平和は「守る」だけでは生まれない――なかよし学園・中 村里英、英国Windsor城で「CHOICE Education Model」を国際発表
「選べること」を人間の安全保障の力へ。世界の教室、福祉、紛争地で積み重ねた実践から、女性リーダーが新たな平和構築の教育モデルを提案
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(所在地:千葉県松戸市、代表:中村雄一)の事務局長・中村里英は、2026年10月26日から28日に英国で開催されている「ICCC Windsor Consultation」に招待され、英国Windsor城内のSt. George’s Houseにおいて、「PEACE BEGINS WITH CHOICE―The CHOICE Education Model: Expanding Agency through Gender-Collaborative Learning」と題したスピーチを行いました。

ICCC(International Council for Caring Communities)は国連経済社会理事会(ECOSOC)の特別協議資格を持つ国際非営利組織で、Windsor Consultationは、政府、市民社会、大学、民間セクター、国連関係者などが分野を越えて知見を共有する招待制の国際会議です。会場となるSt. George’s HouseはWindsor城内にあり、ICCCはこの場で各地の実践事例を共有し、協働や社会実装、優れた取り組みの拡張につなげることを目的としています。
今回、中村里英が国際社会へ提示したのは、世界各地の教育・平和構築の現場に立ち続ける中で生まれた一つの問いでした。
「人を危険から守るだけで、本当にその人の安全は実現したと言えるのだろうか。」
中村里英は、人間の安全保障を「Protection=保護」だけで捉えるのではなく、そこに「Choice=選択」「Participation=参加」「Agency=自ら考え、選び、行動できる力」が伴うことが重要だと考えます。発表では、Protection + Choice + Participation + Agencyという視点から、人が単に「守られる存在」にとどまらず、自分自身の未来をつくる主体になっていくための教育の可能性を提示しました。

これは、国連が人間の安全保障において重視してきた「Protection(保護)」と「Empowerment(エンパワーメント)」を、世界各地の教室でどのように実践へ落とし込めるのかという問いでもあります。中村里英は、誰かに正しい答えを教え込むのではなく、その人がそれまで知らなかった「もう一つの可能性」を実際に経験し、自ら考え、選べる環境を教育によってつくることに着目しました。
「文化を変える」のではなく、「選べる可能性を増やす」
中村里英の平和構築理論の出発点には、夫である代表・中村雄一と世界各地を訪れてきた経験があります。同じ国へ行き、同じ教室に入り、同じ人々と会っていても、二人が見ていたものは必ずしも同じではありませんでした。



「誰が『普通』を決めているのか」「誰が参加できるのか」「そして、誰が選ぶことができるのか」。
女性として、母親として、教育・国際協力の実践者として現場を見る中で、中村里英が注目するようになったのは、制度だけでは見えにくい「役割」と「選択」の問題でした。
そこで今回提示したのが、CHOICE Education Modelです。
このモデルは、Context(その場所では何が当たり前なのか)を知り、Hear(誰が何を望み、誰が選べていないのか)を聞き、Open(別の可能性を開き)、Interact(実際に一緒に経験し)、Co-Reflect(その経験をともに振り返り)、Expand(次にできることを広げる)という循環によって、人々が自分自身の選択肢を増やしていく教育モデルです。
重要なのは、「あなたの文化や価値観は間違っている」と外部から変えることではありません。
Don’t impose a new answer. Expand the available choices.
新しい正解を押しつけるのではなく、選べる可能性を増やす。
それが中村里英の構想する平和構築の基本姿勢です。CHOICE Education Modelは現在、世界各地での実践から構築された概念モデルの段階にあり、今後、異なる文化や地域で検証・適応していくことを前提として国際社会へ提示されました。

教室を「違う社会を安全に試してみる、小さな社会実験空間」に
CHOICE Education Modelで中村が重視しているのが、「経験」です。
例えば、ある社会で「女性は料理をする」「子どもは大人から教えてもらう」「支援を受けている人は助けられる側」といった役割が当たり前になっていたとしても、それを外部の人間が否定すれば、新しい価値観の押しつけになりかねません。
しかし教室の中で、「女の子がリーダーになってみる」「男の子が料理やケアを担ってみる」「教わっていた子どもが誰かの先生になってみる」「支援を受けていた人が、今度は誰かを支えてみる」という別の役割を実際に経験することはできます。
中村里英は、教室を「違う社会の可能性を、安全に試すことのできる小さな空間」として捉えます。その経験から「私にもできた」という自己効力感が生まれ、「女性にもできる」「子どもにもできる」「支援を受ける立場の人にも誰かを助ける力がある」という認識の変化が起こる。そして初めて、人は自分自身で次の役割を「選ぶ」ことができる。その積み重ねがAgency=主体性へつながるという仮説です。

カンボジア――蕎麦をつくることではなく、「誰が何をするか」を変えてみる
この考え方は、机上で生まれたものではありません。
カンボジアで行った蕎麦づくりでは、生徒や校長が同じテーブルを囲み、一緒に粉をこね、麺をつくりました。中村里英自身も一方的に日本文化を教えるのではなく、現地の人々から米麺の作り方を教わりました。


ここで重要なのは「日本の蕎麦を教えた」ことではありません。普段とは異なる人が料理をし、教えていた人が学び、学んでいた人が教える。「一緒にやってみる」という経験によって、固定されていた役割とは異なる可能性を体験できたことです。
発表で中村は、この実践を「Cooking is not the point. Roles are.」と表現しました。目的は平等という答えを教えることではなく、「別の役割も可能だ」と経験できる場をつくることにあります。

ウクライナ――「支援される子ども」から、「日本を応援する子ども」へ
2026年9月、なかよし学園は戦争下のウクライナ・キーウ、リビウなどで平和教育活動を実施しました。中村雄一代表とともに中村里英事務局長も現地入りし、未来のまちづくり、平和教育、創造性教育、防災教育、文化交流などを行いました。


戦争下にある子どもたちは、国際協力の文脈ではどうしても「助けられる人」「支援を受ける人」として捉えられがちです。
しかし、なかよし学園の授業では、熊本地震から復興してきた日本の地域について学び、ウクライナの子どもたち自身が「ウクライナカルタ」をつくり、日本へメッセージを届けました。
そこで起きたのは、Recipient(支援を受ける人)からSupporter(誰かを応援する人)への役割の変化でした。
「脆弱な状況にあること」と「主体性を持っていないこと」は同じではない。人間の安全保障が、戦争や貧困の中にいる人を永遠に「助けられる人」という役割に固定してしまってはならない――中村はウクライナでの経験から、その考えをWindsorで提示しました。

松戸の福祉事業所から世界へ――PEACE NOODLE Projectが示した「私にも与えられるものがある」
そして日本でも、同じ変化が起きています。
中村里英は、なかよし学園の事務局長として活動全体を支える一方、「世界とつながる学びプロジェクト」の総合プロデューサーを務め、日本全国の学校・地域と海外の教育現場を結んできました。2025年度には全国50校以上、1万人規模の児童生徒・教職員・関係者がプロジェクトに参加。その活動は第12回JACEイベントアワードでシルバー賞(準グランプリ相当)を受賞し、2026年10月にはEXPO FUTURES AWARD 2026「平和と人権」部門テーマ特別賞(グランプリ)にも選ばれました。

その中でも、中村里英が中心となって現場を動かしてきた取り組みの一つが、Peace Noodle Project「なかよし幸蕎麦」です。
きっかけは松戸市の障害福祉事業所でした。「私たちにも世界のために何かできることがあるのではないか」という思いから、日々仕事としてつくっている蕎麦を世界の人々との交流や学びに生かすプロジェクトが始まりました。中村里英はルワンダなどで自ら蕎麦打ちを実演し、子どもや地域住民と同じ台を囲んで蕎麦をつくってきました。2026年度には、その蕎麦がネパール、ルワンダ、カンボジア、ウクライナへとつながりました。
ここでも起きたのは、「福祉サービスを受ける人」という一つの役割から、「自分の仕事で世界の誰かを笑顔にする人」への変化でした。
中村里英はこれを、Agencyが始まる瞬間の一つとして捉えています。
「自分にも、誰かに与えられるものがある。」
支援される人が支援する人へ。生徒が先生へ。学ぶ人がつくる人へ。そうした役割の移動を実際に経験できることが、自分自身をどのような存在として捉えるかを変えていきます。

女性リーダーとして世界の現場に立ち、「誰が選べているのか」を問い続ける
中村里英はこれまで、ルワンダ、カンボジア、ウクライナをはじめとする海外の教育現場に入り、日本の学校・福祉施設・地域で生まれた学びを世界へ届けてきました。
ルワンダでは、子どもだけでなく地域の大人も参加する「レゴでつくる未来のまち」を実施。教育を受ける機会が限られてきた大人たちも、作品をつくり、自分の考えを表現し、地域の未来を考える主体になれることを実践しました。
また、2026年7月にはポルトガル・リスボンで開催された第39回ACUNS Annual Meetingにも中村雄一とともに登壇し、日本の学校教育と世界の現場を結ぶ平和構築の実践を国際社会へ発信しました。
これらの活動に共通しているのは、誰かのために答えを決めるのではなく、その人自身が考え、参加し、選び、行動できる環境をつくるという姿勢です。


今回のWindsorでの発表は、これまで個々の国や教室で行ってきた実践を、中村里英自身が「CHOICE Education Model」という一つの概念モデルとして整理し、人間の安全保障と教育をつなぐ理論として国際社会に提示した機会となりました。

人間の安全保障を「守られること」から「未来を選べること」へ
国連におけるHuman Security(人間の安全保障)は、人々の生存・生活・尊厳を脅かす課題に対し、人間中心、包括的、地域の文脈に即した、予防的な対応を行い、「Protection」と「Empowerment」の双方を強化することを重視しています。
中村里英のCHOICE Education Modelは、その中でも「Empowermentが教育の現場でどのように生まれるのか」というプロセスに焦点を当てます。
異なる経験をしてみる。自分にもできると気づく。これまでとは違う可能性が見える。自分で選ぶ。誰かと一緒に行動する。その経験が積み重なることで、人は自分自身の人生や社会に働きかけるAgencyを獲得していく――。
中村は今回、これを「Expanded experience → Expanded perception of possible roles → Meaningful choice → Self-efficacy & participation → Agency → Human Security」という、人間の安全保障へつながる仮説的なプロセスとして提示しました。同時に、これはまだ実践から導かれた仮説であり、今後異なる文化・地域で検証していく必要があることも明確にしています。

世界共通の「答え」ではなく、世界で共有できる「問い方」を
Windsorで中村里英が提案したのは、CHOICE Education Modelを世界共通の正解として広めることではありません。
ジェンダー、平和教育、紛争影響下の教育、障害と包摂、異文化学習、若者のエンパワーメント、地域教育。それぞれの地域には、それぞれ異なる歴史、文化、価値観があります。
だからこそ、「どの国でも同じ答え」を導入するのではなく、「誰が参加できているのか」「誰が選べているのか」「別の可能性を安全に経験することはできないか」という問い方を共有し、それぞれの文化の中で適応させていく。
発表の最後、中村里英はCHOICE Education Modelを、各地域のパートナーとともに実装・評価し、文化ごとに適応させていくことを国際社会へ呼びかけました。
なかよし学園が世界各地で積み重ねてきた小さな教室の実践が、Windsor城で「人間の安全保障」という大きな問いへとつながりました。

中村里英事務局長 コメント
私はこれまで世界のいろいろな場所で、子どもたちや女性、障害のある方、戦争の中で暮らしている人たちと一緒に活動してきました。その中で感じてきたのは、人を守ることはもちろん大切ですが、『守られる人』という役割だけを与え続けることが、本当にその人のためになるのだろうか、ということでした。
ルワンダで蕎麦を一緒につくったお母さんたちも、ウクライナで日本へメッセージをつくった子どもたちも、松戸で毎日蕎麦をつくっている皆さんも、自分にできることを見つけた瞬間に表情が変わります。『私にもできる』『私にも誰かに渡せるものがある』という経験は、人の未来を変える力を持っていると思います。
平和をつくるために、私たちが誰かの未来を決める必要はありません。その人が自分の未来を考え、試し、選べる可能性を増やすこと。それが教育にできることだと私は考えています。
今回Windsorで発表したCHOICE Education Modelも、まだ完成した答えではありません。世界のさまざまな地域の人たちと一緒に試し、学び、変えていくための出発点です。
Peace begins with choice.
自分の人生を自分で選ぶことのできる人を増やすことから、平和をつくっていきたいと思います。

Windsorから、次の実証へ
中村里英が今回提示したCHOICE Education Modelは、「Observed Practice(現場で確認された実践)」から「Emerging Hypothesis(仮説)」を導き、「Proposed Model(提案モデル)」として整理した段階にあります。
今後なかよし学園は、日本国内の「世界とつながる学び」「世界まなびあいプロジェクト」「教えあい・学びあいリレー」に加え、ウクライナ、アフリカ、アジアなど各地の教育・平和構築現場でこのモデルを検証し、地域の文化や課題に応じて適応させていくことを目指します。
Human Security begins when people can imagine, experience and choose who they can become.
(人間の安全保障は、人が「自分は何者になれるのか」を想像し、経験し、そして自ら選べるところから始まる。)
誰かの未来を代わりに決めるのではなく、その人自身が未来をつくるための選択肢を増やす。
世界各地の小さな教室で積み重ねてきた実践を、国際社会で共有できる平和構築モデルへ。Windsorでの発表は、中村里英となかよし学園にとって、その新たな一歩となりました。

本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org
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掲載時の写真クレジット:©なかよし学園プロジェクト
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