QuemixとHondaが「量子状態を読み出す新技術」を共同開発し、世界初の量子コンピュータ実機を用いた計算に成功

テラスカイ

株式会社テラスカイのグループ会社で量子コンピュータのアルゴリズム・ソフトウェアの研究開発を行う株式会社Quemix(本社:東京都中央区日本橋 代表:松下 雄一郎、以下 Quemix)と本田技研工業株式会社の研究開発部門である株式会社本田技術研究所(本社:埼玉県和光市 代表:大津 啓司、以下、本田技術研究所)は、量子化学計算分野で量子コンピュータを用いた共同研究を開始いたしました。その最初の取り組み成果として、量子コンピュータを用いてシミュレーションを行う際に必要となる「量子状態を読み出す新技術」の共同開発に成功しました。また、X線吸収微細構造(XAFS)※1計算を量子コンピュータ実機上にて実行しました。量子コンピュータの実機を使用した論理ビット上での材料開発に活用できる計算に成功したのは世界初 ※2 となります。


今回の共同研究では、Quantinuum社製量子コンピュータと東京大学物性研スーパーコンピュータのハイブリッドコンピュータにより、問題をそれぞれのコンピュータの特性が最大限発揮される問題へと切り分けて計算を実施しました。量子コンピュータ実機上では、量子誤り検出符号を用いた論理ビット上での量子化学計算を実行し、FTQC※3の実用化時代をリードする先進的なユースケースとなりました。

なお、5月16日に量子コンピュータのビジネスイベント「Q2B(会期5月15日・16日 場所:グランドハイアット東京)」内のセッションにて、Quemixおよび本田技術研究所の両社で本研究成果を説明するセッションを行います。詳細はリリースの下部をご確認ください。

【量子状態を読み出す新技術の概要】

量子コンピュータのシミュレーション領域への活用において、しばしば問題となるのが量子状態の読み出しの問題でした。量子状態には膨大な情報が蓄えられている一方で、その情報へアクセスし読み出そうとすると “波束の収縮”を起こし、量子状態が壊れてしまい、効率的な読み出しが物理学の原理上阻まれてしまう大きな課題がありました。量子状態が保持する情報へアクセスする技術開発が試みられていましたが、いずれも読み出しには膨大な計算コストがかかってしまい、量子コンピュータの有効性を下げる要因となっていました。今回、Quemixと本田技術研究所は共同で、「量子状態を壊す読み出し」をせずに「量子状態の特徴量をスキャン」する新しい量子状態読み出し技術の開発に成功しました。これにより、従来法では不可能であった高速で効率的な量子状態読み出しが可能となりました。この成果は、量子化学計算に限らず、量子コンピュータを用いたあらゆるシミュレーション領域へと適用可能なものであり、量子コンピュータの利活用を強力に後押しする技術となり得るものです。

【量子コンピュータ実機を使用したXAFS計算の概要】

今回の計算においては、まずスーパーコンピュータを用いて、密度汎関数理論で結晶構造の最適化とXAFSスペクトルに重要となる活性空間の抽出を行いました。続いて、量子コンピュータ実機上において、活性空間に対して、電子相関の効果を含んだ高精度なXFAS計算を実行いたしました。

量子コンピュータ上において、Quemix開発の確率的虚時間発展アルゴリズム(PITE®)により基底状態計算を実行し、量子位相推定(QPE)を用いた応答関数の計算アルゴリズム(同じくQuemix開発手法)によりXAFSスペクトルを量子状態として生成し、本共同研究成果である新技術を用いて量子状態読み出しを行うという一連の計算手順により、XAFS計算を古典コンピュータよりも高速に実行できるようになります。今後、シミュレーションサイズが大きくなった際に課題となる計算時間を大幅に短縮することが可能となります。実験で得られたXAFSスペクトルと、量子コンピュータ実機を用いた計算結果を比較することにより、実際の原子配置や電子状態の詳細な情報を得ることができます。これにより、実験だけでは捉えにくい微視的な構造変化や、反応メカニズムの解明、新材料の設計などに対して、より精度の高いフィードバックが得られるため、材料開発のプロセスが大幅に効率化されるという恩恵があります。

※1 材料科学や化学、環境科学、エネルギー材料の開発など、多岐にわたる分野で活用されているX線吸収スペクトルに現れる微細構造を計測することにより、特定原子種の化学結合状態を解析する手法

※2 2025年5月時点・公開論文調査に基づく(本田技研工業 調べ)

※3 誤り耐性量子コンピュータ(Fault-Tolerant Quantum Computer)

Q2Bおよび研究成果の説明セッションについて

イベント概要

名称

Q2B 2025 Tokyo

開催日

2025年5月15~16日

開催場所

グランドハイアット東京(東京都港区六本木6-10-3 六本木ヒルズ内)

来場申込(一般)

Q2B 2025 Tokyo 公式サイトよりお申込みください。

セッション情報

セッションタイトル

量子コンピュータで加速する材料の実験データ解析

登壇者

岡山 竜也 本田技術研究所 先進技術研究所 

     デバイス・プロセスドメイン チーフエンジニア

松下 雄一郎 Quemix代表取締役 CEO

西 紘史 Quemix 研究開発部部長

開催日時

2025年5月16日 14:05 ~14:45

開催場所

Q2B キーノートルーム

来場申込(一般)

Q2B 2025 Tokyo 公式サイトよりお申込みください。

株式会社Quemixについて

Quemixは、株式会社テラスカイ(本社:東京都中央区、代表取締役:佐藤 秀哉)の連結子会社で、量子コンピュータ、量子センサ、材料計算関連の研究開発を行っています。「量子技術で人類が夢見た未来を実現する」というビジョン実現のため量子技術で時代をリードする企業のブレークスルーを支援していくことをミッションとしています。

お問合せ先

【Quemix事業に関するお問い合わせ】株式会社Quemix https://www.quemix.com/contact

【メディアの方からのお問い合わせ】株式会社テラスカイ 広報担当 pr@terrasky.co.jp

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会社概要

株式会社テラスカイ

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URL
http://www.terrasky.co.jp
業種
情報通信
本社所在地
東京都中央区日本橋2-11-2 太陽生命日本橋ビル16階
電話番号
03-5255-3410
代表者名
佐藤 秀哉
上場
東証プライム
資本金
12億5212万円
設立
2006年03月