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WWFジャパン
会社概要

日本の両生類ペット取引が脅威に 81%がワシントン条約の規制対象外と判明

~11月の締約国会議に向け市場調査~

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン

野生生物のペット利用が生物多様性の脅威になっていることへの懸念が強まっているなか、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:末吉竹二郎 以下、WWFジャパン)とその野生生物取引監視部門であるTRAFFICは、特に絶滅のリスクが高いグループである両生類の取引について調査を実施。今回、日本の両生類ペット取引に関する調査について、報告書『Illuminating Amphibians: the amphibian trade in Japan(タイトル和訳:日本の両生類取引)』(英語版のみ)にまとめ、本日、公開しました。

近年、「ペット」として取引される動物種の、ワシントン条約附属書への追加や規制内容の強化が増えていますが、両生類や爬虫類については規制が追い付いていないのが実情です。とりわけ両生類は、世界で存在が知られるおよそ8,000種の40%がすでに絶滅のおそれがあるとされますが、ワシントン条約の規制対象となっているのは2%あまり無規制に行なわれる国際取引の影響が強く懸念されています。
 

こうした懸念から、2019年の同条約第18回締約国会議(CoP18)では、両生類の国際取引や保全状況を把握するための取り組みを条約事務局や締約国が協力して実施することが、正式に決定されました。

この国際的な動きを踏まえ、WWFジャパンとTRAFFICでは、両生類のペット取引の実態を把握するために2020年~2021年にかけて、最大の輸入国である米国と日本にフォーカスした2つの調査を実施公式な統計が存在しない野生生物のペット利用について、オリジナル調査をもとに、実態を明らかにしました。2021年11月に米国の輸入統計に基づく種のリスク評価報告書を発表、そして今回、日本市場と日本原産種の取引調査に関する報告書を発表しました。

今回の調査報告書が明らかにした実態(詳細は【TRAFFIC調査概要】を参照)
  • 日本は世界各地から生きた両生類を輸入し、輸入は増加傾向。日本のペット市場で国内外原産の様々な両生類が取引されるが、ワシントン条約の規制対象でない種が81%を占め、野生捕獲が個体数減少の要因となっている懸念があること。
  • 絶滅のおそれがある種や、特に野生捕獲が脅威となっている可能性の高い種・分類群を特定した。
  • 絶滅の懸念があるシリケンイモリをはじめ日本に生息する両生類もペット取引の脅威に晒されていること

今年1月、環境省が日本に生息する絶滅の恐れがあるサンショウウオ26種を種の保存法の国内希少種に指定したことは、活発に行なわれる両生類のインターネット取引等への対策にもつながると言えます。

報告書では、調査結果を受けて次の3点を提言しています。WWFジャパンとTRAFFICでは、今年11月にパナマで開催されるワシントン条約CoP19に向け、関係国・機関に対策や対応を求めるとともに、日本国内の対策を後押していきます。
  1. ​取引により影響を受けている可能性が高い種・分類群についてワシントン条約の取引規制や生息国での保全措置の導入を検討すること
  2. 「消費国」としての日本は、両生類を扱う事業者の法的管理の導入(動物愛護管理法)と、eコマースを含む事業者による自主的な調達の改善に取り組むこと
  3. 「原産国」としての日本は、シリケンイモリの附属書Ⅱ掲載ほか、取引の影響を受けている恐れがある種の国内法での保護、および海外取引状況のモニタリングの実施を検討すること

【TRAFFIC調査概要】
~ Illuminating Amphibians:the amphibian trade in Japan(2022年3月)~
 ■調査目的
ペット取引により影響を受けている両生類の種・分類群を特定し、ワシントン条約による取引規制を含む保全措置を提案する。本調査では、米国に次ぐ第2位*の両生類輸入国であると同時に、多くの固有な両生類が生息する日本に焦点をあてた。
1)「消費国」としての日本➡日本の両生類輸入および日本市場の調査
2)「原産国」としての日本➡日本市場と欧米市場における日本固有の両生類の取引状況の調査
(*ワシントン条約対象種の輸入記録にもとづく)
■手法
※メインとなる日本の市場調査では、複数のデータ収集手法を組み合わせて、国内で販売される両生類のインベントリを作成し、分析を実施(対象期間2020年1月~2021年4月)

■結果概要

1.    日本への両生類の輸入
  • 日本は2005~2020年の間に129,809頭、3億8400万円相当の生きた両生類を輸入。輸入量・金額ともに増加傾向にあり、輸入元地域は多様。分析期間中の総量では米国が最大であったが、近年ヨーロッパの他、中南米、アフリカ、アジアからの輸入が拡大し、2018~2020年はニカラグアやペルーなどが新たな輸出国として台頭していることなどから、野生個体や新たにペット取引される種を含む原産国から直接の輸入の増加が懸念される。※TRAFFICが2021年11月に発表した米国の輸入統計分析ではワシントン条約非掲載種の輸入個体数の29%が野生由来と申告されていることも明らかになっている。

2.    日本での両生類の販売状況
  • 日本の市場調査(対象期間2020年1月~2021年4月)から、少なくとも230種と25亜種(計255種・亜種)の両生類の販売を確認。うち85%(216種・亜種)が海外原産で、日本原産種は39種・亜種が確認された。※本調査は2022年1月にサンショウウオ類26種が種の保存法で国内希少種に指定される前に実施された点に留意。
  •  230種のうちワシントン条約非掲載種が81%を占め、IUCNレッドリストの絶滅危機種(CR/EN/VU)は16%、近危急種(NT)もあわせると全体の4分の1に上った。無規制な取引の影響が懸念される結果。
  • 日本原産の両生類39種・亜種には、絶滅危機7種(EN/VU)、近危急種(NT)9種が含まれた。
  • 少なくとも一つの販売個体・広告で野生捕獲(WC)の表示が見つかった種は全体の27%(68種・亜種)。うち日本原産種が約3割(=22種。販売が確認された日本原産種の半数以上)。国内法で両生類は個体の出所についての表示義務が無く、実際の野生個体の利用はさらに多いことが予想される。
  • ペット取引により影響を受けている可能性の高い属以上の分類群にはツノガエル科(ツノガエル属Ceratophrys spp. やチャコガエル Chacophrys pierottii)、サラマンドラ属(Salamandra spp.)、トラフサンショウウオ属(Ambystoma spp.)、イモリ属(Cynops spp.)、アマガエルモドキ科(Centrolenidae)、ツブハダキガエル属(Theloderma spp.)等が含まれた。※このほか、報告書本体では絶滅危機種(表4)や特に野生利用によるリスクのある種(表7:海外原産種;表8:日本原産種)を紹介。

3.    欧米サイトでの日本固有種の取引
  • 調査対象29種のうち、シリケンイモリ、アカハライモリ、イボイモリの3種の取引を示す投稿を確認。このほか、サンショウウオ属(Hynobius spp.)7種とツクバハコネサンショウウオ(Onychodactylus tsukubaensis)の所持を示す投稿も確認。今回の対象は、国内での捕獲・取引が禁止されている種も含むため、より詳細な海外の取引状況の調査が必要である。
■提言概要​​
  1. 取引により影響を受けている可能性が高い種・分類群についてワシントン条約の取引規制や生息国での保全措置導入
  2. 「消費国」としての日本➡両生類を扱う事業者の法的管理の導入(動物愛護管理法)と、eコマースを含む事業者による自主的な調達の改善(合法性、持続可能性、トレーサビリティの担保)
  3. 「原産国」としての日本➡シリケンイモリのワシントン条約附属書Ⅱ掲載ほか、取引の影響を受けている恐れがある種の国内法での保護、および海外取引状況のモニタリング

 

★本調査の報道と併せて使用可能な関連種の写真とキャプション(左から1~5)

1.©Yuma Kanamori /シリケンイモリ(Cynops ensicauda)沖縄本島やんばるにて。IUCNレッドリストでVU(危急種)、環境省レッドリストでNT(準絶滅危惧)指定。国内で活発にペット取引され、野生捕獲(WC)の表示も。欧米のサイトでも取引が確認された。
2. © David Lawson_ WWF-UK/ベルツノガエル(Ceratophrys ornata)、ウルグアイ、ブラジル、アルゼンチンに生息。IUCNレッドリストで近危急種(NT)に分類され、日本でもペット取引が活発。ツノガエル科は人気が高く、人工交配されたブリードも流通するが、一部の種では野生捕獲(WC)個体も流通し、取引の影響が懸念される。
3.© Maurizio Biancarelli_WWF/ファイアサラマンダー(Salamandra salamandra)、クロアチアの国立公園にて。多様な亜種が存在するヨーロッパ原産のファイアサラマンダーは日本でも人気。輸入や野生捕獲(WC)表示の個体も散見された(レッドリストでは低危険種LC)。カエルツボカビ症を引き起こす真菌の感染が広がり、オランダでは7年間に野生個体の99.9%が死滅したと報告されている。
4.© John Vess/アカメアマガエル(Agalychnis callidryas)、コスタリカにて。ペット人気が高く、ワシントン条約の附属書Ⅱに掲載されている(レッドリストでは低危険種LC)。日本の市場調査では野生捕獲(WC)表示の個体の販売が確認された。
5.  © André Bärtschi_WWF/グラスフロッグの一種(アマガエルモドキ科:Centrolenidae)、ペルーのマヌ国立公園にて。中南米原産のグラスフロッグは近年ペット人気が高まり、2019年に開催されたワシントン条約第18回締約国会議で科ごと附属書Ⅱに追加する提案されたが、情報の欠如等から採択されなかった。日本でも近年新たな種の流通が宣伝され、野生捕獲(WC)表示の個体も確認されていることから、取引の影響が懸念される。
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●ワシントン条約について:
1973年3月3日、米国ワシントンで採択され、1975年に発効した「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)」です。野生動植物の国際取引が種を絶滅の危機にさらすことなく、持続可能な形で行なわれるように、加盟国が協力して「取引規制」を行なう枠組みです。2~3年に一度開催される締約国会議(CoP)では、取引規制の対象とする種を掲載する「附属書」の改定が重要な議題となります。2022年11月にはパナマでCoP19が開催されます。
●TRAFFICについて:
英国ケンブリッジに本部を置く国際組織。ワシントン条約が発効した翌1976年、野生生物取引に関する調査・モニタリングの必要性を受け、IUCN(国際自然保護連合)とWWF(世界自然保護基金)の共同プログラムとして設立されました。そのネットワークは世界各地に広がり、他の多くの団体と連携しながら、過度な利用から野生生物を守り、持続可能なレベルで管理される社会の実現をめざして、活動を続けています。日本においては、WWFジャパンの野生生物取引監視部門として活動しています。
●WWFについて:
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けた活動を行なっています。
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■関連情報
・ワシントン条約CoP19を前に-日本の両生類ペット取引調査報告
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4966.html
・両生類の国際取引に警鐘!取引データにもとづく種のリスク評価を発表
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4748.html

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1971年09月
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