スペースシードホールディングス、衛星データによる土地利用解析ツール「satellite-landuse-toolkit」をオープンソース公開

研究・教育・企業での活用を視野に

スペースシードホールディングス株式会社

スペースシードホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:鈴木健吾、以下「SS-HD」)は、公開衛星データから地域の土地被覆・樹冠消失・地表水変化などを再現可能な形で集計・解析するツール「satellite-landuse-toolkit」(サテライト・ランドユース・ツールキット)を、2026年9月13日にオープンソース(MITライセンス)として GitHub で公開し、研究データリポジトリ Zenodo で DOI(デジタルオブジェクト識別子)を取得しました。

本ツールは、SS-HD が中核事業として進める「宇宙でも地上でも自律的に研究を行う基盤(SpaceAgent※)に関わる研究開発」の一環として開発したものです。開発にあたっては、SS-HD 自身の地域事業で使うことに加え、SS-HD が出資し鈴木が SPACE LAB. 所長を務める株式会社スペースノーム研究所(本社:東京都新宿区、代表取締役:藤田大悟、以下「スペースノーム研究所」)の次世代教育事業と、企業・自治体との研究開発活動でも活用することを想定して設計しています。

※ SpaceAgent(スペースエージェント)とは 大規模言語モデル(LLM)などのAIが、観察・判断・操作をつなぎ、細胞培養や各種の科学実験、データ解析を自律的に進める研究基盤の総称です。SS-HD はこの基盤に関わる研究開発を中核事業とし、2026年6月には、宇宙環境での自律的な実験を支える装置と制御方法に関する特許2件を、リジェネソーム株式会社、株式会社IDDK、スペースノーム研究所と共同で出願したことを公表しています。

背景 ― 衛星データはアクセス可能でも、正しく解釈することが難しい

10 m の空間分解能の土地被覆図、20年以上にわたる年次の樹冠消失データ、1984年から2024年までの約40年間の地表水の変遷、5日ごとの光学衛星画像。これらはいずれも無料で公開されており、地域の土地利用を把握する材料は揃っています。一方で、実際に使おうとすると、クラウド解析基盤のアカウントや API キー、GIS の専門知識が前提になりがちで、同じ結果を第三者が再現することも容易ではありません。研究者に限らず、企業の担当者や、地域を調べたい学生にとっては、最初の一歩がそこで止まります。

さらに、集計そのものより難しいのが解釈です。樹冠消失のデータは再生を差し引かないため「残存森林」を算出できないこと、土地被覆図の精度は全球平均であって特定地域の精度ではないこと、2時期の衛星画像の比較は雲・季節・位置合わせの影響を受けること──こうした読み過ぎは、専門家のレビューで必ず指摘される一方、ツールの側で防ぐ仕組みはほとんどありませんでした。

ツールの概要

satellite-landuse-toolkit は、対象範囲(GeoJSON または経緯度の矩形)を渡すだけで、必要な公開タイルを解決してダウンロードし、5つのコマンドで集計します。Earth Engine などのクラウド基盤や API キーは使わず、すべて手元のパソコンで動作します。

コマンド

データ

出力

fetch

対象範囲にかかる公開タイルの解決とダウンロード、Sentinel-2 のシーン検索

landcover

ESA WorldCover 10 m(2021)

土地被覆のクラス別面積

forest

Hansen Global Forest Change 30 m(2001–2025)

樹冠消失の年次面積、タイル被覆率、閾値感度、約1 km のホットスポット

water

JRC Global Surface Water 30 m(1984–2024)

水域の遷移クラス別面積、指定した湖の連結水域

change

Sentinel-2 L2A 10 m

2時期の裸地変化(同一グリッド・共通有効画素)、実行マニフェスト

5つのコマンドの流れ
土地被覆の集計例(北海道・釧路湿原周辺)
樹冠消失の集計例

設計上の特長 ― 読み過ぎを防ぐ仕組みをツールに組み込む

  1. 確認できないときは止まる:Sentinel-2 の反射率補正の状態がメタデータから確定できない場合、推定して続行せず停止して利用者に確認を求めます。水域画素の反射率による検算も備えます。

  2. 同じ画素だけを比べる:2時期の比較は両シーンを1つの基準グリッドに再投影し、両日とも雲や水でない画素(共通有効画素)だけを集計します。有効画素の割合も出力します。

  3. 足りない部分を隠さない:対象範囲にかかる全タイルを合算し、forest、water(遷移)、changeでは、タイルや衛星画像が対象範囲をどれだけ覆ったかを報告します。

  4. 記録が残る:入力ファイル、データの版、判定の根拠、閾値を実行マニフェストに書き出します。同梱の例示範囲での実行記録(入力ファイルのハッシュ値、コマンド、出力)も公開しており、第三者が同じ結果を再現できます。

  5. 言葉のルールを添える:「地図上の面積と統計的な面積推定を区別する」など、解釈上のルールをチェックリスト(英日)として同梱しています。

2時期の衛星画像を共通有効画素だけで比べる

教育分野での活用 ― 「自分の町」を衛星データで調べ、数字の読み方まで学ぶ

本ツールは、研究者向けの厳密さを保ちながら、教育の場でそのまま使えることを意識して設計しています。

  • 費用も登録も不要:データはすべて無料の公開データで、アカウント登録や API キーが要りません。学校や家庭の一般的なパソコンで動作します。

  • 対象は自分で決める:経緯度の矩形を1つ渡すだけで、自分の住む町や通う学校の周辺を対象にできます。土地被覆の内訳、2001年以降に樹冠消失が検出された場所、湖や川の変化を、同じ手順で確かめられます。

  • 手順が全部見える:どのファイルをどこから取得し、どの計算をしたかがコマンドと記録に残るため、「結果」だけでなく「過程」を教材にできます。

  • 読み過ぎを防ぐルールが教材になる:「地図上の面積は統計的な面積推定ではない」「2時期の比較は候補であって結論ではない」といった同梱のルールは、データを扱う際の基本的な作法そのものです。衛星データを題材にしたデータリテラシー教育に接続できます。

SS-HD は、国内の湿原地域を例にデータ取得から2時期比較までを通した日本語の実行手順書を整備しており、これを教育向けに再構成することを検討しています。

スペースノーム研究所との連携 ― 教育と企業向け研究開発への展開

スペースノーム研究所の親会社であるリバネスは、2008年に民間企業として初めて国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の有償利用枠を活用した宇宙教育プロジェクトを開始しました。こうした宇宙教育の蓄積を背景に、現在は次世代教育事業『NEST LAB.』と宇宙利用研究事業『SPACE LAB.』をコア事業とし、SPACE LAB.の取り組みの一つとして『SpaceAgent』の研究開発を進めています。SS-HD は2026年3月に同研究所へ出資し、鈴木は同研究所の SPACE LAB. 所長を務めています。

本ツールは、SS-HD の地域事業で使うことに加え、スペースノーム研究所の活動でも活用することを検討する前提で開発しました。想定している展開は次の2つです。

  • 次世代教育事業での活用:中高生が自ら地域を選び、衛星データで土地利用の現状と変化を調べ、統計や現地の情報と突き合わせて考察する探究型のプログラム。宇宙から地球を見る教育の題材として、また AI が研究ツールをつくり人が検証する過程そのものを学ぶ教材として、同研究所と検討します。

  • 企業・自治体との研究開発:農林水産資源の高付加価値化、土地利用の変化の追跡、環境配慮の説明責任など、企業や自治体が地域のデータを必要とする場面で、同じ手順・同じ数字で議論できる共通基盤として提供することを検討します。

いずれも具体的な内容・時期は、両社で今後検討を進めます。

開発と検証のプロセス

本ツールは、AIエージェントが仕様に沿って実装とテストを行い、開発に用いたものとは別系統のAIエージェントが独立にレビューする、という往復を6回繰り返して公開に至りました。レビューでは、複数タイルの合算漏れ、タイル命名規則の誤り、衛星画像の位置合わせ、反射率補正の扱い、対象範囲の切り落としなど、単一地域の試行では表面化しない不具合が段階的に見つかり、そのつど修正と回帰テスト(現在26本)を追加しています。レビュー過程では、公開した実行記録について、入力6ファイルのハッシュ値が一致し、出力6ファイルも独立した環境でバイト単位で一致することが確認されました。

このプロセスは、SS-HD とスペースノーム研究所が研究のオートメーション化を目指して開発を進めているSpaceAgent で実現を目指す「AIが研究の手を動かし、別のAIが検証し、人が判断する」自律研究基盤をベースにした研究の進め方を、衛星データ解析という地上の題材で実践したものです。

公開の概要

項目

内容

名称

satellite-landuse-toolkit(Python パッケージ名 slandu)

v1.0.0(2026年9月13日)

リポジトリ

https://github.com/ss-hd-jp/satellite-landuse-toolkit

DOI

10.5281/zenodo.22730573(全版共通)/
10.5281/zenodo.22730574(v1.0.0)

ライセンス

MIT(コード)。ダウンロードされる各データは提供元のライセンスに従う

動作環境

Python 3.10 以上、rasterio・numpy・scipy・Pillow、外部コマンド curl

同梱文書

データカタログ(出典・ライセンス・引用表記・落とし穴)、納品前チェックリスト、実行記録(いずれも英語・日本語)

スペースシードホールディングス株式会社 代表取締役CEO/株式会社スペースノーム研究所 SPACE LAB. 所長 鈴木健吾コメント

「衛星データは、もう誰でも手に入る時代です。難しいのは、正しく分析して解釈することでした。自分の町を衛星から眺め解析し、どこまで言えてどこから言えないかを考える。それは中高生にも、企業の現場にも必要な経験です。宇宙教育に長く取り組んできたスペースノーム研究所において、その可能性を追求していきたいと考えています。」

今後の展開

SS-HD は、本ツールを起点に以下を進めます。

  1. 国内外の地域事業での活用:農林水産資源の高付加価値化に取り組む国内外の地域で、土地利用の現状把握と変化の追跡に本ツールを用い、パートナーと同じ手順・同じ数字で議論できる基盤とする。

  2. 教育プログラムへの展開:スペースノーム研究所と、中高生向けの探究型プログラムでの活用を検討する。国内の湿原地域を例にした日本語の実行手順書を、教育向けに再構成して公開する。

  3. 企業・自治体との研究開発:スペースノーム研究所と、企業・自治体が地域のデータを必要とする場面での共同研究・研修への活用を検討する。

  4. 研究機関との共著:対象地域の研究機関と、本ツールを用いた土地利用解析の共同発表を検討する。

  5. AIを用いた研究のオートメーションへの活用:本開発で確立した「AIによる実装、別系統のAIによる独立レビュー、人による判断」の往復を、宇宙利用研究の実験自動化基盤の検証手順として整備する。

スペースシードホールディングス株式会社について

スペースシードホールディングス株式会社は、「SFをノンフィクションにする」をミッションとして、投資活動、研究活動ならびに事業創出を行う宇宙系ディープテックベンチャービルダーです。発酵とロンジェビティ技術の社会実装を支援する「Fermentation and Longevity Fund」プログラムの運用などを軸に、社会課題を解決する事業の創出に取り組んでいます。

https://ss-hd.co.jp/

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


会社概要

URL
https://ss-hd.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区浜松町2丁目2番15号 浜松町ダイヤビル2F
電話番号
080-5063-8705
代表者名
鈴木健吾
上場
未上場
資本金
500万円
設立
2024年01月