東京オリンピックが開催された1964年は、本当に「夢と希望にあふれていた年」だったのか? 五輪イヤーの「闇」を白日の下にさらすノンフィクション『1964 東京ブラックホール』が発売。第一章特別公開も。

 労働者搾取、格差社会、猟奇犯罪、汚職・隠蔽、疫病の蔓延……。膨大な記録映像と史資料を読み解き、見えてきたのは首都の「闇」。すなわち、いまも残るこの国の欠陥だった――。
 バブル崩壊以降、活気にあふれた60年代を顧みることが増えたように思います。「昭和30年代ブーム」が起き、メディアはこぞってノスタルジーをあおりました。とりわけ、オリンピックがふたたび東京で開催されることが決まってからは、この年をめぐる神話がさらに強化され、誰もが夢と希望を抱いた黄金時代だったかのように語られることが増えたのです。
 このたび発売された『1964 東京ブラックホール』(NHK出版、2020年6月27日刊)は、ノスタルジーで漂白され、「忘却の海」に沈められていた1964年の多種多様な東京の記憶を鮮明によみがえらせる一冊です。

 本書の出発点となったのは、2019年10月放送のNHKスペシャル『東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年』。失われた記憶をよみがえらせるための強力な手がかりは、国内外に残された1万本を超える記録映像です。フィルムに刻印された映像から得られるものは多く、さまざまな光景が時を超えて、思いがけない意味を獲得し、1964年のリアルが姿を現しはじめます。たとえば……。

●都民1,000万人の糞尿は東京湾沖合に流される
●赤痢、チフス、コレラが流行する疫病都市だった
●生活苦にあえぐ労働者は、みずからの血を売った
●五輪マネーをめぐって汚職が激増。都庁は「腐敗の巣窟」だった
●ヤクザの襲名披露で、自民党副総裁が祝辞を述べた
●少年犯罪は戦後のピークに。中流家庭の子弟が凶悪事件を起こす
●米軍墜落事故が続発。ベトナム戦争は東京ではじまった
●六本木・赤坂ではスパイが暗躍し、カネと情報が交換された
●五輪閉幕後、戦後最悪の不況が訪れた

 そして、埋もれていた映像からは、繁栄の陰でさまざまな矛盾に苦しめられ、不安と焦燥に苛まれる無数の人生もよみがえります。本書を読むと、1964年についての記憶の大半が忘れ去られていることに気づくでしょう。メディアによって繰り返し喧伝された紋切型のイメージを除けば、私たちはこの年に起きた劇的な出来事をほとんど何も知らないのです。
 失われた記憶の中には、今の日本を理解する重要なカギとなるものが含まれています。56年前の日本人はどのような試練に直面し、苦悩し、心を震わせたのか。私たちの行く末を照らす力を持つ光源が、そこにあります。

 2020年に開催が予定されていた東京五輪は、新型コロナウイルスの影響で延期が決まりました。コロナ禍において、東京一極集中、貧困・格差などかねて日本社会が抱えていた多くの問題が、より深刻な形であらわになりました。今日本が直面している大きな危機について考えるとき、本書を通じ、1964年の東京を旅して、この社会の問題の淵源を見届けることは、必ず役に立つはずです。

 なお、NHK出版WEBマガジン「本がひらく」では、『1964 東京ブラックホール』の第一章を特別公開しています(https://nhkbook-hiraku.com/n/n4f69340e7c44)。関連して著者・貴志謙介氏による前著『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』の第三章も公開予定です。

『1964 東京ブラックホール』第二章以降で取り上げる内容は、以下のとおりです。

●第二章「忘れられた人生」……集団就職の若者たち(=団塊の世代)と、貸本マンガの世界や新たな宗教団体の隆盛の関係。当たり前のように行われていた売血と、731部隊出身者が設立した民間の血液銀行である日本ブラッド・バンク。
●第三章「ブラック・ソサエティ」……政財界に蔓延した汚職・隠蔽、拡大の一途をたどる組織暴力、オリンピック直前に行われた「東京浄化作戦」。
●第四章「虚妄のホワイトカラー」……「新中間層」、いわゆるサラリーマンという層の増大と、かれらが構成する「企業社会のシステム」の構造的欠陥。それに由来する性差別や、多発する少年犯罪。
●第五章「首都圏=USA」……冷戦下に決定づけられた対米依存。米軍基地の存在により悪化した人びとの暮らしから、政府とCIAの結びつきまで。
●第六章「五輪をめぐる幻想」……冷戦の現実に振り回された東京オリンピックの実態――工作員が舞台裏で暗躍、北朝鮮とインドネシアがボイコット、アラブ諸国とイスラエルの確執で破綻寸前だった閉会式。会期中に行われ、日本政府をゆさぶった中国の核実験。
●第七章「宴のあと」……オリンピック閉幕後に訪れた、戦後最悪の不況。そして、ベトナム戦争によって実現された驚くべき経済成長。

【著者】
貴志 謙介(きし・けんすけ)
1957年生まれ。1981年、京都大学文学部卒業後、NHK入局。ディレクターとしてドキュメンタリーを中心に多くの番組を手がけ、2017年に退職。主な番組に、NHK特集『山口組』、ハイビジョン特集『笑う沖縄・百年の物語』、NHKスペシャル『アインシュタインロマン』『新・映像の世紀』など。著書に『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』、共著に『NHKスペシャル 新・映像の世紀 大全』(どちらもNHK出版)などがある。


■『1964 東京ブラックホール』構成

プロローグ 漂白された記憶

第一章 東京地獄めぐり
  1 戦慄都市
  2 人命軽視
第二章 忘れられた人生
  1 青春流転
  2 吸血銀行
第三章 ブラック・ソサエティ
  1 汚職天国
  2 組織暴力
  3 東京浄化
第四章 虚妄のホワイトカラー
  1 中流幻想
  2 少年犯罪
第五章 首都圏=USA
  1 占領復活
  2 地下帝国
第六章 五輪をめぐる幻想
  1 聖戦完遂
  2 冷戦忘却
第七章 宴のあと
  1 列島崩壊
  2 戦争特需

エピローグ 一九六四/二〇二〇


■商品情報


出版社:NHK出版
発売日:2020年6月27日
定価:1,870円(本体1,700円)
判型:四六判
ページ数:304ページ
ISBN:978-4-14-081823-7
URL:https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818232020.html

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります。

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。
※内容はプレスリリースにより異なります。

  1. プレスリリース >
  2. 株式会社NHK出版 >
  3. 東京オリンピックが開催された1964年は、本当に「夢と希望にあふれていた年」だったのか? 五輪イヤーの「闇」を白日の下にさらすノンフィクション『1964 東京ブラックホール』が発売。第一章特別公開も。