【開催報告】学生アンケート結果から見る文理選択の課題- 進路指導の新たな展望を探る教員向けイベントを8月24日に実施
本イベントでは、スタディプラスと公益財団法人山田進太郎D&I財団様に加えて、理系進学する生徒を多数輩出し、キャリア教育に力を入れている茨城高等学校の横倉友博先生にご登壇いただき、アンケート結果を元に進路指導における課題をパネルディスカッション形式で議論しました。
なお、本イベントで触れた、現役高校生・大学生3,297人に聞いた文理選択の実態調査の全文は以下URLをご覧ください。
https://www.trend-lab.studyplus.jp/post/20230824
■ 登壇者
横倉 友博先生:私立茨城高等学校・中学校教諭(生物科) 現進路指導担当
田中 多恵:公益財団法人山田進太郎D&I財団事務局長
大洲 早生李:公益財団法人山田進太郎D&I財団(広報・マーケティング/調査・政策提言)
中山 早奈子:スタディプラス株式会社 ソフトウェア事業本部 公教育事業部 部長
平尾 耕太郎:スタディプラス株式会社 広報/Studyplusトレンド研究所
テーマ1:現状の文理選択における課題は?
ーーアンケート分析からわかったおもな課題や奨学生の声を踏まえて、文理選択においてどんなサポートを重視すれば良いのでしょうか?
横倉先生:
奨学生の声にあるような理系および理系科目に関するバイアスについては、学校現場でも感じるところがあります。学生は身近な大人の職業しか知らない現状があり、学部を選ぶとなったときに具体的に何を学ぶのかイメージがつかない。さらには、学部の名称が就職先に直結すると思い込んでいる生徒も多いのですが、実際はもっと広い選択肢があります。学部で学ぶこと、その先の職業のイメージ、これらを共有していくことが重要なのかなと思っています。
また、文系理系という枠を一度取り払って、「自分は本当は何がしたいのか」を見つけること、好きではないことを4年間続けることは苦しいということも伝えていきたいですね。
中山:
まずは、子どもたちの視野を広げる情報提供が一番大事だと思います。自分自身を振り返っても、理系選択の場合は身近な職業、例えば医師や看護師をイメージして選択しようとしていて、それ以外の職業についてはあまりイメージできていませんでした。
私は理系を選択したのですが、なぜ理系かというと、高校生時代にニュートリノの振動を観測した梶田さんがノーベル賞を受賞したことを、NHKのドキュメンタリーで視聴したことで、「宇宙っておもしろいんだな」「物理ってこういうことを学ぶんだな」と思ったことがきっかけです。
ただこれも、当時ほかにもっと情報があれば、もっと幅広く将来の選択肢を考えることができたのかなとも思っています。そのため、やはりまずは子どもたち自身がワクワクする分野や興味関心を持てる分野の情報に触れるということが重要だと思います。
テーマ2:理系科目への苦手意識を払拭するには?
ーー文系の生徒が消極的な選択をしがちという調査結果が出ていますが、その苦手意識を払拭する取り組みとしてはどんなことが考えられますか?
横倉先生:
なかなか苦手意識の払拭は難しいので、そもそも苦手にさせないことが大事な視点かなと思っています。理系科目の苦手を作らないように、興味を引き出してあげる 、学問としての深さを見せてあげることが大事だと思います。
本校の事例としては、中学校では「理科」とまとめずに、物理・化学・生物・地学という形でかなり細分化して授業をしています。
その中で実験を中心にした授業を展開しながら、中山さんのお話にもあったニュートリノのように、学問的な深さ・おもしろさに触れてもらって、なるべく暗記科目と思わせないような教育を行っています。
また、苦手分野を克服するとなると、大人が並走してあげて、どこでつまづいているのか、どういうステップを踏んでいけば良いのかをサポートしていくことも大事かと思います。
テーマ3:文理選択と将来の関係性をどのように伝えるか?
ーー女子生徒は男子生徒に比べて、将来のキャリアや進路をイメージできると迷いが少なくなることがデータから見受けられますが、このあたりの文理選択と将来についての伝え方はどうされていますか?
横倉先生:
キャリアのイメージを作るために、本校ではさまざまな職業にふれる機会を設けています。
具体的には20分野くらいの異なる職業の方に来ていただいて、興味のある分野の話を聞くという学校行事を組んでいます。そこでは職業の内容だけではなく、どの分野をどう学ぶことで、今の職業につながったかまで、踏み込んでお話しいただいています。来ていただく方々は卒業生のつながりや、NPO法人でそういった活動をされている方にご依頼しています。
また、現役の大学生をお招きして、どんなことを学んでいるのか、実際の教科書を見せてもらったりといった機会もつくっています。
現在の社会状況は親御さんが学生だったころとは変化しています。こういった、身近な人以外の大人 に触れる機会がキャリアをイメージするいい機会になると考えています。
ーーありがとうございます。この文理選択と将来との関係性について、財団としてはどのように考えていますか?
田中さん:
奨学生の声としては「周りにロールモデルが少ない」、「情報を得られる人がいない」というものが圧倒的に多いです。
男性社会の中で女性がどう扱われるのか、マイノリティになるので友だちができるのか、子育てとの両立ができるのか、お父さんやお母さんに聞いてもわからない、事例や情報が入ってこないことで、漠然とした不安を感じている状況です。そのため、横倉先生のお話にあった、親や先生以外の社会人や大学生の皆さんと会う機会というのはとてもありがたいことですし、そういった機会に学生の皆さんが恵まれてほしいなという願いを持っています。
また、文理選択で迷っている「グレーゾーン」層へのアプローチとしては、例えば生活との結びつきやアートや音楽との融合分野であるとか、文理融合のテーマを設定した授業展開も、STEMを学ぼうとする女性を増やすには有効かと思っています。
ーー文理選択において理系が苦手なことを理由に文系を選択するケースが多いということが調査からわかりました。これに対しては、どんなアプローチが重要になってきますか?
中山:
理系科目よりも文系科目が得意ということがアンケートからも見られますが、それがイコール自分の強みだと捉えて、思考が狭くなってしまう傾向はあると思っています。今、理系科目が得意か苦手かという話と、興味がある分野やワクワクする分野はイコールではないので、そこを切り離して考えられるかどうかが大切です。
自分がどうなっていきたいか、どういうことにワクワクするか、目指したい将来像から見た時にどっちが良いか、勉強してみたいか、そういう視点を持って欲しいですね。
私もいま学校現場でDX(デジタルトランスフォーメーション)支援をしていますが、勉強したい気持ちはあってもモチベーションが続かないという学生さんは多いです。先生のサポートがあっても、いつかは最後は自分で乗り越えなければならない、そういう時には自分がどうしたいかが重要になってきます。教育現場に限らず、そういうことを考える機会を増やすのが良いのではと思っています。
一方で、これをひとりで考えるのは非常に難しいので、考えたいと思っている生徒には先生や大人がサポートしてあげることも重要です。
テーマ4:生徒の文理選択のために先生がすべきサポートは?
ーー文理選択について学校や教員から受けたサポートにおいて、不満を感じるおもな原因は「説明が不足していた」という声がアンケートから読み取れましたが、教育現場でのカウンセリングや情報提供においてどのような工夫をすれば良いと思いますか?
横倉先生:
先ほどお話した通り、職業や大学のイメージを広げてあげる ことはもちろん大切です。
ただ、アンケートについて私が思うところは、「説明が不足している」と選択している時点で進路を人に任せてしまっているイメージがあります。自分で決めてないから不満を感じるのではないかなと。そのため、やはり自分で決めさせる指導のアプローチが必要かなと思います。
今の子は、いろいろなところから情報を取れる環境にありますが、本当にその情報で決めてしまって良いのかというような情報で進路を決めてしまう子もいるので、どういうところを調べるべきか、信頼できるソースか、そういったことは大人が示してあげる 必要があります。
また、目先の得意・不得意に左右されないようにというのは私も本当に大切だと思っています。今はどんどん文理の垣根はなくなってきているのかなとも思いますし、目先の苦手なもの、消去法で決めるのではなくて、克服しないといけないのがいつなのかを考えさせる指導も大切だと思います。
一方で、中高生は親御さんの後押しがないと決めにくいのも事実です。しかし、冒頭で理系および理系科目に関するバイアスの話があったように親御さんの世代とのギャップも大きいので、親御さんが当時学生だったころの情報が、今も通じるわけではないということを伝えていく、親御さんの時代の状況と現在の状況のギャップを埋めるための情報提供も今後求められていくのかなと思っています。
「20年前、30年前はこうだったけれど、いまはこうだ」というわかりやすい情報提供があると嬉しいなとも思っています。
ーー保護者や生徒に対して、多様な進路選択の可能性を提供した方が良いと思いますが、ステークホルダーに向けてどんな支援をしていくべきか、ご意見をお願いします。
田中さん:
横倉先生のお話を聞いていてまさにそうだなと思っていましたが、奨学金の応募者の声からも保護者や先生方の発言の影響力はうかがえます。情報ソースについても、信頼できるものでないものも含まれるというのもその通りで、客観的な事実から自分の進路を考えていく力をつける支援は大切だと思っています。
画像の声の3つ目にもありますが、決め手がなくて悩んでいた時に「社会から理系の女性が求められている」という情報があれば、求められているならチャレンジしようという勇気も湧いてくると思います。全国で入試の時点で、STEM分野に進学する女子枠が生まれていることや、私たちの奨学金も後押ししたい気持ちで提供しているので、ぜひ生徒に情報提供いただけると嬉しいです。
現状の声でいくと、理系を志望している女性の多くが、手に職というイメージを持っている人が多く、医歯薬を親に勧められたのでという声もあります。これを好きで選んだのであれば良いのですが、将来人のせいにしないように自分で選ぶことが大切です。
一例を挙げると、奨学生の声を聞いていると「放射線技師」というワードが多く挙げられます。そこで、気になって調べたところ、安定した職業ということで紹介されている情報が多く見られました。ただやはり人材が飽和しつつあって、就職口が最近は飽和しているという情報も報道されていました。
「手に職」という情報を信じてその学部に行ったら、4年後に就職が難しかったというのは本当に残念なので、本人たちが好きなものやこれになりたいと思えるものを見つけてほしいと思っています。
■ イベント概要
イベント名称:学生アンケート結果から見る文理選択の課題 - 進路指導の新たな展望を探る教員向けイベント
開催日:2023年8月24日(木) 16:00 - 17:00
場所:オンライン(ZOOM配信)
参加費:無料
プログラム内容:現役高校生・大学生3,297人に聞いた文理選択の実態調査に関する結果の紹介、パネルディスカッション、学校現場における文理選択支援の事例紹介、Q&A
主催:公益財団法人山田進太郎D&I財団、Studyplusトレンド研究所(スタディプラス株式会社)
イベント公式サイト:https://info.studyplus.co.jp/article/information20230718
■ 学習管理アプリ「Studyplus」 概要
「Studyplus」は、日々の勉強を記録・可視化し、ユーザー同士でシェアして励まし合うことができる学習管理アプリです。
ユーザーの自己調整学習、学習モチベーションの維持・向上をサポートします。
累計会員数800万人以上、大学受験生の2人に1人が利用しています。https://www.studyplus.jp/
※アプリダウンロードURL
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/apple-store/id505410049
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.studyplus.android.app
■ 学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」 概要
スタディプラスが提供する「Studyplus for School」は、生徒と先生を学習管理アプリ「Studyplus」でつなぎ、生徒の日々のスタディログを先生が見守り助ける、教育機関向け学習管理プラットフォームです。紙の教科書や参考書からデジタルの映像教材や演習教材まで、あらゆるスタディログを一元化・可視化することで、先生の業務負荷を軽減しながら、生徒一人ひとりの学びの個別最適化をご支援します。文部科学省CBTシステム「MEXCBT」と接続する学習eポータル。
現在、全国の学校や学習塾など約1,700校以上に導入されています。
https://for-school.studyplus.co.jp/
■「Studyplusトレンド研究所」 概要
「Studyplusトレンド研究所」は、日本最大級の学習管理アプリ「Studyplus」のユーザーを通じて、次代を担う若者の「いま」を見つめるための研究所です。
若者の学校生活や学習・受験といった側面から、好きなアーティストや消費行動といった生活者の側面まで、これからの新しい時代の「トレンド」を研究していきます。
https://www.trend-lab.studyplus.jp/
■ スタディプラス株式会社 概要
所在地:東京都千代田区神田駿河台2丁目5−12 NMF駿河台ビル4階
代表取締役:廣瀬高志
事業内容:学習管理アプリ「Studyplus」、教育機関向け学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」の運営
設立:2010年5月20日
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