多目的利用を実現する一体型小型原子炉の概念設計を完了 市場ニーズを踏まえた社会実装の検討ステージへ
◆ 各種電源供給だけでなく、動力や熱源など多目的用途を探る
三菱重工業は、将来を見据えたカーボンフリー電源として多様なニーズに応える一体型小型原子炉の概念設計を完了しました。主要機器を原子炉容器内に統合することにより一体・小型化を可能にしたもので、加圧水型軽水炉(PWR)の技術、知見をベースに、小型炉特有の高い安全性を実現します。
これにより、小規模グリッド向けの発電用炉(30万kW級)や、離島向けモバイル電源や災害非常用電源などに適用する船舶搭載炉(3万kW級)への展開、さらに電源供給だけでなく動力や熱源利用といった多目的利用も実現可能です。これらの幅広い目的に対する市場ニーズの多角的な調査・分析を踏まえて、将来この成果が社会で実際の課題解決に貢献するいわゆる"社会実装"への道を探求していきます。
当社は、これまで国内24基のPWRの設計・建設から保守に携わり、安全性・信頼性向上や長期継続利用に向けた技術開発に取り組むとともに、小型炉を含む多様な革新的原子力技術開発に取り組んできました。小型炉開発は、1969年に進水した原子力船「むつ」の動力炉を開発したことが始まりです。2000年代には小型一体型モジュラー炉IMR開発も実施、原子炉内の冷却材熱流動試験や安全システムの除熱試験などを経て、開発に必要とされる要素技術を実証しています。これらの開発知見をベースに、近年は世界最先端の技術を有する日本国内の大学や研究機関と連携して小型炉開発に取り組んでいます。
原子力発電は、大規模かつ安定的に電力を供給可能なカーボンフリー電源であり、脱炭素社会の実現に向けた重要なベースロード電源として今後も期待されています。三菱重工グループは、電力の安定供給に引き続き貢献するため、飛躍的に安全性を向上させた次世代PWRの開発を進めるとともに、さらにその先を見据え、今回の小型炉に加えて、高温ガス炉、マイクロ炉といった将来炉の開発も推進しています。今後も、多様化するさまざまなニーズに応えるべく、原子力技術で社会に貢献していきます。
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