ノバルティスのinclisiran、動脈硬化性心血管疾患患者の2つのサブグループを対象とした解析で、LDLコレステロールの効果的かつ持続的な低下を確認

  • 動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者にinclisiran(開発コード:KJX839)を年2回投与した第III相試験であるORION-9、10、11試験の併合データを用い、脳血管疾患(Cerebrovascular disease、CeVD)または全身性動脈硬化性疾患(polyvascular disease、PVD)と診断された患者のサブグループ解析を事後的に行った。その結果、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)を一貫して低下させることを確認した
  • 全体的にinclisiranの忍容性は良好で、安全性プロファイルはプラセボと同様で、併合データ全体の結果と一貫していた[1-3]
  • ASCVDのリスク因子の一つであるLDL-Cは、最もよく知られかつ治療可能なリスク因子であるが、スタチンの普及にもかかわらず、患者の80%はガイドラインが推奨するLDL-C目標値を未達成である[4,5]

2021830日、スイス・バーゼル発 ノバルティスは本日、第III相ORION-9試験、-10試験、-11試験の事後プール解析2件の結果を発表しました。ASCVDを有し、CeVDまたはPVDを持つ2つのサブグループに、年2回*のinclisiranを投与したところ、有効かつ持続的なLDL-Cの低下が見られました[1,2]。この結果は、欧州心臓病学会(European Society of Cardiology、ESC)が主催する2021年ESC学会で発表されました。

1件目の解析では、inclisiranで治療を受けたCeVD患者で、プラセボ群と比較してベースラインから510日目のLDL-C値が平均で55.2%低下しました(P<0.0001)[1]。2件目の解析では、inclisiranで治療を受けたPVD患者で、プラセボ群と比較してベースラインから510日のLDL-C値が平均で48.9%低下しました(P<0.0001)[2]。PVDでない患者の結果も同様であり、inclisiran群では、プラセボ群と比較してベースラインから510日のLDL-C値が平均51.5%低下しました(P<0.0001)[2]。

ノバルティスの循環器・腎・代謝領域開発部門統括責任者であるデビッド・スーゲル(David Soergel, M.D.)は、次のように述べています。「LDL-Cが持続的に上昇した状態はASCVDのリスクを高め、心臓発作や脳卒中などの心血管イベントを引き起こしうることが分かっています。これらの解析により分かったことは、年2回*のinclisiranの投与で、より広範な第III相ORIONのASCVD集団と同様に、CeVDまたはPVDを持つ小規模なASCVDの2つのサブグループにおいても、効果的かつ持続的にLDL-Cを低下させたということです。inclisiranは効率的かつ持続的なLDL-C低下をもたらす最初で唯一の低分子二本鎖RNA(siRNA)であり、ASCVDの重要な心血管リスク因子の管理の一助となります。これは、心血管疾患による早期死亡を減らし、阻止することにより、人々の寿命曲線を改善するという私たちの夢に近づくための重要な一歩となります。」

いずれの解析においてもinclisiranの忍容性は良好で、治験薬投与期間中に発現した有害事象(TEAE)としては注射部位の事象がやや多く見られましたが、主に軽度で一過性のものであり、これはORION-9、10、11試験の併合データの結果と一貫していました[1-3]。治験薬投与期間中に発現した重篤な有害事象(TESAE)は、PVD患者でより多く報告されましたが、これは被験者のより進行した疾患に起因する可能性が高いと思われます[2]。

inclisiranは、欧州で初めて承認された唯一のsiRNA LDL-C低下療法です[6, 7]。現在、米国食品医薬品局(FDA)およびその他の保健当局による審査を受けています。

*初回、3ヵ月投与後、その後は6ヵ月毎の投与になります。

脳血管疾患(CeVD)または全身性動脈硬化性疾患(PVD)と診断された患者を対象とした第IIIORION-91011試験のサブグループ解析について
併合解析に使用したORION-9、10、11試験は、多施設共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照の18ヵ月間(540日)の試験であり、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(ORION-9試験)、ASCVD(ORION-10試験)、ASCVDまたはASCVDと同等のリスク(ORION-11試験)を有し、スタチン療法中でLDL-C値の更なる低下を要する患者3,655例を対象にinclisiranを評価したものです[1-3]。これらの試験の主要評価項目は、510日目におけるLDL-Cのベースラインからの変化率と、90日目から540日目までのLDL-Cのベースラインからの時間で調整した変化率でした[1-3]。3試験すべてで主要評価項目が達成されました[3]。安全性を540日間評価しました[1-3]。

診断が確定されたCeVDの事後解析には、診断が確定されたCeVD患者202名(inclisiran投与群110名、プラセボ群92名)が含まれました[1]。診断が確定されたCeVD患者は、虚血性脳卒中の既往歴、および/または(血管造影または超音波検査による)70%を超える頸動脈狭窄の既往歴、および/または経皮的ないし外科的な頸動脈血行再建術の既往歴を有していました。

PVDの事後解析には、PVD患者470名(inclisiran投与群228名、プラセボ群242名)が含まれました[2]。PVD患者は、冠動脈、脳血管、末梢血管の主要動脈血管領域のうち、2領域以上でASCVDを有していました。

ORIONIIILDL-C低下試験について
ORION-9試験は、医療従事者がinclisiranナトリウム300mg(inclisiran 284mgに相当)を皮下投与したときの有効性、安全性および忍容性を評価する、ピボタル第III相、プラセボ対照、二重盲検、無作為化試験でした。家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の臨床的または遺伝的エビデンスがあり、最大耐用量のLDL-C低下療法(スタチンまたはエゼチミブなど)にもかかわらずLDL-C値が高い482例に、初回投与から3ヵ月後、その後は6ヵ月ごとにinclisiranを投与しました[8]。ORION-9試験の主要評価項目については、inclisiranは510日目にプラセボで調整したLDL-Cの平均変化率を48%低下させ(P<0.0001)、90日目から540日目までの期間で調整したLDL-Cの変化率を44%低下させました(P<0.0001)。この国際試験は8ヵ国46施設で実施されました[8, 9]。

ORION-10試験は、医療従事者がinclisiranナトリウム300mg(inclisiran 284mgに相当)を皮下投与したときの有効性、安全性および忍容性を評価する、ピボタル第III相、プラセボ対照、二重盲検、無作為化試験でした。ASCVDを有し、最大耐用量のLDL-C低下療法(スタチンおよび/またはエゼチミブなど)にもかかわらずLDL-C値が高い患者1,561例に、初回投与から3ヵ月後、その後は6ヵ月ごとにinclisiranを投与しました[10]。ORION-10試験の主要評価項目については、inclisiranは510日目にプラセボで調整したLDL-Cの平均変化率を52%低下させ(P<0.0001)、90日目から540日目までの期間で調整した変化率を54%低下させました(P<0.0001)。本試験は米国の145施設で実施されました[9, 10]。

ORION-11試験は、医療従事者がinclisiranナトリウム300mg(inclisiran 284mgに相当)を皮下投与したときの有効性、安全性および忍容性を評価する、ピボタル第III相、プラセボ対照、二重盲検、無作為化試験でした。ASCVDまたはASCVDと同等のリスクを持ち、最大耐用量のスタチン療法(エゼチミブの併用は問わず)にもかかわらずLDL-C値が高い患者1,617例に、初回投与から3ヵ月後、その後は6ヵ月ごとにinclisiranを投与しました[10]。ORION-11試験の主要評価項目については、inclisiranは510日目にプラセボで調整した変化率を50%低下させ(P<0.0001)、90日目から540日目までの期間で調整した変化率を49%低下させました(P<0.0001)。この国際試験は7ヵ国70施設で実施されました[9, 10]。

第III相ORION-9、10、11試験は、より大きなVictORIONダイナミック・エビデンス・ジェネレーション・アライアンスの一環として行われました。VictORIONは、inclisiranが毎日ASCVDと向き合う患者の現状を打破し、どのように大きな変革をもたらしうるかを評価することを目的として設計されています。

動脈硬化性心血管疾患ASCVD)について
ASCVDは、時間の経過と共に動脈内壁に主にLDL-Cが蓄積する疾患です。動脈硬化性プラークの破裂は予測できず、心臓発作や脳卒中などの動脈硬化性心血管イベントを引き起こす可能性があります[11, 12]。ASCVDは、全心血管疾患死亡の85%以上を占めます[13]。ASCVDは欧州における主要な死因であり、米国におけるASCVDの負担は他の慢性疾患に比べて大きなものとなっています[14, 15]。ASCVDと同等のリスクとは、ASCVDイベントと同様のリスクをもたらす状態(糖尿病、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体など)を指します[10, 16]。

inclisiran (開発コード:KJX839について
inclisiranは、RNA干渉(RNAi)の作用機序を介してLDL-C値を低下させ、致命的な心血管疾患であるASCVD患者の転帰改善に役立つ可能性がある最初で唯一のsiRNA治療薬です[8, 10, 17]。 inclisiranは、年2回の投与で*、効果的かつ持続的なLDL-C低下により、スタチンを補完します[8, 10]。inclisiranは、肝臓での標的タンパク質の産生を阻害し、LDL-Cの肝臓への取り込みを増加させ、血流から除去するという、他の治療法とは異なる作用があります17。inclisiranは初回投与後、3ヵ月目に投与し、その後は6ヵ月ごとに投与します[8, 10]。3件の臨床試験では、inclisiranを6ヵ月ごとに投与することによりLDL-Cは低い値に維持されました[8,10]。inclisiranは皮下注射として病院で投与され、患者の受診サイクルにスムーズに組み入れられると予想されます[8, 10]。

第III相試験において、inclisiranの忍容性は良好でした。最も多く報告された有害事象(inclisiran投与患者の3%以上で、プラセボ群よりも高頻度に発現)は、注射部位反応、関節痛、尿路感染、下痢、気管支炎、四肢痛および呼吸困難でした。注射部位反応が最も多く発現しました。これらは概して軽度であり、重度または持続性の事象はありませんでした。

ノバルティスは、RNAi治療薬のリーダーであるアルナイラム・ファーマシューティカルズ社とのライセンス・提携契約の下で、inclisiranの開発、製造、商品化の世界的な権利を取得しています。

循環器・腎・代謝領域におけるノバルティスについて
患者さんの寿命を延伸させるためには、公衆衛生上の大きな課題が依然として残されており、それらに対処する必要があります。ノバルティスは、循環器・腎臓・代謝領域の疾患において確固たる地位を築いており、今も拡大しています。ノバルティスは、「エンレスト®錠」(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)に加え、循環器・腎・代謝疾患に対応するファースト・イン・クラスの可能性を持つ充実したパイプラインを有しています。

免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。

ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上

参考文献
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ビジネスカテゴリ
医薬・製薬

会社概要

URL
https://www.novartis.co.jp
業種
製造業
本社所在地
東京都港区虎ノ門1丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー
電話番号
03-6899-8000
代表者名
レオ・リー
上場
未上場
資本金
60億円
設立
1997年04月