母乳に含まれる特定の糖鎖が乳児の感染症・アレルギーと関連する可能性を確認
~ヒトミルクオリゴ糖と糖タンパク質糖鎖を対象に、日本人母子で探索的に解析~
雪印メグミルク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤 雅俊)は、雪印ビーンスターク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:松永 政也)と共同で実施している第3回全国母乳調査※1において、出産後1~2か月の母乳に含まれる特定の糖鎖※2が、乳児の1歳までの気管支炎罹患歴および食物アレルギー発症歴と関連する可能性が示されました。本研究は、日本人を対象に糖タンパク質糖鎖を含む母乳中の糖鎖と乳児の感染症・アレルギーとの関連を探索的に解析した初めての報告※3です。本研究成果は、栄養学研究に関する国際学術雑誌「European Journal of Nutrition」に掲載されました。本研究は母乳成分と乳児の健康との関連について理解を深める知見であり、今後の母子向け栄養研究の発展に貢献することが期待されます。
【本研究のポイント】
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母乳に含まれる特定の糖鎖が、乳児の気管支炎や食物アレルギーと関連する可能性が示され、特にシアル酸※4を含む一部の糖鎖は気管支炎の罹患との関連が示された
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母乳中の糖鎖について、ヒトミルクオリゴ糖(以下、HMO)※5だけでなく、糖タンパク質糖鎖も対象に、日本人母子における母乳中の糖鎖と乳児の感染症およびアレルギーとの関連を解析した
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本研究は、母乳中の糖鎖と乳児の健康との関連について新たな知見を提供するものであり、今後の研究の発展につながることが期待される

図1
(A)乳児の1年間の気管支炎罹患歴と関連するシアル酸を含有した糖鎖
(B)乳児の1年間の食物アレルギー発症歴と関連する糖鎖
・図中の丸や四角などの記号は、糖鎖を構成する糖(マンノースやガラクトースなど)を示す。
・LNFPⅡ、3-FL、6’-SLはHMOの一種、N51、N57はN結合型糖鎖の一種、O24はO結合型糖鎖の一種。
・オッズ比(OR)は、ある出来事の起こりやすさを統計的に比較する指標である。オッズ比が1より大きい場合は発症のオッズが高いこと、1より小さい場合は発症のオッズが低いことを示す。なお、オッズ比は因果関係を示すものではない。
■ 研究概要
母乳には、HMOをはじめとする多様な糖鎖が含まれており、乳児の免疫機能や腸内環境、感染症・アレルギーとの関連が注目されています。一方で、日本人母子を対象として、複数の母乳中の糖鎖と乳児の健康との関連を網羅的に検討した研究は報告されていません。そこで本研究では、日本人の母子200組を対象に、出産後1~2か月に採取した母乳中の糖鎖と、乳児の1歳までの感染症・アレルギーとの関連を解析しました。本研究では11種類のHMOに加え、28種類の糖タンパク質糖鎖を測定対象とし、母乳中の糖鎖と乳児の健康との関連を評価しました。母乳中の糖鎖と乳児の健康状態との関連は、ロジスティック回帰分析により評価しました。
■ 結果と考察
母乳に含まれる特定の糖鎖が、乳児の気管支炎や食物アレルギーと関連する可能性が示されました。具体的には、シアル酸を含む一部のN結合型糖鎖(糖タンパク質糖鎖の一種)やHMOの一種である6′-SLと気管支炎との関連が示されました。つまり、これらの糖鎖濃度が高い母乳を摂取していた乳児では、1歳までの気管支炎罹患が少ないこととの関連が示されました。また、非分泌型母乳※6に多く含まれる糖鎖成分の一部(3-FLなど)と食物アレルギーとの関連が示されました。つまり、これらの糖鎖濃度が高い母乳を摂取していた乳児では、1歳までの食物アレルギー発症が少ないこととの関連が示されました。これらの結果は、母乳に含まれる特定の糖鎖が乳児の感染症やアレルギーの発症と関連している可能性を示すものであり、母乳成分と乳児の健康との関連について理解を深める知見となりました。
■ 今後の展望
本研究は観察研究であり、因果関係や特定成分の有効性を示すものではありません。今後は、より大規模な集団での検証や再現研究を進めることで、母乳中の糖鎖と乳児の健康との関連についてさらに理解を深めていくことが期待されます。
【発表概要】
論文タイトル: An exploratory analysis of the associations of human milk oligosaccharides and N-/O-glycans with infectious and allergic outcomes in the first year of life: The Japanese Human Milk Study Cohort t(邦題:母乳中オリゴ糖及びN/Oグリカンと乳児の1年間の感染症およびアレルギーとの関連に関する探索的解析:日本人母乳コホート研究)
著者:辻森 祐太1,2、山口 敏幸1,2、鳥羽 保宏1,2、福留 博文2、酒井 史彦2、上野 宏1,2、日暮 聡志1
1雪印ビーンスターク(株)商品開発部 2雪印メグミルク(株)ミルクサイエンス研究所
掲載誌:European Journal of Nutrition
DOI:https://doi.org/10.1007/s00394-026-04074-9
【用語説明】
※1 第3回全国母乳調査
母親の食事や生活習慣などの背景と母乳成分との関連、ならびに母乳成分が乳児の発育や健康に及ぼす影響について、包括的に検証することを目的とした調査です。母乳哺育中の母親1,210名を対象に、母乳の提供とともに、母親の食事内容や生活習慣、乳児の発育状況および疾病状況に関するアンケートを実施しました。母乳は2015年から2020年にかけて収集し、乳児の発育・健康状況については2016年から2025年まで追跡調査を行っています。これにより、母乳成分と母子の背景情報との関係や、母乳成分が乳児の健康に果たす役割について検証しています。
※2 糖鎖
複数の糖が鎖のようにつながったものを指します。タンパク質に結合した糖鎖は、糖タンパク質糖鎖と呼ばれ、結合部位の違いから、N結合型糖鎖とO結合型糖鎖に分かれます。これらの糖鎖は、細胞の認識、免疫、タンパク質の安定化、腸内環境の形成など様々な役割を担っていると考えられています。
※3 当社調べ。2026年6月3日時点でPubMed等の文献データベースを用いて調査した範囲において、日本人を対象に糖タンパク質糖鎖を含む母乳中の糖鎖と乳児の感染症・アレルギーとの関連を解析した報告として初めてです。
※4 シアル酸
母乳中の糖鎖に多く含まれる成分の一つで、乳児の免疫機能や腸内環境の形成、脳の発達などに関与すると考えられています。
※5 ヒトミルクオリゴ糖(HMO)
母乳に多く含まれるオリゴ糖です。乳児の腸内環境の形成を助けたり、免疫機能の発達を促進したりする働きが知られています。また、感染症予防や知的発達への影響など、数多くの健康機能が研究されています。図中や文中の6’-SL(6’-シアリルラクトース)、3-FL(3-フコシルラクトース)、LNFP-II(ラクトフコペンタオース-II)は、それぞれHMOの一種です。
※6 非分泌型
遺伝的な特徴の一つで、母乳中では分泌される特定の糖鎖が少ない、またはほとんど産生されないタイプを指します。非分泌型は個人差の一つであり、異常や疾患を意味するものではありません。
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