熱中症への意識・対策を始める時期は「7月」が最多 ~暑さに体を慣れさせておく『暑熱順化』の認知度、知らない人は9割近くに~
GWを前に、熱中症をめぐる意識・行動を日赤が調査
日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:清家篤、以下「日赤」)は、熱中症にまつわる意識や行動について、全国の10代~60代以上の男女、合計1200名を対象に調査を実施しましたので、お知らせいたします。(調査は、2025年3月に実施)
多くの方の外出が見込まれるゴールデンウイークを前に、皆様に熱中症予防の大切さをお伝えいたします。
熱中症は、高温・多湿な環境で長時間にわたり過ごすことで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまう状態とされています。屋外だけでなく、屋内でも注意しておく必要があり、正しい知識を得ることで健康被害を防ぐことが重要です。
近年、熱中症の搬送者数は増加傾向にあります。総務省の調査によると、昨年5月~9月の熱中症による救急搬送者数は、全国で計9万7578人にも上り、統計が残る平成20年以降で最も多い人数となりました。本格的に気温が上昇する夏の時期での増加が目立ちますが、昨年は5月というタイミングであっても2799人が搬送されました。決して少ない数字とはいえない状況であるため、まもなく迎えるゴールデンウィーク時の外出も、油断は禁物です。
こうした背景から、国内では昨年より、「熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)」等の運用も始まりました。近年は全国的に記録的な暑さも見られ、直近の3月に各地で夏日(その日の最高気温が25℃以上)も観測されている中で、熱中症予防への機運が高まりつつあります。
熱中症は、重篤な場合は死に至ることもある病気ですが、水分補給のほか体を冷やしたり、暑さに体を前もって慣れさせたりする「暑熱順化」などの予防・対策をしていれば、未然に防ぐことができるものです。日赤では、熱中症などに対する予防策・応急手当に関する講習を実施しています。
<調査結果のハイライト>
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熱中症になった場合の症状のイメージについて、「危険だと思う」と回答したのは、全体の86.6%(1039人)に上った。反対に、「危険だと思わない」人は13.4%(161人)だった【図1】。
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「熱中症を意識し始める時期」について、「7月」と回答した人が全体の34.7%(416人)で最多。順に、「6月」が25.1%(301人)、「5月」が17.8%(213人)、「8月」が9.7%(116人)となった【図2】。
また、年代別で5月を選択した回答割合をみると、40~60代以上は2割を超えた一方で、10~30代は1割台にとどまった。若年層は7月という回答が突出しており、よって年齢が高いほど、熱中症を意識し始めるのは早い傾向にあることがうかがえた【図3】。 -
過去に「熱中症への予防や対策を行ったことがある」1074人に対し、その時期を尋ねると、「7月」が45.0%(483人)で最多。順に、「6月」が25.2%(271人)、「5月」が15.7%(169人)、「8月」が11.2%(120人)となった【図4】。つまり、熱中症を意識し始める時期と、実際に対策を行う時期は、同じような傾向にあることが分かった。
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徐々に暑さに体を慣らしていく「暑熱順化」の認知度については、「聞いたことがあり、意味も知っている」と回答したのは全体の12.0%(144人)。反対に、「聞いたことはあるが、意味までは知らない」「聞いたことはなく、意味も知らない」と回答したのは88.0%(1056人)にも上った【図5】。
<その他の設問項目>
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熱中症を意識している1093人に対し、そのきっかけや理由について尋ねると、「天気予報等で暑くなってくることが予想されるから」が55.6%(608人)で最多。順に、「熱中症についてニュースでよく耳にするから」が37.4%(409人)、「熱中症警戒アラートが始まるから」が31.7%(347人)となった【図6】。
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過去1年間で熱中症になった、またはその可能性を感じたことの有無について尋ねると、「熱中症と診断されたことがある」と回答したのは、全体の3.1%(37人)だった。「熱中症のような症状になったことがある」のは18.5%(222人)、「熱中症かは分からないが、暑さで体調を崩したことがある」のは21.0%(252人)となり、熱中症の経験や何かしらの症状を感じたことがある人は合計で42.6%(511人)だった【図7】。
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熱中症の経験や症状を感じたことがある511人に対し、その時に予防や対策をしていたかについて尋ねると、「万全に対策していた」と回答したのは7.2%(37人)、「自分なりに対策していたつもりだった」が76.7%(392人)、「特に何もしていなかった」が16.0%(82人)だった【図8】。









【まとめ】
今回の調査結果では、熱中症に対して、全体の9割近くが「危険だと思っている」ことが明らかになりました。このため、気温が上昇し、本格的な暑さが到来する7月から、熱中症を意識する割合が多いことも判明しました。また、年齢層の高い世代である40~60代以上の方が、10~30代と比べて、より早い時期から熱中症を意識し警戒し始める傾向にあることもうかがえました。
一方で、熱中症の予防・対策についても、意識と同じタイミングの7月から行動を開始する割合が多いことも判明しました。このことは、本格的な暑さが訪れる時期よりも前に、熱中症の対策までは行っていない傾向にあるともみられます。それを裏打ちする一つとして、事前に体を暑さに慣れさせておく「暑熱順化」の認知度に関して、8割超の人が知らないことに表れているように見受けられます。
熱中症などに対する応急手当に関する講習を実施している日赤としては、熱中症は予防策を知っていれば、未然に防ぐことができる病気だと考えています。熱中症にかからないよう、一人ひとりが早い時期から警戒意識を持ち、日常生活から対策を行動に移していくことが大切です。日赤としても、講習をはじめ各種啓発活動にも取り組んでいきます。
【日赤専門家のコメント】
日本赤十字社 事業局 救護・福祉部
健康安全課長 齊藤 紀彦

地球は温暖化を超えて沸騰化しているとも言われ、これ以上涼しくなる未来はないとも言われています。私たちにとって、人のいのちと健康を守るため、熱中症に対する正しい予防策と正しい対処法を身に付ける必要がますます重要となっています。
調査結果では、若い年代ほど熱中症に対する危険性の認識が低い傾向にありますが、熱中症は命を落とすリスクや後遺症が残る可能性もある怖い病気です。なってしまってからの正しい手当も重要ですが、ならない方法を知ることも大切です。熱中症は予防でゼロにできる唯一の 病気とも言われ、予防に重点を置くべき病気です。
今回の調査でも予防対策について質問していますが、暑い日の行動には気をつけ、こまめに 水分補給をする、通気性の良い服を着る、また、室内ではエアコンや扇風機を使う等、比較的取組みやすいものがたくさんあります。十分な睡眠をとる等、自律神経を整える生活を心がけることは、熱中症予防のみならず、普段から健康な生活を送るうえでも必要と言われていることです。
また、熱中症は夏だけではなく、1年を通じて予防することも大切です。夏が来てからでは手遅れの予防策もあります。暑くなったときに体温調節ができる身体をつくっておく暑熱順化もその1つで、普段からやや暑いと感じる気温のもとで軽く汗ばむ程度の運動を日常から行うことが暑熱順化には有効です。
今年も4月23日から熱中症警戒アラートの運用が始まります。自分や大切なひとが熱中症にならないよう、効果的な予防行動が望まれます。
なお、日本赤十字社の救急法等の講習会では、熱中症の応急手当や予防方法を学ぶことができます。日本赤十字社では、令和5年度に気候変動対応基本方針を、また、翌年にはアクションプランを策定し、暑熱環境下の熱中症対策等の健康被害防止に関する講習会を推進しております。
予防とともに、熱中症は現場での応急手当の効果が高いという特徴もあります。ぜひ、講習を受講いただき、正しい予防策と正しい応急手当を身に付けましょう。
【熱中症の症状・手当・予防法】
詳しくは、弊社WEBサイトで解説しています。
https://www.jrc.or.jp/study/safety/fever/ (日本赤十字社WEBサイト)
<調査概要>
調査名 熱中症に関する意識調査(2025年)
調査対象 日本国内の男女1200名(10~60代以上の男女各100人)
調査方法 インターネット調査
調査機関 楽天インサイト株式会社(調査委託)
調査期間 2025年3月
※その他詳細なデータについては、日本赤十字社広報室にお問い合わせください。
※本調査を引用する場合は「2025年日本赤十字社調べ」もしくは「日本赤十字社『熱中症に関する意識調査(2025年)』」と記載ください。
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