障害のある生徒の進路、7割が希望通り進めず…最多の理由は”マッチング機会の不足“(44%)、障害のある生徒の進路指導に現在携わる教員102名に調査
進路の選択肢は本当に平等か?情報不足と連携不全が生む現実
障害者就業支援を通じて“誰もが自分らしく生きる社会”を目指す株式会社スタートライン (本社:東京都三鷹市、代表取締役:西村賢治)は、障害のある生徒の進路指導に現在携わる教員102名を対象に「障害者生徒の社会進出に関する実態調査」を2025年7月30日〜8月1日に実施しましたので、調査結果をお知らせします。
▼調査トピックス
・卒業後に最も希望する進路は「一般企業への就職」が53.9%
・希望する働き方は「健常者と同じ環境で働きたい」が最多
・約7割の教員が「希望通りの進路に進めなかった」と回答
・進路実現を阻む要因は「将来への不安」「情報不足」が上位
▼調査結果の詳細
1…卒業後に最も希望する進路は「一般企業への就職」が53.9%
障害のある生徒の進路指導に現在携わる教員102名を対象に「障害のある生徒たちが卒業後に最も希望する進路」を伺うと、障害のある生徒が卒業後に最も希望する進路は「一般企業への就職」で、全体の53.9%を占めました。次いで「就労移行支援事業所」が16.7%と続き、企業就職を目指しながらも、スキル習得や準備期間を重視する生徒が一定数存在することがわかります。

2…希望する働き方は「健常者と同じ環境で働きたい」が最多
働き方に関する質問では、「健常者と同じ環境で働きたい」が37%で最多となり、共に働くことへの希望が強いことがわかります。次いで「リモートワークと定期的な出社のハイブリッド型」が13%、「自分の特性に合った業務内容で働きたい」が12%と続き、柔軟な働き方や個別配慮を求める声も一定数見られました。また、「障害者同士で働きたい」という回答は10%でしたが、これは必ずしも社会とのつながりを望まないという意味ではなく、安心感や相互理解を重視する選択肢として捉えられます。

3… 約7割の教員が「希望通りの進路に進めなかった」と回答
「担当した生徒が希望する進路に進めたか」という質問では、約7割の教員が「進めなかった」と回答しました。これは、進路希望と現実との間に大きなギャップが存在することを示しており、進路指導や社会全体の受け皿に課題があることが浮き彫りになっています。

4… 進路実現を阻む要因は「将来への不安」「情報不足」が上位
希望通りの進路に進めなかった理由としては、「将来に対する漠然とした不安」と「進路先に関する情報不足」が同率で1位となりました。情報不足は、適切な選択肢を見極める機会を奪うだけでなく、不安を増幅させる要因にもなっていると考えられます。

5… 一般企業への就職における課題として「マッチング機会の不足」「求人情報の少なさ」が挙げられる
一般企業への就職を希望する際の課題としては、「学校や支援機関と企業をつなぐマッチングの機会が少ない」が44%で最も多く、次いで「企業の求人情報・募集枠が少ない」30%、「企業の受け入れ体制が整っていない」28%と続きました。これらの結果から、企業側の理解促進や受け入れ体制の整備、そして学校・支援機関との連携強化が急務であることがわかります。

まとめ
500社以上の障害者雇用を支援してきた当社の障害者雇用エバンジェリストによるコメント

吉田 瑛史(株式会社スタートライン 障害者雇用エバンジェリスト)
パナソニックグループ、マイナビ、パーソルグループを経て株式会社スタートラインへ入社。企業支援、障害者支援、人事、組織管理、業務開発、就労移行支援、研修/講師、農福連携、マーケティング、エバンジェリストなど、多岐にわたる役割で、500社/5,000名以上の障害者雇用に携わった経験を「障害者雇用」をより良くするために伝道する「障害者雇用エバンジェリスト」。
今回の調査から、障害のある生徒たちが『一般企業で働きたい』という強い希望を持ちながらも、情報不足や将来への不安によって、その希望が実現しにくい現状が浮き彫りになりました。特に、学校や支援機関と企業をつなぐ仕組みが十分でないことは、進路選択の幅を狭める大きな要因です。今後は、企業・学校・支援機関が一体となり、進路情報の透明性を高めるとともに、職場体験やインターンシップなど、実際の働く場に触れる機会を増やすことが不可欠です。
また、『健常者と同じ環境で働きたい』という回答が最も多かったことは、現在約60万人近くの障害のある方が一般企業で働いている現状を踏まえれば、自然な結果といえます。しかし、重要なのは“それだけが選択肢ではない”ということです。働き方は一つに限定されるべきではなく、多様な選択肢の中から自分に合ったスタイルを選べることが本質的に大切です。だからこそ、回答割合としては少数派であっても、『障害者同士で働きたい』『在宅で働きたい』『短時間で働きたい』といった声にも耳を傾ける必要があります。そこには、安心感や相互理解といった、別の価値が存在しているからです。
私たちは、こうした多様なニーズを尊重し、500社以上の支援で培った知見を活かしながら、企業・学校・支援機関と連携し、誰もが自分らしく働ける社会の実現に向けて取り組み続けます。
過去の調査はこちら
・障害ある生徒の“卒業後”・・・『社会の選択肢が揃っていない』7割~理由:「職場の受け入れ体制不備」51%、「就労支援制度の不足」41%~
・8割強の働く障害者が「辞めたい」と感じた経験・・・原因は「周囲から必要とされない」が最多~仕事して良かった理由の最多は「成果や貢献が認められたとき」~
・【実態調査】民間企業で3年以上働く障害者に聞いた!就活で感じた困難&本当に欲しかった支援とは?
<調査概要>
【調査対象】障害のある生徒の進路指導に現在携わる教員、102名
【調査方法】IDEATECHが提供するリサーチデータマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
【調査期間】2025年7月30日~8月1日
※本記事の著作権は株式会社スタートラインに帰属しますが、以下の利用条件を満たす方には利用権を許諾します。
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株式会社スタートライン
ABA(応用行動分析)やCBS(文脈的行動科学)、第三世代の認知行動療法に基づいた効果的で専門的な支援で、障害者雇用の新しい「場」づくりから定着支援までワンストップで実現する会社です。
「自分をおもいやり、人をおもいやり、その先をおもいやる。」の企業理念のもと、2009年創業以来、障害者雇用支援の領域において障害者の「採用」と「定着」に重きを置き、障害者雇用支援サービスサポート付きサテライトオフィス「INCLU」を運営。障害者雇用に関する総合コンサルティングを軸に、屋内農園型障害者雇用支援サービス「IBUKI」、ロースタリー型障害者雇用支援サービス 「BYSN」、企業/障害当事者向けカスタマイズ研修、在宅雇用支援、障害者採用支援などサービスメニューを拡充しています。一つでも多くの選択肢をつくり、多様な人々の可能性を拡張することで、誰もが自分らしく生きる社会を目指しています。

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