大王製紙がCNF複合樹脂「ELLEX-R67」の商用生産を開始しました

日本最大のCNF商用プラント稼働により社会実装を加速

NEDO

 NEDOの「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」(以下、本事業)で、大王製紙株式会社は、セルロースナノファイバー(CNF)の社会実装課題の一つである製造コスト低減を目的に、2020年度から2022年度にかけて、CNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性を飛躍的に改善する製造プロセスを開発しました。その後、本事業での成果を基盤として事業化を進めてきました。

 2025年7月、大王製紙は本製造プロセスを用いたCNF複合樹脂の商用プラントでの生産を開始しました。大王製紙の三島工場(愛媛県四国中央市)に設置した新たな商用プラントは、従来のパイロットプラントから20倍の生産能力となる日本最大の年産2000 トンのCNF複合樹脂製造設備です。この商用プラント稼働により、CNFの軽くて強い特長を活かした自動車部材や家電製品などへの用途展開に対し、安定的に供給できる体制となり、CNFの社会実装のさらなる加速が期待されます。

図1 CNF複合樹脂「ELLEX-R67」商用プラント

 1. 概要

 植物素材であるCNFとの複合樹脂は、CNF※1の軽くて強い特長が活かせ、自動車部材や家電製品への用途展開が期待されています。一方で、実用化、社会実装までには、より一層の低コスト化、物性の向上、用途拡大などが求められています。本事業※2では、昨今の環境意識の高まりを受け、複合樹脂中のセルロース高濃度化へのニーズも強くなってきていることから、2020年3月に稼働させたパイロットプラントを活用し、実証を進めてきました。大王製紙は、原料からCNF複合樹脂ペレットまでを一貫生産するとともに、複合樹脂中のセルロース高濃度化技術を向上させ、CNF複合樹脂のセルロース濃度をこれまでの55%から67%へ高めました。こうして課題となっている生産性を改善し、大幅に製造コストを削減するとともに、業界に先行して大量製造する技術開発に成功しました。大王製紙は2022年11月よりCNF複合樹脂「ELLEX-R67」のサンプル供給を開始し、実用化開発を加速させてきました。2024年4月には「ELLEX-R67」が初めて日常生活の身近な製品として愛媛県四国中央市の回覧板に採用されました。そして2024年5月に大王製紙は「ELLEX-R67」の商用プラント設置を決定し、さらに事業化を促進してきました。

図2 CNF商用プラントの製造プロセス

(1)商用プラント設置のねらい

 CNFは植物由来でありながら紙パルプにはない多岐にわたる機能を有しており、大王製紙では多様なユーザーニーズに対応可能なラインアップの拡充、および社会実装に向けた課題である製造コストの低減を目指し、3基のパイロットプラントを活用した製造プロセス開発を進めてきました。中でも、CNFの特長を活かせる複合樹脂に対する市場の高い期待に対応するよう、本事業においてCNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性を飛躍的に改善する製造プロセスを開発しました。この成果を基盤として、大王製紙では、自動車部材や家電製品などのさまざまな用途に対応できる品質、供給量、コスト水準でCNF複合樹脂を生産するために、日本最大※3の年産2000トンのCNF複合樹脂商用プラントを稼働させ、CNFの社会実装、事業化を加速させます。

■設備概要

1)生産品種:CNF複合樹脂「ELLEX-R67」

2)生産能力:年産2000トン

3)設置工場:大王製紙三島工場

4)設備投資額:約40億円

5)営業運転開始:2025年7月

(2)CNF複合樹脂の製造プロセス

 今回稼働したCNF複合樹脂の製造プロセスは、CNF前処理プロセス、および複合樹脂の生産性に特長があり、基本プロセスはパイロットプラントで構築した技術です。CNF前処理プロセスでは、製紙会社が有するポテンシャルを最大限活用しました。具体的には抄紙・塗工技術を駆使し、樹脂となじみを良くするために尿素によりセルロースをカルバメート化する技術を確立しました。また、複合樹脂の生産性改善では、水分を持ちやすく微細なCNFを均一かつ高効率に樹脂と複合化する技術を、大王製紙と芝浦機械株式会社とで共同で開発しました。

 これまでパイロットプラントで構築した基本プロセスを基盤として、商用プラントには生産性やエネルギー原単位を効率化した製造プロセスを採用しました。また、パイロットプラントにおいて品質課題であったCNFの分散性も大きく改善し、さまざまな用途の要求に応えられる品質で生産を開始しました。

(3)CNF複合樹脂「ELLEX-R67」

 大王製紙の「ELLEX-R67」は、品質とコストの観点から部分的にCNF化したセルロースを67%含む(33%はポリプロピレンとなじみを良くする樹脂を配合)高濃度ペレットで、樹脂材料設計の自由度が高く、ユーザー企業が混練・成形加工しやすい仕様です。

 CNF複合化により剛性が向上したことで、材料の薄肉化が可能となり、軽量化や減プラスチックに貢献します。また、繊維が破断しにくいことから物性低下が小さく、マテリアルリサイクルの観点でも優位性がある素材です。さらには、現在社会課題となっている再生プラスチックの利用促進に向けて、質の低下を補う素材としての利用拡大も期待できます。

図3 CNF複合樹脂「ELLEX-R67」(セルロース67%)

2.今後の展開

 商用プラント稼働を契機に、大王製紙では、自動車部材、家電製品、建材、物流資材、日用品、容器・包装などの分野で用途展開を積極的に進めています。「ELLEX-R67」の安定生産、安定供給を進めるとともに、コンパウンド、ドライブレンドに適用するグレードだけでなく、CNF複合樹脂の課題である耐衝撃性を両立するグレードのラインアップを拡充します。軽量化、マテリアルリサイクル、再生プラスチックの改質、植物由来など、CNFの優位性を生かせる自動車部材をメインターゲットとして利用拡大を目指し、供給量を増大させ、ユーザー企業と連携した用途開発でCNFの社会実装、事業化を拡大していきます。

【注釈】

※1 CNF

パルプなどの植物繊維をナノレベルまでほぐすと得られる、繊維径が3ナノメートル~100ナノメートルのセルロース繊維です。

※2 本事業

事業名:炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発

事業期間:2020年度~2025年度

事業概要:炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発

https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100169.html

※3 日本最大

大王製紙調べ。地方独立行政法人京都市産業技術研究所「セルロースナノファイバー関連サンプル提供企業一覧(第19版)」掲載の国内CNFメーカーが公表した製造設備において最大となります。

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会社概要

URL
https://www.nedo.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー
電話番号
044-520-5207
代表者名
斎藤 保
上場
未上場
資本金
-
設立
2003年10月