ビフィズス菌ロンガム種が乳幼児から高齢者の腸内にまで幅広く生息する理由

―アイルランドコーク大学との共同研究から―   科学雑誌『Scientific Reports』誌に掲載

森永乳業株式会社

森永乳業は、育児用ミルクを開発する過程で赤ちゃんの腸内フローラ、ビフィズス菌※1に着目し、その研究を50 年以上行っております。近年、世界中で腸内フローラ研究※2が盛んに行われておりますが、当社では、腸内フローラ、ビフィズス菌研究の更なる促進を図るべく、2016年7月よりビフィズス菌・乳酸菌研究の先進国であるアイルランドのコーク大学施設内にある「APCマイクロバイオーム研究所」と共同研究を進めています。
この度、450名以上の日本人について腸内フローラやゲノム情報を解析を実施したところ※3以下の3点が明らかになりました。
①乳幼児から超高齢者まで高い頻度で検出される腸内細菌は3菌種しかいないこと、うちひとつがビフィズス菌
   ロンガム種であったこと
②同じビフィズス菌ロンガム種でも乳幼児と高齢者では異なること
③母子間に限らず、家族間でビフィズス菌ロンガム種が伝播していること

1.APCマイクロバイオーム研究所
 アイルランドのコーク大学(University College Cork) 内にあるAPCマイクロバイオーム研究所(APC Microbiome Institute)はアイルランド科学財団(SFI)の国立研究センターの一つで、2003年創設以来、食と医療の分野で様々な研究成果をもたらし、トムソン・ロイター社の評価では科学分野における世界第2位にランクされております。※4

同研究所の研究テーマは(1)分子微生物学、(2)長寿に向けた食事と細菌、(3)脳腸相関、(4)宿主と細菌の関連性の4つに大別されており、今回当社は(1)分子微生物学分野のDouwe van Sinderen教授のもと、ビフィズス菌の遺伝子情報(機能ゲノム学)分野の研究をいたしました。

2.研究内容
◆研究方法
 健康な日本人被験者453名(0歳~104歳、男性185名、女性268名)の腸内フローラを解析し、全世代に幅広く生息する菌種を探索しました。また、被験者から分離したビフィズス菌ロンガム種113菌株と、ゲノム情報が公開されている32菌株の合計145株について遺伝子情報の解析を行いました。

◆研究結果
①乳幼児から超高齢者まで検出される唯一のビフィズス菌がロンガム種
 検出された871菌種レベルの腸内フローラのうち、多くが特定の被験者からしか検出されない種類の細菌でしたが、50菌種ほどは日本人に広く分布している細菌種であることが分かりました(図1)。しかしこれらも主に乳幼児、成人、高齢者など特定の年代においてのみ検出率が高いケースがほとんどで、すべての世代で50%以上の被験者から検出された菌種はわずか3種しかなく、うち一つがビフィズス菌ロンガム種でした(図1)。

②同じビフィズス菌ロンガム種でも乳幼児と高齢者では異なる
 ヒトに各人の個性があるように、ビフィズス菌ロンガム種にも、様々な菌株が存在しています。乳幼児と高齢者の腸内には、それぞれの腸内環境で生存するために有利であると考えられる遺伝子をそれぞれ保有しているビフィズス菌ロンガム種の菌株が多いことが今回の研究で初めて分かりました。例えば、母乳に含まれるミルクオリゴ糖の成分であるシアル酸の分解・利用に関わる遺伝子は乳幼児から、食物繊維の分解・利用に係る遺伝子は成人・高齢者から分離される菌株で多く保有されていました。

③母子間に限らず、家族間でビフィズス菌ロンガム種が伝播している
 ビフィズス菌は、出産の際に母親から乳幼児へ伝播することがこれまでにも知られていますが※5、 本研究では母子間の伝播のみならず、父子間や夫婦間、さらには3世代間でビフィズス菌ロンガム種が伝播していることがゲノム情報の比較から世界で初めて明らかにされました(図2)。

3.まとめ
 本研究成果(Genomic diversity and distribution of Bifidobacterium longum subsp. longum across the human lifespan.)は、科学雑誌『Scientific Reports』誌(2018年1月8日付)に掲載されました。
 森永乳業では、APCマイクロバイオーム研究所との共同研究を含め、様々な観点からビフィズス菌の有用性に関する基礎研究を継続してまいります。エビデンスを積み重ねることにより、人々の健康維持と笑顔のあふれる豊かな社会の実現に向けて新しく正確な情報を発信していけるよう努めてまいります。

<参考>
※1ビフィズス菌は他の生物と同じように、属名、種名で学名が付いています。さらに、ある菌種に属する特定の菌株を指す時に菌株名が付けられています。例えば、Bifidobacterium(ビフィドバクテリウム)は属名、longum(ロンガム)は種名、BB536は菌株名となっています。

※2人の腸の中には、数百種類、数百兆個の細菌が棲んでいます。これらの細菌が腸内に棲んでいる状態は、まる
 で植物が群生する花畑のようであることから「腸内フローラ」と呼ばれています。近年、腸内細菌はいろいろな
 疾病や肥満に影響を与えていることを指摘する研究が数多く発表されており、腸内フローラをバランス良く保つ
 ことが健康のカギと考えられています。

※3それぞれのビフィズス菌が持つすべての遺伝子情報(ゲノム)を次世代シーケンサーによって解析し、
 それらの情報を比較することで潜在的な能力の違いを見出す比較ゲノム解析を行いました。
 
※4コーク大学プレスリリース2015 による
https://www.ucc.ie/en/news/archive/2015press/apc-microbiome-institute-at-ucc-creates-50-new-jobs-.html  

※5出典:Asnicar, F. et al. Studying Vertical Microbiome Transmission from Mothers to Infants by Strain-Level Metagenomic Profiling. 2, 1–13 (2017)

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。


会社概要

森永乳業株式会社

95フォロワー

RSS
URL
https://www.morinagamilk.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都港区東新橋1-5-2
電話番号
03-6281-4680
代表者名
大貫陽一
上場
東証1部
資本金
218億2100万円
設立
1949年04月