ノバルティス、糖尿病黄斑浮腫に対する眼科用VEGF阻害剤「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」の効能追加の承認を取得
ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:レオ・リー)は、本日、眼科用血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」(一般名:ブロルシズマブ(遺伝子組換え)、以下「ベオビュ」)について、「糖尿病黄斑浮腫(以下、DME)」の効能又は効果の追加承認を取得しました。
DMEは、糖尿病およびその細小血管障害の一つである糖尿病網膜症を基礎疾患として、網膜の毛細血管瘤や毛細血管の透過性亢進により血漿成分が網膜内に貯留し、網膜の中心部である黄斑部組織に浮腫を生じ、視力障害がおきる疾患です[1,2]。国内におけるDME患者数は約65万人と推計されています[3]。
DMEは、視力低下を引き起こす可能性があるため、早期に治療を行うことが推奨されており、治療法としては、VEGF阻害剤やステロイド薬等による薬物治療、レーザー光凝固、硝子体手術などがあります。現在、中心窩を含むDME治療には、VEGF阻害剤が第一選択とされており[4]、硝子体内へVEGF阻害剤を直接投与することにより、低下した視力の改善や、視力の長期的な維持が期待されます。しかし、治療は長期にわたるため、通院や硝子体内投与に伴う患者への負担は大きいと考えられます[5-7]。
効果的に浮腫を抑制し、長期的な視力改善効果が得られる治療薬の開発をノバルティスは進めてきました。「ベオビュ」は、DME治療に対して承認されている他のVEGF阻害剤と比較して分子量が小さく、高濃度での投与が可能です。持続的な浮腫の抑制が期待されることから、「ベオビュ」は、DMEに対するVEGF阻害剤治療における新たな選択肢となりえます。
今回の承認は、DME患者を対象に「ベオビュ」とアフリベルセプト2mgを比較した第III相臨床試験であるKESTREL試験およびKITE試験のデータに基づきます。1年目の結果において、「ベオビュ」は52週時点の最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量についてアフリベルセプト2mgに対する非劣性を示しました。なお、52週時点に滲出性変化(IRF:網膜内の滲出液/SRF:網膜下液)が認められた患者の割合も低値を示しました。(KESTREL試験では、「ベオビュ」群60.3%対アフリベルセプト群73.3%。KITE試験では、54.2%対72.9%。優越性検定は実施されていません[8]。)いずれの試験においても、導入期投与後における「ベオビュ」群の患者の半数以上(KESTREL試験で55.1%、KITE試験で50.3%)は52週時点まで12週間隔投与を維持しました[8]。「ベオビュ」はアフリベルセプトと比較して、より多くのDME患者に対して少ない投与回数で滲出液に対処できる可能性が示唆されました[9]。
今回の「ベオビュ」の適応追加について、ノバルティス ファーマ株式会社の代表取締役社長であるレオ・リーは次のように述べています。「『ベオビュ』のDME治療に対する適応追加が、視力の改善や維持を切望する患者さんにとって新たな希望となることを期待しています。『ベオビュ』の持続的な浮腫抑制作用によって視力改善などの治療効果を患者さんが実感され、治療継続による負担が少しでも軽減されることを願います。」
「ベオビュ」について
「ベオビュ」は、VEFG-Aに対する組換え一本鎖抗体フラグメントで、VEGF-Aの受容体結合部位に結合することにより、血管内皮細胞表面に発現する受容体(VEGFR1およびVEGFR2)へのVEGF-Aの結合を阻害します。DMEでみられる毛細血管の障害や血管透過性亢進は、VEGF経路を介するシグナル伝達の亢進と関連している考えられることから、VEGF阻害剤である「ベオビュ」はDMEに対して治療効果を示すことが期待されています。「ベオビュ」は中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対する治療薬として2020年3月に承認を取得しています。
KESTRELとKITE第III相臨床試験について
KESTREL試験およびKITE試験には、併せて36カ国から926名の患者が参加しました[10,11]。両試験の導入期投与期間において、「ベオビュ」の患者群には6週間隔で計5回の投与がされ、アフリベルセプト群は、4週間隔で計5回投与されました[10,11]。試験の最初の1年間、「ベオビュ」の患者群には、導入期投与後12週間隔投与が続けられ、その中で疾患活動性を示した患者については8週間隔投与に切り替えられました[10,11]。アフリベルセプト患者群は、導入期投与後、8週間隔投与を受けました[10,11]。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約11万人の社員を擁しており、8億人以上の患者さんに製品が届けられています。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.co.jp
以上
参考文献
<参考資料>
「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」の製品概要
製品名:
「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」
一般名:
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)
効能又は効果*: (下線部は今回追加承認された効能又は効果)
用法及び用量*:
〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg(0.05mL)を4 週ごとに1 回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、12 週ごとに1 回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8 週以上あけること。
〈糖尿病黄斑浮腫〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg(0.05mL)を6週ごとに1回、通常、連続5回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。
承認取得日:
2022年6月20日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する注意並びに用法及び用量に関連する注意は、電子化された添付文書(電子添文)をご覧下さい。
DMEは、視力低下を引き起こす可能性があるため、早期に治療を行うことが推奨されており、治療法としては、VEGF阻害剤やステロイド薬等による薬物治療、レーザー光凝固、硝子体手術などがあります。現在、中心窩を含むDME治療には、VEGF阻害剤が第一選択とされており[4]、硝子体内へVEGF阻害剤を直接投与することにより、低下した視力の改善や、視力の長期的な維持が期待されます。しかし、治療は長期にわたるため、通院や硝子体内投与に伴う患者への負担は大きいと考えられます[5-7]。
効果的に浮腫を抑制し、長期的な視力改善効果が得られる治療薬の開発をノバルティスは進めてきました。「ベオビュ」は、DME治療に対して承認されている他のVEGF阻害剤と比較して分子量が小さく、高濃度での投与が可能です。持続的な浮腫の抑制が期待されることから、「ベオビュ」は、DMEに対するVEGF阻害剤治療における新たな選択肢となりえます。
今回の承認は、DME患者を対象に「ベオビュ」とアフリベルセプト2mgを比較した第III相臨床試験であるKESTREL試験およびKITE試験のデータに基づきます。1年目の結果において、「ベオビュ」は52週時点の最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量についてアフリベルセプト2mgに対する非劣性を示しました。なお、52週時点に滲出性変化(IRF:網膜内の滲出液/SRF:網膜下液)が認められた患者の割合も低値を示しました。(KESTREL試験では、「ベオビュ」群60.3%対アフリベルセプト群73.3%。KITE試験では、54.2%対72.9%。優越性検定は実施されていません[8]。)いずれの試験においても、導入期投与後における「ベオビュ」群の患者の半数以上(KESTREL試験で55.1%、KITE試験で50.3%)は52週時点まで12週間隔投与を維持しました[8]。「ベオビュ」はアフリベルセプトと比較して、より多くのDME患者に対して少ない投与回数で滲出液に対処できる可能性が示唆されました[9]。
今回の「ベオビュ」の適応追加について、ノバルティス ファーマ株式会社の代表取締役社長であるレオ・リーは次のように述べています。「『ベオビュ』のDME治療に対する適応追加が、視力の改善や維持を切望する患者さんにとって新たな希望となることを期待しています。『ベオビュ』の持続的な浮腫抑制作用によって視力改善などの治療効果を患者さんが実感され、治療継続による負担が少しでも軽減されることを願います。」
「ベオビュ」について
「ベオビュ」は、VEFG-Aに対する組換え一本鎖抗体フラグメントで、VEGF-Aの受容体結合部位に結合することにより、血管内皮細胞表面に発現する受容体(VEGFR1およびVEGFR2)へのVEGF-Aの結合を阻害します。DMEでみられる毛細血管の障害や血管透過性亢進は、VEGF経路を介するシグナル伝達の亢進と関連している考えられることから、VEGF阻害剤である「ベオビュ」はDMEに対して治療効果を示すことが期待されています。「ベオビュ」は中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対する治療薬として2020年3月に承認を取得しています。
KESTRELとKITE第III相臨床試験について
KESTREL試験およびKITE試験には、併せて36カ国から926名の患者が参加しました[10,11]。両試験の導入期投与期間において、「ベオビュ」の患者群には6週間隔で計5回の投与がされ、アフリベルセプト群は、4週間隔で計5回投与されました[10,11]。試験の最初の1年間、「ベオビュ」の患者群には、導入期投与後12週間隔投与が続けられ、その中で疾患活動性を示した患者については8週間隔投与に切り替えられました[10,11]。アフリベルセプト患者群は、導入期投与後、8週間隔投与を受けました[10,11]。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約11万人の社員を擁しており、8億人以上の患者さんに製品が届けられています。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.co.jp
以上
参考文献
- [Lee R, Wong TY, Sabanayagam C (2015)] Epidemiology of diabetic retinopathy, diabetic macular edema and related vision loss. Eye Vis (Lond); 2:17.
- [ETDRS Research Group (1985)] Photocoagulation for diabetic macular edema. Early Treatment Diabetic Retinopathy Study report number 1. Early Treatment Diabetic Retinopathy Study research group. Arch Ophthalmol; 103(12):1796-806.
- [岩瀬剛(2020)] 糖尿病網膜症の病態と治療. 秋田医学; 47(1):1-10.
- 日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会(2020) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1 版). 日本眼科学会雑誌; 124(12):955-81. (Internet) Available from: <https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf> (Accessed 18 Jun 2021) (available upon request)
- [Smiddy WE (2011)] Economic considerations of macular edema therapies. Ophthalmology; 118(9):1827-33.
- [Virgili G, Parravano M, Menchini F, et al. (2014)] Cost-effectiveness of treatments for diabetic macular oedema: should we pay more attention to the appraisal and reporting of economic evaluations?. Br J Ophthalmol; 98(4):421-2.
- [Agarwal A, Sarwar S, Sepah YJ, et al. (2015)] What have we learnt about the management of diabetic macular edema in the antivascular endothelial growth factor and corticosteroid era?. Curr Opin Ophthalmol; 26(3):177-83.
- Brown D, Wolf S, Garweg JG, et al. Brolucizumab for the treatment of visual impairment due to diabetic macular edema: 52-week results from the KESTREL & KITE studies. Presented at: The Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO) 2021 Annual Meeting. May 2021.
- Data on file. KESTREL (year two) first interpretable results. Novartis, 2021.
- Data on file. KESTREL clinical trial protocol (CRTH258B2301). Novartis, 2021.
- Data on file. KITE clinical trial protocol (CRTH258B2302). Novartis, 2021.
<参考資料>
「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」の製品概要
製品名:
「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」
一般名:
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)
効能又は効果*: (下線部は今回追加承認された効能又は効果)
- 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
- 糖尿病黄斑浮腫
用法及び用量*:
〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg(0.05mL)を4 週ごとに1 回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、12 週ごとに1 回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8 週以上あけること。
〈糖尿病黄斑浮腫〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg(0.05mL)を6週ごとに1回、通常、連続5回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。
承認取得日:
2022年6月20日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する注意並びに用法及び用量に関連する注意は、電子化された添付文書(電子添文)をご覧下さい。
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