ノバルティス、糖尿病黄斑浮腫に対する「ベオビュ®」のFDA承認取得
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年6月1日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
- 今回のFDA承認は、糖尿病黄斑浮腫(DME)患者を対象に「ベオビュ®」(ブロルシズマブ6 mg)をアフリベルセプト2 mgと比較した第III相臨床試験であるKESTREL試験およびKITE試験の1年目のデータに基づいている[1,2]
- KESTREL試験およびKITE試験において、「ベオビュ®」は最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量についてアフリベルセプトに対して非劣性を示した[1,2]
- KESTREL試験およびKITE試験において「ベオビュ®」の投与を受けた患者では、中心サブフィールド厚(CST)がベースラインから有意に低下し、この低下は4週目から始まり52週目まで持続した[1,2]
- KESTREL試験およびKITE試験は、導入期における6週間間隔での血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤の投与を評価した初めてのピボタル試験であり、「ベオビュ®」は、治療開始から1年目までの注射回数が少なくなる可能性を示唆している[1,2]
- DMEは先進国における成人の失明の主な原因であり、DMEにおけるアンメットニーズには、網膜滲出液の減少および頻回な投与スケジュールの負担軽減などがある[3,4]
FDA承認は、無作為化二重盲検第III相臨床試験であるKESTREL試験およびKITE*試験の1年目のデータに基づいたもので、いずれの試験でも主要評価項目である1年目(52週時点)における最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量について、アフリベルセプトに対する非劣性が示されました[1,2]。52週目にIRF(網膜内の滲出液)および/またはSRF(網膜下液)が認められた患者の割合は、KESTREL試験では「ベオビュ」群60.3%対アフリベルセプト群73.3%、KITE試験では「ベオビュ」群54.2%対アフリベルセプト群72.9%でした(優越性検定は実施されていません)[2]。
導入期投与後における「ベオビュ」群の患者の半数以上は1年目(52週時点)まで12週間間隔投与を維持しました[1,2]。(KESTREL試験で55%、KITE試験で50%)この期間における、「ベオビュ」群の投与回数は、中央値で7回でした[1,2]。「ベオビュ」群では、中心サブフィールド厚(CST)のベースラインからの有意な低下が4週目から始まり、52週目まで持続することが示されました[1,2]。
今回承認された「ベオビュ」の処方では、導入期において6週間間隔で5回投与を受けた後、8週間から12週間ごとに1回の投与が必要とされています[1]。 KESTREL試験およびKITE試験のアフリベルセプト群の投与については、FDA承認によって推奨されている8週間隔の投与が行われました[1,2]。
ノバルティスの眼科領域医薬品開発部門のグローバルヘッドのJill Hopkinsは次のように述べています。「米国のDME患者さんの多くは働き盛りで、治療のためには、毎月複数回の診察が必要です。DMEに対する『ベオビュ』のFDA承認は、米国のDME患者さんにとって重要なマイルストーンとなります。KESTREL試験とKITE試験は、導入期における6週間間隔のVEGF阻害剤の投与を評価した初めてのピボタル試験です。これらの結果から、『ベオビュ』は治療開始から1年目までの注射回数を減少させる可能性が示唆されています。私たちは、DME患者さんのアンメットニーズに応える新しい治療選択肢を提供できると期待しています。」
DME臨床試験において、「ベオビュ」投与群で最も多く報告された有害事象は結膜出血でした(5%以上)[1]。KESTREL試験における眼内炎症(IOI)の発現率は、ブロルシズマブ3 mg群で4.7%(網膜血管炎1.6%を含む)、ブロルシズマブ6 mg群で3.7%(網膜血管炎0.5%を含む)、アフリベルセプト2 mg群で0.5%でした[2]。KITE試験におけるIOIの発現率は、ブロルシズマブ6 mg群およびアフリベルセプト2 mgで同等であり(1.7%)、網膜血管炎は報告されませんでした[2]。網膜血管閉塞は、KESTREL試験のブロルシズマブ3 mg群で1.1%、ブロルシズマブ6mg群で0.5%が報告され、KITE試験におけるブロルシズマブ6 mg群およびアフリベルセプト群はともに0.6%でした[2]。KESTREL試験において1年目にベースラインから15文字以上低下した患者の割合は、ブロルシズマブ3 mg群で1.6%、ブロルシズマブ6 mg群で0%、アフリベルセプト群で0.5%でした[2]。KITE試験において1年目にベースラインから15文字以上低下した患者の割合は、ブロルシズマブ6 mg群で1.1%、アフリベルセプト群で1.7%でした[2]。ブロルシズマブ6 mg群は、「ベオビュ」の承認用量です[1]。
ノバルティスは、「ベオビュ」を必要とする患者さんに適切に届けることに尽力していきます。2022年6月現在、「ベオビュ」は米国では、プレフィルドシリンジとして販売されています。これにより、バイアルよりも少ない手順で利用できる選択肢を眼科医に提供しています。
KESTREL試験およびKITE試験について
KESTREL試験およびKITE試験は、DMEによる視覚障害を有する患者を対象とした、「ベオビュ」とアフリベルセプトの安全性および有効性を比較する2年間の国際共同無作為化二重盲検第III相試験です[6,7]。KESTREL試験およびKITE試験には、36カ国から合計926名の患者が参加しました[6,7]。両試験の導入期では、「ベオビュ」群の患者に6週間間隔で計5回投与しました。アフリベルセプト群の患者には、添付文書の記載に従って4週間間隔で計5回投与されました[6,7]。試験の最初の1年間において、「ベオビュ」群の患者は、導入期に続いて、12週間ごとの投与を受け、疾患活動性を示した患者は8週間ごとの投与に移行しました[6,7]。アフリベルセプト群の患者は、導入期の後、8週間ごとに投与を受けました[6,7]。
糖尿病黄斑浮腫(DME)について
DMEは糖尿病患者によくみられる微小血管合併症で、視力を低下させ、最終的に失明に至る可能性があります[3]。DMEは先進国において成人の失明の主な原因であり、1型糖尿病患者の12%、2型糖尿病患者の28%が罹患しています[3]。
糖尿病に伴う高血糖は、眼の中の細かい血管を傷つけることで、滲出液の原因になります[3]。この損傷によって、VEGFが過剰に産生されます[3,8]。VEGFは血管の成長を促すタンパク質です[3,8]。DME患者のVEGF濃度が上昇すると、異常で漏出性の血管の増殖を刺激します[3,8]。その結果、黄斑部に滲出液(浮腫として知られる)がたまり、失明に至ることがあります[3,8]。黄斑とは、網膜の中で鮮明な中心視力を担う部位です[3,8]。DMEの初期症状には中心視力のかすみ、視覚の歪み、色覚異常などがありますが、早期段階では症状を伴わずに進行することもあります[8,9]。
「ベオビュ」(ブロルシズマブ6 mg)について
「ベオビュ」は、滲出型AMDの治療薬として、米国、EU、英国、日本、カナダ、オーストラリアを含む70カ国以上で承認されています[1,10-13]。さらに、「ベオビュ」は2022年3月に、DMEの治療薬として欧州委員会(EC)からも承認を受け、欧州連合加盟国全27カ国に加え、アイスランド、ノルウェー、およびリヒテンシュタインにも適用されています[10]。(なお、本邦においては、2022年6月20日にDMEの効能又は効果の追加承認を取得しました。)滲出型AMD、DME、および増殖糖尿病網膜症(PDR)の患者を対象にブロルシズマブの有効性を検討する臨床試験が現在実施中です。
眼科領域におけるノバルティスについて
ノバルティスのミッションは、より充実した、すこやかな毎日のために、新しい発想で医療に貢献することです。眼科領域では、データや革新技術を駆使して、前眼部から後眼部にわたって生活を変えるような薬や治療法を開発していきます。当社の眼科用剤は、未熟児から高齢者まで、年間1億5千万人以上に届けられています。
*Kite Pharma, Inc. は、ノバルティスのKITE試験には資金提供を含め、関わりはありません。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
参考文献
- BEOVU [US prescribing information] East Hanover, NJ. Novartis: 2022.
- Brown DM, Emanuelli A, Bandello F, et al. KESTREL and KITE: 52-Week Results From Two Phase III Pivotal Trials of Brolucizumab for Diabetic Macular Edema. Am J Ophthalmol. 2022;238:157-172.
- Romero-Aroca P. Managing diabetic macular edema: The leading cause of diabetes blindness. World J Diabetes. 2011;2(6):98-104.
- Schmidt-Erfurth U, Garcia-Arumi J, Bandello F, et al. Guidelines for the Management of Diabetic Macular Edema by the European Society of Retina Specialists (EURETINA). Ophthalmologica. 2017;237(4):185-222.
- Kiss S, Chandwani HS, Cole AL, Patel VD, Lunacsek OE, Dugel PU. Comorbidity and health care visit burden in working-age commercially insured patients with diabetic macular edema. Clin Ophthalmol. 2016;10:2443-2453.
- Data on file. KESTREL clinical trial protocol (CRTH258B2301). Novartis, 2021.
- Data on file. KITE clinical trial protocol (CRTH258B2302). Novartis, 2021.
- National Eye Institute. Macular Edema. Available at: https://www.nei.nih.gov/learn-about-eye-health/eye-conditions-and-diseases/macular-edema (Accessed May 2022.)
- National Eye Institute. Diabetic Retinopathy. Available at: https://www.nei.nih.gov/learn-about-eye-health/eye-conditions-and-diseases/diabetic-retinopathy (Accessed May 2022.)
- BEOVU [summary of product characteristics] Basel, Switzerland. Novartis: 2022.
- Pharma Japan. National Health Insurance Pricing. Available at: https://pj.jiho.jp/sites/default/files/pj/document/2020/05/New%20Drugs%20to%20Be%20Added%20to%20NHI%20Price%20List%20on%20May%2020_1.pdf (Accessed May 2022.)
- Canadian Agency for Drugs and Technologies in Health. CADTH Canadian Drug Expert Committee Recommendation. Available at: https://www.cadth.ca/sites/default/files/cdr/complete/SR0632%20BEOVU%20-%20CDEC%20Final%20Recommendation%20%E2%80%93%20May%2025%2C%202020_for%20posting.pdf (Accessed May 2022.)
- BEOVU [prescription medicine decision summary] Australia. Novartis: 2020.
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