スペースデータ、海底ケーブルの監視を支援する「Submarine Cable Watch」プロトタイプ版を無償リリース
実在の海底地形を再現したデジタルツイン上で、ケーブル経路と船舶・衛星情報を重ね合わせ、ダークベッセル検知やリスク分析により海洋状況把握(MDA)を支援

株式会社スペースデータ(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤航陽、以下「スペースデータ」)は、宇宙AIプラットフォーム「SpaceBrain(スペースブレイン)」の新たな機能として、海底ケーブルの監視を支援する「Submarine Cable Watch(サブマリンケーブル・ウォッチ)」をプロトタイプ版として無償リリースしました。
本機能は、実在の海底地形を高精細に再現したデジタルツイン空間の上で、日本近海の海底ケーブルの監視を支援するものです。実データにもとづく海底ケーブルの経路と船舶(AIS:船舶自動識別装置)の位置を重ね合わせて海底ケーブルに近づく船舶の挙動を把握できるほか、衛星画像から船舶を自動検出する「Vessel Watch」の仕組みとAIS情報を照合することで、位置情報を発信していない船舶(ダークベッセル)の疑いがあるものも、地図上で直感的に把握することができます。今回公開するのは、実データと想定シナリオを組み合わせた無償のプロトタイプ版であり、リスクの把握・可視化の方向性を示すことを目的としています。
背景:国際通信を支える海底ケーブルと海洋状況把握の課題
海底ケーブルは、国際的なデータ通信の多くを支える重要インフラでありながら、その大半は人目の届かない海底に敷設されています。近年、船舶の錨泊や漁具の接触などによる海底ケーブルの損傷や、位置情報(AIS)を発信しないまま航行する船舶の存在が国際的な関心を集めており、海底ケーブルの周辺海域で「いま何が起きているか」を把握することの重要性が高まっています。しかし、海底ケーブルの経路、船舶の動き、衛星による観測といった性質の異なる情報を重ね合わせて状況を読み解くことは容易ではありません。政府の海洋基本計画では総合的な海洋の安全保障の下で海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)の能力強化を掲げています。また、日本成長戦略会議で示された戦略17分野の「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップにおいても、海底ケーブルは我が国の国際通信の99%を担う基幹インフラと位置づけられ、損壊の増加傾向を踏まえた防護体制やリアルタイムな監視・原因特定機能の確保、切断事案等の把握に向けた制度・体制整備、多ルート化・陸揚局の分散化が課題として示されるなど、経済安全保障や危機管理投資の観点からも、その重要性への認識が高まっています。
スペースデータは、地球環境を精密に再現するデジタルツインを活用し、こうした海洋インフラをめぐる状況を、関係者が「見て理解できる」形に変換することで、MDAや防災・危機管理の現場における状況認識と共通理解の形成を支援します。
SpaceBrainと本機能の位置づけ
「Submarine Cable Watch」は、スペースデータが提供する宇宙AIプラットフォーム「SpaceBrain」の海洋領域における新機能として、高精細なデジタルツイン空間の上で、海底ケーブルなどの海洋インフラや船舶の動きを可視化し、国土強靱化や重要インフラの防護を課題とする政府・自治体・通信事業者などのレジリエンスの強化を支えるものです。海底地形と同一画面上にケーブルを描き、船舶との距離や不審な挙動を可視化することで、数値情報だけでなく、海底ケーブルの周辺で「いま何が起きているか」を目で見て直感的に把握できるように設計されており、今後は本機能を起点に、海洋領域の実データの拡充や準リアルタイム化、リスク評価の高度化などへ段階的に拡張していきます。
「Submarine Cable Watch」の主な特徴

※本プロトタイプ版は、CesiumJSによる3D地球儀表示(海底地形:GEBCO、海面・沿岸のベース画像:国土地理院タイル等)の上に、海上保安庁が整備・公開する「海しる(海洋状況表示システム)」の情報を取得・加工したデータと、世界中のAIS受信局ネットワークから取得したAIS(船舶自動識別装置)データを公開するaisstream.ioの近海におけるAISデータを組み合わせて構成しています。
1. 実在の海底地形のデジタルツイン上での海底ケーブルの3D可視化
立体的に再現した海底地形上に、日本近海の海底ケーブルの経路を、発光する線として描きます。本プロトタイプ版では、公的機関が公開する海洋情報にもとづく約3,270件の経路データを用いており、0〜8,000mの深度スライスとあわせて、海底ケーブルがどの深さ・どの海域を通っているかを確認できます。海底ケーブルの損傷リスクは水深や地形と深く関わっており、錨や漁具の届く浅い海域と、海底地すべりなどが起こりうる急峻な斜面とでは、警戒すべき事象が異なります。平面の地図では読み取りにくい、こうした深さ・地形とリスクの関係を一目で捉えられることが、3D表現の利点です。
2. 衛星×AIS照合による、ダークベッセル(位置情報を発信していない船舶)の検知
SAR(合成開口レーダー)や光学衛星等による撮像・検出の範囲と、船舶が発信するAIS(船舶自動識別装置)の情報を照合し、衛星では検出されている一方でAISを発信していない船舶を「ダークベッセル」の疑いがあるものとして抽出します。照合の一致・不一致を地図上でハイライトし、日本近海においてどこに「AISに現れない船」がいるのかを視覚的に把握できます。なお、AISの搭載義務は船舶の大きさや用途により異なるほか、本プロトタイプ版の衛星検出は、仕組みを示す想定シナリオにもとづきます。
3. ケーブルと船舶の距離にもとづくリスク分析
AIS受信局ネットワークから取得するAIS発信船舶と海底ケーブル経路との最短距離を算出し、速力や航行状態(錨泊・漂泊・低速航行など)、船種(曳航船・タグボート・漁船など)と組み合わせて、ケーブルの損傷につながりうるリスクをスコアとして定量化します。リスクの高い船舶を順位付けして一覧表示し、ケーブルまでの距離を地図上にもあわせて表示します。なお、距離・速力・航行状態は実データにもとづく計算ですが、航跡はシナリオにもとづく挙動から生成した代表・合成データです。
4. ブラウザだけで動作する軽量な実装とデータ来歴の明示
本機能は専用ソフトウェアのインストールを必要とせず、Webブラウザ上で動作します。3D地図エンジンには広く利用されているCesiumJSを採用し、画面上部には各データが「実データ」か「代表・合成データ」を明示する来歴表示を設けることで、可視化における透明性に配慮しています。また、今後は外部のデータ配信に障害が生じた場合にも表示を継続できるよう多段のフォールバック(障害時に予備のデータや表示に自動で切り替える仕組み)を備え、可視化基盤そのものにレジリエンスを持たせた設計としていきます。
立場の異なる関係者が同じ海の状況を共有できる可視化へ
海底ケーブルは、通信事業者、海上保安・安全保障に関わる機関、政策立案者、研究者など、多くの関係者に関わる重要インフラです。しかし、その状況は海の上・海の底にあって直接目にすることが難しく、立場や専門性の違いによって「いま何が起きているか」の理解にも差が生じます。「Submarine Cable Watch」は、実在の海域と実データにもとづく可視化を通じて、危機管理・防災の図上訓練や関係機関との状況共有、経済安全保障・海洋政策の検討、報道・広報における解説素材など、立場の異なる人々が同じ画面を見ながら海の状況を共有するためのコミュニケーション基盤となることを目指します。
今後の展望
スペースデータは、「Submarine Cable Watch」を起点に、海洋領域における機能を拡張していきます。海底ケーブルや船舶の実データの拡充、定期的なデータ取得によるAIS情報の準リアルタイム化、SAR(合成開口レーダー)・光学衛星といった段階的な商用衛星データ連携への拡張、ケーブル周辺海域への観測の重点化、ケーブルと船舶のリスク評価の精緻化を進めます。こうした取り組みを通じて、可視化・状況把握用途から実運用の状況認識・意思決定支援へと発展させ、海洋状況把握(MDA)や重要インフラ防護に関する官民の取組にも貢献しうる、海洋領域のレジリエンス(危機に対するしなやかな回復力・強靱性)を支える基盤を構築してまいります。
※本プロトタイプ版は、海しるAPIを利用して取得した情報をもとに作成しており、海上保安庁によって保証されたものではありません。
株式会社スペースデータについて
株式会社スペースデータは、「宇宙を誰もが活用できる社会へ」という思いのもと、宇宙とデジタル技術の融合によって新たな産業や社会基盤を創造するテクノロジースタートアップです。地球・宇宙環境を精密に再現するデジタルツイン技術を活用して、宇宙から都市開発、防災、安全保障まで、次の未来を支えるデジタルプラットフォームの構築を目指しています。さらに、宇宙ロボット・宇宙ステーションの運用基盤開発を通じて、宇宙社会の実現に向けて取り組んでいます。
スペースデータの公式サイトでは、「NEWS」にて最新の取り組みや発表をご紹介しています。
詳細はhttps://spacedata.jp/newsをご覧ください。
社名:株式会社スペースデータ
代表:佐藤航陽
所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階
資本金:15億1300万円
事業内容:宇宙開発に関わる投資と研究
HP:https://spacedata.jp
NEWS:https://spacedata.jp/news
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