酵素分解ローヤルゼリーがNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)を予防
腸内細菌叢を介したメカニズムが明らかに
【研究背景】
非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)は、アルコール摂取を伴わない肝臓病です。NAFLDの進行は、肝硬変、肝不全、肝がんの原因となることが知られています。近年、日本におけるNAFLD患者は推計で1,000万人いるとされ、その予防法と治療法の開発が重要視されています。また、NAFLDは腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス) と密接に関係することがわかっています。ディスバイオーシスは、腸管バリアの機能不全や肝臓の炎症に関わることが知られています。
女王蜂の生命力の源であるローヤルゼリーはミツバチが分泌する天然物の一つで、ビタミン・ミネラルをはじめ40種類以上の栄養素が含まれています。ローヤルゼリーはNAFLDに対して有用である可能性が報告されていますが、その機序などは未解明な部分が多く、ディスバイオーシスとの関連性についても明らかにされていません。
本研究では、過食によりNAFLDを引き起こしたモデルマウス (以下、NAFLDモデルマウス)に、酵素分解処理したローヤルゼリーを投与し、NAFLDの病態、腸内細菌叢に与える影響を評価しました。また、ローヤルゼリーに含まれる中鎖脂肪酸 (10-ヒドロキシ-2-デセン酸、10-ヒドロキシデカン酸、2-デセン二酸、セバシン酸(以下、ローヤルゼリー含有MCFA))を脂肪肝モデル細胞へ投与し、NAFLD予防メカニズムに関連するか調べました。
【研究結果】
酵素分解処理したローヤルゼリーは、ディスバイオーシスの改善を促し、NAFLD症状を予防しました。また、酵素分解処理したローヤルゼリーのNAFLD症状予防には、ローヤルゼリー含有MCFAが関与することが明らかになりました。
●酵素分解処理したローヤルゼリーの投与により、NAFLDモデルマウスのNAFLD活動性スコアが改善し、肝臓の脂肪酸合成、線維化、炎症に関連する遺伝子の発現が低下した。また、NAFLDモデルマウスで見られた腸内細菌
叢の乱れ (ディスバイオーシス) が改善した。
●ローヤルゼリー含有MCFAは、肝細胞株を用いた細胞実験において脂肪肝モデル細胞における飽和脂肪酸の沈着を減少させ、線維化と脂肪酸合成に関連する遺伝子の発現量を減少させた。
【研究詳細】
ローヤルゼリー及び、ローヤルゼリーに含まれる主要タンパク質は動物試験でNAFLDの改善作用が報告されています。しかしながら、酵素分解処理したローヤルゼリーが、NAFLD予防に関与するかは明らかにされていませんでした。 そこで、酵素分解処理したローヤルゼリー及び、ローヤルゼリー含有MCFAがNAFLD予防に関与するのかを検討しました。
<酵素分解処理したローヤルゼリーのNAFLDモデルマウスへの作用>
○酵素分解処理したローヤルゼリーはNAFLDモデルマウスの腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス) を改善し、NAFLD症状を予防 (肝臓の脂肪滴が減少(右図)、脂質合成遺伝子・炎症性遺伝子・線維化遺伝子の発現量が減少) した。
○酵素分解処理したローヤルゼリーは、NAFLDモデルの小腸の炎症を抑制し、炎症に関連する遺伝子発現量を減少させた。
○酵素分解処理したローヤルゼリーは、NAFLDモデルの小腸の栄養吸収トランスポーターの遺伝子発現量増加を抑制し、脂肪肝をはじめとした代謝異常症を予防する可能性が示唆された。
○酵素分解処理したローヤルゼリーの投与で、NAFLDモデルの血清及び肝臓中のローヤルゼリー含有MCFAの濃度が増加した。
▲酵素分解ローヤルゼリー投与による肝臓の脂肪滴が抑制
<ローヤルゼリー含有MCFAの脂肪肝モデル細胞への作用>
○ローヤルゼリー含有MCFAを脂肪肝モデル細胞に添加したところ、飽和脂肪酸の沈着を減少させ、線維化と脂肪酸合成に関する遺伝子の発現量を減少させた。
以上のことにより、酵素分解処理したローヤルゼリーの摂取は、ディスバイオーシスの改善を促し、NAFLD症状を予防することが明らかになりました。加えて、酵素分解処理したローヤルゼリーに含まれるMCFAがNAFLD予防作用を示す関与成分であることを見出しました。
【今後について】
超高齢社会において、NAFLDの予防は重要な課題の一つです。さらにNAFLDは肝硬変や肝不全などの生活習慣病に深い関わりがあると考えられていることから、本研究結果は本邦における健康増進に大きく寄与するものと考えられます。山田養蜂場、並びに山田養蜂場 健康科学研究所は、ローヤルゼリーをはじめ、プロポリスやはちみつ乳酸菌YB38、はちみつなどのミツバチ産品に関する有用性研究や素材開発を通し、予防医学の観点から「アピセラピー」を追究することで、お客様一人ひとりの健康寿命を延伸し、社会に貢献してまいります。
<文献情報>
論文タイトル: Effects of Royal Jelly on Gut Dysbiosis and NAFLD in db/db Mice
著者:小林 玄樹1、岡村 拓郎1、間嶋 紗織1、千丸 貴史1、岡田 博史1、牛込 恵美1、中西 尚子1、
西本 悠一郎2、山田 拓司23、岡本 秀人4、奥村 暢章4、佐々野 僚一5、濱口 真英1、福井 道明1
所属:1 京都府立医科大学 大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学、2株式会社メタジェン、3 東京工業大学 生命理工学系、4株式会社山田養蜂場、5株式会社アイスティサイエンス
掲載誌:Nutrients
掲載日:2023年5月31日、DOI:10.3390/nu15112580
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