アクセンチュア最新調査——拡張現実が急速に普及する中、没入型技術の責任あるデザインと展開が急務に
早期に責任あるアプローチを採ることで、XRによるビジネス機会を飛躍的に拡大かつ維持することが可能に
アクセンチュア(NYSE:ACN)の最新調査によると、XR*は経済や社会に極めて大きなメリットをもたらしうる半面、従来にはなかった物理的、心理的および社会的リスクをもたらす可能性があることが明らかになりました。ビジネスリーダーは、XR導入の初期段階から、XRツールやビジネスモデルの責任ある設計、開発および市場への導入に積極的に関わることが求められます。
*XR(Extended Reality):仮想現実(Virtual Reality)や拡張現実(Augmented Reality)、そのほかの没入型ツールなどを含めた総称
アクセンチュアがG20若手起業家連盟(G20 YEA)と共同で作成し、本日発表した調査レポート「新たなる現実への警鐘:没入型技術の責任ある未来の構築(Waking Up to a New Reality: Building a Responsible Future for Immersive Technologies) 」では、VRやAR、さらにさまざまな分野に広がる没入型ツールまでを含めた広義の拡張現実であるXRが、ゲームやエンターテイメント領域での活用の枠をはるかに超え、新たな価値を生み出す技術であることを提示しています。没入型ツールはすでに、顧客体験を強化するだけでなく、従業員の生産性向上やトレーニング、メンタルヘルスの治療などにも用いられています。
実際、企業のXR関連支出は消費者支出を上回っており、IDCによれば、2023年には企業支出は消費者支出の3倍に相当する1,210億米ドルに達する見込みです。アクセンチュアの分析では、2014年から2016年までの間にARやVRに関連する特許出願数は5倍近い6,000件以上に増加しており、この間の関連スタートアップ企業の資金調達額は237%増となっています。
本レポートでは、XRによる新たな体験機会が期待されている一方で、XRツールの持つ威力や親しみやすさが個人や社会の幸福に新たなリスクをもたらす可能性があり、そうしたリスクは既存のテクノロジーによって経験してきたものよりはるかに大きなものになるであろうと指摘しています。新たなリスクには次のようなものがあります。
個人情報の悪用:
個人情報やソーシャルメディア上の行動履歴だけでなく、人の感情や行為、判断までもがサイバー犯罪によって盗まれたり、改ざんされたりするリスクをもたらす可能性があります。
フェイク体験:
没入型の体験を通じて得たニュースや情報は、事実とフィクションを切り離すことが困難になり、事実ではない体験が人の行動や意見、意思決定に大きな影響を与えやすくなります。
サイバーセキュリティ:
サイバー上の分身であるアバターを使ってIDに関連した新たな形態の犯罪が生み出される可能性があるだけでなく、外科手術のように没入型技術への依存度が大きい重要な業務が恐喝の対象になるリスクも生じます。
反社会的行為:
アバターを使った仮想世界では、ソーシャルメディア上での言葉による脅しから、実際の身体的脅迫まで、さまざまな反社会的行為が生まれる可能性があります。また、仮想環境で常態化した反社会的行為が現実社会の行為にまで紛れ込む可能性もあります。
アクセンチュア・インタラクティブでコンテンツイノベーション部門を統括するロリ・デュボフ(Rori Duboff)は次のように述べています。「最高の顧客体験は、人々の生活を向上させるという目的とそのためのイノベーションが交わる点に生まれると確信しています。XRには計り知れない可能性があり、私たちは過去のさまざまな失敗から学ぶことで、より解放的で責任ある世界や体験をデザインすることが求められます。最終的にXRを成功させるには、戦略チームやクリエイティブチームが多様な視点を持ちより、すべてのひとに開かれたXR体験にする必要があります。」
さらに本レポートでは、人々の過度なテクノロジーへの依存や、現実の社会問題との関わりを断つことにつながりかねないリスクも指摘しており、 XR活用機会の差が消費者関係や就業機会を失うことにつながり、社会の分裂を増幅させかねないというリスクも示しています。
アクセンチュア・ラボのシニア・マネジング・ディレクターで、アクセンチュアのXRグループのグローバル統括を務めるマーク・カレル-ビラード(Marc Carrel-Billiard)は次のように述べています。「私たちはポストデジタル時代の入り口にいます。XRのような先進技術はイノベーションをさらに発展させる原動力になるでしょう。XRは、こうしたチャンスを実現する上で中核となるテクノロジーですが、XRを正しく活用するためには、リスクを適切に対処し、責任を持ってXRツールや没入型体験をデザインしていかなければなりません。」
XRを適切に活用していくために、企業には以下のような行動が求められます。
独自の早期警戒システムを構築:
ビジネスリーダーは急速なイノベーションのもとですぐに陳腐化するようなルール作りではなく、倫理的視点を日常業務や重要な意思決定に習慣的に組み入れるといった、いわゆる「責任意識のある文化」を醸成すべきです。
責任あるデザインのために多様なエキスパートを動員:
企業は、神経科学やメンタルヘルスの専門家、社会学者、行動理論の専門家などの領域を含めたエコシステムを組織化し、XRツールの責任ある設計や利用を強化しなければなりません。
従業員の能力の強化に投資:
従業員の生産性向上やトレーニング、創造性にターゲットを定めてXRへの投資を行わなければなりません。自動化の波に最もさらされている職種こそ、没入型技術によって拡張できる場合が多く、「消滅の危機に瀕した職種」を「未来の職種」に転換することが可能です。
アクセンチュア・リサーチのプリンシパル・ディレクターであるアルメン・オーバンソッフ(Armen Ovanessoff)は次のように述べています。「XRは早くもVRやARの枠を超え、触覚や嗅覚、味覚といった人間の五感や思考を活用したり、それらを増大させたりするツールを含むまでに進化を遂げています。こうしたツールは、正しく活用すれば私たちの暮らし方や働き方を大幅に向上させることでしょう。アクセンチュアには、しっかりと安全性を確保しながら、技術的なイノベーションを推進していく義務があります。私たちはビジネスリーダーや政策立案者、市民社会に対して、XRの責任ある未来を積極的にデザインするために今こそ行動する時である、と呼びかけています。」
本レポートは政策立案者に対しても、次のような提言も行っています。
誰でも手頃な費用でアクセスできるようにする:
5Gネットワークのような新しく強力なインフラを拡大し、XR体験を適切な料金で幅広く利用できるようにする必要があります。これは特に、健康や教育や社会サービスの提供において重要な要素です。
地域のイノベーターや起業家を奨励する:
中小企業でもXRツールやXR体験を活用できるようにするだけではなく、開発フェーズから参画できる環境を整え、地域密着型のソリューションを生み出していくことが重要です。
研究や議論を促進する:
さまざまな業界や領域からエキスパートを結集させ、XRが適切なセーフガードを維持しながらイノベーションを生み出せるよう、必要な共通理解や指針の構築に取り組むことが必要です。
本レポートの詳細および調査の内容については https://www.accenture.com/us-en/insights/technology/responsible-immersive-technologies をご覧ください。(日本語版は追って公開予定)
【アクセンチュアについて】
アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルティング企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創出を支援しています。世界120カ国以上のお客様にサービスを提供する47万7,000人以上の社員が、イノベーションの創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。
アクセンチュアの詳細は www.accenture.com を、
アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jp をご覧ください。
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