拡大するバイオものづくりに向けた「統合型バイオファウンドリ®」事業を共同で推進
~微生物の開発・改良から生産プロセス開発までのワンストップ体制を構築~
1.バイオものづくり
バイオものづくりは、スマートセル※1の創出により多様な物質を生産し、循環型ものづくり社会を実現するテクノロジーで、医療やヘルスケア分野に加えて、今後、素材、エネルギーや食品分野などにも広がっていくことが見込まれており、その市場規模は経済協力開発機構(OECD)の試算では2030年において約200兆円に拡大すると予測されています。
2.協業の狙い
現在、日揮HDは長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の実現に向けて、サステナビリティ協創オフィスが主体となり環境関連技術のビジネス化を推進しており、バイオ分野も注力分野の一つとして取り組んでいます。バイオものづくりにおいては、日揮グループが長年エネルギー分野などのプロセス開発で培ってきたスケールアップ技術や医薬品製造分野で培ってきた培養槽の最適設計に係る技術を活用できると考えています。特にCO2を原料とするケースにおいては、オイル&ガス分野で培ってきたガスハンドリング技術が大きな強みになると考えています。
バッカスは、国立大学法人神戸大学等における合成生物学を中心とした先端研究開発の基盤要素技術やノウハウを技術移転し、これをさらに高度化しているバイオファウンドリ※2企業であり、ロボティクス技術を含めたデータ駆動型のDBTL※3サイクルを用いたスマートセル開発技術を有しております。この技術により多様な目的とする物質を生成する微生物等を高速で開発するプラットフォームの構築を進め、循環型バイオものづくり社会の実現を目指しております。
両社が保有するこれら技術を統合し、微生物の開発・改良から培養槽のスケールアップ、生産プロセスの開発までをワンストップで手掛ける「統合型バイオファウンドリ®」を構築することにより、バイオものづくりにおいて、これまでは数十年必要であった微生物の開発から商業化までの期間を1/10以下に短縮し、社会実装に向けた時間とコストを大幅に削減することを目指します。
また本協業によって、バッカスは、独自に培った多様な物質の生産を可能とする微生物開発プラットフォームを、日揮HDとのプロセス開発と連携したプラットフォームに拡張することにより、プロセスの実装化まで業容を広げ、広く世の中に技術革新を提供、事業基盤の拡充を実施してまいります。
日揮HDは、この「統合型バイオファウンドリ®」事業を長期経営ビジョン「2040年ビジョン」で掲げた「ビジネスモデルのトランスフォーメーション」におけるライセンス事業(非EPC事業)として確立し、収益の多様化を実現していく所存です。
3.4社共同プロジェクトにおける取り組み
既に発表した通り、日揮HDとバッカスは、NEDOが公募した「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に対し、株式会社カネカおよび株式会社島津製作所と共同で「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発※4」(以下、4社共同プロジェクト)の取り組みを開始しています。
4社共同プロジェクトにおいて、日揮HDとバッカスはCO2を原料として様々な有用物質を生産する微生物の開発からスケールアップ、生産プロセス開発をワンストップで行う「統合型バイオファウンドリ®」の構築と実証を行います。「統合型バイオファウンドリ®」の概要は次の通りです。
<バッカス>
同社において、ガス発酵微生物に対応した、DBTLサイクルによる世界初のデータ駆動・AI駆動型高速育種(微生物開発)プラットフォームを開発・整備
株式会社島津製作所と協業して、育種から製造までを繋ぐガス発酵微生物に対応した高速・高精度評価システムを開発・整備
<日揮HD>
2025年度にベンチスケール研究棟を、2027年度にパイロットプラント実証棟を稼働。
ベンチスケール研究棟には、生産プロセスの段階的なスケールアップを実現するために数リットルから数百リットルのベンチスケール培養槽を整備
パイロットプラント実証棟は数m3(数千リットル)のパイロット培養槽を整備
ベンチスケール研究棟およびパイロットプラント実証棟では、株式会社島津製作所と協業して安全で高効率なガス発酵計測評価システムを構築
4.日揮HDとバッカスによる今後の取り組み
日揮HDとバッカスは、今後4社共同プロジェクトと並行して、CO2のみならず、様々な原料をベースに社会実装可能な多様な物質を生産する微生物のラインナップを拡充し、商用化に向けた最短の道筋を顧客に提案・実現していくことを目指します。両社は、この「統合型バイオファウンドリ®」事業を確立していくことで、バイオものづくりの参入ハードルを下げ、幅広い分野におけるバイオものづくりの社会実装に貢献します。さらには、日本発の技術で世界のバイオものづくりをリードしていきたいと考えています。
※1:高度にデザインされ、目的とする物質を効率的に生産する能力を高めた細胞
※2:機能をデザインした微生物を創製して、有用物質を効率的に生産する微生物開発プラットフォーム
※3:生命科学と情報科学を融合させたバイオインフォマティクスやロボティクス等のデジタル技術を活用して、微生物のゲノムや代謝経路情報をもとに目的の機能を発現する遺伝子を設計・合成(Design)し、この遺伝子を搭載した微生物を作り(Build)、搭載した遺伝子が目的の機能を発現したかテスト(Test)し、得られたデータを学習・分析(Learn)し、代謝経路の設計等に反映させる一連のサイクル
※4:本件の詳細は、本年3月22日に発表した共同プレスリリースをご参照下さい。
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