中小企業における生成AI活用に関する実態調査
株式会社エフアンドエムが運営する中小企業総合研究所によるレポート

生成AIは、文章作成や情報整理にとどまらず、議事録の作成、データの集計、社内規程のたたき台づくり、経営上の相談相手など、幅広い業務で使われ始めています。無料で試せるツールも多く、専門の担当者がいない企業でも手軽に使い始められるようになりました。一方で、中小企業では推進役となる人材や教育に割く時間が限られ、情報の取り扱いや出力内容の確認といった課題も抱えやすい傾向にあります。利用が個人単位で先に進み、会社として実態をつかめていないケースも少なくないと考えられます。本調査は、中小企業における生成AIの利用状況、利用しているツールと用途、実感している効果、利用上の課題、利用停止・未導入の理由、社内ルールの整備状況を明らかにし、生成AIの導入や活用を検討する際の判断材料を提供することを目的として実施しました。
1.調査結果
本調査は、エフアンドエムクラブ会員企業を対象にアンケートを実施したものである。調査期間は2026年7月1日から7月31日までとし、有効回答数は2,503社である。設問内容に応じて単一回答および複数回答を設定しており、未回答は集計対象から除外している。
生成AIを現在業務で利用している企業は約7割に上った。ただし、ほぼ毎日利用する企業は約2割にとどまり、「必要な時だけ」のスポット利用が最も多い。自由記述では、社内の一部の人だけが使っているとする声が目立ち、会社として使いこなしている企業はまだ限られる。

利用の中心は無料の汎用テキスト生成AIで、用途はメール・報告書の作成が6割超、経営判断の参考や壁打ちが5割弱と上位を占めた。

ほぼ毎日利用する企業の約7割が有料版を使い、効果も幅広く実感している。一方で、情報漏えいなどのリスクや出力内容の確認を課題に挙げる割合も高い。


利用停止・未導入の最大の理由は、いずれも「どの業務に使えばよいかイメージが湧かない」だった。費用やリスクを理由とする企業はわずかで、導入の壁は「使い道」にある。

社内ルールを整備している企業は約1割にとどまる。ほぼ毎日利用する企業でも6割近くが個人任せ、または利用実態を把握していない(※調査レポート本編の利用頻度別分析より)。

2.まとめ
◆利用は7割、日常的な活用は2割にとどまる
生成AIを現在業務で利用している企業は約7割に達し、中小企業にも利用が広がっていることが確認された。ただし、ほぼ毎日利用している企業は約2割で、最も多いのは「月に数回、必要な時だけ」のスポット利用だった。自由記述では「一部従業員は毎日のように利用しているが、使わない人はほとんど使っていない」といった声が目立ち、ルールの設問でも「社長以外は使用しない」「幹部のみ使用している」との回答が見られた。約7割という数字には、会社として使いこなしている企業だけでなく、一部の人が個人的に使っている企業も多く含まれていると見るべきだろう。
◆使い込むほど効果も課題も見えてくる
利用頻度による差は大きい。ほぼ毎日利用する企業では約9割が「業務の質の向上」を、6割台半ばが「労働時間の削減」を挙げたのに対し、月に数回の企業ではそれぞれ5割台半ば、4社に1社にとどまった。有料ライセンスの利用も、ほぼ毎日の企業で約7割、月に数回の企業で約2割と開きがある。
課題の中身も異なる。ほぼ毎日利用する企業では、情報漏えい・著作権のリスクや出力内容の確認・修正の手間を挙げる割合が高い。利用頻度が低い企業では「どの業務に組み込めばよいか」が上位に来る。使い込むほど効果を実感できる一方、誤った回答の見極めや情報の扱いといった新しい課題に向き合うことになる。「できることが増えて逆に仕事が増えている」という声は、その両面をよく表している。
なお、本調査は一時点の結果であり、利用頻度と効果の関係を示すものである。頻繁に使うから効果が出るのか、効果が出たから頻繁に使うようになったのかまでは判断できない点に留意が必要である。
◆導入の壁は費用やリスクより「使い道」
利用を停止した企業、一度も利用したことがない企業の双方において、最も多い理由は「どの業務に使えばよいか、具体的なイメージが湧かない」だった。利用中の企業でも「運用の型がわからない」が課題の2番目に挙がっている。注目したいのは、情報漏えいなどのリスクに対する意識の違いである。利用中の企業では最も多い課題だったが、未導入の理由として挙げた企業はごくわずかだった。リスクを意識するのは実際に使い始めてからで、使う前の段階では「何に使うか」が見えないことが最大の壁になっていると考えられる。
また、未導入の企業の約3割は「必要性を感じない・関心がない」と答え、その割合は50人以下の企業で高い。一方、51人以上の未導入企業では推進できる人材の不足を挙げる割合が高く、関心の有無よりも社内の推進体制が課題となっている。
◆利用の広がりにルールが追いついていない
社内ルールを整備している企業は全体の約1割にとどまった。全体の数字には利用していない企業も含まれるが、ほぼ毎日利用する企業に限っても、ルールがあるのは約4社に1社である。6割近くは個人の判断に任せているか、利用実態を把握していない。
業種別に見ると、利用している企業が8割を超える医療・福祉で、ルールを整備している企業は5%に満たない(※調査レポート本編の業種別分析より)。利用者や患者などの個人情報を多く扱う業種であるだけに、早めの対応が求められる状況といえる。
自由記述では、個人情報の入力を避ける運用をしていても「社員全員がきちんとこのような運用を守っているのかも分からない」という不安や、従業員が個人で課金したアカウントを業務に使っている実態が挙がった。ルールがないまま利用が広がると、会社としてリスクを把握できなくなるおそれがある。
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