HIV/エイズ対策:現実を伝える特設サイト「見て。活動地の今を」開設
HIV/エイズ対策は人類史上最も成功している公衆衛生施策の1つとして謳われているが、今でも数百万人が治療を受けられずにいる現実は顧みられていない。12月1日の世界エイズデーを前に、国境なき医師団(MSF)は、『見て。活動地の今を(http://see.msf.or.jp)』と題した特設サイトを開設し、これまでエイズ根絶に向けた世界規模の取り組みに長年多くの努力が払われたにもかかわらず、取り残されてきた人びとや国々に光をあてる。
本サイトは、2分間の映像作品6本で構成。各作品はMSFの医療スタッフがコンゴ民主共和国、レソト、南アフリカ、ミャンマーなどで目にした、HIVとともに生きる人びとの、困難な現実への挑戦を捉えている。映像から浮かび上がるのは、HIV検査の不在、治療開始が遅すぎたケース、治療継続の難しさ、妊婦や子ども患者の現状、HIV感染者への偏見などの問題だ。本サイトはまた、16分間のドキュメンタリーを収載してこれらの問題をまとめるとともに、より多くの人が、より早く治療を開始し、長期にわたって治療を続ける手助けとなっている「地域住民を主体としたケア」を紹介している。現在、MSFは21ヵ国で28万人の患者にHIV治療を提供している。
<映像に登場するMSF医師の言葉>
「エイズによる死は富裕国ではまれですが、多くの途上国では毎日4000人が亡くなっています。治療方法があるにも関わらずです」 - MSF医療ディレクター、ジル・ファン・カッツェン医師(南アフリカおよびレソト)
「ここキンシャサにおける状況は極端です。エイズの末期症状で重態となって、MSF病院に来る患者を診ることがよくあります。多くの人は手遅れで、文字通り病院の玄関で亡くなっているのです。25%の人は助からず、死亡例の39%は、48時間以内に起きています。検査と治療は、必要な人に届いておらず、一方で強い偏見が全国に存在しています」 - HIV病院勤務医、マリア・マチャコ(コンゴ民主共和国)
「コンゴやギニアのような国では実際に治療を受けている人の割合は低く、多くが治療できるにもかかわらず苦しみと死に直面しています。こうした状況を見るとき、私たちは時代が逆戻りしたかのように感じます。末期症状のエイズによる重度の合併症は、私たちが2000年より前に、南アフリカで目にしていたものを思い出させます。当時抗レトロウイルス薬(ARV)治療はなく、いたるところで死者がでていました」 - ケープタウンでMSF初のHIV治療プログラムの1つを立ち上げたエリック・ゴメール医師(南アフリカ)
「まん延国の取り組みによって、人びとはHIV治療を早く始めることができ、地域住民のネットワークを通じて治療を受けられ、余裕のない医療機関の負担を減らしながら、人びとの治療遵守率を高められるのです。しかし、一部の政府は、地域住民により大きな役割を与えることに反発しています。住民自身の治療に関することなのですが。それは変えていく必要があります」 - MSF副活動責任者、エルネスト・ニャマト(南アフリカおよびレソト)
MSFはまた、12月2日に米国で開催される、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)の資金拠出表明会議を前に、150億米ドルという、この基金にとって最低限の増資目標を達成できなければ、HIV/エイズのまん延国は取り残され、過去12年間かけて高まった勢いは減速してしまうだろうと懸念を表明している。
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世界基金について:
世界基金はHIVへの資金援助機関としては最大であり、HIV対応にあてられる国際多国間援助総額のうち、20%近くを占めている。2012年末までに世界基金の資金援助は、全世界でARV治療を受ける人びとの40%を支援した。多くのHIVまん延国における対策は、世界基金の支援なしには深刻な影響を受けるものと見込まれている。
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