農林中央金庫 と 公益財団法人日本自然保護協会の連携協定について
~森里川海および農林水産業・食農関連産業のネイチャーポジティブに向けて~
公益財団法人日本自然保護協会(理事長 土屋 俊幸、以下「NACS-J」)は農林中央金庫(代表理事理事長:北林 太郎)と、森里川海および農林水産業・食農関連産業のネイチャーポジティブ推進を目的とした連携協定を締結しましたのでお知らせいたします。

1.背景
私たちの豊かなくらしとビジネスの土台である自然は、大量生産と廃棄を前提とする一方通行な経済の仕組みにより、急速かつ深刻に損なわれつつあります。こうした状況のもと、2022 年に開催された生物多様性条約第 15 回締約国会議(COP15)において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択されました。この枠組みでは2050 年ビジョンとゴールに加え、2030 年ミッションとして「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」ことが掲げられており、いわゆるネイチャーポジティブ(自然再興)への転換が世界的に合意されました。
ネイチャーポジティブに向けてはビジネス、政策、文化といった多様な要素から構成されている経済社会システムに対して多様な領域から働きかけることが必要です。その際、「ネットゼロ ※1」や「サーキュラーエコノミー ※2」の取組みと連動することも求められます。中でも特に重要な領域の一つが、森里川海 ※3という自然のなかで古来より営まれてきた農林水産業、そして農林水産業から主に原材料を調達する食農関連産業(食品・飲料メーカー等)であると考えられます。
2.連携協定の内容
本協定は、農林中央金庫とNACS-Jが双方の強みを生かし協力し合って、農林水産業や食農関連産業のネイチャーポジティブへの転換を推進していくことを目的とします。具体的には、農林水産業者の協同組織を会員(出資団体)に持つ農林中央金庫が、会員や投融資先の食農関連産業のネイチャーポジティブ転換を支援していきます。
その中で、NACS-Jが1951年の設立以来、市民、企業との連携で蓄積してきたネイチャーポジティブに関するノウハウを応用していきます。そのほか、双方が持つ地域との関係性を活かし、環境に配慮した農林水産業のプロジェクト構築に向けて連携していきます。
◆ 連携対象
① 自然の指標等の活用プラクティス形成
国内の実情やビジネスでの応用可能性を踏まえて、Nature Positive Initiative ※4が開発を進めている自然の状態を評価する指標等の活用方法について議論を行い、その内容を共同で発信。
② ネイチャーポジティブに向けたファイナンス・ソリューション開発
農林中央金庫が有する金融に関するノウハウと、①の議論やNACS-Jのネイチャーポジティブに関する知見等を組み合わせ、農林水産業や食農関連産業向けの新たな金融の仕組みや、農林水産業由来のカーボンクレジット等の検討、開発を促進。
③ 農林水産業におけるネイチャーポジティブ実践にかかるプロジェクト構築
農林水産業の現状を踏まえた適切なプロジェクト体制を構築し、自然の状態を評価する指標の設定やモニタリングに関するノウハウを農林水産業や食農関連産業へ提供。
◆ 連携イメージ

3.今後の展開
農林中央金庫、NACS-J間で協力を深め、ネイチャーポジティブに向けたプラクティス形成、ファイナンス・ソリューション開発、プロジェクト構築等を進めます。具体的には、NACS-Jの知見を活かし、農林中央金庫が取り組む生物多様性ローンへの適切な自然の状態を評価する指標の選定、モニタリング支援を想定しています。
また、農林水産業由来のカーボンクレジットについては、生物多様性への貢献を踏まえた高付加価値化について検討し、双方の連携を具体化しつつ、実践へとつなげていきます。
4.当金庫とNACS-Jの概要および連携協定への思い
◆ 農林中央金庫について
(1)設立
1923年12月
(2)所在地(本店)
東京都千代田区1-2-1 Otemachi Oneタワー
(3)事業
JA、JF、JForest等の農林水産業者の協同組織を会員とする全国金融機関
(4)連携協定に対する思い
当金庫はパーパス(私たちの存在意義)を「持てるすべてを「いのち」に向けて。~ステークホルダーのみなさまとともに、農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます~」と定めています。このパーパスのもと、農林水産業者の協同組織を会員とする金融機関として、農林水産業のサステナビリティに直結するネイチャーポジティブの推進は極めて重要な課題と認識しています。
一方で、農林水産業だけでは、土壌や気候等に配慮した経営転換は難しく、食農関連産業を含み、川上から川下までの食農バリューチェーンを俯瞰して、その移行(トランジション)を図っていくことが重要になるものと当金庫は考えております。当金庫は、NACS-Jをはじめ多様なステークホルダーとの連携の中で、食農バリューチェーンのトランジションを推進し、ネイチャーポジティブの実現に貢献していきます。
◆ 公益財団法人日本自然保護協会について
(1)設立
1951年10月
(2)所在地
東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
(3)事業
調査・教育・政策提言を通じて自然環境の保全を推進する、自然保護NGO。
(4)連携協定に対する思い
NACS-Jは「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんからお年寄りまでが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。
日本の豊かな生物多様性は、農林水産業と深く結びつきながら築かれてきました。しかし現在、その多様性は失われつつあります。こうした状況を受け、当協会は農林中央金庫をはじめとする多様なステークホルダーと連携し、農林水産業を通じたネイチャーポジティブへの貢献を目指します。
※1ネットゼロ
二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量を可能な限り削減し、削減が困難な排出分については、森林などによる吸収により相殺し、活動全体の排出量が差し引きゼロになっている状態。
※2サーキュラーエコノミー
大量生産と廃棄を前提とする一方通行な経済の仕組みではなく、製品や資源を再利用等することで、資源の使用を可能な限り循環させ、資源の採取、廃棄物の発生を最小限に抑えるという考え方。
※3森里川海
例えば、環境省では、自然の象徴として、「森」「里」「川」「海」を位置づけ、相互につながり、影響し合って恵みを生み出し、そして循環しているという関係性に着目した、「つなげよう、支えよう、森里川海」プロジェクトを推進しています(リンク)。
※4Nature Positive Initiative
「ネイチャーポジティブ」の実現を目的として、世界の自然保護団体、研究機関、企業、金融機関などが連携する国際的な枠組み。
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