより一層体現するため、「未踏」を意味する「UntroD」を社名として掲げ、2024年6月に再始動しました。
お問い合わせ
UntroD Capital Asia Pte Ltd
広報担当:成田
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