ロレアル リサーチ&イノベーション、第123回皮膚科学会にて、演題「ニキビを持つ方の紫外線対策」で講演
ニキビは、若者の肌悩みのトップクラスであり、10代では約90%がニキビを経験するという報告1)があります。思春期のニキビは、活発に分泌される性ホルモンによる皮脂分泌量の増加および角化異常による毛穴の詰まりの結果生じます。最近増えている成人のニキビは、不規則な生活やストレスなどのためにホルモンのバランスが乱れることが原因だと考えられています。
紫外線B波は皮膚に日焼けを起こし、またDNAを損傷することから皮膚がんの遠因とも考えられていますが、波長の長い紫外線A波は皮膚深く浸透してシミ、シワ、タルミなどの光老化を招くことが知られてきました。これら紫外線は、ニキビに関しても角化促進や炎症悪化を通して悪影響を及ぼします。従って、ニキビを発症されている方にとっても紫外線対策は重要です。
ニキビを持つ方々は日焼け止めには油っぽくない、ニキビを増悪しない、軽い付け心地などの特性を望まれています。一方で、高い紫外線防御効果を追求すると使用感が重くなったり、白浮きしたような外観を与えたりします。ロレアルの研究結果から、同じ紫外線防御能を持つサンスクリーンでも皮膜が均一でないと、期待された防御効果を得られないことがわかりました。すなわち、高い紫外線防御効果を得るためには皮膚の上に形成される皮膜の均一性が重要ということです。私たちは特殊な乳化剤と水溶性の高分子を独自の技術で組み合わせ皮膚の上で均一な膜を作ることができる日焼け止めを開発しました(図1)。さらに、この乳化剤が油分を取り囲むことによってさっぱりした感触を与え、べたつきや皮膚のテカリも低減することが示されました。この日焼け止めを28日間使用していただいた59名のニキビを持つ方々の約75%は、刺激が無く、皮膚の色ムラが抑えられたと報告、また、90%以上の方が友人や家族に薦めたいとしています。
図1:SPF50相当の紫外線防御剤を含む製剤でも不均一な皮膜(左図)では紫外線防御剤が塊になって分散しており、SPFを測定しても30以下の効果しか得られません。この製剤に乳化剤や水溶性高分子を加えると、紫外線防御剤の分散性は向上しますが、まだ不均一です(中央の図)。そこで、乳化剤と水溶性高分子を混合して加え、均一な皮膜が形成されるような製剤を開発し、SPF 測定を行うと、SPFは50を超えることがわかりました(右図)。
このような防御効果と使用感を両立した日焼け止めはニキビを持つ方々だけではなく、一般の人々にも受け入れられ、生活の質(QOL)を向上させるのに役立つと考えられます。
参考文献
1)Ghodsi, S.Z., et al., “Prevalence, Severity, and Severity Risk Factors of Acne in High School Pupils: A Community-Based Study “, J. Invest., Dermatol., 2009, 129, 2136-2141
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