アジア地域の心房細動患者に対する ダビガトランエテキシラート(日本での製品名:プラザキサ®)の 脳卒中発症抑制効果を確認
- アジア地域の心房細動患者において、いずれの用量のダビガトランエテキシラート投与群でもワルファリン投与群と比べて、大出血およびすべての出血事象の発現率が低いことが示されました
2013年6月14日 日本/東京
RE-LY®試験 の新たなサブ解析の結果が、Strokeに公表されました1。この中で、ダビガトランエテキシラートは、アジア・非アジアいずれの地域の心房細動患者に対しても、一貫したベネフィットを示すことが示されました。RE-LY®試験全体の結果と同様に、アジア地域の心房細動患者(以下、アジア集団)でも、ダビガトランエテキシラート150mg1日2回投与群でワルファリン投与群と比べて、虚血性脳卒中を含む脳卒中および全身性塞栓症の発症リスクが低減しました。更に、いずれの用量のダビガトランエテキシラート投与群(150mg1日2回および110mg1日2回)でも、アジア集団の出血性脳卒中の発症リスクが大きく低減しました。アジア集団における大出血およびすべての出血事象の発現率は、いずれの用量のダビガトランエテキシラート投与群でもワルファリン投与群と比べて低値でした1。
アジア地域における心房細動の患者数は膨大で、その数は現在も増加しています。日本だけでも、100万人を超える患者が存在すると推定されています。アジア太平洋地域では、心房細動に起因する初回の脳卒中を毎年510万人以上が発症していることが報告されており、人口の高齢化に従い、この数は今後も著しく増加すると考えられています2。
今回のアジア集団のRE-LY®試験サブグループ解析は、日本を含むアジア10ヵ国の心房細動患者計2,782人を対象に実施され、アジア集団はRE-LY®試験全体の 計18,113人のうち15%を占めていました1。本解析の結果について、RE-LY®試験の日本での試験責任医師であり、本解析の論文の著者である大阪府立成人病センター 総長 堀正二先生は次のようにコメントしています。「出血性脳卒中の発症率増加や出血の発現率増加といったワルファリン治療に伴う課題は、非アジア集団よりもアジア集団でより一層顕著であることが示されました。アジア集団では非アジア集団と比べて平均年齢が約4歳若く、INRが低目にコントロールされていたにもかかわらず出血性脳卒中が多かったことからアジア集団でのワルファリン治療に対する易出血性が示されたと考えています。一方で、ダビガトランエテキシラートに関しては、アジア集団におけるベネフィットが確認され、RE-LY®試験全体と一貫した結果が示されました」。
アジア集団における脳卒中の発症リスクについて1
・ ダビガトランエテキシラート、ワルファリンいずれの治療群においても、アジア集団にて非アジア集団よりも脳卒中および全身性塞栓症の発症率の絶対値が大きく(ダビガトランエテキシラート110mg1日2回投与群では2.50%/年vs. 1.37%/年、ダビガトランエテキシラート150mg1日2回投与群では1.39%/年vs. 1.06%/年、ワルファリン投与群では3.06%/年vs. 1.48%/年)、脳卒中の発症を抑えることが、アジア集団においてより重要であることが示されました。
・ ワルファリン投与群の出血性脳卒中は、アジア集団でより高頻度に認められました(非アジア集団との比較でハザード比[HR]=2.4)。
アジア集団におけるダビガトランエテキシラートの脳卒中発症抑制のベネフィットは、RE-LY®試験全患者集団のベネフィットと一致する
・ アジア集団において、ダビガトランエテキシラート150mg1日2回投与群ではワルファリン投与群と比較して脳卒中および全身性塞栓症の発症率が低く、優越性が示されました(HR=0.45)。
・ アジア集団では、いずれの用量のダビガトランエテキシラート投与群でもワルファリン投与群と比較して、出血性脳卒中の発症率が有意に低値でした(ダビガトランエテキシラート110mg1日2回投与群とワルファリン投与群の比較でHR=0.15、ダビガトランエテキシラート150mg1日2回投与群とワルファリン投与群の比較でHR=0.22)。
アジア集団におけるダビガトランエテキシラートの出血リスクに関する安全性プロファイルについて1
・ アジア集団における大出血の発現率は、いずれの用量のダビガトランエテキシラート投与群でもワルファリン投与群と比べて低値でした(ダビガトランエテキシラート110mg1日2回投与群2.22%/年、ダビガトランエテキシラート150mg1日2回投与群2.17%/年、ワルファリン投与群3.82%/年)。
・ さらにすべての出血事象の発現率も、いずれの用量のダビガトランエテキシラート投与群でもワルファリン投与群と比べて有意に低値でした(ダビガトランエテキシラート110mg1日2回投与群とワルファリン投与群の比較でHR=0.48、ダビガトランエテキシラート150mg1日2回投与群とワルファリン投与群の比較でHR=0.60)。
ダビガトランについて
ダビガトランは、急性および慢性の血栓塞栓症の予防と治療において、高いアンメット・メディカル・ニーズに対応することが期待され、注目されている新世代の経口抗凝固薬/直接トロンビン阻害剤 (DTI)3です。直接トロンビン阻害剤は、血餅(血栓)形成プロセスにおいて中心的な役割を果たす酵素であるトロンビン(遊離トロンビンならびにフィブリン結合トロンビン)の活性を特異的に阻害することにより、強力な抗血栓作用を発揮します。さまざまな凝固因子を介して作用するビタミン K 拮抗薬とは異なり、ダビガトランは予測可能な一貫した高い有効性を示します。薬物相互作用の可能性は低く、食物との相互作用もありません。また、定期的な血液凝固モニタリングや投与量の調節も必要ありません。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で140の関連会社と46,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
ベーリンガーインゲルハイムにとって、社会的責任を果たすことは、企業文化の最も重要な柱のひとつです。事業を展開する世界の国々において、社会問題に取り組み、社員とその家族を思いやり、全社員に平等な機会を提供することが、 ベーリンガーインゲルハイムの基盤です。そして、尊重と誠実を重んじ、環境保護と持続可能な社会の実現に向けて貢献することが、ベーリンガーインゲルハイムの本質であり使命です。
2012年度は147億ユーロ(約1兆5,086億円)の売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の22.5%相当額を研究開発に投資しました。
日本ではベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が持ち株会社として、その傘下にある完全子会社の日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(医療用医薬品)、エスエス製薬株式会社(一般用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社(動物用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社(医薬品製造)の4つの事業会社を統括しています。
日本ベーリンガーインゲルハイムは、呼吸器、循環器、中枢神経などの疾患領域で革新的な医療用医薬品を提供しています。
詳細は下記をご参照ください。
http://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
http://www.boehringer-ingelheim.co.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
References:
1. Hori MD, et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke. 2013;44:1891-1896.
2. World Health Organization. The global burden of disease: 2004 update. 2008. Viewed September 2012 at http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/GBD_report_2004update_full.pdf.
3. Di Nisio M, et al. Direct thrombin inhibitors. N Engl J Med 2005;353:1028-40.