Indeed 共働き子育て夫婦から考える「働き方・キャリアのジェンダーギャップ解消」に向けた有識者会議:開催レポート

共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップの課題は「自身のキャリアのコントロールの難しさ」「夫婦間の情報格差」。解消の第一歩は「キャリアを選択できる社会」「正直なコミュニケーション」

Indeed Japan株式会社

世界No.1求人サイト*「Indeed (インディード)」の日本法人であるIndeed Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:大八木 紘之、https://jp.indeed.com以下 Indeed)は、共働き子育て夫婦から考える「働き方・キャリアのジェンダーギャップ解消」に向けた有識者会議を2024年9月18日(水)に開催しました。本会議には、Indeed Japan代表取締役の大八木の他、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 准教授の治部れんげ氏、日本ギャップ解決研究所所長/NPO法人ファザーリング・ジャパン副代表の塚越学氏、慶應義塾大学総合政策学部 教授の中室牧子氏が参加しました。

「We help people get jobs.」をミッションに掲げるIndeedは、あらゆる人々が公平に自分にあった仕事を得られる社会の実現を目指しています。日本における雇用の障壁やバイアスの元となる課題の一つは、ジェンダーギャップにあると考えられることから、Indeedは継続して、仕事や労働環境におけるジェンダーエクイティの実現に向けた取り組みを進めています。2022年に実施した5,000名以上の声を集めた大規模調査(※1)では、特に育児と仕事の両立においてジェンダーギャップを感じている方が多い様子が伺えました。そこで今年度、Indeedは「共働きで子育て中の男女」におけるジェンダーギャップ解消に向けた取り組みを進めています。2024年9月18日に「共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップ調査」結果(※2)を発表するとともに、この結果を元に仕事とジェンダーギャップの関係にご知見のある皆様とともに、ギャップ解消に向けた糸口を探るための有識者会議を開催しましたので、その内容をお知らせいたします。

■ 有識者会議 実施概要

  • 開催日時:2024年9月18日(水)13:00-14:00

  • 会場:東京都内会議室(赤坂スターゲートプラザ RoomB)

  • 登壇者:
    治部れんげ(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 准教授)
    塚越学(株式会社日本ギャップ解決研究所所長/NPO法人ファザーリング・ジャパン副代表)
    中室牧子(教育経済学者/慶應義塾大学総合政策学 教授)
    大八木紘之(Indeed Japan株式会社代表取締役/ゼネラルマネジャー)

■有識者会議 開催レポート

【第一部】課題の可視化・深掘り

  • 共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップの課題は「社会全体における、仕事と育児の両立の浸透不足」「自身のキャリアのコントロールの難しさ」「夫婦のコミュニケーション不足」

会の冒頭では、「共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップ調査」結果(※2)の共有を行いました。特に男女ともに正社員として働いている夫婦における「仕事の調整格差」の実態に注目が集まりました。

仕事の調整理由:子どもの体調不良などの不慮の対応や、子ども関連行事への参加などの緊急・イレギュラーな対応をする割合は女性の方が多い
仕事の調整内容:第一子誕生後「仕事の遅刻・早退・中抜け」や「欠勤・有給取得の頻度」が増加した割合は女性の方が多い

これらの結果を踏まえ、治部れんげ氏のファシリテーションのもと、共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップの課題と、その要因について、登壇者それぞれの観点からコメントしました。

治部氏は「『仕事の調整格差』において、調整の指標はおそらく人それぞれ違うのではないかと思います。例えば、残業できないことが当たり前だと思う人は、残業しないことを調整だとは思わない。そのような男女間の認識の違いが調査データに表れていて興味深いと感じました。私自身、育児と仕事の両立を経験してきていますが、団塊ジュニア世代が抱えていた課題は改善されてきたものの、やはり今でもジェンダーギャップは残っている印象を受けました」と時代の変化に伴い改善はしてきているものの、依然ジェンダーギャップが存在している点を指摘しました。


それを受けて塚越氏は「『正社員として働いていたが、第一子の出産・育児をきっかけに働き方・キャリアを変えた(女性62.3%、男性34.5%)』という部分では、厚生労働省でも令和2年に似たデータ(※3)を公表していますが、ほぼ今回の結果と変わっていません。つまり、この4年間ほぼ状況が変わっていないと言えるでしょう。この4年間で『育児・介護休業法』の改正があり、男性の育児休業取得率は上がったものの、育児休業から復帰したら相変わらず男性には長時間労働が待ち受けている実態もあることは多いです。社会全体に、特に男性における育児と仕事の両立が浸透していないことが今回の調査データから伺えます」と特に課題に感じている点をコメントしました。

第一子の出産や育児をきっかけに、働き方・キャリアを変えた割合は女性の方が多い

中室氏は教育経済学の観点から「キャリアについて夫婦間で話し合っていない人が非常に多い結果がありましたが、これは日本のキャリア構築が自分主体になっていない点が要因ではないかと思います。人事昇格を例に挙げると、日本ではある一定の時期に辞令が下るケースが多いですが、欧米などの海外では自分のライフイベント、ライフステージに応じて適切なタイミングで昇格を申請する場合があります。これは、キャリアを自分でコントロールしている自覚を本人が持つことができますし、主体的なキャリア構築ができるという社会全体の共通認識も備わっていると理解できます。そのため、日本では自分のキャリアを自分の手で作り上げられる体制を築き上げることが大事なのではないかと感じました」とコメントしました。

配偶者やパートナーと、今後の働き方・キャリアについて話し合えている人は半分程度

そして、大八木は「仕事の調整格差において、『調整頻度が週に1回』と答えている方が約10%しかいない点は印象的でした 。(コロナ禍を経た)この4年間で、リモートワークを中心に、自分のコントロールの範囲内で調整できる環境が整えられたため、仕事の調整自体をあまり負担に感じていない場合もあるのではないでしょうか。一方で調整の理由で、『子どもの体調不良や不慮の対応』においては、男女間の差が顕著であることから、男女間の育児スキルの差が一因になっている可能性もありそうです。Indeedの事例になりますが、育休を6か月とったある男性社員が『6ヶ月育児を経験してやっと(妻と同程度の)育児スキルが身についてきた』と言っている声も聞いています。育児経験やスキルを培う期間を男性も獲得できるよう、企業がどのようにサポートできるかという点は非常に大きい課題だと感じます」と企業視点で仕事や職場における課題を挙げました。

「仕事の調整頻度」は、男性が月平均1.25回に対し、女性は月平均1.34回

【第二部】課題解決に向けた糸口とは

第二部では、共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップ解消に向けた糸口を探るために、議論テーマを「個人もしくは夫婦単位で取り組めること」「企業単位で取り組めること」の2つに設定し、議論を行いました。

<個人が取り組めること>

  • ジェンダーエクイティ実現に向け、個人や家庭でできることは「夫婦間の情報格差を埋めること」「子育てとキャリアのバランスをライフタイムでとっていくこと」「夫婦間の正直な会話」

個人や家庭でできることとして、塚越氏は「育児や家事に必要な情報をインプットしたうえで、話し合いをしてほしいです。夫婦間で育児や家事が女性に偏っている理由として、夫婦間の情報格差があり、分担していくための話し合いができないことが挙げられます。例えば、自治体が運用するコミュニケーションツールなどを使いながら話し合い、 自分のキャリアを自律的に考え、パートナーのキャリアも一緒に考えることが必要だと思います。子どもが生まれるタイミングで『家族で幸せになるためにはどうあったら良いか』ということと、自分のキャリアとパートナーのキャリアも一緒に考える機会をぜひ作っていただきたいです」とコメント。

続いて中室氏も「ある海外の論文では、男性育児休暇取得率増加の背景には、自分の上司と兄弟が育休を取った際に、良い意味での同調圧力が働いたことがあると指摘されています。そこには、男性が自分の上司の顔色や様子を窺っているという実態に加えて、(男女間で、仕事と育児の両立についての)情報格差があったことが伺えます。つまり、家庭や職場で実際の男性の仕事と育児の両立体験をシェアすることで、男女間の情報格差をなくすことが重要です。さらに、『時間投資』という考え方もあり、子どもの教育に投資することはお金だけでなく、時間の投資でもあります。特に時間投資が有効なのは幼少期。ところが日本の労働市場では、若い人の方が長時間労働になり、幼少期の子どもをもつ若い夫婦が時間不足の傾向にあります。そのため、この時期に時間を担保できる働き方をサポートすることが社会として必要だと考えます。逆に、子どもが10歳を超えたころからは金銭的な投資が意味を持つようになってきます。それに伴い、働き方もより稼げる方向へシフトしていく必要があるでしょう。このように、子育てとキャリアのバランスをライフタイム全体の中でどう取っていくかの設計が重要です」と述べました。

それらの話を踏まえ、治部氏は「育児をあまりしていなかったお父さんや、育児を頑張ろうと思ってもできなかった男性もたくさんいると思います。男女間の情報格差をなくすために、男性同士で経験をシェアすることや、ライフタイムに応じてその時々にあったキャリアの選択肢があれば、男女間のギャップはなくなっていくのではないかと思います」とコメントしました。

これを受けて大八木は「Indeedはグローバル企業で、本社はアメリカにあり、様々な国の方が働いています。様々なバックグラウンドや価値観を持つ人同士のコミュニケーションはスムーズにいかないことも多いです。しかし、組織では同じミッションの下で、同じ情報を元に働いているので、自ずと同じ方向を向いた会話ができ、解決策も同じ方向で揃ってきます。このことからも、夫婦間でギャップが生まれるのは、持っている情報に格差があることが悪の根源で、そこさえ乗り越えると、同じことを考えて結論に早く気が付くことができるのではないかと感じています。夫婦間で一から百まで全てを会話することは難しいですが、『Transparency(透明性をもつ)』ではなく、『Honesty(正直である)』を心がけた会話ができるといいのではないでしょうか。『こんなことにモヤモヤする』『この先、どうなるか自分でもわからない状態にある』などといったことを会話し、互いに状況を理解し合うことで、コミュニケーションがスムーズになり、男女の情報格差を埋める一歩になると思います」とコメントしました。

<企業が取り組めること>

  • ジェンダーギャップ解消に向け、企業ができることは「女性が活躍する場の創出」「職場の雰囲気づくり、制度の見直し」「情報格差によるギャップを生まないための企業の発信」

次に企業ができることについて意見が交わされ、中室氏は「女性が活躍する場を作ることが重要だと思います。それには、労働市場の改革とそれに伴う規制緩和が必要で、規制緩和の一例として、有給の時間単位の取得が有効だと考えます。今は規制があり、1年間で5日間分までしか時間単位の有給を取れませんが、『子どもの送迎が遅れて、1時間だけ休みたい』『昼間に薬を取りに行くので1時間だけ中抜けしたい』という声もあるので、今後規制緩和が行われることで、男女ともに、自分の意志で働き方を調整できる部分がもっと増えていけば、ジェンダーエクイティは達成しやすくなると感じます」とコメント。

それに続いて塚越氏は、「1つ目は従業員の子育てとの両立を上司などに相談できる職場のヒト支援が重要ということです。家族のレジリエンス向上には、職場の人が話を聞いてくれることや、相談に乗ってくれることがいかに大事かということが近年わかってきました。制度や雰囲気だけじゃない、しっかりと話を聞いてサポートしてくれるということが大事だと思います。2つ目が、男性の育休取得率です。国が育休取得率を人的資本開示に入れているのは、取得率を上げるだけが目的ではなく、今まで休まなかった男性が休むことによって社会全体の構造意識を変えることが目的としてあります。 そのため企業側は単なる取得率向上だけでなく、職場での業務の見直しや効率的な業務配慮の変化を促すことを目的として男性育休の取得を推進することで、男女賃金格差の解消や女性の活躍までを加速していくことができると思います」と述べました。

また、大八木からは「パートナーが同じ量の情報を持つために、企業が働きかけることも必要だと思います。Indeedでは情報発信が非常に重要だと考え、会社のホームページなどを細かく意志を持って作ることで、家族や関係者が見た時に、その人がどんなところで働いているかを理解できるチャンスを作っています。また、ファミリーデーなどの、従業員が家族を会社に招待するイベントを開催しています。家族が働いている環境や仲間の顔を見る機会を創出し、夫婦間で職場環境の理解を促すことも企業の役割だと考えています」とIndeedの取り組みについても紹介しました。

<取り組みの第一歩として重要なこと>

  • ジェンダーギャップ解消に向けた第一歩として重要なことは「自分のキャリアを自分で設計できること」「職場、夫婦で行う“ともそだて”」「夫婦間の正直なコミュニケーション」

最後に、「共働き子育て夫婦の仕事や職場におけるジェンダーギャップ解消に向けた第一歩として重要だと感じること・取り組むべきこと」を各登壇者がフリップで発表しました。

中室氏は「私は『生涯で見たときのキャリアの設計を自分でできる』ことがすごく大事だと思います。子どもを育て上げるには、18年もの長い歳月がかかりますが、その間に、男女ともに必要に応じて必要なリソースを投下できる体制が、最も大切だと思います。性別に限らず、家族や子どものために一番時間が足りない人に時間の融通が利く働き方、 一番お金が必要な人が稼げる働き方を選択できる社会にしていく必要があると思います」とコメント。

塚越氏は「私は、『男性育休⇒“チーム子育て”で“ともそだて”、職場と家庭づくり』と書きました。 この『ともそだて』は、ワンオペ子育ての対義語だと思っていただいていいと思います。夫婦、またはチームで、子育てをしていくこと。そして、チームメンバーには企業も入り、夫婦だけでやろうとしないこと。色んな人に助けを求めて、社会全体で子育てをしていくことが、ジェンダーギャップ解消のために重要だと思っています」と述べました。

大八木は「『Honesty』にしました。やはり夫婦の間でも、お互いのことでわからない部分はどうしてもあると思います。 それがまさに相手の職場のことであったり、仕事の悩みであったり、あるいは仕事の喜びであったりだと思います。男女間で認識の差があることが調査結果でも明らかになっていますが、全て共有することは無理だとしても、仕事と育児を両立する上で、自分が大事にしていることや、不安に思っていることを素直に話し合えることが重要だと思います。そうすることで、男女間の認識の違いや思い込みにも気づけるのではないでしょうか。企業としては、従業員のパートナーに対して仕事の状況や不安などの正直に話せる機会やきっかけをどれだけ提供できるかだと思っていますし、作っていきたいと感じました」とコメントしました。

その後、治部氏は「『家庭で仕事のこと、職場で家族のことを話す』。家族とは子どもに限らないです。職場には必ずしも子どもがいる方だけとは限りません。しかし、誰しも親がいて、介護や親の通院の付き添いの経験をしている人がたくさんいます。私も親の調子が悪かった時に職場の人に相談をしたところ、同じ境遇の方がいて、すごく安心して働くことができた経験がありました。できれば仕事と家庭は別々が良いという方もいるかもしれません。しかし、その垣根を越えて、安心して同僚などに話ができる環境ができていくと、性別に限らず、男女ともに仕事と子育ての両立を応援しやすい環境になると思いました」とコメントし、会を締めくくりました。

中室 牧子氏
塚越 学氏
大八木 紘之
治部 れんげ氏

※1:働く上でのジェンダーに関する違和感を募集する「#これでいいのか大調査」(Indeed Japan株式会社、2022年10月実施) https://jp.indeed.com/press/releases/20230207

※2:「共働き子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップ調査」(Indeed Japan株式会社、2024年8月実施) https://jp.indeed.com/press/releases/20240918

※3 :厚生労働省 令和2年度 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書                   186ページ「図表Ⅲ- 133 末子の妊娠・出産前との働き方の変化:複数回答(Q46_1)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000791048.pdf

※本プレスリリースは、以下からもご確認いただけます。

Indeed Japan Press Room:https://jp.indeed.com/press/releases/20241008

Indeed (インディード) について

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*出典:Comscore 2024年7月総訪問数
**出典:Indeed社内データ 2023年10月~2024年3月

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上場
未上場
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設立
2013年10月