レゾナック、Matlantisとの共創により実験化学者向け新機能「Matlantis Case Studio」を実証
~ 実験と計算科学の"両利き"を支援する「Matlantis Case Studio」をα版として公開予定 ~
株式会社レゾナック(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:髙橋秀仁、以下「レゾナック」)は、Matlantis株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岡野原大輔、以下「Matlantis社」)と、汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」の新機能に関する共同実証プログラムを進めてきました。本プログラムを通じて開発した新機能「Matlantis Case Studio」をMatlantis社から近日中にα版として提供開始することを発表いたします。
Matlantis Case Studioは、これまで計算科学を専門としてこなかった実験化学者が、Matlantis上で自ら簡易的なシミュレーションを扱えるようにするためのもので、レゾナックの研究現場の声を起点に機能開発と実証を重ねてまいりました。ユーザーは既存の計算事例から関連性の高いものを選択し、AIとの対話を通じてプログラミングなしに所望の計算にカスタマイズし実行することができます。なお、Matlantisの開発を担う株式会社Preferred Networksも本プログラムに参画しています。
背景:近年、AIを科学研究の実践そのものに活用する"AI for Science"の潮流が、材料開発の現場にも本格的に及んでいます。
材料開発の現場では、AIを活用した高速な原子・分子シミュレーションが実験と並走することで、研究開発のスピードと精度を大きく高められることが明らかになってきました。一方で、計算科学の利活用は依然として専門人材に限られており、実験化学者が「自らの仮説を計算で試す」ハードルは高い状況が続いています。本共同実証プログラムは、この状況を打開し、あらゆる研究者が計算科学のツールを自在に扱える"両利き"の状態を、ツール環境の側から支える取り組みです。実験化学者にとって、計算科学が日常の研究活動に自然に組み込まれた道具の一つとなる状態を目指し、その第一歩をレゾナックの研究現場とMatlantis社が共に踏み出しました。
取り組み概要:レゾナックの研究現場とMatlantis社の共創
本共同実証プログラムは、レゾナックの計算情報科学研究センターおよび伊勢崎事業所と、Matlantis社およびPreferred NetworksのMatlantis開発チームが2025年10月より共同で進めてきたパートナーシッププログラムです。レゾナックの計算科学者・実験化学者による機能プロトタイプの実利用と、そこから得られた気づきを短いサイクルで機能に反映するアジャイルなプロセスによって、機能開発と実証を重ねてまいりました。研究現場の生の声こそが本機能の設計・改善の起点であり、両社は、この共創を通じて、実験化学者にとって日々の研究開発で使える形の機能を追求してまいりました。
Matlantis Case Studio:「既存の計算事例をベースに、AIとの対話で計算をカスタマイズし実行できる」
本共同実証を通じて開発したMatlantis Case Studioは、計算科学に触れる機会が少なかった研究者にとっても、初回から直感的に手を動かせるユーザー体験を目指してインターフェースを設計しました。具体的には、以下の3点を柱としています。
① 興味のある事例から計算を開始:既存の計算事例から、自身の研究開発テーマと関連性の高い材料・物性のものを選択することで、対応する計算をスムーズに開始できる
② AIとの対話でカスタマイズから実行まで:直感的に操作可能な、簡易的な選択・入力とAIを組み合わせたインターフェースで、計算条件の設定から実行までを一貫して進められる
③ 結果の表示と再利用の支援:計算結果を自然言語で要約表示し、実行履歴の保存・比較を可能にする

両社が協働し、これまで4回の実証実験を通じ機能プロトタイプの改善を重ねる中で、計算科学を専門としない研究者が初見で計算を完走できることを確認しました。
実験化学者の声
「これまでは、開発中のポリマー材料の密度や基材との密着性などを計算で知りたいとき、計算科学者の協力が必要であり、結果を得るまでに一定の時間を要していました。今回、自分の手元で既存の計算事例の一覧から目的に合うものを選び、AIとの対話を通じて計算を実行することで、初期検討の目安となる試算値が得られました。実験に着手する前のアイデア検証や候補絞り込みを自ら進められるだけでなく、計算結果をもとに計算科学者との議論も深まり、より高度な計算が必要な課題への接続も円滑になりつつあります。実験化学者が計算への理解を深め、計算科学者と共通の言語・ツールを用いて課題解決に取り組むことで、日々の研究の進め方そのものが変わっていく感覚があります。」
株式会社レゾナック 伊勢崎事業所 倉林 一樹
目指す姿:実験と計算科学の"両利き"が広がる研究組織へ
本取り組みが目指すのは、単なる新機能の提供ではなく、実験化学者が計算科学を日常的な業務に取り入れ続けられる"仕組み"を、共創で確立することです。実験化学者が自ら手元で計算を試せるようになれば、これまでは計算科学者との連携の中で扱われてこなかった小さな計算アイデアも研究の流れの中で試せるようになり、従来取りこぼしていた発見につながる可能性があります。同時に、実験化学者にとって計算科学がより身近な道具となることで、計算科学者との対話はより本質的なテーマに深まり、研究組織における計算・実験の協働全体が加速することを期待しています。
コメント
株式会社レゾナック・ホールディングス 執行役員 CTO 福島 正人
「材料開発の高度化・高速化に向けては、実験と計算科学を有機的に結び付け、両者を相互に活用することがますます重要になっています。しかし、計算科学の活用には専門的な知識や操作が求められるため、多くの実験化学者にとっては依然として利用へのハードルが存在していました。今回の共同実証では、研究者の実際の研究プロセスやニーズを起点として、実験化学者自身が計算を活用しながら仮説立案・検証を進められる環境の実現に取り組みました。
このMatlantis Case Studioにより、研究者が思いついたアイデアを迅速に計算で確かめ、その結果を次の実験計画に反映するというサイクルが、より自然に研究活動の中に組み込まれることを期待しています。計算科学を一部の専門家だけの技術ではなく、より多くの研究者が日常的に活用できる研究基盤へと発展させることで、新たな材料設計の可能性を広げ、研究開発の生産性向上とイノベーションの加速に貢献していきたいと考えています。」
Matlantis株式会社 代表取締役社長 岡野原 大輔
「Matlantisは"計算の専門家のためのツール"から"実験化学者も含めたすべての研究者が使えるプラットフォーム"へと進化する局面にあります。今回のレゾナック様との共同実証は、その進化の方向性を、実際に材料開発の最前線に立つユーザー企業と共に設計・検証できたという点で、Matlantisにとって大きな意義を持つ取り組みです。レゾナック様の現場知見を取り入れることで、Matlantisを、実験化学者にも自然に使っていただける形態へと進化させていきます。このMatlantis Case Studioを起点に、AI for Scienceの可能性をより多くの研究者へ届け、その活用の裾野をさらに広げてまいります。」
今後の展開
本共同実証で開発したMatlantis Case Studioは、Matlantis社から近日中にMatlantisのα版機能として、実証にご協力いただいたユーザー企業を中心に提供開始する予定です。両社は今後も本共同実証を継続し、汎用性の検証、機能拡充、実験・計算の協働を組織的に加速する仕組みづくりへと、取り組みを広げてまいります。
【株式会社レゾナックについて】
レゾナックは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持つ機能性化学メーカーです。2023年1月に昭和電工と旧日立化成が統合し、誕生しました。社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE:共鳴する・響き渡る」と、Chemistryの「C」の組み合せです。レゾナックは「共創型化学会社」として、共創を通じて持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。2025年度の売上高は約1兆3千億円、うち海外売上高が57%を占め、20以上の国や地域にある製造・販売拠点でグローバルに事業を展開しています(2026年1月時点)。
ウェブサイト:https://www.resonac.com/jp/
【Matlantis株式会社について】
Matlantis株式会社は、2021年に株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社の合弁会社として設立されました(2025年7月に社名変更)。汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供し、独自の機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)である「Matlantis PFP」により、従来比で数万倍の高速化を実現しています。現在、150以上の国内企業・大学・研究機関で利用されており、海外でもフォルクスワーゲン、現代自動車をはじめとする企業に導入されています。触媒、電池、半導体、合金、潤滑剤、セラミックス、化学品など幅広い材料開発を支援します。
ウェブサイト:https://matlantis.com/ja/
以上
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