【ラクスル×Ubieイベントレポート】0→1開発の成功法 〜新規プロダクト開発でBizdevが直面した壁とその超え方〜

ラクスル株式会社

 2021年7月14日にラクスル×Ubie共同主催のオンラインイベント「0→1開発の成功法 〜新規プロダクト開発でBizdevが直面した壁とその超え方〜」が開催されました。
 0→1の事業開発を再現性高く成功させる要点とは何か。ラクスルCOOとUbie代表に加え、両者の事業開発メンバーから見た“事業開発の裏側”も語られました。お互いに多くの質問が飛び交ったトークセッションの様子をお届けします。

  • 目次
・トークセッション1: ラクスルCOOとUbie代表が語る0→1の事業開発の要点
・トークセッション2: 事業開発って現場で何やっているの?
・ラクスルの事業概要について
・Ubieの事業概要について
・質疑応答


<登壇者プロフィール>
【ラクスル株式会社】
執行役員 ラクスル事業本部COO 高城 雄大
横浜国立大学卒業後、NTTコミュニケーションズ、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)にてアジア各国における買収先企業や現地企業とのITインフラ構築、システム開発、サプライチェーン、S&OP改善プロジェクト等に携わる。2015年ラクスル入社。経営企画やSCM、プロダクト開発、複数の新規事業開発を経て、現職。

ラクスル事業本部 事業開発 マネージャー 茶谷 祐司
筑波大学卒業後、ワークスアプリケーションズにて会計パッケージソフトの開発に従事。その後RPAホールディングスを経て、2019年ラクスルに入社。ラクスルでは事業開発担当として、マーケティング、生産ラインの立ち上げ、国内最大手企業とのアライアンスの実現等を行い、担当領域を2年連続で200%以上の成長を実現・国内ECトップシェアクラスまで拡大させる。現在は新規事業責任者として、サービスの立ち上げに従事。

【Ubie株式会社】
共同代表取締役 医師 阿部 吉倫
2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけにデータサイエンスの世界へ。2017年5月にUbie株式会社を共同創業。2019年12月より日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員。2020年 Forbes 30 Under 30 Asia Healthcare & Science部門選出。

プロダクトオーナー / BizDev  松村 直樹
東京大学大学院卒業後、野村総合研究所(NRI)にて経営コンサルタントとして従事。主に、経営管理、新規事業戦略、DX戦略、デジタルサービス立ち上げ支援などのプロジェクトを経験。2019年、Ubieに事業開発担当として入社。セールスプロセス型化などに携わった後、現在、医療機関向けプロダクト「AI問診ユビー」の開発チームにて、プロダクトオーナー(PO)として活動中。
 
  • 【トークセッション1】ラクスルCOOとUbie代表が語る0→1の事業開発の要点
 イベント前半では、ラスクルCOO高城とUbie代表の阿部が登壇。デジタル化が進んでいない伝統的な産業構造をいかにテクノロジーで変革していくのか、0→1の事業開発の要点を語りました。

高城:
 0→1フェーズに限らず、ラクスルにおける事業開発の要点は3点に集約されます。
・オーナーシップ
・ゴール設定/課題設定能力
・エグゼキューション能力
です。
 オーナーシップ(圧倒的な当事者意識)を持ち、ゴールを設定して達成までの道筋を決める力、そして周りを巻き込み価値を実現するエグゼキューション(遂行)力が、ラクスルで働く上では欠かせません。新しいことを始めるのは誰にとってもストレスがかかりますが、失敗を含めて最後までやりきれるかどうかが重要です。
 0→1フェーズにおいては、さらに「高エネルギー生命体」の存在がキーになるでしょう。事業への圧倒的な熱量と行動力が自然と仲間を引き寄せ、台風の目になれる人。そんな人材をいかに集められるかが、事業開発のスピードと質につながります。

 

 事業開発事例の一つに「ノベルティEC事業立ち上げ」があります。狭義の印刷に囚われない「モノへの印刷」で事業領域を急拡大させ、立ち上げから1年で売上1億円、2年で売上高約10億円規模に到達。まさに非連続な成長を実現させました。事業推進の当事者として、何度打席に立ってチャレンジできるか。場数を踏むことは非常に重要です。
 ラクスルでは、四半期に一度、新しい事業アイデアへの投資を募る社内プレゼンテーションを実施しています。「こんな事業をやりたい!」とプレゼンした社員に対し、「そのプロジェクトに参画したい」とほかの社員から手が上がりチームが結成されます。議論の場はだれでもオブザーブできるように公開形式でやっているのですが、毎回、半数以上の社員が参加しており、挑戦への熱量の多さに驚かされます。

阿部:
 「高エネルギー生命体」という表現は非常に的確で面白いですね。
ユビーにおける事業開発の要点は、
・木を見て森も見る
・フォーカスして検証する
・「スケールしないこと」を徹底する
の3つ。ラクスルさんの話と共通する部分が多いです。

 「木を見て森も見る」とは、目の前の個別課題、ユーザーに向き合いつつも、その先の市場の全体像を見据えること。熱狂しつつも冷静に俯瞰する力が大切です。0→1フェーズにおいて、木と森は8:2で見るべきだと考えています。
 「フォーカスして検証する」には、まさに“高エネルギー生命体”が持つ熱量が必要です。目の前の不確実性の課題を細かくつぶしていきながら、わき目も振らずに検証を繰り返す。大企業からの提携の打診など、素敵な雰囲気の甘い誘惑に飛びつかないことも重要です。
 「スケールしないこと」を徹底するとは、検証のためにスケールさせないということです。検証にはN数が必要ですが、0→1では検証に足るほどのユーザー数がいません。なりふり構わず、検証に協力してくれるユーザーを集めることが大事です。
 「AI問診ユビー」の開発では、最強のアルゴリズムを作れた!と自負していたものの、ITに不慣れなご高齢の方に「使いにくい」と言われ落胆したことがありました。それからは、近所の公園や町内会にいるご高齢の方に協力をお願いしては使っていただき、徹底したユーザー視点を取り入れた経緯があります。
 目的意識を持ち、徹底的に検証することで市場が見えてくると思っています。

高城:
 木8:森2という意見には、非常に共感します。事業開発初期のマーケットはそう大きくないので、目の前のユーザーが使えるのかを地道に検証することが大事。ラクスルでも、一人の課題を探りに行くために半年~1年かけることもあります。
 
  • 【トークセッション2】 事業開発って現場で何やっているの?
 後半では、ラクスル事業開発マネージャーの茶谷と、Ubieプロダクトオーナーの松村が登壇し、具体的な仕事内容や現場でのチャレンジや失敗談、そこから得た学びについて意見を交わしました。

茶谷:
 ラクスルのBizDevに求められるのは、担当領域の事業成長に必要なことを何でもやる姿勢です。担当商材の課題を見出し、事業としてやるべきことの戦略を立て、実行に落とし込んでいく。事業を伸ばし、磨くことに徹底してコミットします。

松村:
 UbieのBizDevは、プロダクト開発やマーケプロセスの型化、新規事業開発や専門領域を担っています。ユーザーの具体的な課題を深堀りしてアプローチ方法を検討し、現場での検証を繰り返す。ラクスルさんと似たプロセスですが、「本当に使ってもらえているのか」「手間になっていることはないか」を、現場に張り付いて検証することを大事にしています。
 私は医療機関向けの事業開発に携わっており、エンジニア、デザイナー、医師が一体で動いています。開発実装以外の領域は、お互いの仕事にかかわりながら緩やかな分担で進めています。


 壁や失敗経験についても率直にお二人から語っていただきました。

茶谷:
 これまで直面した壁は数知れずありますが、その一つが「プロダクト開発が終わらずサービスがリリースできない」という失敗経験です。
 新しいプラットフォーム開発では、「こんな機能があったら便利」「こんな例外ケースに対応できるシステムを作らなくちゃ」とやるべきことがどんどん増えていき、リリースが約1か月遅れたこともありました。
 

 そのときに立ち戻ったのは「コア価値を提供できればいい」という視点でした。ミニマムでリリースし、そのあとに機能修正を加えていけばいい。発生頻度が低いエッジケースは、システムで対応するのではなく、オペレーションチームに都度対応してもらえるか社内で交渉しました。

松村:
 機能をどんどん加えたくなる…まさに事業開発あるあるですね。エッジケースを割り切る際に意識していることはありますか。

茶谷:
 オペレーションを担うチームと全体のゴール感を共有し、気持ちよく対応してもらえるように対話を大事にしています。あとは、エッジケースがいつ発生するかを把握するのも重要なポイントです。
 例えば、私が携わったラスクルの新プラットフォーム開発では、リリース当初、決済の再審査機能がありませんでした。リリースから2週間後には、その機能が必要なケースが出てくるため、2週間の間に追加すると決めてリリースしました。どの機能をいつ出せばいいのか、常にリードタイムとの勝負に追われています。

松村:
 Ubieでやりがちな失敗は、ユーザーセグメントを絞り切らずに全ユーザー向けにいいものを作ろうとして中途半端なプロダクトになることです。
 クリニックと病院は課題やオペレーションが全然違うので、両方混ぜて解決しようとすると中途半端なものが出来上がってしまいます。課題や属性によってセグメント分けしたり、「今期はこの課題をやります」とフォーカス課題を決めて取り組むのが大事だと思います。

茶谷:
 おっしゃる通り、セグメントを分け、個別課題にフォーカスするのは重要な視点だと思います。一方で、やりすぎると機能が乱立して何をしたいのか分からないサービスになってしまう。ある程度ユニバーサルなものも必要で、バランスが難しいですよね。

松村:
 そうなんです。ユーザーが抱えている課題の識別は精緻に進めながらも、プロダクトを個別ごとに作りすぎないバランス…。引き続きの課題ですね。
 もう一つ直面した壁は、インタビューや結果指標だけ見ていても、何すればいいか分からないというものです。
例えば、患者さんが問診入力をうまく進められないと、医療機関の方がサポートしてしまい、結果として業務負荷が増えるという課題がありました。これは、現場に入り、よく観察してどこに詰まる原因があるのかを見なければ分からなかったことです。真の課題は現場にあると、改めて感じています。

 

茶谷:
 分かります。開発段階では「この機能があったら便利そう」と想定していても、リリースするとまったく使われないケースもありました。現地に足を運び判断するのはとても大事だと思いますが、本当のブロッカーはどこか、何が“真の課題”なのかの見極めが難しいです。このような課題に対してはどう取り組んでいますか。

松村:
 ユーザビリティはN数を見ると分かります。全員共通の課題か、人によって異なるのかは、数十件の問診データをチーム全員で見に行っています。
 サービス導入後にあまり使われていない場合は、プロダクト改修を提案しながら、医療現場に課題を聞きに行きます。何もないまま「課題は何ですか」と聞いても具体的なものが出てきませんが、「ここを直しました」と持っていくと、「いや、ここじゃなくて、もっとこうしてほしい」と要望が出てくるんです。

茶谷:
 なるほど。小さい課題をクイックに解決し、コミュニケーションを重ねることが大事ということですね。

松村:
 まだまだ提供できる価値はたくさんあると思うので、業界のペインをどう事業につなげていくか。考え続けていきたいです。

  • ラクスルの事業概要について
 印刷、物流、広告など、デジタル化が進んでいない伝統的な産業(レガシー産業)にテクノロジーを持ち込み、産業構造を変え、21世紀型へアップデートさせていく。ラクスルのプラットフォーム事業は、製販一体だった既存の構造から製販分離を進めています。

 

 


<ラクスルのBizDevのミッション>
 仕組みを変えて、"非連続"な事業価値にフルコミットすることです。産業 x BtoBプラットフォームに特化した事業家集団として、事業を立ち上げ、伸ばし、磨き上げます。2013年に印刷EC事業を立ち上げ後、ノバセル、ハコベルへと展開。事業拡大フェーズに伴い、必要な人材にバトンを渡しながら進めています。
 

 事業立ち上げでは、エンジニア、デザイナー、PdMらチームを結成し、「1年間、最大5千万円の赤字までは許容する」と挑戦を後押し。事業の立ち上げ・グロースを担える事業家、さらに複数事業を、中長期スパンで見られる経営人材の育成・輩出を目指しています。
 
  • Ubieの事業概要について
 テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステックスタートアップです。AIをコア技術とし、医療現場の業務効率化を図る「AI問診ユビー」と、症状から適切な医療へと案内する「AI受診相談ユビー」を開発・提供。誰もが自分にあった医療にアクセスできる社会づくりを進めています。
 

<ユビーのBizDevミッション>
 『2023年までに「世界になくてはならないオープンな医療プラットフォーム」になることを目指す』ことです。現在、医療を取り巻く環境には医療現場の「内」と「外」でそれぞれ大きな課題があります。医療現場内は、医療従事者の働き方改革を進め、医療現場の外では、コロナ禍でより顕著になった、生活者(患者)と医療の距離を縮めることです。
 
 こうした課題を解決すべく、わたしたちは「医療版のGoogle」となり、医療における意思決定全体で不可欠なプロダクトとなること、そのために、医療システム全体の生産性向上に寄与できる事業郡を展開していきます。これに向けて、既存事業で蓄積したアセットでレバレッジをかけ、各事業の並行した開発・育成を行うことで、指数関数的に全体成果を最大化させていきます(同時多拠点突破)。

  • 質疑応答
 視聴者からも多くの質問が寄せられました。いくつかを抜粋してご紹介します。

Q 0→1の事業開発を、再現性を持ってできるようにするために、お手本や型はありますか。
A
ラクスル高城:
 これから新しい事業やサービスを作るのであれば、「誰の、何の課題を、どんな風に解決するのか」を一言で答えられることが大事です。明確な回答が出てきたら、「“誰”とは何人いるのか」「課題を解決したら困っている人のうちどれくらいの割合が喜ぶのか」と、事業の対象範囲や期待リターンを具体的に考えていくといいと思います。

Q 新規事業の成功打率はどれくらいでしょう。事業撤退の判定基準、成功失敗の基準とは?
A
ラクスル高城:
 成功打率は3割ほどですが、ここ最近では打率7~8割。打率が高すぎるのは、失敗を恐れてチャレンジが足りないということで、社内ではさらにチャレンジしやすい環境の整備に取り組んでいます。
 事業立ち上げを決めた段階では、クローズの可能性は一切考えていません。立ち上げるまでのプロセスに半年以上かけ、喧々諤々、議論をして厳しい基準をクリアしてきています。立ち上げたらやりきるのみで、2~3年経ってから振り返りを行います。

Ubie阿部:
 「テクノロジー×医療」領域から離れた新規事業はそもそも始めません。プラットフォーム上で事業開発を進め、スタートを決めた段階でソリューションフィットが見えています。初期段階から圧倒的に投資すると決めているので、撤退基準は設けていません。

Q 0→1の事業機会は各社ともにまだありますか。
A
ラクスル高城:
 代表の松本が、10の産業で事業を立ち上げると決めており、その中の印刷事業の中でも次々と事業がうまれており、現在は8事業体制、さらに同じくらいの数の新規事業の候補がリストアップされているので、やれることはたくさんあります。2021年には、グループ会社経営にチャレンジしてもらうなど、経営者も新たに3人生まれています。0→1の立ち上げも、1→10、それ以降のフェーズも、経営への挑戦もできる機会があふれています。

Ubie阿部:
 事業の粒度はラクスルさんほど大きくないですが、1年前に3つだった事業が、今では7事業に広がっています。事業が拡大していけば、それだけポジションの幅も広がり、オーナーシップを持つ機会も増えていきます。

Q 事業立ち上げの次に、グロースフェーズへと意思決定するのはいつですか。
A
Ubie阿部:
 いくら投資すればいくら出てくるのかが分かり、エコノミクスが成立するのが見えてきたら、投資へと踏み込みます。利益とコストがすり合うかが重要です。

Q BizDevで得られたスキルやスタンスとは?

ラクスル茶谷:
 大きな変化は、一つひとつやりきる姿勢を、実践を通じて身につけられたこと。BizDevにいるメンバーは、コンサルやマーケ、エンジニア出身者などスキルセットがさまざまです。共通しているのは、各領域でオーナーシップを持ってやりきった経験があること。必要な知識は入ってから身につければいいという考え方でいます。

Ubie松村:
 おっしゃる通り、スキルはそのときの事業内容によって異なるので、都度キャッチアップしていく必要があります。私自身はコンサル出身なので、Ubieに入った当初はついプランニングして動きがちでした。でもスタートアップに大事なのは、その都度考えて最善の手を打ち、学び、改善していくスタンス。計画通りにはいかないという前提で、プレーヤーとして目の前の課題に向き合う力が大切です。

 

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東京都品川区上大崎2-24-9 アイケイビル1F
電話番号
03-6629-4892
代表者名
永見世央
上場
東証プライム
資本金
-
設立
2009年09月