神経内視鏡の画面に映らない器具の動きと脳構造の変形を模型上で可視化―日本発「透明脳モデル」の研究論文が国際学術誌に掲載
西山健一先生・三輪点先生と共同開発。硬性・軟性内視鏡と挿入経路を模型上で検証。開発開始から論文掲載まで約5年。今後は、国内外のハンズオントレーニングで使用予定
本リリースのポイント
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脳弓の圧迫、静脈構造の伸展など、内視鏡の画面外で起こる変形を模型上で可視化
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硬性・軟性内視鏡と挿入経路を比較し、器具の到達範囲と周囲への影響を検討
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開発開始から論文掲載まで約5年。西山先生が国内・海外において外でも透明脳モデルを用いたハンズオントレーニングを直接指導
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー(東京都中央区、代表取締役CEO 大野秀晃、以下当社)は、西山健一先生、三輪点先生と共同開発した「透明脳モデル」を用いた研究論文が、2026年9月1日、国際小児脳神経外科学会(ISPN)の公式学術誌『Child’s Nervous System』に掲載されたことをお知らせします。
透明脳モデルは、脳の内部にある空間「脳室」と周囲の構造を柔軟な透明素材で再現し、実際の内視鏡を操作できる研究・手術教育用模型です。西山健一先生・三輪点先生と当社が共同開発し、内視鏡の先端映像と、模型の外側からの観察を対応付けられるようにしました。
本論文は、内視鏡の画面に進路が見えていることと、器具全体が周囲にどう触れているかを把握できることの違いを、模型上で検討したシミュレーション研究です。硬性・軟性内視鏡と挿入経路を比較し、脳弓の圧迫・変位や静脈構造の伸展などを報告しています。
┃掲載論文
Real-time visualization of endoscope–brain interactions using a transparent ventricular model
日本語訳:透明な脳室模型を用いた、内視鏡と脳の相互作用のリアルタイム可視化(当社訳)
掲載誌:Child’s Nervous System
掲載日:2026年9月1日
著者(日本語表記):西山健一先生、三輪点先生、白川勇仁、大野秀晃
DOI:10.1007/s00381-026-07452-0

┃研究の目的と方法――手術画面と、その外側で起きることを照合
神経内視鏡手術では、術者は先端のカメラ映像を見ながら操作します。一方、カメラより手前にある軸やシース(器具を通す筒)が、脳の内部にある空間である「脳室」の周囲にどう接触しているかは、画面だけでは直接確認できません。本研究は、この見えない相互作用を外側から観察し、操作・器具・経路の違いと結び付けて検討することを目的としました。
非交通性水頭症の患者のMRIデータを基に脳室形状を再現し、透明なウレタンゲル等で柔軟な模型を製作。脳弓、静脈、脈絡叢などを色分けし、水を満たしたアクリル容器内で内部を見通せるようにしました。実際の診療で使われる硬性内視鏡と軟性内視鏡を、前頭部・頭頂部からの経路で操作しました。
第三脳室底開窓術、透明中隔開窓術、脈絡叢凝固術、腫瘍生検へのアプローチを模した操作を行い、内視鏡映像と複数の外部カメラで同時に記録しました。患者の治療成績を調べた臨床試験ではなく、模型上で器具と脳構造の動きを観察した研究です。
先端映像と外側の観察を照合する
先端映像では「進路が見えているか」を確認し、外側からは「画面外の軸が、周囲のどの構造に触れているか」を確認する。この二つを照合できることが、透明脳モデルによる観察の要点です。以下の従来モデルとの写真比較は用途の違いを示すもので、同一操作の同時記録や比較実験の画像ではありません。
内視鏡を操作して学ぶ。その操作が周囲に与える影響まで、見て学ぶ。
従来の脳室内モデル

透明脳モデル

手技を練習する従来モデルに、器具が周囲に及ぼす影響を外側から確かめる、新たな学びの視点が加わりました。
┃主な結果――模型上で観察できた4つのこと
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進路が画面に見えていても、脳弓は押されていた
模型上では、第三脳室へ進む際に内視鏡映像で通り道が見えていても、軸が脳弓を再現した前方部分を圧迫し、横へ変位させる様子が外側から確認されました。硬性・軟性の双方で観察され、先端の映像だけでは把握できない接触を可視化しました。
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内視鏡を引き戻す動きが、静脈構造を引き伸ばしていた
模型内で内視鏡を引き戻す際、弧を描く動きによって、静脈の合流部と周囲の静脈構造を再現した部分が引き伸ばされる様子を観察しました。画面では目標が遠ざかるだけに見える操作でも、外側からは軸による牽引を確認できました。
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硬性鏡と軟性鏡では、変形の起こり方が異なった
模型上では、硬性内視鏡の方向転換に伴って脳室壁が大きく動き、シースの角度変化による周囲の圧迫も見られました。軟性内視鏡は曲がった経路を進める一方、湾曲部が視床間橋や視床を再現した部分を圧迫する場面がありました。模型上では、器具の柔らかさだけでは周囲への影響を一概に判断できない場面が観察されています。
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見える場所でも、処置具が届くとは限らなかった
模型上で脈絡叢凝固術を模した操作では、前頭部からの経路で軟性内視鏡を大きく曲げると、側脳室下角へ処置具を十分に進められない場面がありました。頭頂部からの経路では到達範囲が変わり、器具が届く範囲と周囲の変形を合わせて比較できました。
┃研究の意義と検証範囲――「見える」ことを、教育と機器開発へ
本研究が示したのは、内視鏡の先端映像、器具全体の動き、周囲の構造の変形を対応付けて観察できることです。論文では、講師が外側から動きを見てその場で助言する手技教育、挿入経路の検討、新しい内視鏡・処置具の臨床使用前の評価への活用可能性を論じています。
本研究は、患者の合併症減少や、受講者の技能向上・学習期間短縮を定量的に実証したものではありません。模型は生体の血流や拍動を再現しておらず、臨床での安全性や教育効果は今後の検証課題です。変形の観察を、生体組織の損傷の閾値や器具の臨床的安全性の優劣を確定するものとして扱うことはできません。
研究論文:透明な脳室模型による内視鏡と脳構造の相互作用の可視化
┃開発開始から論文掲載まで約5年。初公開後も改良・検証を継続
西山先生と三輪先生が求めたことは、内視鏡操作の手技を練習するだけでなく、器具の動きが周囲に何を起こしているかを外側から確かめられる模型でした。当社の従来の脳室内モデルでは、不透明な頭部・脳実質が内部の変形を隠していました。共同開発では、当社の白川勇仁らが材料選定、形状の再現、重要な構造の着色、視認性の改善を重ね、透明性と柔軟性の両立に取り組みました。
2023年11月、シンガポールの第10回IFNE世界神経内視鏡学会で、2年以上かけて共同開発した透明脳モデルを初公開しました。翌2024年11月には、日本神経内視鏡学会で国内発表しました。
2025年にはナポリやグラーツの手術教育へ広がり、2026年9月には模型上の観察結果が論文として掲載されました。開発開始から論文掲載までの約5年は、初公開後の改良・研究・教育活用を含む歩みです。
┃教える側も学ぶ。熟練した先生方の操作と議論を、次の改良へ
2024年の国内セミナーでは、三輪先生の実演を見た参加者が模型の周囲へ集まり、熟練した先生方自身も内視鏡を操作しました。西山先生は当時、参加した先生方からさまざまな改良点について意見が寄せられたと報告しています。模型は一方向に教えるためだけでなく、先生方が互いの操作を観察し、知見を持ち寄る場にもなりました。

2024年・国内発表:実演、参加者による操作、改良意見の共有
┃西山先生が海外の脳神経外科医へ直接指導。国境を越えて学び合う
2025年2月、イタリア・ナポリのIFNE等による国際ハンズオンワークショップでは、西山先生・三輪先生が透明脳モデルを用いて実演。三輪先生は、世界各国で神経内視鏡手術・教育を牽引する脳神経外科医にも実際に使用いただき、脳室内での内視鏡の動きを熱心に観察されていたと報告しています。が、見るだけでなく実際に操作し、検討する段階へ進んでいます。

同年9月、オーストリア・グラーツの第11回IFNE世界神経内視鏡学会では、西山先生が透明脳モデルを用いて海外の脳神経外科医へ内視鏡操作を直接指導しました。模型の外側から器具の動きを確かめながら、手技とその周囲で起きることをともに学ぶ場です。日本で共同開発した模型が、開発に携わった先生自身の指導によって、国際的な手術教育へつながっています。
2025年・グラーツ:西山先生による透明脳モデルを用いた指導
┃臨床の問いを、研究・ものづくり・教育で、次の医療へ
臨床の現場では直接確かめにくい器具の動きを、術者と指導者が同じ場で観察し、議論できる対象へ変える。西山先生・三輪先生の臨床と教育の知見を、当社が材料・設計・製作の工夫で形にし、国内外での使用と研究から得た意見を改良へ戻してきました。
┃開発者・論文執筆者のコメント

西山 健一 先生
新潟県はまぐみ小児療育センター 診療部長・脳神経外科
国際神経内視鏡連盟(IFNE)理事長
神経内視鏡手術では、内視鏡の画面外にある術野を直接確認することができず、予期せぬ脳実質損傷のリスクと常に隣り合わせです。
本モデルでは、手術操作中に脳がどのように変形・移動するのかを外側から直接視覚化することができ、手術手技の向上と安全性の確保に大きく貢献します。
VR技術が急速に普及する現代においても、実際に手で触れ、力を感じながら操作できる実物模型を用いて、対面で学ぶことの価値は格別です。単なる手技の習得にとどまらず、「この局面では脳がこのように動くため、注意が必要である」といった、教科書や画面上のシミュレーションだけでは伝えにくい実践的な知見を、メンターシップを通じて直接指導し、次世代へ伝承することができます。
ものづくりを強みとする日本から、この革新的な教育モデルを世界に発信できたことを、大変嬉しく、誇りに思っております。

三輪 点 先生
自治医科大学附属病院 とちぎ子ども医療センター
小児脳神経外科 教授
本モデルは、神経内視鏡手術における内視鏡自体の動きやそれに伴う脳自体の動きを可視化することを目的として開発されました。西山先生、ジャパン・メディカル・カンパニー様とともに、より優れた透明脳モデルの完成を目指して試行錯誤を重ね、今回世界初となる本モデルの完成に至りました。
本モデルを用いることで、これまでの神経内視鏡手術では直接見ることが難しかった内視鏡本体の動きや到達可能範囲、さらに内視鏡操作による正常脳構造物(脳弓や視床間橋など)への圧迫・変形といった現象をリアルタイムに可視化することが可能となりました。
これにより、従来の「術者が内視鏡の視野を通して見る」という視点に加え、「内視鏡そのものが脳内でどのように動き、周囲の脳自体にどのような影響を与えているのか」という新たな視点から、神経内視鏡手術を理解することが可能になりました。
さらに今後、本モデルが、新規アプローチ法や手術デバイスの開発にも寄与することが期待されます。日本のみならず、世界中の神経内視鏡手術の教育・トレーニングおよび手術手技のさらなる向上に貢献できることを願っています。

白川 勇仁
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
本モデルは、新潟県はまぐみ小児療育センター・西山健一先生、自治医科大学附属病院とちぎ子ども医療センター・三輪点先生の多大なるご尽力のもと、脳室内神経内視鏡手術トレーニングおよび機器検証等を目的として開発されました。
従来の弊社脳室内モデルは、主にハンズオンの内視鏡トレーニング用途として開発され、不透明な頭部および脳実質モデルの脳室内に水を満たすことで、実臨床に即したシミュレーションを可能にしていました。一方で、手技中に内視鏡が脳実質に及ぼす負荷、術者の動線を外部から観察・評価することは、現行の仕様では困難でした。
そこで透明脳モデルの開発に着手しましたが“軟質性”と“透明性”を兼ね備える素材の選定は苦慮しました。硬質樹脂やいくつかの軟質素材を経て、現在の透明度と柔軟性を有する製品へと至りました。
本モデルは、軟性を維持しつつ透明化を実現しており、さらに要所にシンプルなランドマーク着色を施すことで、優れた視認性と操作性を担保しています。これにより、術者の内視鏡操作が周囲の脳組織へ与える負荷を外部から視覚的に評価することが可能となりました。
本製品が、医療従事者の皆様の技術研鑽と、何より患者様の安全な医療の実現に貢献できることを切に願っております。
・株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーについて

当社は、最先端の3Dプリンティング技術を用いて医療のカタチを革新するものづくりベンチャーです。130年にわたり培われた技術と精神を基盤に、乳児用頭蓋矯正ヘルメットのリーディングカンパニーとして、医学的エビデンスに基づいた「適正な頭蓋健診」と「適正なヘルメット治療」の普及に取り組んでいます。
その高い安全基準と専門性は、高度な診断能力を求められる専門医療機関から厚い信頼を寄せられており、全国の大学病院・こども病院といった小児専門医療機関における採用施設数は国内最多(※注)を誇ります。 私たちは、全国の基幹病院とのネットワークを通じ、すべての赤ちゃんが安心して質の高い医療を受けられる環境(均てん化)の整備を目指しています。
当社は1897年創業の鉄鋼メーカーの大野興業を前身とし、130年にわたり培われたものづくりの技術と精神を基盤に成長を続けてきました。
1999年に積層造形技術(3Dプリント)を駆使したリバースエンジニアリングを導入し、耳小骨などのヒト骨模型の製法で特許を取得。手術前シミュレーション用3D模型の分野で、数々の術前症例模型や教育練習用模型の開発に至りました。現在では脳神経外科・耳鼻咽喉科領域を中心に、手術前シミュレーションや認定医試験等の場面で当社模型を用いたハンズオントレーニング等にご活用いただいています。
2012年には初の国産 頭蓋矯正ヘルメット「Aimet(アイメット)」を脳神経外科医と共同で開発、2018年にジャパン・メディカル・カンパニーとして独立いたしました。
現在は頭蓋矯正用ヘルメット「Qurum Fit(クルムフィット)」「Qurum(クルム)」や乳児の頭蓋変形の程度を簡便に計測できる「赤ちゃんの頭のかたち測定アプリ」、ヘルメット治療を支援する「metto(メット)アプリ」等の開発・製造・販売を行い、医療分野における新たな価値創出を目指しています。
ヘルメットを用いた累計症例数は21,000症例以上の実績があり、ヘルメット治療のさらなる認知拡⼤を図るとともに、頭蓋形状矯正という概念そのものと疾病啓発の普及に取り組んでまいります。
※注:2026年9月当社調べ。国内の大学病院・小児医療センターにおける頭蓋矯正ヘルメットの採用施設数として
・本リリースに関するお問い合わせ
透明脳モデルの撮影・操作実演、開発者・研究者への取材は、下記窓口へご相談ください。
手術教育への活用、内視鏡・処置具の操作検討、共同研究に関するご相談も受け付けています。
教育担当者、研究者、機器開発者の皆様と、現場の問いを共有し、当社製医療模型の活用と次の開発を検討します。
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
広報窓口:コーポレイト・デザイン室 柳本 瑞穂
TEL:03-5829-8342 / E-mail:choice@japanmedicalcompany.co.jp
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