日本語版 Linux Foundation アニュアルレポート公開「セキュリティとイノベーションでリーダーシップ」

The Linux Foundation Japan

本日、Linux Foundationは、日本語版の2022年アニュアルレポート「セキュリティとイノベーションでリーダーシップ (原題 : Leadership in Security and Innovation)」を公開しました。

2022 年、Linux Foundation はコミュニティとの協力のもと、ソフトウェアのサプライ チェーンを保護するための新しいイニシアティブに取り組み、社会、経済、地域、環境に影響を与えるイノベーションを実現し、オープンな業界標準をサポートし、多様性と包括性を引き続き受け入れました。

全レポート (PDF 141ページ) は、こちらからダウンロードできます :
セキュリティ、イノベーション、影響力:
エグゼクティブディレクターからのメッセージ


2022 年は、経済的な逆風にもかかわらず、オープンソースとLinux Foundationは共に成功を収めることができました。多くの課題に直面したこの1 年の成功は、メンバー サポーターの皆様のおかげです。あなた方は私たちと常に共にあり、コミットメントを強化させました。ありがとうございました。また、私たちのプロジェクトを運営する何十万人ものプロジェクトコントリビューターと、Linux Foundation の優秀な従業員の勤勉さに感謝したいと思います。関係者を賞賛いたします。

「数字」で振り返る2022年

2022 年も、すべての指標で力強い成長を示し続けました。79 の新しいプロジェクトを追加し、12,000 を超えるリポジトリから毎週 5,260 万行のコードを出荷しました。Linux Foundation は現在、オープンスタンダードの分野で、主要なプレーヤーであり、多くの業界で 200 以上のオープンスタンダードへの取り組みを行っています。さらに、オープンソースユーザーは 126 億のコンテナをダウンロードしています。また、対面形式での活動も大幅に回復し、176ヶ国から 92,000 人を超える人々と12,000 を超える組織が 230 の公式イベントに集まり、参加者数で新たな記録を打ち立てました。最終的には、29,000 を超えるコミュニティミーティングを開催できました。

2022 年には、270 万人以上が Linux Foundation からトレーニングと認定を受けました。また、無料のオープンソース セキュリティトレーニングコースはリリースしたその日に、一万名以上の方がサインアップしました。Linux Foundation Research は 2022 年に 15 のユニークなレポートをリリースしました。私たちは研究・洞察の分野を発展させ続けます。財務面は、これまで以上に安定しています。収益は増加し続けていますが、総収益の 1%を超えるメンバー企業はありません。2022年には、新会員加入記録を樹立し、3,000を超える組織が誇りを持って私たちのサイトに彼らのロゴを掲載しました。

オープンソースはグローバルに影響力を拡大

Linux Foundationは、私たちの周りの世界に影響を与えることを目指しています。毎年、私たちは次のことを自問しています。「私たちは目立った変化を起こすことができていますか?」と。2022年、その答えははっきりと「イエス」と言えるものでした。簡単な思考実験です。現在、605,000 人のテクニカルコントリビューターが私たちのプロジェクトに取り組んでいます。プログラマーの世界平均給与と就業時間に基づき、2022 年の開発者のコントリビューションを算出すると260 億ドルに相当になります。それでも、これは間違いなく低めの見積もりです。コードの生産量がはるかに少ない大手テクノロジー企業の研究開発部門の給与予算でも、年間数百億ドルのレベルです。Linux Foundationプロジェクト、およびそれら以外を含めた一般的なオープンソースのコントリビューターは、桁違いの規模で最大のグローバルな分散型エンジニアリング労働集団を構成していると言っても過言ではありません。

私たちは、中立的なファウンデーションの後援の下で一緒に働き、協力することで、やろうと決めたことはどんなことでもできます。私たちがプロジェクトで開発したコードは、何十億の人々に影響を与え、地球をより安全に、よりクリーンに、より公正に、より繁栄させます。

⊲ 10 月、PyTorch が Linux Foundationに加入しました。PyTorch は、現在世界で最も急速に成長しているオープンソースプロジェクトの 1 つであり、世界の人工知能と機械学習アプリケーションの半数以上がそのフレームワークに依存しています。PyTorch は、疾患の予測、自律走行車の誘導、新薬開発などのためのモデルのファウンデーションです。PyTorch のようなプロジェクトが、すべての人が平等に利益を得ることができる中立的な組織で運営されることを保証するのは、大事なことです。

⊲ RISC-V は現在、世界で最も急速に成長している半導体チップの命令セットアーキテクチャー (ISA) です。2018 年に Linux Foundation に初めて登場したときは小さなプロジェクトでした。現在では、RISC-V は 2025 年までに800 億のコンピューターのコアに最も多く採用されるトップ ISA になる見込みです。IoT、航空宇宙、自動車、モバイル デバイス、およびデータセンターハードウェアを含め、多くの応用製品でRISC-V 設計が爆発的に増加しています。

⊲ U.S. Cyber Safety Review Board(米国サイバー安全審査委員会:U.S.Transportation Safety Board、米国運輸安全委員会に相当)が、「Log4J事件」のオフィシャル レビューを発表しましたが、19 件の推奨事項のうち 9 件は、OpenSSFのOpen Source Software Security Mobilization Plan(『OSSセキュリティのための動員プラン』邦訳あり)から直接得られたものでした。

⊲ 2022 年に世界で最も興行収入を上げた映画の 60% 以上で、Academy Software Foundationがサポートしているオープンソース ソフトウェアが使用されました。これにより、映画・ゲームなどの創造産業は、特殊効果や視覚効果のための基本的なツールを作成するコストを企業間で分担することができます。

⊲ LF Energy と、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルーマニアの SOGNOProjectのメンバーは、電力供給効率を改善しています。ヨーロッパでエネルギー価格が高騰していることを考えると、SOGNO は、市民の生活に影響を与え、国をまたがるような課題の取り組みに、オープンソースがいかに重要かを示しています。

⊲ 私たちは、OpenJS Foundation のコードと Zephyr Project の IoT コードを使用して構築されたオープンハードウェア プロジェクトである Open Collar Initiative と、家畜の動きを監視するために提携しています。Peace Parks Projectは、南アフリカで、密猟者と戦うためにオープンソースソフトウェアを使用しています。

⊲ OS Climate プロジェクトは、カーボン排出量とカーボン オフセットの効率的なインベントリ管理と定義の共通化のためのソフトウェア標準とメカニズムを作成する先駆的な取り組みであり、より優れたカーボン トラッキングおよび取引プラットフォームのための基盤を提供します。

これらの活動は、Linux Foundation を拠点としたオープンソースコードとエコシステムの影響力の増大に拍車をかけています。Linux は現在、地球上でもっとも優勢なオペレーティングシステムになっていますが、Linux Foundation は Linux をはるかに超えるものになっています。スーパーコンピューターから小さな IoT デバイス、Androidフォンから自動車、宇宙衛星、100 万台以上のドローンまで、世界はますますオープンソースで動いています。オープンソースの採用は加速し、拡大していくだけです。

ダイバーシティとインクルージョンにおいて業界標準を超える

私たちは、ダイバーシティとインクルージョンを優先するという約束をし、これを達成しました。Linux Foundation では、女性が幹部メンバーの 32% を占めています。これは、テクノロジー企業の平均の約 3倍です。主要なプロジェクトのボードメンバーは、女性が28% を占めており、これはテクノロジー企業のボードメンバーの 2倍の比率です。さらに、当社の従業員の半数以上が女性であり、これはテクノロジー業界全体の約 20% を上回っています。メンターシップは、多様性を促進するための最も効果的なツールの 1 つです。LFX Mentorshipプログラムは、30 人の新しいカーネル開発者を含む 240 人を超えるオープンソース開発者を生み出しています。2022 年には、メンター制度への応募者の 20% が女性で、70% が下位中流または労働者クラスの経済的背景の出身者でした。過小評価されているコミュニティの 289 人、メンテナーと学生246 人に100万ドル以上の旅費を提供し、またダイバーシティ登録費奨学金対象者104 人、経済的支援の必要性に基づく登録費奨学金対象者65 人に対して、キャリアを変えるイベントに参加するための登録費免除措置を提供しました。

これらの数字にとどまらず、さらに高いレベルのダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン (DEI) を促進するために、プログラムとテクノロジーを継続して進化させました。私たちのイベントチームは、Linux Foundation のすべてのイベントに対して包括的な DEI ポリシーを展開しました。これには、無料の託児所、授乳室、すべてのジェンダー向けのトイレが含まれます。私たちのプロジェクトの多くは、Grace Hopper Celebrationに参加し、マイノリティ、女性、ノンバイナリーの人々がフリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアプロジェクトに参加してコントリビューションすることを奨励しました。今日、私たちの規模の大きなプロジェクトはすべて、ダイバーシティイニシアチブを実行しています。注目すべき例は、Inclusive Naming Initiativeです。これは、インクルーシブな用語使用のベストプラクティスと特定の単語の選択に関するガイダンスを提供します。Software Developer Diversity and Inclusion (SDDI) プロジェクトと Diversity Empowerment Summit は注目を集め、拡大しています。また、コード開発を通じて、ダイバーシティをインスタンス化(実態のあるものに)することも検討しています。Call for Code for Racial Justice の一部である Five-Fifths Voter Project は、投票行動に対する抑圧に対抗することを目的としたアプリケーションです。

直面している課題:サイバーセキュリティとテクノナショナリズム

2022 年には、オープンソースの継続的な成長と採用に対する主要な課題として、サイバーセキュリティとテクノナショナリズム (技術国家主義)の台頭が見られました。サイバーセキュリティの領域では、オープンソースサプライチェーンを保護し、オープンソースコードが安全であることを保証することが不可欠であり、国際的な関心事になっています。ランサムウェアやマルウェアなどのサイバー攻撃がますます実世界に影響を与えています。この 2 つの例は、救急車の経路を変更することになった病院や、トラックや飛行機の経路を変更できなくなった運送会社です。このようなことから、OpenSSF と、ソフトウェア部品表、コード署名、セキュアなコーディング、広範な脆弱性スキャンにおける OpenSSF のイニシアチブは、さらに重要になります。

コラボレーションと取引に対する制限が強まると、世界はオープンソースとオープンコラボレーションの利点を失うリスクがあります。私のヒーローの 1 人である元米国務長官Madeleine Albrightが言ったように、私たちは論争をより小さく区切り、共通の関心分野について合意しなければなりません。オープンソースは、最良の方法でやれば、ゼロサムにはなりません。それがうまくいけば、誰もが利益を得ます。Linux Foundation での私たちの仕事は、テクノロジー イノベーションにおけるグローバルな利益を推進するために、よりオープンなコラボレーションを提唱し続けることです。

2023 年に向けて、私たちは「影響力」、「ダイバーシティ」、そして気候変動、ソフトウェア セキュリティ、食料安全保障などの大きくて複雑な問題の解決に向けて、「目立った変化を起こすこと」に注力し、テクノロジーの限界を押し広げることに引き続きフォーカスします。私たちは、共に、より賢く、より速く、より良くなります。このオープンソースの旅を共に歩んでいく中で、来年も皆様にお会いできることを楽しみにしています。
ご支援とご協力に感謝いたします。

Jim Zemlin
Executive Director,
The Linux Foundation

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業種
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本社所在地
神奈川県横浜市中区元町4-168 BIZcomfort元町ビル 4F-10号室
電話番号
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代表者名
福安徳晃
上場
未上場
資本金
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設立
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