JLL、「2016 年版グローバル不動産透明度インデックス」を発表 世界の約7割の不動産市場で透明度が向上 日本は19 位、市場ファンダメンタルズの改善が貢献
不動産透明度インデックスは、JLLとLaSalleが誇るグローバルネットワークを活用して収集した情報を分析、世界の不動産市場の透明度を数値化した独自調査レポートです。2年に1度発行しており、2016年で第9版となります。2016年版では、世界109の不動産市場を対象とし、定量的データとアンケート調査を含む139要素を用いて、スコアを算出しています。
今回の調査結果では、最も透明な市場でも一層の改善圧力が強まり、不動産透明度の水準は益々高まっています。投資家や法人テナントからは、より正確、詳細、適時な市場データとパフォーマンス計測、適切な規制適用、倫理基準、公正な取引プロセスと厳格なバリュエーション手法等を要求されています。こうした要求に答える透明度の高い国では、「不動産テック」業界による急速な技術革新が透明度向上に寄与しました。また、パナマ文書の余波を受け、実質所有権の開示を求める国際的な動きから、更なる透明度改善の要求が高まり、今後も大きな進展が予測されます。
各地域のハイライトは以下の通りです。
【グローバル】
- 調査対象109市場のうち約7割で透明度が向上し、世界の商業用不動産市場全体の透明度が向上した。これは、世界の不動産市場において、より高度な倫理基準の設定や、取引プロセスを公正かつ透明なものとする措置を講じる事で、改善を妨げる障害を減らすための新たな法制度を制定し、市場データやパフォーマンスにおけるベンチマークの有用性や品質を高める事で、世界の不動産業界は着実に進歩している。
- 英国(1位)、オーストラリア(2位)、カナダ(3位)、米国(4位)が上位を占め、英語圏の国々が引き続き、透明度「高」のグループを独占した。こうした伝統的な主導国では、不動産透明度を新たなレベルへとけん引しており、とりわけパフォーマンス測定の細かさ、品質、頻度、地理的な広がり、不動産鑑定評価や市場ファンダメンタルズのデータについて、他の市場を凌ぐ透明度向上を実現しており、今や学生寮、トランクルームなどのニッチ不動産セクターにも拡大している。
- 透明度「高」に分類された10ヵ国をみると、世界の商業用不動産直接投資額の75%を占め、世界の上場大企業上位2,000社の半数近くの本拠地となっている。
- 欧州大陸の「中核」国は徐々に英語圏に追いついている。ドイツ(9位)は上場法人のガバナンス項目の成長により、初めて透明度「高」のグループに加わった。フランス(5位)も法律・規制環境が向上し、トップグループの地位を維持している。両国とも市場ファンダメンタルズのデータが入手可能で、その品質についても優れた進歩があり、さらにデータのデジタル化の革新も率先しており、「不動産テック」先駆企業の本拠地となっている。ポーランド(13位)も透明度「高」グループに接近しており、近隣の北欧諸国(フィンランド10位、スウェーデン12位)と遜色がなくなってきている。
【アジア太平洋地域】
- 透明度は向上しているものの、域内を通じて一様に進歩しているわけではなく、依然として市場ごとに大きな格差がみられる。オーストラリア(2位)とニュージーランド(6位)は透明度「高」を維持。シンガポール(11位)と香港(15位)は大きな改善は見られなかったものの、アジアのトップの地位を巡って拮抗している。台湾(23位)は透明度「中高」に上昇し、日本(19位)は堅実に7位上昇した。韓国(40位)も前進したが、経済の成熟度や不動産投資レベルを勘案すると、依然として透明度「中」の異常値とみなされるべきだろう。ミャンマー(95位)が域内で最も透明度が低かったが、経済・政治改革によって若干の進展が認められた。
- 域内で透明度が最も改善したのは台湾(23位)で、「市場ファンダメンタルズ」と「取引プロセス」の改善が貢献した。競争激化によりテナントに対するサービスが向上し、新旧の政策変更によって入手可能な情報や正確性が向上した。2016年には、国際標準に沿った統一土地家屋税が導入され、低く評価されがちだった公示価格の税制上の欠点が修正された。
- インドの1級都市(36位)は、不動産セクターの透明度向上に対する積極的な政策がとられ、土地登記簿のデジタル化が始まり、オンラインデータベース上で入手可能となっている。一方、改正土地収用法(2014年施行)により、土地収用と売り手への公正な補償の判断に対する手続きを簡略化した。
- 中国1級都市(33位)、特に1α級都市(上海と北京)で最も大きな進歩が認められた。透明度「中高」区分が目前の上海(中国1α級都市)は、急速に成長しており、不動産投資、開発、企業活動についての構造的向上がみられる。上海の不動産投資は2010年以降、3倍に増加している。
【日本】
- 日本は2014年版透明度の26位(スコア2.22)から19位(2.03)と7位順位をあげ、日本市場全体の透明度は着実に改善している。
- 最も改善が見られた項目は「市場ファンダメンタルズ」で、アベノミクス以降、日本不動産市場が活発になったことを背景に、海外投資家による日本に対する関心が一層高まり、さらなる情報開示が求められたことから、データ開示が進んだ。また、J-REITの増加、特に、物流、ホテル、ヘルスケアなどを対象としたREITの上場により、取引額や利回りなどのデータ開示が進んだことも透明度改善に寄与した。
- 一方で、「市場ファンダメンタルズ」の項目は、新しいセクターへの投資やデータ開示の拡大がグローバル全体で進んでおり、透明度が改善している。日本がさらに透明度改善を目指すには、日本独特の商慣習(双方代理や共益費内訳の透明性が低いなど)を根本的に見直し、「取引プロセス」を改善するなど、他の項目での改善が求められる。
JLLリサーチ事業部 アソシエイトダイレクター 大東雄人は次のように述べています。
「今回の調査で日本が順位を7つ上げたのは喜ばしい事です。しかし、改善の要因は投資市場の拡大といった外的要因に帰する部分が大きく、取引情報の開示や日本独自の商慣習など、抜本的に見直すべき点はまだ残されており、今後日本が順位を上げるにはこうした部分の改善が不可欠です。日本の先を行く先進国はさらに透明度を高めており、最近耳にするようになったフィンテック(金融とテクノロジーの融合)の不動産版、『不動産テック』という日本ではまだ聞きなれないセクターの急成長が、データアクセスや充実度に大きく貢献しています。日本もこうした技術革新を不動産業界に柔軟に取り込み、透明度を増す事で、より日本に海外資金を呼込む事が期待されます。不動産市場の拡大は、すなわち不動産業界関係者全ての利益でもあることから、JLLは今後も率先して日本の透明度改善に取り組んで参ります」
■「JLL グローバル不動産透明度調査」JLLとLaSalleのグローバルネットワークを活用して収集した定量的データとアンケート調査を対象項目ごとに検証、数値化した調査レポートです。1999年から実施され、2年ごとに更新。2016年版で第9版となります。
2016年版は、調査対象市場が102から109市場、検証要素も115から139要素となり、より広範囲かつ詳細な調査となりました。139の要素は13の分野に分けられグループ化し、ウエイト付けして5つのサブインデックス、「パフォーマンス測定(25%)」、「市場ファンダメンタルズ(20%)」、「上場法人のガバナンス(10%)」、「法律・規制(30%)」、「取引プロセス(15%)」、に分類されます。不動産透明度インデックスのスコアは、1から5の範囲で採点され、スコア「1.00」は最も透明度が高い国/市場であり、スコア「5.00」は透明度が最も低い国/市場を示します。
JLLについて
JLL(ニューヨーク証券取引所上場:JLL)は、不動産オーナー、テナント、投資家に対し、包括的な不動産サービスをグローバルに提供する総合不動産サービス会社です。世界80ヵ国、従業員約60,000名、280超拠点で展開し、年間の手数料収入は約52億米ドル、総売上高は60億米ドルに上ります。2015年度は、プロパティマネジメント及び企業向けファシリティマネジメントにおいて、約3億7,200万㎡(約1億1,200万坪)の不動産ポートフォリオを管理し、1,380億米ドルの取引を完了しました。JLLグループで不動産投資・運用を担当するラサール インベストメント マネジメントは、総額564億米ドルの資産を運用しています。JLLは、ジョーンズ ラング ラサール インコーポレイテッドの企業呼称及び登録商標です。
JLLのアジア太平洋地域での活動は50年以上にわたり、現在16ヵ国、92事業所で33,000名超のスタッフを擁しています。JLLは、2016年インターナショナル・プロパティ・アワード・アジア・パシフィックにて、合計15の賞を受賞しました。2015年ユーロマネー・リアル・エステート・アワードでは、最優秀リアル・エステート・アバイザーに選出されました。詳細な情報はホームページをご覧下さい。www.joneslanglasalle.co.jp
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