【台湾情報】台湾における燃料電池産業の発展概況<ワイズ機械業界ジャーナル2022年9月第5週号発行>
〜台湾機械・エネルギー・電子・自動車業界の最新動向を分析する〜
ワイズコンサルティング グループ(本社:中華民国台北市、代表取締役:吉本康志)は台湾機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の2022年9月第5週号を発行しました。今週号では、機械設備業界、電池業界、横型マシニングセンタメーカーの大立機器と金型業界の動向を紹介します。
<最新号目次>
- 台湾機械産業のトピックと2022年下半期の展望
- 燃料電池産業の世界的動向と台湾における発展概況
- 横型マシニングセンタのメーカー 大立機器
- 台湾金型産業の概況と2022年下半期の展望
<台湾における燃料電池産業の発展概況>
台湾の発展概況
台湾の電源構成(エネルギーミックス)において約80%を占める化石エネルギーは、大気を汚染するほか、温室効果ガス排出の要因ともなっており、政府はさまざまな法整備や補助政策を通じて各方面に再生可能エネルギーの導入を奨励している。また台湾では今後、水素がエネルギー供給源の選択肢の一つとなるとの考えから、2018年に経済部能源局(エネルギー局)が定置型燃料電池システム設置に関する補助規定を発表。
最近でも、政府機関が提案する未来の台湾におけるエネルギー革命や2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を目指す計画に、水素エネルギーを導入すべきとの内容が盛り込まれたほか、経済部は水素エネルギー推進チームを編成し、同エネルギーの応用拡大を図っている。さらに政府が2022年3月30日に発表した「台湾2050浄零排放路径(台湾2050年ネットゼロ実現ロードマップ」では、水素エネルギーの管理に関する特別法の制定や将来的な水素エネルギーによる発電計画の推進が提案された。
台湾では燃料電池産業が高度に発展しており、原材料、部品、周辺製品、末端の電池システムまでを全て供給可能な状態にある。台湾は世界的大手メーカーに重要部品や製品を提供できる能力を有する上、燃料電池の組み立てに関する経験が豊富に蓄積されている。
現在、台湾の関連企業は主に5キロワット(kW)の燃料電池システムに関する研究開発(R&D)に取り組んでいるほか、▽スマートグリッド、▽産業界における余剰水素の再利用、▽電動車両、▽遠隔地における災害時の通信用予備電源など、さまざまな分野における水素エネルギーの応用も進めている。中でも高力熱処理工業(KAORI)、中興電工機械(中興電、CHEM)、鼎佳能源(Toplus Energy)、鐙鋒緑能科技(ハイパワー・グリーンテック)は現在、台湾各地に定置型発電システムを供給しているほか、バックアップ電源としての燃料電池を活用するためのモデル施設を設置している。
一方、民間シンクタンク、台湾経済研究院(台経院)と業界団体の台湾水素エネルギーおよび燃料電池パートナー連盟(THFCP)は、長年にわたり燃料電池産業の発展に向けた取り組みを続けており、最近では澎湖県馬公市と台中市協和大心社区で5kWの燃料電池をバックアップ電源として活用するプロジェクトを進めている。
まとめ
世界的に見ると、燃料電池分野をリードする地域はアジアおよび欧米に集中しており、各国とも技術開発や政策の制定において参考とすることが可能だ。一方、台湾では2022年、水素エネルギーの管理に関する特別法制定や将来的な水素エネルギーによる発電計画の推進が発表されたが、域内では依然としてバックアップ電源としての利用が中心となっており、大型の燃料電池を「ベースロード電源」(低コストで安定的に発電できる電力源)とする事例や低炭素水電解工場の設置事例は少ない。(続く)
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