日本アセアンセンターがインドネシアにおけるグローバル・バリュー・チェーン(GVC) に関する報告書を発行:製造業における科学技術イノベーション(STI)の活性化がGVCを最大化する
国際機関日本アセアンセンター(所在地:東京都港区、事務総長:藤田正孝 以下、センター)は、2021年6月、「Global Value Chains in ASEAN (ASEANにおけるグローバル・バリュー・チェーン)」シリーズ4番目の報告書となるインドネシア編を発行しました。報告書によると、インドネシアの2019年の輸出に占める国内付加価値(DVA)比率は88パーセントと非常に高い数値でしたが、この高いDVA比率は、生産のより底辺に近い段階での製造活動に集中しており、必要とされる輸入投入財と外国技術は最小限のレベルにとどまっています。
インドネシアの経済規模は世界で10番目であり、その国内総生産(GDP)は1.1兆USドルです。それにもかかわらず、製造業は創出される総付加価値のわずか1/5を占めるに過ぎません。これは、生産高ベースで第1次産業の2倍という規模にもかかわらず、製造業が小さな価値しか創出していないことを示しています。マレーシアやタイといった他の上位中所得国と比較しても、インドネシアの所得はより低い水準にとどまり、製造業付加価値の伸びは最も鈍くなっています。グローバル・バリュー・チェーン(GVC)の拡大は、インドネシアの現地製造会社の技術力を伸ばす好機であり、中所得の罠から逃れるための鍵の一つと考えられています。
GVCへの参加度がより高まれば、貿易量や海外直接投資(FDI)も増加し、成長が誘発される可能性があります。報告書ではインドネシアに対し、政策枠組のオプションとしてこの成長モデルの採用を検討するよう推奨しています。FDIの数値は、2014年から2019年にかけて製造業に対するFDIの比率が40%を上回り、そのほとんどが食糧、金属、および機械製造といったミディアム・テクノロジーの製造業に集中していることを示しています。インドネシアは、国内産業および市場を強化し、FDIを戦略的に促進する必要があります。インドネシアをより知識集約型でイノベーション主導型の経済に導くためには、産業および技術面における地域経済のグレードアップを奨励し、例えば先進技術、設計、およびR&D能力に関する人材育成を強化する政策が必要です。
GVCにより深く組み込んだとしても、国の経済力が自動的に最大化されるわけではありません。グローバル生産ネットワークに組み込まれるローカルアクターには、その機会を活用できないものもあります。国際基準の遵守、より多く必要とされる経営資源や財源、および知的財産の保護などの要件により、中小事業者のネットワーク参加が阻まれる可能性があるからです。国レベルでは、付加価値創造プロセスが鍵となります。であるからこそ、効果的な科学技術イノベーション(STI)政策を通じてナショナル・イノベーション・システム(NIS)が果たす役割が、スピルオーバー効果を最大化するうえで不可欠となるのです。
計画的なNISは、製造業において外国技術を現地技術へと変換する橋渡しとなり得ます。多くのの現地の製造会社はロー・テクノロジー部門に留まっているため、インドネシア政府は、GVCにおける現地の製造会社について、特にミディアムロー・テクノロジーレベルおよびミディアムハイ・テクノロジーレベルへのグレードアップを優先させる必要があります。インドネシア政府は、計画的かつ効率的なNISを構築し、産業面におけるキャッチアップ、ならびに産業、R&D、および高等教育に関与する主要省庁との調整に集中して、GVCにおける現地の製造会社のグレードアップをサポートする必要があります。よって、STI政策担当者たちに求められることは、「純ローカル」な何かの創造ではなく、外国技術を現地の技術力に変換するためのネットワーク創造に集中することです。
「ASEANにおけるグローバル・バリュー・チェーン」インドネシア編は、センターのウェブサイトより閲覧・ダウンロード可能です。URLは以下の通り。
https://www.asean.or.jp/ja/centre-wide-info/gvc_database_paper4/
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正式名称:東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター
ASEAN10ヵ国政府と日本政府により1981年に設立。貿易・投資・観光・人物交流の 4 分野を軸に、ASEAN諸国から日本への輸出の促進、日本とASEAN諸国間の直接投資、観光及び人物交流の促進を通して、日本とASEAN諸国との関係促進に貢献する国際機関です。
URL:https://www.asean.or.jp/ja/
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