愛知県内初 木造混構造3階建 公立高校~県産材を利用 教育効果や脱炭素を狙う~
愛知県立春日井高等学校の1号棟校舎(以下、新校舎)が完成し、利用を開始しました。新校舎は平面混構造(中央が木造、両端が鉄筋コンクリート造)3階建てで、木造部分が1,500㎡を超える耐火建築物としては愛知県の公立高等学校では初の木造校舎です。基本設計と実施設計は株式会社松田平田設計(本社:東京都港区、社長:江本 正和 以下、松田平田設計)、木造部分の構造設計は住友林業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:光吉 敏郎 以下、住友林業)が担当。施工は住友林業と春日井市に拠点を置く株式会社高柳組(本社:愛知県春日井市、社長:髙栁 通、以下、高柳組)が分担しました。今後、既存校舎(2号棟)と新校舎をつなぐ渡り廊下及び昇降口の施工と旧1号棟校舎の解体を進め、2026年3月に完工予定です。構造材や内外装材に愛知県産材を活用した木造建築で地域貢献と環境教育の機会を提供し、建物のライフサイクル全体でCO2排出の削減により脱炭素に貢献します。

■建物の特徴
【教室で木を見て触れる体験を】
梁と柱、壁面や床などには愛知県産材を含め約525m3の木材を使用。特に新校舎の中央部分に位置する教室を木造としました。木の調湿効果で空気の乾燥を防止し、勉強の集中力や休憩中のリラックス効果を高めるなど快適な学習空間を提供します。※1木造建築により生徒が自然や環境に関心を持つきっかけをつくり、環境教育につなげます。今後施工する昇降口は純木造で、構造躯体を現しとして使用し木質感あふれる空間を生み出します。

【平面混構造でコスト低減と高い耐震性】
構造の一部で採用した木造は鉄筋コンクリート造よりも基礎に与える荷重が小さいため基礎の大きさを抑え建設コストを低減します。木造と鉄筋コンクリート造をピン接合※2し一体構造とします。平面混構造の木造部分は床面に鉄筋ブレースを設置し耐震性を強化。地震発生時には鉄筋ブレースを通じて地震力が鉄筋コンクリート造部分に伝わる構造のため、壁面の筋交いなどの斜材を削減できます。窓枠の開口が大きくとれ、明るく開放的な学習環境を創出します。
【長期間の建物利用・環境に配慮した木感あふれる外観】
外観は切妻の大屋根とバルコニーを用い軒下空間を設計。天井高を確保し空気の循環を良くするとともに外壁への雨がかり※3を防止。日常的なメンテナンスコスト削減や長期にわたり新校舎の維持・管理の負担を軽減します。再生木ルーバー(日よけ)も採用し日射遮蔽効果を高め学習環境の良好化を図ります。木造部の外壁は住友林業のオリジナル木材保護塗料(S-100)で耐久性を向上し、長期間木の風合いを保ちます。

■脱炭素社会と地域に貢献
木造での施工と省エネ性能の高い設備の導入で建物のライフサイクル全体でCO2排出を削減します。建物には約525m3の木材を使用しそのうち約85%にあたる約454m3に愛知県産材を採用。脱炭素社会の実現と地域貢献を両立します。
【建物のライフサイクル全体でCO2を削減】
資材調達、製造、運搬、建設、修繕、解体時のCO2排出量「エンボディドカーボン」を「One Click LCA」※4で算定。炭素固定量は約104トン CO2e bio(CO2ベース)で40年生のスギ約1,200本の炭素固定量に相当します。外装にバルコニーやルーバーを設け日射負荷をコントロール。冷暖房効率を高め、建物の利用時に発生する「オペレーショナルカーボン」も削減します。
※1.木の家 Lab. https://sfc.jp/ie/tree/lab/
※2.部材同士を回転自由に接合する方法。地震発生時に建物全体が柔軟に挙動し、地震力を吸収し
構造部材の負担軽減が可能
※3.建築物の外壁など雨に濡れたり、雨の影響を受けたりする状態や場所を指す
※4.建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)を見える化するソフトウェア「One Click LCA」
は住友林業が日本単独代理店契約を締結。
(参考URL: https://sfc.jp/treecycle/value/oneclicklca/)
※5.建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン
■物件概要
名称 :愛知県立春日井高等学校
所在地 :愛知県春日井市鳥居松町1-55
建築面積/延床面積:2,273.17㎡/4,786.16㎡
構造・階数 :1号棟 平面混構造(中央部分:木造、両端部分:鉄筋コンクリート造)・3階建て
昇降口 木造/渡り廊下 鉄骨造
用途 :学校
発注者 :愛知県教育委員会
設計 :株式会社松田平田設計
施工 :住友林業株式会社、株式会社高柳組
工期 :2024年3月 1号棟着工
2025年3月 1号棟竣工
2025年4月 利用開始
2025年4月 昇降口、渡り廊下解体・着工
2026年3月 完工(予定)
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。今後も非住宅建築分野での木造化・木質化を推進し、木の魅力を最大限に生かした付加価値の高い商品・サービスを提供していきます。
松田平田設計は2031年には創業100周年を迎えます。「優良なる社会資産の創造」をスローガンに94年続いたDNAを受け継ぎ、より良い環境創造に向け挑戦しています。各分野の技術・知識・経験を集約・統合し、エンジニアが共に協働しながら最適解を紡ぎ出す組織としての総合力を一層高め、建築に対する情熱と職能倫理を常に堅持しつつ誠実公正な設計監理を使命としています。社会的責任を負い、良きコーディネーターとしての幅広い柔軟な見識と豊かな創造力で建築に対する情熱と職能倫理を常に堅持しつつ誠実公正な設計監理を実践していきます。
(松田平田設計HP: https://www.mhs.co.jp/)
高柳組は愛知県を中心に心を込めたモノづくりと絶えざる技術の研鑽によって、「安全で住み良い豊かな社会」に協力します。さまざまな用途の建物の施工で社会貢献し、60年の歴史で培った信用・信頼と人脈をもとに今後も創業経営理念を忘れることなく社員一丸となって、地域に誇れる建築物を提供していきます。
(高柳組HP: http://www.takayanagi.co.jp/company/)
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