薬剤耐性結核:治療費の劇的な削減につながる後発薬の使用が可能に――南アフリカ
国境なき医師団(MSF)は、南アフリカ共和国の医薬品規制当局より薬剤耐性結核(DR-TB)治療に用いる高価な抗生物質に代わる後発薬の輸入承認を得ることに成功した。これにより錠剤1錠あたりの購入価格は最大で約8分の1となり、治療費は大幅に圧縮され、MSFは同国で治療するDR-TB患者によりよい治療選択肢を提供できるようになる。
今回MSFが南アフリカ国家医薬品審議会(MCC)から輸入承認を得た後発薬は、抗生物質「リネゾリド」の廉価版。同後発薬は南アフリカでは未承認であるため、MSFは「医薬品と関連物質規制法第101条」に基づいてMCCに本製品の輸入許可を申請していた。(※)
<高価すぎる先発ブランド薬>
MSFは2011年にリネゾリドを同国西ケープ州カエリチャでDR-TB患者に処方して以来、3年に渡ってこの高価な薬に代わる後発薬を求めてきた。これまでは600mgの錠剤1錠あたり700ランド(約65米ドル)という市場価格で調達してきたが。MCCの承認を受け、最初の品質保証つき後発薬(英国規制当局による承認を済ませたもの)を1錠あたり8米ドルで輸入できるようになった。これは先発品の市場価格から88%の価格引き下げとなる。リネゾリドはもともと高価な超多剤耐性結核(XDR-TB)の治療費用をさらにつり上げている薬で、最長で2年かかる治療費は患者1人あたり4万9000米ドルを超えることもある。
MSFの結核専門医、ジェニファー・ヒューズ医師は「高価な先発ブランドの薬は、MSFのカエリチャでの活動の年間予算の10%を占めていて、私たちがリネゾリドを入れて治療できる患者さんの数を制限していました」と話す。
「リネゾリドは私がXDR-TBに打ち勝つのに役立った薬です」。同薬を含む治療を受け、2013年にXDR-TBを克服した元患者のフメザ・ティジールさんは言う。「でもリネゾリドを使えず、生きられなかった人もいます。私たちにはこのような有望な薬が手頃な価格で手に入ることが重要です。それによって、より多くの患者が完治の勝算を得られるからです。現行の治療法はあまりにひどく、うまくいくとも限らないものなのです」
<予算の壁を乗り越える重要な先例に>
MSFにとって今回の後発薬使用承認は、同薬を南アフリカ全域のDR-TB患者に、より幅広く確保していくための重要な一歩となる。ヒューズ医師は「南アフリカ保健省を含む他の保健医療関係者も、MSFと同じことができます。それによって予算上の制約を乗り越え、国レベルの治療指針と治療プロトコルに従って、リネゾリドをより多くのDR-TB患者に提供できるようになるのです」と説明する。
今回のリネゾリドの後発薬はカエリチャにいるMSFの患者だけに使用できるが、MCCは現在南アフリカにおけるリネゾリドの後発薬を審査中だ。その中にはMSFがこれから使用するのと同じ薬も含まれている。MCCが品質保証つきリネゾリドの後発薬を認可すれば、それが国レベルで調達できるようになり、民間からもDR-TB患者に提供できるようになる。MSFはMCCがこのような認可を最優先事項にすることを期待している。
今回のMCCによる承認は、南アフリカ貿易産業省が6年かけて主導している同国の知的財産法改正の動きのなかでの先例となった。「南アフリカの知財法改革は、特許権濫用による独占を防ぐことで薬価規制に役立ちますが、国家政策の決着や施行はまだ先です。MSFは、リネゾリドの後発薬のような長い戦いが他の命をつなぐ薬でも繰り返されないように、より廉価な薬の普及を推進するような国レベルの知的財産法の速やかな決着を促しています」と南アフリカにおけるMSFの必須医薬品キャンペーン担当、ジュリア・ヒルは言う。
※ 1965年に成立した医薬品と関連物質規制法第101条21項(Medicines and Related Substances Control Act 101 of 1965)で、MCCは一定の目的で未収載医薬品の販売を許可できると規定している。この許可はMCCが特定の期間に用途、目的、継続期間を定めた上で与えられるものである。 肀
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