モデルナ、研究開発の進展と戦略的優先事項を発表
この資料は、モデルナ(マサチューセッツ州ケンブリッジ)が2024年9月12日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳したもので、報道関係者の皆さまに参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.modernatx.com をご参照下さい。
•2027年までに10製品の承認を目指す
•2024年に次世代型COVIDワクチンの承認申請予定
•2024年にインフルエンザとCOVIDの混合ワクチンの承認申請予定
•18歳から59歳の高リスク成人向けRSウイルスワクチンの第3相試験で良好な結果を発表し、2024年に米国で生物製剤承認一部変更申請(sBLA)を予定
•ノロウイルスワクチンが第3相臨床試験に進展し、がん、希少疾患、およびファーストインクラスのワクチンを含む呼吸器系以外のプログラムが5つに増加
•ポートフォリオの優先順位付けとコスト効率化により、2024年の48億ドルから2027年には年次研究開発費用を36~38億ドルへと11億ドル削減
•2028年までの財務フレームワークを更新および拡張
【米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、2024年9月12日発】モデルナ(NASDAQ:MRNA))は本日、年次R&DデーでmRNAパイプラインの進捗と戦略的優先事項に関するプログラムと最新の財務状況を発表しました。これらには、呼吸器系ワクチンポートフォリオのデータと最新の財務フレームワークが含まれています。
モデルナの最高経営責任者(CEO)のステファン・バンセル氏は「モデルナは現在、5つの呼吸器系ワクチンで第3相臨床試験の良好な結果を得ており、今年中にそのうち3つの承認申請を予定しています。さらに、がん、希少疾患、潜在性ウイルスワクチンなど、2027年までに承認の可能性がある呼吸器系以外の製品が5つあります。私たちのR&Dの成功確率は、開発のすべての段階で業界標準を上回っています。またモデルナはこれら10製品を患者さんに届けることに集中し、新たな研究開発投資のペースを落とし、ビジネスを構築していく予定です」と述べています。
研究開発戦略
過去3年間にわたり、モデルナの強力なパイプラインは複数の後期臨床試験において重要なマイルストーンを達成してきました。また、開発早期段階のポートフォリオにおいても、多数の候補がピボタル試験に進むための概念実証データが得られています。モデルナの研究開発の成功率は、従来のバイオ医薬品業界を上回っており、開発中期および後期パイプラインの成功確率は約66%で、業界平均の約19%と比較して高い水準です1。
モデルナの広範な臨床試験の進展と商業的課題により、研究開発投資に対して、より選択的かつ迅速なアプローチが必要となっています。ポートフォリオの優先順位付けとコスト効率化を通じて、2027年から年間約11億ドルの研究開発費を削減することを見込んでいます。この期間中、モデルナはがん、希少疾患、そしてファーストインクラスとなる呼吸器系以外のワクチンにポートフォリオを拡大する予定です。この戦略により、今後3年間で10製品の承認を見込んでいます。
具体的には、2021年から2023年にかけて、モデルナはパンデミック時代のワクチン販売による収益を活用し、多様なパイプラインの構築に投資し、COVID-19ワクチン「Spikevax®」の市場を確立しました。2023年から2026年にかけて、モデルナは、最も大きな疾病負荷を持つウイルスに対応する5つの呼吸器系ワクチンのポートフォリオを確立しています。今年、RSウイルスワクチン「mRESVIA®」が承認され、次世代COVID-19ワクチン、インフルエンザとCOVIDの混合ワクチン、そして高リスクの若年成人向けRSウイルスワクチンが2024年の規制当局への申請に向けて進行中です。
2026年から2028年に向けて、モデルナはサイトメガロウイルス、ノロウイルス、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、メラノーマなど、呼吸器系以外の疾患に対応するファーストインクラスとなるワクチンおよび治療薬を導入し、ポートフォリオを拡大していく予定です。
モデルナの後期開発段階のポートフォリオおよび承認済みワクチンに関する最新情報は次の通りです
呼吸器系ウイルスワクチン
COVID-19
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、COVID-19は65歳以上の人々において、インフルエンザよりも3倍多くの入院を引き起こしています2。また、2023年から2024年にかけてCOVID-19で入院した成人の95%以上が、最新のワクチンを接種していないことが記録されています3。入院した人々は、筋肉量の減少、日常活動の低下、再入院のリスク、さらには死亡など、生活の質に深刻な影響を受ける可能性があります。
さらに、コロナ後遺症に関するデータは、従来低リスクとされていたグループでもワクチン接種が推奨されるべきことを示唆しています4。コロナ後遺症には200以上の症状が報告されており、不安、ブレインフォグ、極度の疲労などが含まれます。コロナ後遺症は脳、心臓、肺など、体のさまざまな部分に影響を与える可能性があります。
モデルナは、エンデミックCOVID-19市場のニーズに応えるため、公衆衛生の取り組みを支援し、ワクチン接種率を高めることでCOVID-19の大きな負担を軽減しようとしています。また、次世代ワクチンの開発を進めています。モデルナのmRNAプラットフォームにより、今シーズンの2つの選択された株に対応する変異株に適合したワクチンを、迅速に開発しています。新たな変異株に対応したSpikevaxの製剤は、米国、台湾、日本、英国、スイス、アラブ首長国連邦、韓国、イスラエルなど、複数の地域で承認されています。
12歳以上の参加者を対象としたNEXTCove第3相試験の結果、モデルナの次世代COVID-19ワクチン「mRNA-1283」は、Spikevaxと比較して非劣性の相対的ワクチン有効性(rVE)を示し、推定値は9.3%(99.4%信頼区間: -6.6, 22.8)という良好な結果が得られました。65歳以上の参加者では、rVEが最も高く、13.5%(95%信頼区間: -7.7, 30.6)でした。mRNA-1283は、冷蔵条件での安定性が強化され、プレフィルドシリンジとなっており、インフルエンザとCOVID-19の混合ワクチンへの道を開き、モデルナの呼吸器系ポートフォリオを強化します。モデルナは2024年に承認申請を予定しており、優先審査を利用する計画です。
RSウイルス
急性の死亡率や合併症に加えて、RSウイルス(RSV)の感染は、高齢者における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の悪化など、長期的な後遺症と関連しています。米国では、毎年65歳以上の成人において、RSV感染によって最大16万人が入院し、1万人が死亡しています5。2019年には、高所得国全体で推定520万件のRSV感染例が発生し、47万人が入院し、60歳以上の成人3万3千人が院内で死亡しました6。また、若年成人においても、COPD、喘息、糖尿病、肥満などの潜在的なリスク因子がRSウイルス感染リスクの増加に寄与する可能性があります。
混合呼吸器ワクチン
現在、インフルエンザとCOVID-19は、米国で毎週数千件の入院と数百件の死亡を引き起こしています。これらの呼吸器疾患の負担に対応するため、モデルナの混合ワクチン候補は、接種率の向上、より高いコンプライアンス、利便性、および医療システムへのメリットを提供するように設計されています。
6月に発表された通り、モデルナのインフルエンザとCOVID-19の混合ワクチンmRNA-1083の第3相試験では、主要評価項目を達成し、50歳以上の成人、特に65歳以上の成人において、承認済みのインフルエンザワクチンやCOVIDワクチンよりも高い免疫応答を引き出しました。また、mRNA-1083は、インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチンを同時に接種した場合と比較して、安全性および反応原性プロファイルも許容範囲内であることが確認されました。モデルナは2024年に承認申請を行う予定であり、優先審査を利用する計画です。
潜在性ウイルスワクチンとその他ワクチン
サイトメガロウイルス(CMV)
サイトメガロウイルス(CMV)は潜伏性ウイルスで、米国における先天性欠損の最も一般的な感染原因であり、年間数十億ドルの医療費を引き起こしています。米国では200人に1人が先天性CMV感染を持って生まれ、そのうち5人に1人が重篤で生涯にわたる健康問題を抱えることになります。CMV感染の短期および長期的な後遺症には、小頭症、網脈絡膜炎、けいれん発作、感音性難聴、認知機能障害、脳性まひなどが含まれます。
CMVictoryは、16歳から40歳の女性を対象に、サイトメガロウイルス(CMV)初感染に対するmRNA-1647の有効性を評価する重要な第3相臨床試験です。この試験では症例の蓄積が進んでおり、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が中間解析の時点で81件の確定症例が集まった際にワクチンの有効性を評価する予定です。モデルナは、早ければ2024年末にワクチンの有効性に関する結果が得られると期待しています。
ノロウイルス
ノロウイルスを含む腸管系ウイルスは、下痢症の主要な原因であり、特に幼児や高齢者において、世界中で重大な罹患率と死亡率を引き起こしています。ノロウイルスは非常に感染力が強く、急性胃腸炎(AGE)の原因の18%を占め8、年間約20万人の死亡と多額の医療費をもたらしています9。ノロウイルスの遺伝子型の多様性を考慮すると、幅広い効果を持つノロウイルスワクチンには、多価ワクチンの設計が必要とされています10。
現在、米国で進行中の第1相試験では、18歳から49歳および60歳から80歳の参加者を対象に、3価ノロウイルスワクチン候補mRNA-1403の安全性、反応原性、免疫原性を評価しています。中間解析の結果、単回投与で全ての投与量において強力な免疫応答が確認され、臨床的に許容できる反応原性および安全性プロファイルが示されました。さらに、選定されたノロウイルス遺伝子群IおよびII株に対して、ワクチン適合型のヒスト血液型抗原(HBGA)遮断抗体価が全ての投与量で観察されました。このHBGA遮断抗体価は、若年成人および高齢成人の両方のグループで同様に確認されています。モデルナは、近く第3相ピボタル試験を開始する予定です。
希少疾患治療薬
優先ポートフォリオにおいて、モデルナの希少疾患候補には、代謝酵素の欠乏によって引き起こされる2つの有機酸血症、メチルマロン酸血症(MMA)およびプロピオン酸血症(PA)を標的とする治療法が含まれています。これらの疾患は、代謝代償不全イベント(MDE)によって特徴づけられ、嘔吐、無気力、けいれん、昏睡などの重篤で生命を脅かす症状を引き起こす可能性があります。
メチルマロン酸血症(MMA)治療薬
進行中の第1/2相試験では、メチルマロン酸血症(MMA)の患者を対象に、安全性と薬理学的効果を評価しています。これまでのところ、mRNA-3705は概ね良好な忍容性が示されており、安全性に基づく中止やプロトコールで定義された用量制限毒性基準に該当するイベントは報告されていません。初期データは良好であり、特に少なくとも0.4 mg/kg Q2Wの用量で、メチルマロン酸および他のバイオマーカーの減少が確認されています。初期結果では、治療前と比較して、MMA関連の入院や代謝代償不全イベント(MDE)の年間発生率が減少する可能性が示唆されています。モデルナは最適用量の特定に取り組んでおり、米国FDAのSTARTプログラムや他のグローバル規制当局と協議を続けています。同社は2024年末までに重要な試験データを生成する予定です。
プロピオン酸血症(PA)治療薬
進行中の第1/2相試験では、プロピオン酸血症(PA)の患者を対象に、安全性と薬理学的効果を評価しています。これまでのところ、mRNA-3927は概ね良好な忍容性が示されており、プロトコールで定義された用量制限毒性基準に該当するイベントは報告されていません。初期の結果では、治療前と比較して、代謝代償不全イベント(MDE)の年間発生頻度が減少する可能性が示唆されています。患者の大多数は、オープンラベル延長試験への継続を選択しています。同社は、2024年末までに重要な試験データの生成を開始する予定です。
中止されたプログラム
同社の戦略的優先順位付けに基づき、パイプライン内の5つのプログラムが中止されました。
•Endemic HCoV (mRNA-1287): 非臨床プログラムは第1相試験に進まない。
•RSウイルス 乳幼児(seronegative, < 2 years) (mRNA-1345): 新たな臨床データに基づき、現在進行中の第1相試験を超えて進展しない見込み
•KRAS抗原特異的治療 (mRNA-5671): さらなる開発計画はなし。
•Triplet (OX40L/IL-23/IL-36γ) (mRNA-2752): 新たな臨床データに基づき、開発が優先されないことに
•Relaxin (mRNA-0184): プログラムは第1相試験を終了予定。
財務最新情報
モデルナは、2024年以降に呼吸器製品フランチャイズが利益を上げると予想しています。さらに、モデルナは2024年の研究開発費用の見通しを約48億ドルに更新しており、これは主に優先審査の利用によるものです。また、販売費、一般管理費は約12億ドルになると予想しています。モデルナは、2025年から2028年までの研究開発投資も約20%削減し、期間中4年間の投資額を200億ドルから160億ドルに優先順位付けによって減額する計画です。
モデルナは2026年までに呼吸器関連の投資の大部分を完了することを目指しています。また、がん領域の研究開発投資を増やし、潜在ウイルスワクチンやその他のワクチン、希少疾患治療における投資を段階的に進めていく予定です。
また、モデルナは2025年および2026年から2028年に向けた新たな財務的フレームワークを導入します。
収益: モデルナは、2025年の収益を25億ドルから35億ドルと予想しています。2026年から2028年にかけては、新製品の発売によって年平均成長率25%以上を見込んでいます。
売上原価: 2025年の売上原価は、売上の35%から45%の範囲になると予想されています。2026年から2028年にかけては、収益の増加に伴い、売上に対する売上原価の割合が減少する見込みです。
研究開発費: 2025年の年間研究開発費は42億ドルから45億ドルと予想されています。2026年から2028年にかけては、累計で約115億ドルの研究開発費が見込まれています。
販売費および一般管理費: 2025年の販売費および一般管理費は、10億ドルから12億ドルと予想されています。2026年から2028年にかけては、新製品の市場投入に伴い販売費が徐々に増加すると見込まれていますが、一般管理費は横ばいで推移する見通しです。
法人税: モデルナは、2025年の年間税負担がごくわずかであると予想しています。また、2026年から2028年の期間においても、税負担はごく少額であると見込まれています。
設備投資: 2025年の設備投資は約3億ドルと予想されています。2026年から2028年にかけては、設備投資は2025年の水準から横ばいか減少すると見込まれています。
現金および投資: 2025年末の現金および投資額は、約60億ドルと予想されています。
モデルナは、ストックベースの報酬、減価償却費および償却費を除いた営業キャッシュコストベースで、60億ドルの収益により損益分岐点に達する計画で、2028年にこれを達成すると予想しています。また、モデルナは追加の株式発行を行わずに、キャッシュコストベースで損益分岐点に達するまでの計画を実行するために十分な資本を保有しています。
References:
1.Statistics for Moderna based upon internal data from 10 Phase 2 trials, and six Phase 3 trials. Data reported as of September 12, 2024. Industry statistics derived from Phase 2 and 3 study data from Wong et al., Biostatistics (2019) 20, 2, pp 273-286.
2.https://www.cdc.gov/resp-net/dashboard/index.html. Data last updated as of September 6, 2024 for 2023-2024 season.
3.https://www.cdc.gov/respiratory-viruses/risk-factors/older-adults.html
4.https://www.yalemedicine.org/news/covid-vaccines-reduce-long-covid-risk-new-study-shows
5.https://www.cdc.gov/rsv/php/surveillance/index.html
6.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36369772/
7.https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal)
8.Ahmed, S.M., et al., Global prevalence of norovirus in cases of gastroenteritis: a systematic review and meta-analysis. Lancet Infect Dis, 2014
9.https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/diseases/norovirus
10.https://www.cdc.gov/norovirus/downloads/global-burden-report.pdf
モデルナについて
モデルナは、mRNA医薬品分野における革新的リーダーです。mRNA技術の進展を通して、モデルナは医薬品の製造方法を根本から変え、疾患の治療と予防へのアプローチを変革し続けています。モデルナは10年以上にわたって科学、技術、健康分野の研究に取り組んでおり、前例のないスピードと効率性で医薬品を開発しています。新型コロナワクチンの開発はその代表例です。
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