せん妄の発症を高度に予測し患者の救済を目指す米国の医療系スタートアップDelight Health社に、富士通の時系列データ解析AI技術をライセンス供与
本ライセンス供与によりDelight Health社は、現在開発中のせん妄(注3)の発症を正確に予測する高度な検出装置を富士通のTDA技術によって確立させ、2024年までに米国食品医薬品局(以下、FDA)の承認を取得することを目指し、特に高齢者に頻発する深刻な疾患であるせん妄に苦しむ患者の救済を目指します。
【背景】
せん妄は世界中の何百万人もの人々に影響を与えている深刻な疾患であり、米国だけでも年間200万人から300万人もの高齢者が罹患しています。せん妄により、患者の1年後の死亡率が40%(注4)に達し、米国では医療システムに1,500億ドル以上の影響を与えると推定(注5)されています。しかし、現状ではせん妄発症の予測のほとんどがアンケートに基づくため臨床医による解釈に左右されることから、時には誤った診断や介入の遅れにつながる恐れがあることが課題となっています。
富士通は、複雑に変動する時系列データの異常や乱れを分析できる独自のTDA技術を2020年に開発しており、本技術を活用した脳波データを用いたせん妄検知について、後にDelight Health社を創設するスタンフォード大学 医学部精神科 准教授の篠崎 元氏(共同研究当時はアイオワ大学所属)とともに2018年7月から2021年5月まで共同研究を行いました。両者は本共同研究において、バイスペクトル脳波装置(注6)とTDA技術を組み合わせることで、せん妄の発症を正確に予測する画期的な研究成果(注7)を挙げ、篠崎氏は本成果のビジネス化を目指し、2023年7月にDelight Health社を設立しました。
富士通は、このたび、Delight Health社にTDA技術のライセンスを供与し、Delight Health社の新株予約権を取得することで、Delight Health社によるせん妄の発症を正確に予測する装置開発に貢献していきます。
TDA技術のライセンス供与について
1. 期間:
2023年11月から2028年11月 まで
2. 両社の役割:
富士通
・Delight Health社の技術者がTDA技術に関する必要な専門知識を習得するためのトレーニングの実施。
・同社が開発するせん妄検知装置にTDAを組み込むためのソフトウェアの提供および技術サポートの実施。
・日本国内の企業または日本に本社を置くグローバル企業のお客様に対して、Delight Health社が開発したライセンス製品を日本国内で共同販売、販売促進、頒布、その他の方法で商業化する優先的な権利を保有。
Delight Health社
・TDA技術を組み込んだせん妄検出装置の開発。
・せん妄測定サービスを提供するために必要なFDAの認可の取得。
・せん妄検出装置、および付帯サービスの販売。
富士通株式会社 技術戦略本部長 岡田 英人のコメント
先進技術を活用して人や社会の問題を解決することは、富士通の使命(ミッション)であり、我々の存在意義(パーパス)の中核をなすものです。Delight Health社へのTDA技術のライセンス供与を通じて、精神状態、認知機能の悪化を検知・治療するための革新的ソリューションが提供されることで、世界中の何百万人の健康と幸福度の向上に貢献したいと考えています。
Delight Health Inc. Co-founder 篠崎 元のコメント
富士通は高度な技術と卓越した研究で認められている企業であり、両社の共同研究は科学的な飛躍的進歩をもたらします。Delight Health社は富士通からTDA技術をライセンス供与されることで、せん妄治療の開発を加速させ、新たな治療方法の確立と患者の回復の道を強力に切り開いていきます。
【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
【注釈】
注1
富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
(補足:掲載先メディアや閲覧環境の仕様によっては、「隆」の文字が正しく表示されない場合があります。正しくは、「隆」の「生」の上に「一」が入ります。)
注2
Delight Health Inc.:
本社 アメリカ合衆国 カリフォルニア州 パロアルト、Co-founder 篠崎元。
注3
せん妄:
混乱や注意力の欠如のほか、時間や場所、状況についての感覚の喪失を伴う精神の急激な変化を示す疾患で、感染や手術後などの複数の原因によって興奮、幻覚、妄想を含む症状につながる可能性があるもの。
注4
患者の1年後の死亡率が40%:
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/211205
注5
医療システムに1,500億ドル以上の影響を与えると米国において推定:
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/413696
注6
バイスペクトル脳波装置:
死亡率や入院期間、退院先などの患者転帰を予測するのに有効であることが証明された、篠崎研究室が開発した装置。
注7
画期的な研究成果:
篠崎氏は米国リエゾン精神医学会から表彰され、学会で受賞記念基調講演を実施。また、米国せん妄学会や豪州せん妄学会においても基調講演を実施。
【関連リンク】
時系列データの異常検知を行うAIモデルの自動作成技術を共同開発(2020年3月16日プレスリリース)
(https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/03/16.html)
【本件に関するお問い合わせ】
富士通株式会社
富士通コンタクトライン(総合窓口)
受付時間: 9:00~12:00および13:00~17:30
(土・日・祝日・当社指定の休業日を除く)
お問い合わせフォーム(https://contactline.jp.fujitsu.com/customform/csque04802/873532/)
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