ノバルティスのデータ、脊髄性筋萎縮症の発症前における「ゾルゲンスマ®」治療により年齢に応じた発達を示す
1型脊髄性筋萎縮症患者において、発話、嚥下および気道保護の維持が可能であることが事後解析で実証される
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年3月14日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
- 脊髄性筋萎縮症(SMA)発症前におけるSMN2遺伝子のコピー数3を有する小児に対する治療では、起立や歩行などで年齢に応じたマイルストーンを達成した。人工呼吸器または栄養チューブによる補助は不要で、「ゾルゲンスマ」と関連のある重篤な有害事象は認められなかった
- START、STR1VE-EUおよびSTR1VE-US試験の事後解析で、1型SMA小児患者における球機能の重要な指標を達成または維持されたことが示された
- 現在、世界中の臨床試験、マネージドアクセスプログラムおよび市販後において1,800名を超える患者に「ゾルゲンスマ」が投与されている[1]
SMN2遺伝子のコピー数が3の小児SMA患者では、未治療の場合にほとんどが自立歩行不能を特徴とする2型SMAを発症します[2]。しかしながら、SPR1NT試験のコピー数3のコホートでは、15例中14例(93%)は自立して歩行が可能となり、大半(15例中11例、73%)は、世界保健機関(WHO)の正常発育の範囲内に達成しました。15例全例(100%)が主要評価項目である3秒以上の支えなしで立つ運動マイルストーンを達成し、15例中14例(93%)がWHOの正常発育の範囲内に達成しました。試験期間中、いずれの小児にも栄養チューブおよび人工呼吸器による補助はまったく行われず、治験薬と関連のある重篤な有害事象は報告されませんでした。
ペンシルベニア州のClinic for Special ChildrenのメディカルディレクターであるKevin Strauss医師は次のようにコメントしています。「SPR1NT試験の結果からも、SMAのリスクがある小児患者さんに対する発症前の『ゾルゲンスマ』治療の顕著な効果があらためて確認されました。SMAの自然経過とは極めて対照的に、発症前に『ゾルゲンスマ』が投与された小児患者さんは起立して歩行しており、神経筋疾患の徴候はほとんど、あるいはまったく認められませんでした。これらの小児患者さんの多くは、SMAに罹患していない健康な小児と区別できない運動機能の発達を示しています。これらのデータはSMAの新生児スクリーニングの価値を明確に示しており、可能な限り最善なアウトカムを得るための早期診断と治療に欠かせないと考えます。」
延髄の運動神経は、嚥下、発話、咀嚼などの機能に必要な筋肉をコントロールしており、SMAによる障害は窒息、栄養障害、感染および死亡につながる可能性があります[3]。球機能の定義が広く確立していないことから、START、STR1VE-EUおよびSTR1VE-US試験における「ゾルゲンスマ」を投与した1型SMA小児の事後解析(n=65)では、発話、嚥下および気道保護の維持という3つの主要な要素を含む複合評価項目を用いて球機能を定義しました。全ての要素において後ろ向きかつ記述的に評価できた患者のうち、80%(20例中16例)が複合評価項目を達成しました。
Novartis Gene TherapiesのチーフメディカルオフィサーであるShephard Mpofu医師によると、「1型SMAが球機能に及ぼす影響は、消耗性の合併症である呼吸障害や、社会生活に影響をもたらす発語障害などにつながることがあります。今回の事後解析は、『ゾルゲンスマ』が小児患者さんの健やかな生活に大きく貢献できる可能性を示唆しています。MDA学会で発表された追加データは、これまでの臨床試験での条件下以外のリアルワールドにおける『ゾルゲンスマ』の患者さんに対する、一貫した臨床的に重要で意味のある治療ベネフィットを示すものです。」
SPR1NT試験におけるコピー数3のコホートの最終結果
SPR1NT試験は、6週齢以下でSMAと遺伝子学的に診断され、コピー数が2または3のSMN2遺伝子を有する臨床的な症状を発症前の小児患者を対象に、「ゾルゲンスマ」を静注内単回投与した際の安全性と有効性を評価するよう計画された第III相非盲検単群多施設共同試験です2。コピー数が3のコホートの平均日齢(投与時)は28.7日(9~43日)でした。SMN2遺伝子のコピー数が2の14例、およびコピー数が3の15例に投与しました。SMN2遺伝子のコピー数が3の患者(80%超)は、2型SMAを発症し、SMA患者の30%を占めています[2]。自然歴によると、2型SMA患者は補助なしで歩行することができません。
コピー数3のコホート(n=15)の最終結果:
- 全例(100%、15例中15例)が生後24カ月までに主要評価項目である補助なしでの起立(3秒以上)を達成し、このうち14例がWHOの正常発育の範囲内で達成した
- 14例(93%)が補助なしでの歩行を達成し、このうち11例がWHOの正常発育の範囲内で達成した
- 試験期間中、すべての患者(100%)で栄養補助や人工呼吸器を要さなかった
すべての患者が投与後に1件以上の有害事象(AE)を発現し、そのうち8件(53%)は治験薬と関連があると判断されました。治験薬と関連のある重篤な有害事象は認められませんでした。3例に重篤な有害事象(SAE)が報告されたものの、いずれも回復し、治験薬との関連はありませんでした。
SPR1NT試験でのコピー数2のコホートの最終結果はEuropean Academy for Neurology(EAN)Virtual Congress 2021において発表されています。
球機能の事後解析
事後解析では、「ゾルゲンスマ」投与後の症候性1型SMA小児における球機能の要素を評価するため、第I相試験(START試験)と第III相試験(STR1VE-EUおよびSTR1VE-US試験)の統合データを記述的に評価しました[3]。球機能とは、未知の聞き手が理解できるよう話し、飲食物を飲み込み、気道保護を維持しながら栄養ニーズを満たすことを可能にする脳神経内の完全性と定義しました。本試験では、事前に規定した時点または試験終了時(START試験で24カ月齢、STR1VE-EUおよびSTR1VE-US試験で18カ月齢)に各評価項目および3つすべての評価項目を達成した患者の割合を後ろ向きに評価しました。
- 全体として、「ゾルゲンスマ」投与時に生後6カ月未満の65例を解析した
- 嚥下について65例を解析した(START試験[n=11]、STR1VE-EU試験[n=32]、STR1VE-US試験[n=22])。発話は、START試験とSTR1VE-US試験で、ネイティブに英語を話す家族の患者のみを対象に評価された。患者全員が3つの尺度すべてについて転帰を示してはいない(START試験[n=4]、STR1VE-US試験[n=16])
- 95%(20例中19例)が発話の評価項目を満たした
- 92%(65例中60例)が嚥下検査で1回以上正常な結果を示した
- 92%(65例中60例)で気道保護が維持できなくなることを示す事象は認められなかった
- 全体として、80%(20例中16例)が発話能力、正常な嚥下能力および気道保護の維持という複合評価項目を達成した
「ゾルゲンスマ」について
「ゾルゲンスマ」は、SMAの治療を適応として承認された唯一の遺伝子治療薬であり、SMN蛋白質の持続的発現による疾患進行を抑制するために、静注内単回投与で欠損または機能不全したSMN1遺伝子の機能を補充することで、SMAの遺伝学的な根本原因に直接対処するようデザインされた唯一のSMA治療薬です。「ゾルゲンスマ」は現在40カ国以上で承認されており、1,800名を超える患者さんが世界中の臨床試験、マネージドアクセスプログラムおよび市販後において「ゾルゲンスマ」の投与を受けています[1]。Novartis Gene Therapiesは、充実した臨床開発プログラムを通して「ゾルゲンスマ」を評価するとともに、遅発型SMA患者さんに対する髄腔内投与の開発を通してSMAを患う小児患者さんへの貢献を継続しています。
Novartis Gene Therapiesは、あらゆる種類のSMAの治療を目的としたAAV9遺伝子の静脈内および髄腔内投与について、Nationwide Children's Hospitalとの世界での独占ライセンスを有します。ヒトSMAのin vivo遺伝子治療のための知的財産ポートフォリオにおいて、遺伝子組換えAAVベクターについてREGENXBIOから世界での独占ライセンス、SMA治療のためのAAV9ベクターの中枢神経系へのin vivo送達に関するGénéthonとの世界での独占ライセンス契約、およびSMA治療のための自己相補的DNA技術の使用に関するAskBioとの世界での非独占ライセンス契約を取得しています。
脊髄性筋萎縮症について
SMAは、希少な遺伝性の神経筋疾患であり、乳児の死亡の主な遺伝的原因でもあります[4,5]。機能的SMN1遺伝子の欠損によって引き起こされる最も重症な型のSMAは運動ニューロンの急速かつ不可逆的な喪失を引き起こし、呼吸、嚥下および基本運動などの筋機能に影響を及ぼします[6]。重症度は、バックアップ遺伝子であるSMN2遺伝子のコピー数に応じて様々な種類で異なります[7]。SMN2遺伝子のコピー数が2の患者さんの大多数(70%超)が1型を発症し、SMAの60%を占めます[8,9]。1型は重症で未治療のまま放置すると、90%以上の症例で2歳までに死亡するか永続的な人工呼吸器が必要となります[4,5]。SMN2遺伝子のコピー数が3の患者さんの大部分(80%超)が2型であり、SMAの30%を占めます[8]。未治療のまま放置すると、2型の患者さんは歩行できず車椅子が必要となり、30%を超える患者さんは25歳までに死亡します[10]。運動ニューロンの喪失は不可逆的であるため、不可逆的な運動ニューロンの喪失および疾患進行を止めるためには可能な限り早期にSMAを診断し、積極的な支持療法などの治療を開始することが不可欠です[11,12]。
Novartis Gene Therapiesについて
Novartis Gene Therapiesは、希少な遺伝性疾患と共に生きる患者さんの健全な生活のために医薬の未来を描くことを目指しています。最先端の技術を活用し、有望な遺伝子治療薬候補を実績のある治療へつなげることに努めています。製造分野における広範な能力と専門知識の蓄積があり、遺伝子治療の品質と規模を担保しながら、世界中の患者さんにお届けしています。Novartis Gene TherapiesのOAV101を用いた臨床開発プログラムでは、あらゆる年齢、SMAの種類、新規発症および既罹患集団の幅広いSMA患者さんを対象として、静脈内投与と髄腔内投与の両方を検討する研究が蓄積されています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Novartis. 2021. Q4 2021 Results Investor presentation [PowerPoint Presentation]. Available at: https://www.novartis.com/sites/novartis_com/files/q1-2021-investor-presentation.pdf. Accessed February 2021.
- Strauss K. et al. Onasemnogene Abeparvovec in Presymptomatic Spinal Muscular Atrophy: SPR1NT Study Update in Children with Three Copies of SMN2. Abstract presented at the 2022 MDA Clinical & Scientific Conference. 13-16 March 2022.
- McGrattan K. et al. Bulbar Function in Patients with Spinal Muscular Atrophy (SMA) Type 1 Following Onasemnogene Abeparvovec. Abstract presented at the 2022 MDA Clinical & Scientific Conference. 13-16 March 2022.
- Anderton RS and Mastaglia FL. Expert Rev Neurother. 2015;15(8):895–908.
- Finkel RS, McDermott MP, Kaufmann P. et al. Neurology. 2014;83(9):810-7.
- Sugarman EA, Nagan N, Zhu H, et al. Eur J Hum Genet. 2012;20(1):27-32.
- Lorson CL, Rindt H, Shababi M. Hum Mol Genet. 2010;(15):111-8.
- Verhaart IEC, Robertson A, Wilson IJ, et al. Orphanet J Rre Dis. 2017;4;12(1):124.
- Feldkötter M, et al. Am J Hum Genet. 2002;70:358–68.
- Darras BT, Finkel RS. “Natural history of spinal muscular atrophy.” In: Sumner CJ, Paushkin S, Ko CP, eds. Spinal Muscular Atrophy: Disease Mechanisms and Therapy, 2nd ed. London, UK: Academic Press/Elsevier;2017:399‒421.
- Soler‐Botija C, et al. Brain. 2002;125(7):1624-1634.
- Glascock J, Sampson J, Haidet-Phillips A, et al. J Neuromuscul Dis. 2018;5:145-158.
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